【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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職員たちの平穏なひととき『友人』

「それじゃあ失礼するよ、今日も有意義な時間だった」

 

「おう、それじゃあまたな」

 

 朝食をとるために食堂へ向かうと、ちょうどオフィサーの男が出てくるところだった。

 

 ジョシュアは最近、その男とよくこの時間に密談をしている。彼が何者なのか、お前はなぜ俺たちに彼のことを秘密にしているのか、聞きたいことはある。だが、それを聞いても俺には話してはくれないだろう。

 

 ジョシュアは謎の多い人物だ。俺たちの知らない知識を有し、積極的にアブノーマリティーに関わっている。常人では一度でも精神的にクる作業でも、彼は情報を得るために何度でも挑戦していった。

 

 彼は、俺たちにとって希望であった。俺の親友であり、他の職員たちからの信頼も厚い、中には彼に救われた奴も多い。しかし、彼は俺たちに何かを隠しているのだ。明らかに知り得ない知識を惜しげも無く披露するのに、その出所は伝えない。

 

 それでも、俺たちが彼のことを憎めないのは、彼の人格のおかげなのだろう。正直貧乏くじばかり引かされているところも好感が持てるところなのかもしれないけどな。

 

「おいリッチ、何してんだよ。こっち来いよ」

 

「あぁ、今行く」

 

 考え事をしていて立ち止まっている俺を見かねて、ジョシュアが手招きをしてくる。俺はその言葉に甘えて彼の前の席に座った。

 

「どうしたんだ、悩み事か?」

 

「いや、そういうわけでは無い」

 

「じゃあどうしたんだ?」

 

「お前の寝癖が特徴的だと思ってな」

 

「げっ、マジかよ!」

 

 適当な良いわけを信じて、ジョシュアは必死に髪型を整えようとしている。鏡もなしに、そんな事出来るわけも無いのに。

 

 しばらくの間ジョシュアの無駄なあがきを見ていると、続々と職員たちが食堂に集まってくる。この時間帯は業務開始まで時間を潰す奴が多い、だから早めに来ないと席が埋まってしまう。だが考えることは皆同じなせいで、結局席の奪い合いになるのだ。

 

 故に早起きして他の職員たちと会話を楽しむものと、時間ぎりぎりまでベッドで癒やしをむさぼる奴の大体二種類に分かれることとなる。俺の知り合いは基本前者だが、パンドラなんかは後者だな。

 

 人々が来ると皆ジョシュアに挨拶をする。もちろん一緒にいる俺にも挨拶はしてくれるが、大体はおまけ扱いだ。

 

 最初はオフィサーたちに畏れられていたというのに、気がつけば彼らに信頼されている。ジョシュアという存在は、本当に不思議な奴だ。

 

 

 

 ……まぁ、たまに馬鹿と一緒にやらかしたりするし、欠点が無いわけでは無いがな。それは俺にも言えることだが。

 

 ちなみに一部の女性の間では評判が良くなかったりする。理由はよくわからんが。

 

「そういえばこの前によ」

 

 適当な世間話をBGMに、何気なく周囲を見渡す。これからここにいる人物たちの何人が消えていき、どれだけ残るのだろうか。もしかしたら結構な数が残るかもしれないし、全滅するかもしれない。

 

 その中でも一番消えそうなのは、やはり目の前にいる男だ。彼は常に先陣を切って行動する、それはいつか致命的な何かを起こしそうだ。

 

「おいおい、本当に大丈夫か?」

 

「……大丈夫だ、少し考え事をしていただけだ」

 

「なら良いけど、あんまり無理するなよ」

 

 本当にこいつは優しいというか、心配性だ。こいつが優しくないのなんて、パンドラくらいだ。その辺の羽虫にだってもう少し気を遣っている。

 

 さて、そんな彼に心配されるくらい考え込んでいたらしい。そろそろ仕事に向かうとするか。

 

「もちろんだ、それじゃあまた後でな」

 

「おう、今日もしっかり生き残ろうぜ」

 

「……あぁ」

 

 

 

 食堂を出て職場に向かうと、目の前から嫌な存在が歩いてきた。

 

 コントロール部門のセフィラ、マルクトだ。奴は表面上はまともに見えても、俺たちのことをゴミを見るかのような目で見てくることがある。たとえからだが箱だとしても、感情というものは案外態度に出るものだ。彼女は何かを探していたようだが、結局帰ろうとしていた。そこで俺を見つけて、駆け寄ってきた。いきなり面倒事だな。

 

「すいません、管理人を見ませんでしたか?」

 

「いや、そもそもこんなところに管理人が来るのか?」

 

「そ、それもそうですよね。何を言っているんだろう私、それじゃあ失礼します」

 

 何というか、彼女は本当に嘘が下手だ。それでもAIなのだろうか?

 

 結局彼女は逃げるようにどこかへいってしまった。さて、気持ちを切り替えて今日の作業をしに行こう。

 

 

 

 

 

 その後、イェソドに捕まって強制服装チェックを受けてテンションが最低まで落ちてしまい、その後の作業はうまくいかなかった。

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