【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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再び集い 力を合わせる

この先に道は拓かれた


Days-25-1 黄金の夕暮『結束』

「全く、なんで俺がお前と一緒に作業なんてしないといけないんだよ」

 

「そう言うなよ、そういう実験なんだから」

 

 今日はマオと一緒に実験を行うことになった。とはいえ簡単なもので、『F-01-i05』*1にどんな刺激を与えたら脱走するのかというものだ。俺が作業して、マオが記録する。脱走したら二人がかりで殴り殺す、それだけの作業だ。実験としては優しい(易しい?)方である。

 

「けっ、ヘマするんじゃねぇぞ」

 

「そんな事をするかよ」

 

「どうだか」

 

 

 

 もちろんこんなことでヘマをすることも無く、安全に『F-01-i05』の鎮圧を終えることが出来た。マオは口と態度は悪いが、実力はある。このまま行けば結構な戦力になると期待している。なぜか目の敵にされているが、それさえ無ければもっと仲良くはしたいところである。

 

「まったく、もっと骨のある奴はいねぇのか?」

 

「いやいや、そんな奴がいても困るだろう」

 

「そんなわけあるか、もっと強くなればその分生き残る可能性が増えるってもんだ」

 

「まぁ、それも一理あるか」

 

 実験が終わり少し時間が出来たので、なんとなくマオと世間話をする流れになった。何というか、彼は俺を毛嫌いしているようでも、意外と話は聞いてくれるのだ。よくわからん奴だ。

 

『中央第二の廊下にて、試練が発生しました。エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』

 

「おっ、早速骨のある奴がきたんじゃないか?」

 

「うるせぇ、耳障りなんだよ」

 

「相変わらず辛辣だな」

 

 互いに話しながらも慣れた手つきで準備をしている。そしてE.G.O.の準備が終わればすぐに試練の発生した場所へと向かう。ここからだと結構遠いから、急がなければいけない。

 

「くそっ、面倒だな」

 

「他の奴らと合流してから向かっても良いけどな」

 

「誰がそんな事するかよ、俺一人で十分だ」

 

「どっからそんな自信がわいてくるんだよ」

 

 自信満々の発言に思わず苦笑いしてしまうが、そんな事お構いなしに進んでいく。そして長かった道のりを終えて、俺たちはようやく奴と対峙するのであった。

 

 

 

「でっけぇなぁ」

 

「はっ、こいつは殴りがいがありそうだ」

 

 大きな血だまりの中心に、そいつはいた。大きな体に2本と4本の不揃いの腕、手には剣、槍、銃、盾を持って俺たちに突きつけてくる。そしてその顔は、体に比べて随分と小さい、よく見ればその顔は黄金の黎明のものとよく似ていた。

 

 奴の周辺にはいくつもの死体が一ヶ所に集められていた。それは殺してから集めたというよりは、一ヶ所に集めてから殺したように見える。わざわざ酷いことをする。

 

「来るぞ、死ぬなよ」

 

「誰が死んでやるかよ」

 

 黄金の夕暮はこちらに向かって銃を撃ちながら前進してきた。俺は墓標で弾き、マオはよけながら相手の懐に入った。

 

「オラァ!」

 

 そのままアッパースイングをするが、盾に阻まれてしまう。だが、注意がそれたおかげで俺も接近することが出来た。俺が墓標で黄金の夕暮を切り裂こうとすると、奴は手に持った槍と剣で攻撃をはじき出した。そして銃を突きつけて発砲した。

 

「くっ」

 

 間一髪避けたが、槍による追撃が来る。バランスが崩れ、せめて傷が浅くなるように身をよじると、マオが横からカニヅメで殴って攻撃をそらしてくれた。

 

「気をつけろ!」

 

「すまん、助かった!」

 

 体勢を立て直して、黄金の夕暮と睨み合う。奴は盾を構えながら発砲し、こちらに突撃してきた。

 

「やっかいだな!」

 

 銃弾を弾きながら突進を避ける。すれ違いざまに横腹に一発お見舞いしてやると、奴は苦しそうな声を上げてこちらを睨んできた。

 

「おいおい、随分余裕だなぁ!!」

 

 そして意識が俺に向いている内に、マオががら空きの腹部に強烈な一撃をお見舞いする。これで均衡が一気に崩れた。

 

 二人で連携しながら黄金の夕暮に攻撃を加える。墓標で突き、カニヅメで殴り、剣や槍での攻撃を弾き、盾の防御は片方が引きつけもう片方でがら空きの体に一撃をお見舞いする。

 

 攻撃をしている内に、黄金の夕暮は随分とボロボロになっていた。息も絶え絶えで腕もいくつか折れている、それでも闘志は消えず俺たちを睨んで立ち上がる。だが、さすがにそろそろ限界だろう。

 

「マオ、一気に決めるぞ」

 

「指図するんじゃねぇよ」

 

 合図と共に一斉にたたみかける。黄金の夕暮は盾を構えて攻撃を防ごうとするが、そんな弱々しい構えで俺たちの攻撃を防げるわけも無く、すぐに弾かれてしまう。そして攻撃を受ける毎にその巨体を揺らして、まともに体を動かせる事もかなわず、ついに俺の墓標が奴の胸の中心に突き刺さる。

 

「ウア、アァ……」

 

 最後に、黄金の夕暮は涙を流した。その涙がどんな理由かはわからない、だがその理由を知ることは無いだろう。

 

「ようやく終わったな」

 

「俺一人ならもっと早く終わってたよ」

 

「そうつんつんするなよ、なんか飯おごってやるから」

 

「誰がつんつんなんてするかよ! だが飯はもらうけどな」

 

 戦いも終わり、廊下から引き上げる。今日は少し早めの夕食にするとしよう。

 

 そして俺は、文句を言いながらもついてくるマオと共に食堂に向かうのであった。

 

*1
『彷徨い逝く桃』




悲しみを踏み締め 最後まで歩んでいく
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