もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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7月ですね~


文化祭・午前の部

IS学園、普通なら女しか入る事の許されない女の園。だが、俺は今そのIS学園に足を踏み入れようとしているのだ。

 

「お兄ぃ、何だか鼻息が荒いんだけど?」

 

「お前には俺の気持ちは分からないだろうな」

 

「分かりたくも無いわよ、お兄ぃの気持ちなんて」

 

「それが兄に対しての言葉かねぇ……」

 

 

蘭が俺の事を馬鹿にするのは何時もの事だが、なんだかんだで蘭は俺の事が好きだからな。

 

「はぁはぁ」

 

「キモイ」

 

「何でだよ!」

 

 

興奮して息が荒くなってきてるのは認めるが、そんな言葉で一蹴する事は無いだろうが……これでも兄だぞ。

 

「そこの男子、怪しいですね。いったい誰の招待で来たんですか?」

 

「ほら、お兄ぃは怪しいんだって」

 

 

ゲートを通ろうとしたら、いきなり不審者扱いをされてしまった……何で俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!

 

「えーと……俺はー……そのー……」

 

「何ですか、誰に招待されたのか言えないんですか?」

 

「何してるんだ?」

 

「あっ、一夏さん!」

 

 

女子警備員に問い詰められ緊張してしまった俺の背後から、聞き覚えがあり過ぎる、悪友の声が聞こえてきた。

 

「お疲れ様です、その男が何かしたんですか?」

 

「お、織斑君。見るからに怪しい男だったので、誰から招待されたのかを確認していたんです!」

 

「……ソイツを招待したのは俺です」

 

 

一夏の顔を見るなり、警備員は顔を赤くして、さっきまでの威圧感も消え去り、恋する乙女の顔に一瞬で変化した……おのれ一夏……お前はこの警備員まで恋に落としたと言うのか!

 

「この、見るからに下品で怪しい男が……織斑君の知り合いなの?」

 

「ええ。その見るからに下品で怪しい男は、俺の悪友です」

 

「テメェ一夏!」

 

「何だよ」

 

「言うに事欠いて下品とは何だよ!」

 

「不審者扱いで追い出しても良いんだぞ」

 

「スミマセン、ゴメンなさい、許してください」

 

 

真顔で言う一夏に、俺は未だかつて無いスピードで地べたに額を擦り付けていた……所謂土下座だ。

 

「……見た目は兎も角、もし何かあってもビビッて何も出来ないヘタレですから心配は必要ないですよ」

 

「織斑君が言うなら安心ですね」

 

「万が一、問題を起こした場合でも、俺が責任を持って処理しますから」

 

「何もしねぇっての!」

 

 

一夏に首根っこを掴まれ、友人に対して到底言わないような事を、一夏は涼しい顔で言い放ちやがった。

 

「ゲートでいきなり警備員に声掛けられるヤツ、信用なんてできねぇよ」

 

「一夏さんもそんな口調で話すんですね」

 

「俺だって男子高校生ですからね」

 

 

一夏の背後、一夏に連れ添って来た女子生徒が一夏の口調に驚いたように声を上げた。スゲェタイプの女子生徒なんだけど……

 

「弾?お前なんで鼻の下を伸ばしてるんだ?」

 

「お兄ぃ、サイテー」

 

「ばっ!伸ばしてなんかねぇ!」

 

「ほれ、鏡」

 

 

一夏が何処からか取り出した鏡に俺の顔が映る……いつ見ても男前だぜ。

 

「馬鹿は放っておいて蘭は文化祭を楽しんで来い」

 

「そうします」

 

「面白い方ですね」

 

「まともに相手しなくて良いですよ」

 

 

一夏は女子生徒に気安く話している……一夏のクラスメイトか何かだろうか?……だが一夏が同級生に敬語なんか使うかな?

 

「おい一夏」

 

「何だ?」

 

「ちょっと来い!」

 

 

俺は一夏を女子生徒の傍から引き離し、一夏に彼女の事を聞くことにした。一夏の事だ、彼女のデータなんて頭に入ってるだろうしな。

 

「いてぇな、何だよいきなり」

 

「あの女子生徒の事を教えろ!」

 

「女子生徒?……虚さんの事か?」

 

「虚さんって言うのか」

 

「恋慕するのは良いが、彼女は既に彼氏持ちだからな」

 

「何ー!」

 

 

一夏の言い放った事実に俺は打ちのめされた……そりゃそうだよな、あれだけ可愛くて綺麗で美しいんだから、彼氏の1人や2人くらい、居てもおかしくないよな~……

 

「一夏さん、如何したんですか?」

 

「何でも無いですよ。ほら弾、蘭が行っちまうぞ」

 

「ああ……」

 

 

せっかく運命の女性にめぐり合えたと思ったのに、始まる前に終わってしまった……いや、待てよ!

 

「なあ一夏、その彼氏って何処のどいつだ!」

 

「……聞いて如何するんだ?」

 

「俺が奪ってやる!」

 

 

彼氏が居たって、俺の魅力で彼女を魅了すれば良いだけじゃないか。何処の馬の骨が彼氏か知らないが、俺以上のイケメンなんて滅多に居ないからな!

 

「虚さんの気持ちは如何するんだよ」

 

「彼女も今の彼氏に不満を募らせてるに違い無い!」

 

「私は一夏さんに不満なんてありませんよ」

 

「いえ、一夏にでは無く、貴女の彼氏に……」

 

「ですから、私は、彼氏である一夏さんに、これっぽちも不満なんてありません」

 

「……はい?」

 

 

一夏が彼氏?誰の?

 

「だから聞いて如何するかって聞いたんだ……」

 

「え……じゃ、じゃあ虚さんの彼氏って……お前なのか?」

 

「そうだけど」

 

「クッソー!一夏が邪魔したー!!」

 

 

俺は悔しさから全力で校内に走って行った。何で何時も何時も一夏が俺の恋路を邪魔するんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

「おい!……相変わらず良く分からんヤツだ」

 

「でも、一夏さんに不満があるとすれば、滅多にキスしてくれない事でしょうか」

 

「一昨日もしたじゃないですか……」

 

「『一夏さんから』してくれない事ですよ」

 

「ああ、そうですね……」

 

 

一夏さんは明後日の方向を見て惚けました。何時もこの話題になると一夏さんは明後日の方向を見て、此方を見てくれないのも不満ですかね。

 

「しかし、来ていきなり知り合いが尋問されてるなんて思いませんでした」

 

「一夏さんも、もしかしたらああなってたかも知れませんよ?」

 

「ああ、とは?」

 

「女性に積極的にって事ですよ」

 

「あれって積極的って言うんですか?」

 

「少なくとも、一夏さんよりは積極的ですよ」

 

「アレは無鉄砲なだけですよ……」

 

 

一夏さんはお友達の事を『アレ』だとか『ヘタレ』だとか表現してますが、彼の事を信用してるのでしょうね。お友達の事を話す時、一夏さんは楽しそうな顔をしてます。

 

「蘭を見つけられるのか、アイツは……」

 

「兄妹なんですか?」

 

「ええ。妹の方がIS学園志望なんですよ」

 

「それで一夏さんが招待したんですか?」

 

「志望校を見学したいと言われましてね。この学園は入学希望者でも、そう簡単に入れませんからね」

 

「機密指定のものが多いですからね」

 

「兄貴の方は唯単に女子目当てでしょうがね」

 

「彼女、居ないんですか?」

 

「黙ってれば悪く無いと思うんですが……口を開くと残念なヤツですからね」

 

「ふふっ」

 

 

やっぱり一夏さんはお友達の話をする時、本当に楽しそうな顔をしますね。見ていて微笑ましくなって、思わず笑みがこぼれてしまいました。

 

「何です、いきなり笑ったりして?」

 

 

それを不審に思ったのか、一夏さんは私の顔を覗き込んできます。此処まで見つめられたのは、何時以来でしょうか……

 

「いえ、一夏さんはあのお友達の事を信頼してるんですね」

 

「付き合いが長いだけですよ」

 

「それでも、一夏さんと彼はお友達なんですよ」

 

「………」

 

 

一夏さんは何処か不満そうでしたが、何も言わずに彼が走り去って行った方向を見つめてました……何か、不満なんだけど口にしたく無い事だったのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭の開始宣言をしてから、私たちは色々なところを見回っている(正確には冷やかしている)んだけど、これが意外と面白いのよね。

 

「あっ、会長さん。これ、よかったらどうぞ」

 

「ありがと~」

 

「こっちもどうぞ」

 

「悪いわね~」

 

 

こうやって顔を出せば色々な物がタダで手に入る。学生が作ってるから、味は少し落ちるけど、祭りの雰囲気でそんな事は気にならなくなるので問題無い。

 

「お姉ちゃん、後で一夏と虚さんに怒られても知らないからね」

 

「大丈夫!」

 

「その自信は何?」

 

「怒られるのは皆一緒だから」

 

「そうだよ~。かんちゃんも食べてるんだから~」

 

「今更いい子ぶっても駄目ですよ」

 

「一緒にお兄ちゃんに怒られよ~」

 

「……怒られる事は確定なんだ」

 

 

一夏と虚さんの事だから、この事態はある程度想定してるんだろうが、お姉ちゃんたちはまったく悪びれない…少しは苦労を減らそうと思わないのかな?

 

「あっ、そろそろクラスの担当だ」

 

「私も~」

 

「私もです」

 

「私もだ」

 

「それじゃあ、私も一夏君と交代してこよっと!」

 

 

一夏もクラスの担当がそろそろなので、お姉ちゃんは一夏の居るゲートに向かって行った。お姉ちゃんって、クラスの担当あるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、お嬢様」

 

 

アタシのクラスの隣、つまり1組に敵情視察に来てみたら、そんな出迎えをされた。何だ、この異様なフリフリは!

 

「あら鈴さん」

 

「メイド喫茶?」

 

「似たようなものですわ」

 

「鈴?」

 

「シャルロットまで、そんな格好なんだ」

 

「私も居るぞ!」

 

「威張って現れるわりには似合ってるわね、メイド服」

 

 

軍人がメイド服を着ているので、普通はおかしいと思うんだろうけど、ラウラが着てるとその違和感が感じられないのだ。

 

「リンリンだ~」

 

「鈴さんですか?」

 

「お兄ちゃんの悪友の1人か」

 

「本音に須佐乃男にマドカだっけ?」

 

 

前に1回だけあった事のある一夏の妹、千冬さんを小さくしたような彼女がメイド服、つまりフリフリの服を着ているのを見ると何だかおかしいわね。

 

「それで鈴さん、ご注文は?」

 

「そうね~……杏仁に中国茶を」

 

「中国セットですわね」

 

「さすが中国人」

 

「あによ?」

 

「ほい、おまたせ」

 

 

注文してすぐなのに、頼んだものが出てきた。

 

「早いわね」

 

「鈴が何注文するかなんてお見通しだ」

 

「アンタもそんな格好なんだ」

 

「嫌だって言ったんだがな」

 

 

アタシの注文を持ってきた男子、一夏は執事服を着ていた。普段の服装がしっかりしてる一夏だから、執事服を着ていてもそれが似合っているのよね……

 

「おりむ~も接客しなきゃ~」

 

「寧ろ客寄せをしてきてよ」

 

「厨房は何とかなるからさ」

 

「何とかって……作り置きを出すだけだろ」

 

「一夏さん、早く客寄せをお願いしますわ!」

 

「はいはい……」

 

 

一夏は執事服のまま教室から出て行った。それにしても……

 

「一夏がお菓子を作って、一夏が客寄せしてたんじゃ、ほぼ一夏の出し物じゃない」

 

「だって女子高なんだよ?」

 

「兄上が宣伝すれば売り上げ倍増だろうな!」

 

「お前が兄上って呼んで良い相手じゃない!」

 

「まあまあマドマドもラウラウも仲良くだよ~」

 

「一夏様が歩くだけで客は来ますよ」

 

「アンタも大概腹黒よね……」

 

 

さすが一夏の専用機ってとこかしらね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で俺が呼び込みなどしなきゃいけんのだ」

 

 

クラスメイトに追いやられ、仕方なく廊下で客寄せをするが、さっきからきゃーきゃー五月蝿いんだが……

 

「織斑君よ!」

 

「執事服、ひょっとしてお嬢様とか言ってもらえるのかな?」

 

「そんな事言われたら死んじゃう!」

 

「でも、それで死んでも悔いは無いわ!」

 

 

……いや、悔いろよ。

 

「織斑一夏さんですね?」

 

「あっ、はいそうですが……失礼ですが貴女は?」

 

「これは失礼。私はこう言うものです」

 

 

そういって名刺を差し出してきた。え~と何々……

 

「IS装備開発企業『みつるぎ』渉外担当・巻紙礼子さん……企業の方が自分に何の用でしょうか」

 

 

大体の用件は分かるが、この女性は油断なら無い相手だ。確証は無いが、普通の企業の人では無い雰囲気がある。

 

「はい、織斑さんに、わが社の装備を使っていただきたいと思いまして」

 

「営業なら今度改めてお越しください。生憎今は仕事中ですので」

 

「そうですか……では、日を改めてまた来させていただきます」

 

 

巻紙さんはそう言って素直に人ごみに紛れて行った……あの気配、何処かで感じた事のある気がするんだよな……最近もそうだが、随分前にも。

 

「おっ、一夏じゃねぇか」

 

「一夏さん!?」

 

「ん?……何だ弾か」

 

「ヒデェなおい!」

 

「い、い、い、一夏さん。何でそんな格好してるんですか!?」

 

「今客寄せ中なんだ」

 

 

蘭は俺の服装を見て鼻血を出した……確かにおかしいと思うが、何で鼻血?

 

「それじゃあ案内してもらおうじゃねぇか!」

 

「何で偉そうなんだよ」

 

「お客様にそんな口聞いて良いのか?」

 

「まだ客じゃねぇだろ。それに、お前を客だとは思って無いから気にしないで良いだろ」

 

「どんな理屈だよ!?」

 

 

弾をからかって遊んでたら、巻紙さんの事を気にしてた事をすっかり忘れてしまった。……何処で感じたんだっけか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ、私が企業の人間じゃねえ事に気付いてやがったな」

 

 

人ごみを抜け出し、私はさっきのガキの事を思い返していた。織斑一夏、前に私たちの組織が拉致ったガキ、織斑千冬の弟、アイツの兄。

データから頭の回る小ざかしいヤツだって分かってたのに、あのガキを前にして、私は思うように交渉出来なかった。

 

「アイツの目……私を観察しているようで、気味が悪かったぜ……」

 

 

焦点が合ってないような目で、私の身体……身体能力を測ってる感じがして、思わずアイツから離れるように逃げ出したのだ。

 

「楽な仕事じゃねえって分かってたんだがな……」

 

 

油断ならない相手に、私は思わず弱音を吐いた。今迄失敗などしなかった私が、ガキ相手に弱気になるなんてな……

 

「必ず成功させてみせる……」

 

 

あのガキ、織斑一夏は私の仕事の邪魔をするだろう……なら、何時も通り邪魔者は始末すれば良いだけだ。私は今まで始末してきた邪魔者を覚えて無いが、始末して来た事は覚えてる。今回も同じ事をすれば良いだけだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、お嬢様方」

 

「い、一夏君……その格好……」

 

「似合ってますね」

 

「警備は良いんですか?」

 

「うん、簪ちゃんと本音と交代してきたから」

 

 

一夏君のクラスに見回り(冷やかし)に来たら、一夏君が執事服で出迎えてくれた。虚ちゃんは特に動揺した風じゃ無いけど、私はそんな風に振舞えなかった。

 

「じゃなくって!」

 

「?」

 

「一夏君、さっきのセリフ、もう1回言って!」

 

「警備は良いんですか?」

 

「そっちじゃなくって!」

 

 

偶にお茶目さんよね、一夏君って……きっと分かっててはぐらかしてるんだろうし、一夏君が分からない訳無いし。

 

「いらっしゃいませ、お嬢様方」

 

「良いわね、これ……」

 

「楯無さんは普段から虚さんにお嬢様って言われてるじゃないですか」

 

「虚ちゃんに言われるのと、一夏君に言われるのとじゃ違うのよ」

 

「そんなもんですか?」

 

「お嬢様の気持ちは何となく分かりますが、一夏さんには名前で呼んでほしいですね」

 

「……とりあえず、席にどうぞ」

 

 

一夏君は何か嫌な気配を感じ取ったのか、そそくさと奥に引っ込んで行った。

 

「一夏君、如何したんだろう?」

 

「勘の良さには関心しますよ、本当……」

 

「虚ちゃん?」

 

 

何か、普段の虚ちゃんとは違う雰囲気を纏っている……一夏君はこれを早々に察知したんだね、きっと……

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

「え~とね~……一夏君が淹れた紅茶とケーキがほしいな」

 

「私はアールグレイとシフォンを」

 

「畏まりました」

 

 

そう言ってウエイトレス、篠ノ乃箒ちゃんは奥に居る一夏君に注文しに行った。それにしても箒ちゃんのおっぱい、私より大きいんじゃない?

 

「何です?」

 

「虚ちゃんは、箒ちゃんと私、どっちが大きいと思う?」

 

「?……知りません!」

 

「怒らないでよ~」

 

 

私の質問を理解した途端に、虚ちゃんは機嫌が悪くなってしまった……虚ちゃんだって簪ちゃんだって、気にするほど小さくないのにな~……

 

「わざわざご指名、ありがとうございます」

 

「やっほ~」

 

「楯無さんは紅茶の種類は如何しますか?」

 

「アッサムのロイヤルミルクティーで」

 

「虚さんはストレートですか?」

 

「ええ」

 

「分かりました」

 

 

それだけ確認して、一夏君は一旦奥に引っ込んだ。多分紅茶を淹れてるんだろうな。

 

「一夏く~ん。此処で淹れて~!」

 

「お嬢様!」

 

「良いじゃん」

 

 

一夏君が淹れてない可能性だってあるんだし、それなら私たちの前で淹れてもらえば確実に一夏君が淹れた紅茶が飲めるんだし。

 

「あんまり大声で叫ばないでください。他の人に迷惑です」

 

「は~い」

 

「スミマセン……」

 

「いえ、虚さんに謝られても……」

 

「ですが、お嬢様は謝る気ゼロですから」

 

「酷いな~謝ったじゃない」

 

「何時?」

 

「心の中で」

 

「「………」」

 

 

虚ちゃんと一夏君が同時に固まって、そして同時に呆れたような目で私を見てきた。

 

「何よ~」

 

「別に良いですよ……楯無さんがこう言う人だって知ってますから」

 

「お嬢様ですしね……」

 

 

何か釈然としない評価をされてるっぽいけど、一夏君が目の前で紅茶を淹れてくれたので、些細な事を気に出来なかった。

 

「はい、アッサムのロイヤルミルクティーと、アールグレイです」

 

「ありがとね♪」

 

「ごゆっくり」

 

 

それだけ言って、一夏君は逃げるように奥に引っ込んだ。もう少し話してくれても良いじゃないよ。

 

「あっ、美味しい」

 

「一夏さんは紅茶の入れ方も上手でしたね」

 

「何か弱点とか無いのかな」

 

「一夏さんのですか?」

 

「女の子が苦手って以外、一夏君に弱点らしい弱点って無いじゃない?」

 

「そうですね……」

 

 

一夏君を困らせるにも、一夏君の弱点って知らないのよね~。私は一夏君の淹れてくれた紅茶を飲みながらそんな事を考えていた。




原作では弾にフラグが建つんですが、既に虚は一夏の彼女……哀れ、弾。
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