一夏さんが元の姿に戻る……これは分かってた事ですが、まさか1日で元に戻る事になるとは思ってませんでした。確かに前に小さくなった時も1日で元に戻りましたが、今回も1日で戻るとは……私は今の一夏さんも好きになっていて、一夏さんも何時も以上に甘えてくれています。ずっとこのままでは困りますが、もう少し長くこの姿でいてほしかったです。
「あれ、虚ちゃん何で泣いてるの?」
「いえ……」
飾りつけが終わったお嬢様も一夏さんの様子を見にこちらにやってきました。そうですか、私は泣いてたんですか……
「須佐乃男が一夏君に抱きついてる!?」
「楯無様もどうぞ」
「えっ良いの!?」
「事情は後ほど……」
「?」
一夏さんが元の姿に戻るかもしれない事を知らないお嬢様は、須佐乃男が言う事情が何なのか検討がつかないようで、しきりに首を傾げていましたが、一夏さんを目の前にそんな瑣末事を吹き飛んでしまったようで、抱きしめた後に何で自分が悩んでいたのか忘れていました。
「お嬢様、此方へ……」
「ん?」
私はお嬢様と一夏さんから離れた場所に移動して、事情を話す事にしました。
虚ちゃんが深刻な顔をして話してくれた事は、本当に急で驚く意外のリアクションを忘れてしまう程衝撃的な話だった。
「そっか……一夏君、元の姿に戻っちゃうんだ」
「ええ……嬉しいんですけど、何処か物悲しいんですよね」
「虚ちゃんは特に懐かれてたからね……」
普段は私たちが一夏君に懐いているから、一夏君に懐かれるこの感じは新鮮で、そして何時もと違った嬉しさがあったもんね……
「この状況の記憶は、一夏さんに残るのでしょうか」
「如何だろう……もし残ってたら如何なると思う?」
私は自分の考えの前に虚ちゃんの考えを聞きたくて質問した。だって私よりも虚ちゃんの方が面白い考えを出してくれそうだったから。
「そうですね……小さくなる前よりも私たちとの付き合い方が良くなるか悪くなるかのどちらかでしょうね」
「そうなると虚ちゃん的にはどっちだと思う?」
「私は良くなる方になってくれると思います、ていうかそうなってほしいです」
「でも、あの一夏君が私たちに甘えてきたりしたら、今度は私が逃げちゃうかも知れない」
「それでも、私は一夏さんには甘えてほしいです……分かりにくくても良いので、少しくらいは頼ってほしいですよ。だってお嬢様も私も、一夏さんより年上なのに、私たちが一夏さんに頼りっきりで……これじゃあどっちが年上だか分からないですよ」
確かに……虚ちゃんはそんなにでは無いが、私って一夏君に頼りすぎな気がする……年上のお姉さんの威厳は、私に限らず虚ちゃんも一夏君に対して持ち合わせてない……むしろ一夏君の方が威厳があるような……なんだか急に恥ずかしくなってきたような気がするんだけど、きっと気のせいだよね。そうだ、きっと気のせいだ。
「お嬢様、現実を直視してください」
「うう~……」
「一夏さんの包容力は凄まじいですし、良く周りを見ている方なので私たちが困ってるとすぐに助けてくれますけど、一夏さんは年下なんですよね……」
「威厳って何だろうね……」
「何でしょうね……」
特に私は更識家の当主で、威厳を持ち合わせていないといけない立場なのに……これじゃあ一夏君に呆れられるのも時間の問題かも知れないわね……
「準備終わったよって……何でお姉ちゃんも虚さんもそんなに暗いの?」
「現実に打ちのめされてたところよ……」
「良く分からないけど、とりあえず準備出来たから一夏を連れて行こうよ」
「そうですね……」
「本当に如何したの?」
「「ハァ……」」
明日からはもう少しまともになろう……一夏君に頼られるまでは行かなくとも、呆れなれないようには頑張ろうと思った。
マドカさんと虚様が一夏さんの相手をしている間に、私たちは楯無様から事情を聞かされた……一夏さんが次に寝たら元に戻ってしまうらしいと。
「そっか~、おりむ~は元に戻るんだね~」
「可愛かったのに、ちょっと残念だな」
「私はそんなに一緒に居なかったので、元に戻ると言われましてもあまり実感は無いです」
「一夏君のお願いだから、3人とも抱きしめてあげて」
「分かったのだ~!」
「うん」
「そうですね」
私たちは一夏さんを抱きしめるために一夏さんの傍に移動した。そうですか、一夏さんは元に戻るんですか……私的には元の一夏さんの方が良いので嬉しいですが、虚様や楯無様は少しだけ残念そうでした。
「簪おねえちゃんに本音おねえちゃん、あと碧おねえちゃんだ~!」
「一夏、おいで」
「うん!」
順番は簪様が最初で次が本音様、そして私と言う感じになってますが、これは話し合った結果では無く何となくそんな感じになってました。
「次は私なのだ~!おりむ~、こっちにおいで!」
「は~い」
「えへへ~、うりうりうり~!」
「うにゃぁぁぁぁぁ」
「あはは~おりむ~面白いね~」
「ふにゅ~……」
本音様は一夏さんの頭を撫で回し、そして思いっきり抱きしめました。
「今度ちっちゃくなったら一緒にお風呂に入ろうね~!」
「それははずかしいよ~」
「ちっちゃくなってもおりむ~はおりむ~なんだね~」
「だっておねえちゃんたち、みんなきれいなんだもん」
「正直物のおりむ~にはご褒美なのだ~」
「うわっぷ!」
本音様の大きな胸に一夏さんの顔が埋まっていきます……女の私から見ても、あれは大きいですね……如何やったらあそこまで大きくなるのでしょうか?
「じゃあね、おりむ~」
「まだ僕はいなくならないよ~」
「あれ、そうだっけ?」
「本音おねえちゃんはなしきいてなかったの?」
「えへへ~……」
本音様は一夏さんに指摘され気まずい感じに笑って誤魔化してましたが、一夏さんは誤魔化されてはくれなかったみたいでした。
「ちゃんとはなしきかなきゃだめだよ?」
「は~い」
「虚おねえちゃんがいってたことはほんとうみたいだね」
「ほえ?」
「本音おねえちゃんはしごとしてないって」
「おね~ちゃん!」
本音様は一夏さんに知られたくなかった事を教えた虚様に向かって走っていきましたが、すぐに虚様にお説教されてました……
「最後は私だね」
「碧おねえちゃんは、僕とはそんなにいなかったね」
「私は皆さんよりだいぶ年上ですからね」
学園で起こった事件には私は関われませんし、今日は偶々学園に来ましたが、もし今日が一夏さんの誕生日では無かったら私は一夏さんが小さくなった事すら知らなかったでしょうね。
「でも、僕は碧おねえちゃんもすきだよ」
「ありがとう、私も一夏さんの事好きだよ」
「そっか~、じゃあ……えい!」
「んっ!?」
抱き寄せた一夏さんの唇で私の唇が塞がれる……これは所謂キスではないのだろうか……これはこれで嬉しいですね。
「えへへ~」
「ちょっとビックリしたよ」
「ごめんなさ~い」
「謝らなくっても良いけど、するならするで言ってほしかったな」
「でも、いったら碧おねえちゃんをビックリさせられなかったでしょ?」
「そうだね」
一夏さんからキスをされた事は数えるほどしか無い。その数少ない事を今の姿の一夏さんにされたら、そりゃビックリするよ。
「だから、僕は碧おねえちゃんをびっくりさせることにせいこうしてうれしいんだ~」
「悪い子だね」
「えへへ~」
「もう、可愛いね」
一夏さんを思いっきり抱きしめて頭を撫でる。もし一夏さんとの間に子供が出来たらこれくらい可愛いのかな?
「やっぱり碧おねえちゃんもふだんの僕にふまんがあるの?」
「如何でしょう、私はそこまで不満はありませんが、やっぱりもう少し甘えてほしいですし、恋人らしい事もしたいですね」
「そっか……やっぱりふだんの僕はおねえちゃんたちにあまえてないんだね……」
「普段の一夏さんは頼りになりますから」
一夏さんは少し考えて、何かをひらめいたように何処かに走っていきました。いったい何をひらめいたのでしょうか……
何処かに行っていた一夏君も戻ってきたし、準備も出来てたのでついに誕生日パーティを始められる。と言っても既にコスプレは披露してるし、一夏君と一緒に写真も撮ったので、後は飲み食いするだけのパーティーなんだけどね……
「おいし~ね!」
「それは私が作ったんだよ~」
「そうなんだ~、本音おねえちゃんはりょうりじょうずなんだね~」
「おりむ~には勝てないけどね~」
「僕?」
一夏君は本音の作った料理に素直に感動しているようだが、褒められた本音はそれでも一夏君より上手くなりたいらしくあまり嬉しそうではない……本音がそんな気持ちなら、それ以下の私たちは如何すれば良いのよ、まったく。
「一夏様の料理は完全にお金を取れるレベルですからね……」
「実際下手な店より美味しいんだよね……」
「女としての自信が無くなっちゃう……てか無くなったよ……」
「お嬢様たちはまだ良いじゃないですか。私なんて……」
「「「………」」」
虚ちゃんの自虐モードに、私たちは掛ける言葉が見当たらなかった。下手に慰めて墓穴を掘ったら更に面倒になりかねないので黙ってたとも言うが……
「こっちもおいしいね~」
「それは私が作りました」
「碧さんも料理上手だもんね~」
「そうなんだ~」
「でも、やっぱり一夏さんの方が上手なんですよ」
「また僕?」
今の一夏君に包丁を持たせる訳にはいかないが、きっと料理上手なんだろうな……
「おりむ~、ケーキもあるから食べ過ぎちゃ駄目だぞ~?」
「うん、わかった!」
「可愛い……」
「ん?」
虚ちゃんがついついつぶやいた言葉に、一夏君は首を傾げた。その仕草もまた可愛らしいものだったので、虚ちゃんだけでは無く私や簪ちゃんもその可愛さに悶えた。
「ケーキ切り分けましたよ~」
「おっ、須佐乃男ナイスタイミングなのだ~!」
ケーキを8等分にしてきた須佐乃男がキッチンからやって来た。これが出てきたと言う事は、パーティーもそろそろ終わりだと言う事だ……楽しかったけど何か残念だな……
「おりむ~おめでと~!」
「おめでとうございます、一夏さん」
「おめでとう、一夏」
「誕生日おめでとう、一夏さん」
「おめでとうございます、一夏様」
「一夏君、おめでと~」
「おめでとう」
「ありがとうみんな。僕、みんなのことだいすきだよ!」
「「「「「「///」」」」」」
「あれ?なんでまっかなの?」
あの笑顔で大好きって言われたら、そりゃ真っ赤になるわよ。私たちは誰一人の例外無く一夏君の攻撃に沈んだ……でも、嫌じゃ無いんだよね。
「さあ、残り少ないですが楽しみましょう!」
「そうだね~」
「須佐乃男の言う通り」
一夏君が何時寝てしまうのか分からない今、せめて精一杯楽しみたい……私たちは寮長が織斑先生だと言う事も忘れてはしゃぎまくった。
そうして1時間が経った頃、ついに一夏君は疲れ果てて眠ってしまった。
「寝ちゃったね……」
「そうですね……」
「起きたら元の一夏なんだよね……」
「服は如何しましょう……」
「私が具現化して準備しておきますよ」
そう言って須佐乃男は寝ている一夏君に普段の一夏君サイズの服を着させた。私たちは物悲しさと騒いだ疲れから全員ベッドに潜って寝る事にした……片付けは明日にしようと決めて……
――おまけ――
「なんだこりゃー!」
散々騒いだ翌日、私たちは一夏君の叫び声で目を覚ました。
「如何したの一夏?」
「元に戻ったんじゃないの?」
「あれ?」
「一夏さん、その胸……」
「またあの2人の仕業?」
「俺は知らんぞ……」
子供の姿から戻ってはいたが、今の一夏君には男の子にはあってはいけないものがある……しかも結構大きい。
「子供の次は女かよ……」
「羨ましい……」
「少し分けてほしいよ……」
「虚さん、簪、その目は止めてくれないか……」
一夏君の巨乳に羨望の眼差しを向ける虚ちゃんと簪ちゃん……男の子より小さいとへこみそうね……
「今の一夏様なら、もしかしたら楯無様より大きいのでは?」
「嘘っ!?」
須佐乃男の発言に、私はたまらず一夏君の胸を揉んだ。
「何ですかいきなり!」
「この感触……負けたかも知れない」
「太刀打ち出来るのは本音だけだね……」
「私たちは何がいけないのでしょうか……」
「本気でへこまないでくださいよ!」
「一夏君に負けた……」
「勝っても嬉しく無いんですが……」
授業もあるのでへこんだままではいけないので、無理矢理気を持ち直し、一夏君に女物の制服を着させる事にした。一夏君は抵抗しまくったけど、ちゃんとブラもパンティーも穿かせた。
何でこんな事になった……教室に来たら一夏の席に見たことある女が座っていた。何処で見たんだ?
「誰だお前は」
「織斑一夏です……」
「なん……だと……」
「貴方たちの企みじゃ無いんですか?」
「ちょっと待て、私は関係無い!」
私は大慌てで携帯を取り出しあの馬鹿の番号を呼び出す。
『もすもすひねも……』
「お前も所為か!」
『最後まで言わせてよ~』
「お前の戯言など如何でも良い!」
『ひっど~い!束さん泣いちゃうよ~』
「勝手に泣け。それより、一夏が女になってるのは貴様の所為だろ!」
『あっ、上手くいったんだ~』
「如何言うつもりだ!」
『女の子のいっくんを見たくなって発明したのだ~。ちーちゃんもその映像見たいでしょ?』
「……ふむ」
束の戯言に耳を傾け、私はちらりと一夏を見る。
「何です?」
「いや、何でも無い……」
明らかに女なのだが、一夏は男口調で話しているので違和感がある……でも、あの声で罵倒されたら興奮するだろうな……じゃ無くって!
『ちーちゃんが興奮してるのは、この束さんにはお見通しだよ~』
「何時も通りに頼む……」
『お任せあれ~』
結局は欲望に負け、束と取引をする事になった……一夏、頼むからそんな目で見ないでくれ、おかしな性癖に目覚めそうだ……
一夏君は結局1日中女の子の姿だった。そのおかげで私たちは何時も以上に一夏君とくっつく事が出来たのだ。
「えへへ~一夏君」
「あんまりくっつかないでくださいよ」
「気にしない、気にしない、こんなの女の子同士のスキンシップよ」
「俺は男なんですが……」
「だって今は女の子でしょ~?」
「身体は女かもしれませんが、俺は男です」
「一夏、その顔とその身体つきで『俺』って言うのはおかしいと思うよ?」
そう言って簪ちゃんは一夏君のおっぱいを揉みしだく。良く見れば反対側で虚ちゃんも揉んでいる……そこまで羨ましいのね、2人とも……
「何と言われようと俺は俺だ。後、そんなに揉むの止めてくれないか?」
「ヤダ」
「止めません」
「ハァ……」
一夏君は悶える事こそしなかったが、若干感じているのは隠せてなかった。
「それにしても、ちっちゃくなった次は女の子か~……おりむ~も大変だね~」
「元に戻ったら説教してやる」
「一夏様はお2人に好かれてるんですよ」
「……随分と歪んだ愛情表現だな」
「お兄ちゃんとお似合いだね。でも、私は認めないけど」
「兎に角、とっとと戻りたいです」
「あら、せっかく女の子なんだから一緒にお風呂に入ったり出来るじゃない!」
「何で楽しそうなんですか!」
こんなチャンス滅多に無いし、女の子同士なら気兼ねなく入れるじゃない。私は自分で言った事なのに、何で今迄思いつかなかっただろうと首を捻った。一夏君と一緒なら、男の子でも女の子でも変わらないわよね。
「おりむ~、今なら大浴場に行けるね~」
「入らねぇからな」
「その口調……ハァハァ」
「須佐乃男、息が荒いよ?」
「ハァハァ」
「あれ~マドマドもちょっと荒くなってる?」
一夏君の口調に息を荒立ててる変態が2人……男の子としてではなく、女の子としての一夏君の口調に興奮してるらしい……ちょっとだけ気持ちが分かるのは、果して良い事なのだろうか。
「兎に角、絶対大浴場には行かねぇからな!」
「なら部屋のお風呂なら良いのね」
「はい?」
「よし皆、今日は一夏君と一緒にお風呂だ~!」
「え、ちょっ、まっ……」
「わ~い!」
「直に揉んでやる……」
「私も揉みまくります……」
「楽しそうですね~」
「お兄ちゃんと一緒にお風呂なんて、何時ぶりだろうな」
「決定なの!?」
「覚悟してね、一夏君♪」
一夏君は頭を抱えて蹲った。女の子同士なんだから、そんなに恥ずかしがらなくても良いのにね。
「こんな感じになると思うんだけど、如何かな~?」
『さすがにそれは……でも、女の一夏に罵声を浴びせられたら興奮するだろうな』
「やっぱりちーちゃんは変態だね~」
『計画してる貴様に言われたく無い!』
「だって面白そうでしょ~?」
『……強く否定はしないが』
「なら今度作ってみるね~」
『一夏にバレたら今度こそ殺されるぞ……』
嫌だな~ちーちゃん……
「束さんは所在不明なので殺されるのはちーちゃんだけだよ♪」
「薄情物め!」
この計画は実行出来るかな~?
アキ様のリクエスト、一夏の女体化をおまけで書いてみました。本編では難しかったのでおまけになりましたが、いかがでしたでしょうか?