もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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蝉の大合唱……別に良いんだけど、朝早くからは止めてほしい……


姉妹の距離

一夏さんの対IS武装の慣らしのために早朝からアリーナで訓練をする事になった……一夏さんの相手をするのはかなり久しぶりなので緊張しますね。

 

「そう言えば虚さんの専用機、カストルを間近で見るのは久しぶりですね……いや、戦うのが久しぶりなのか」

 

「!」

 

「ん?」

 

 

まさか一夏さんも同じ様なことを思っていたなんて……心の中、読まれたのかと一瞬焦りましたよ。

 

「とりあえず虚さんの基本武装は剣でしたよね?」

 

「えぇ……」

 

「本気で斬りかかって来て良いですよ」

 

「危なく無いですか?」

 

 

いくら一夏さんが生身でISに対抗出来るからと言って、危ないのには変わりないのだから。私としては出来るだけ手加減するつもりだったのだ。

 

「危なく無きゃ、練習になりませんよ」

 

「ですが……」

 

「大丈夫、ちゃんとよけるから」

 

「……その言葉、信じましたからね」

 

「じゃあ、始めましょうか」

 

 

一夏さんはその言葉を言ってすぐに戦闘体勢を取った……武器も待って無いのに、一夏さんからは凄いプレッシャーが放たれている……やっぱり一夏さんの相手は緊張します。

 

「行きます!」

 

 

剣を構えてすぐさま一夏さんに向かって一撃を繰り出す……事情を知らない人かこの光景を見たらきっと驚くでしょうね。生身の相手に全力で斬りかかってるんですもの。

 

「虚さん、遠慮は要りませんよ」

 

「遠慮なんてしてませんけど?」

 

「じゃあ無意識なのか……」

 

「何の事です?」

 

 

私は特に手加減などしていないつもりだったのだが、一夏さんは私が無意識に手加減をしてると指摘してくる……

 

「虚さんの優しさは好きですが、今、この瞬間だけは本当に無用なものです」

 

 

私は、一夏さんに対して全力で相手をするって決めたのに、心の何処かで一夏さんの事を信じきれてないのだろうか……心の何処かで全力を出すのを躊躇っているのだろうか。

 

「本気で来ないならこっちから行きます」

 

「え!?」

 

 

一夏さんは本気だ……それは一夏さんの目を見れば良く分かった。普段私に接する時の目では無く、対戦相手に挑む時の目をしていたのだ。

 

「まずはこれを!」

 

「ッ!」

 

「へぇ、良く防ぎましたね」

 

 

完全に勘だった……一夏さんの攻撃を見てから防ごうとしても間に合わないのだから、軌道から狙いを推測しなければいけないのだ。……いけないのだが、そんな高度な技を使える訳も無く、私は勘で一夏さんの攻撃を防いだのだ。

 

「小刀は使い勝手が悪いな……大剣相手だと腕に来る」

 

「隙あり!」

 

「なら次はこれっと」

 

 

小刀を見つめながらブツブツ言っていた一夏さんに襲い掛かる……今分かった、この人相手に手加減など無用だと。

 

「グッ!」

 

「さすがに勢いが乗ってるとキツイですね~」

 

「余裕そうです……ね!」

 

「まさか、捌くので精一杯です……よ!」

 

 

今の一夏さんの武装は刀、さっきよりは使いやすそうみたいですが、やはり大剣相手には戦いにくそうに見えました。

 

「虚さん、俺は右利きですが、左が使えない訳じゃ無いんですよ?」

 

「それは知って……ッ!?」

 

 

気付いたのは偶々だ。右手一本で刀をぶつけてくる一夏さん、だが普通鍔迫り合いになれば両手を使うはず……そしてさっきの発言、無意識に私は一夏さんから距離を取ったのだ。

 

「ギリギリまで見せないようにしてたんですがね」

 

「なるほど、少し短い感じがしてたのはこの所為ですか」

 

 

一本の刀では無く、一対の刀だったのだ……つまりは2刀流のための刀だ。

 

「小太刀じゃ決められないか」

 

「十分危険ですよ、その小太刀……」

 

 

風斬り音がものすごく大きかった……一夏さんの剣速も関係してるんでしょうが、あれは小太刀が出せる音では無い……つまりは相当な威力があるのだろう。

 

「近づけないなら!」

 

「さすが遠近両用の機体ですね」

 

「関心してる暇はありませんよ!」

 

 

大剣をしまい、マシンガンを展開する。近づけないなら遠くから攻撃すれば良いだけの話だ、そう難しい事では無い。

 

「近づいて来ないならこっちから近づくまで!」

 

「させません!」

 

 

一夏さん目掛けてマシンガンを乱射するが、その隙間を縫うように一夏さんは徐々に近づいてくる……しかも笑いながらだ。

 

「なら!」

 

 

マシンガンをしまいライフルを展開、しっかりと狙えば当たるだろう……当てる気持ちでいかないとあっさりとやられてしまう気がしたからだ。

 

「銃って言うのは普通は直線にしか飛ばない……なら、その軌道上に居なければ怖いものでは無い」

 

「避けた!?」

 

 

間違いなく当たったと思ったのだが、一夏さんは一瞬で移動した……らしい。はっきりと言い切れないのは、その避けた動きがまったく分からなかったからだ。直前までは確かにそこに居たのに、次の瞬間には攻撃は一夏さんの背後にあった……貫通した訳でも無いし、確かに一夏さんは攻撃を避けた事は分かった。だがその動きはまったく見えない……ISの能力で相手の動きは良く見えているはずなのにだ。

 

「驚いてる場合か?」

 

「え……ッ!?」

 

「遅い!」

 

 

一夏さんの手には須佐乃男の武装、黒雷が握られていた……これは近くでも遠くでも使える一夏さんの得意武装……やっぱり一夏さん相手に一瞬でも隙を見せたら駄目なのね。

 

「参りました」

 

「ふぅ……虚さんも強くなってますね、やっぱり」

 

「そりゃ、私だってIS学園で2年以上学んでますから」

 

「動きも精度も、更識の屋敷で戦った時よりも格段に上がってる。今度戦うのが楽しみです」

 

「……それって一夏さんもISを使って……って事ですよね?」

 

「生身では今戦いましたし、今度はそうしたいですね」

 

 

私は勘弁願いたい……一夏さんがISを使えば今の戦闘以上に私は簡単に倒されるに違い無いのだから。

 

「しかしこの武装、使いにくいですね」

 

「え、あれで?」

 

 

次々と違う武装を展開してたのに、あれでも一夏さんには使いにくいって事なのでしょうか。相変わらず常識で計り知れない人だ。

 

「出せるのが刀剣類だけですからね、銃火器も出せるとばかり思ってたのに……束さん、手を抜いたな」

 

「……一夏さんに銃火器のイメージが無かっただけじゃないですか?」

 

「う~ん、そうなのかな……まぁ確かに俺は刀剣類の方が得意ですが、別に銃火器だって使わない訳じゃ無いんだけどなぁ」

 

 

一夏さんの実技の成績は……まぁ言うまでも無くぶっちぎりの1番なのですが、普通は近距離戦が得意だと遠距離武器が苦手ってパターンなのだが、一夏さんはどちらも見劣りしないくらいの好成績を収めている……同じタイプのデュノアさんが霞んで見えるくらいの成績なのだ。

 

「遠距離攻撃の手段が黒雷だけだとさすがに戦いにくいよな……」

 

「一夏さん、戦う事前提で話してますけど、なるべくなら戦わない方が良いんですよ?」

 

「それはこっちの都合ですからね。向こうが襲ってきたら如何しようも無いですよ」

 

「確かに……」

 

 

此方の都合だけで済むのなら、襲われる心配などする必要が無い。簡単な事なのに何故私はそんな事を忘れていたのでしょうか……

 

「まぁ、今の模擬戦で使い方は理解した。後は如何使うかだな……」

 

「……本当に末恐ろしい人ですね」

 

「ん?」

 

 

小声でつぶやいた私に、一夏さんは聞こえて無いフリをしてくれた……一夏さんの耳なら聞こえて無いはず無いですよね。

 

「とりあえず、もう1戦と行きましょうか」

 

「えっ!?」

 

「シールドエネルギー、減って無いですよね?」

 

「まぁ……」

 

 

攻撃を当てられた訳でも無いですし、私の攻撃ではエネルギーを使う事も無いですしね……ですがそれとこれでは話が別なんですよ!

 

「一夏さんの相手は出来る事なら連続でしたく無いです……」

 

「今度はギブアップさせないくらい追い込もうと思ってたんですが……嫌ですか?」

 

「嫌です!」

 

 

一夏さんは笑いながらとんでもない事を言い放った。ギブアップする暇も与えないって、どれだけ本気なんですか……

 

「ま、虚さんが嫌だって言うのなら今回はこれで終わりで良いですよ」

 

「ふぅ~……」

 

「あ、そうだ虚さん」

 

「何です?……!?」

 

「これはお礼です」

 

「なっ……」

 

 

顔を上げた途端に一夏さんにキスされた……油断した隙に思いっきり接近されていて、それでいてその隙を見逃さずに攻撃してくる……まさか2回も負けるとは思って無かった……そもそも連戦するつもりが無かったので2回も負けるとは思うはずも無かったのだが。

 

「油断大敵ですよ」

 

「一夏さん!!」

 

「まぁ、俺の前でくらいは虚さんは気を抜いても良いですがね」

 

「え?」

 

「皆のお姉さん、疲れるでしょ?」

 

「ま、まぁ……」

 

「休める相手なら休んでください。それだけで随分と違うはずですから」

 

 

その理屈で行くと、一夏さんが気を抜ける相手って誰なのだろう……お嬢様や本音の相手をしてる時?それとも簪お嬢様?

 

「またしちゃいますよ?」

 

「!?」

 

「何考えてるのかは分かりませんが、そんなに難しい顔しないほうが良いですよ」

 

「……もう///」

 

 

誰の所為で難しい顔をしてると思ってるのかしら……でも、一夏さん相手なら少しは私も楽して良いのかしら。

 

「一夏さん」

 

「何です?」

 

「2人きりの時だけで良いので、敬語も敬称吐けるのも止めてくれません?」

 

「……録音しないなら良いですよ」

 

「そこまで警戒しなくてもしませんよ」

 

「そうですか……なら良いよ」

 

「約束破ったらその都度キスしますからね」

 

「……虚が耐えられるなら、それでも構わない」

 

「ッ!///」

 

 

一夏さんに虚って……呼び捨てにされた!これまでお嬢様や碧さんは呼び捨てにされてきてましたが、私には常に敬語、敬称を付けて呼んでいたのでこれは凄い衝撃です。

 

「さてと、虚が嫌だって言うなら仕方ないな。今日はこれで終わりだ」

 

「えっと!」

 

「ん?」

 

「……一夏がしたいなら、もう1回くらい良いよ?」

 

「何だか簪みたいな話し方になってる」

 

「変……かな?」

 

「いや、可愛いよ」

 

「もう///」

 

 

人前ではこんな話し方出来ないけど、一夏と2人きりなら何とか出来る……でも、なれるまでには相当な時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃんの相手をしようと早めに寝たのに、結局起きたのは何時もの時間……虚さんの気配が無いって事は、お兄ちゃんの相手は虚さんがしてるって事なんだろうな。あの人もああ見えて抜け目無いから。

 

「それじゃあ私は何時も通りに……ッ!」

 

「ま、マドカ……」

 

「ね、姉さん……おはよ」

 

「あ、ああおはよう」

 

 

廊下に出たらバッタリと姉さんと鉢合わせになった……お兄ちゃんが言ってたが、姉さんもこの時間に身体を動かす事があるらしいのだが、何故今日に限ってバッチリ時間まで合ってしまうのだろうか。

 

「マドカも走るのか?」

 

「う、うん……」

 

「そうか……」

 

 

会話が続かない……お兄ちゃんが居れば違うのだろうが、生憎お兄ちゃんはこの場に居ない。姉さんと2人きりはさすがにまだ気まずい……それは姉さんも同じ思いだろうな。

 

「あ、あのな!」

 

「な、何?」

 

「もし良かったらなんだが……」

 

「うん」

 

「そのだな……」

 

「うん……」

 

 

何を言いたいのかは大体分かった……でも私から言い出せる訳も無く、また姉さんも踏ん切りがつかないようで、本題へ入ったのは似たようなやり取りを10回以上繰り返した後だった。

 

「マドカも一緒に走らないか?」

 

「う、うん……良いよ」

 

「そうか!」

 

「じゃあ行こ?」

 

「ああ!」

 

 

姉さんが凄く嬉しそうな顔をしている……多分私も似たような顔をしているのだろうな。だって私と姉さんは見た目も中身もそっくりだから。

 

「一夏も走ってるのか?」

 

「いや、お兄ちゃんは今日はアリーナで身体動かしてると思う」

 

「アリーナで?……1人か?」

 

「いや、多分虚さんが一緒」

 

「布仏姉が?」

 

「うん、ベッドに居なかったし」

 

「そうか……」

 

 

姉さんは一瞬怖い顔をしたが、それ以降はいたって普通の顔だったので、あの顔は私の見間違いだと決め付けた……そうじゃないと怖いから。

 

「よし、競争するか!」

 

「競争?」

 

「負けた方がジュース奢りだ」

 

「良いの?教師が賭け事なんて」

 

「姉妹のちょっとしたお遊びだ、学園も取り締まるまい」

 

「なら、本気で行くよ!」

 

「私だって小娘に負けるほど落ちぶれて無いからな」

 

 

こんな軽口を叩けるなんて思っても無かった……お兄ちゃんに間を取り持ってもらわなかったら、今でも私は姉さんを憎んでただろう。完全に信じた訳では無いが、前みたいに全否定をする事も無くなったのだ。

 

「合図は?」

 

「この枝を投げ、地面に着いたらスタートだ」

 

「分かった」

 

 

姉さんが木の枝を空高く投げ、私は構える……負けるつもりは無いけど、勝てる見込みも無いのだ。

 

「「ッ!」」

 

 

枝が落ちた……それを合図に私と姉さんは同時にスタートを切る。初速では負けてないと思えたが、スピードが乗るにつれて離されていく……世界最強と称される姉さんは、IS無しでもハンパ無いのだった。

 

「何だ、もう諦めたのか?」

 

「まさか、まだまだこれからだよ!」

 

「ふ、その意気だ」

 

 

校舎周りを1周するのだ、いくら姉さんが規格外だからと言って、1周全てを全速力で走れる訳無いのだ。ならば私はスピードを落とさない走りをすれば良い。全速力はしなくとも、平均で勝てばきっと勝てるはず……

 

「何か狙ってるようだから言っておくが、私は校舎周り1周くらい全速力で走り抜ける事が出来るからな」

 

「嘘!?」

 

「まぁ、一夏には勝てないがな」

 

「どれだけ規格外なのよ、私の姉と兄は!」

 

 

私も結構規格外だと言われる事はあった。でもそれはあくまでも普通の人から見たらで、私から見れば姉さんとお兄ちゃんが規格外で、私は凡庸なのだ……でも、凡庸は凡庸なりに頑張るんだから!

 

「おっ?」

 

「姉さんが全速力で走り続けるなら、私はその上を行く!」

 

「ほう、マドカもなかなかのスピードを出せるじゃないか」

 

「そうやって油断してれば良い。最後には私が勝つから!」

 

「マドカの心意気は買ってやろう。だが、何時私が全速力だと言った?」

 

「え、だって全速力で走り続けられるって……」

 

「確かに言った。だが、今が全速力だとは一言も言ってないぞ?」

 

「ぁ、あぁ……」

 

 

今分かった……この人は完全に規格外なのだ。頭では分かっていても、心の何処かで信じてなかったのだろう……だって実の姉が人知を超えた存在だなんて、そう簡単に信じられる訳が無いのだ。

 

「マドカ、お前はまだまだ強くなれるぞ!」

 

「……うん!」

 

「だが、勝ちは譲らんがな」

 

 

そう言って姉さんは目にも見えない速さで駆け抜けて行った……アレが姉さんの全速力なのだろうな。

 

「勝てないな……姉さんにも、お兄ちゃんにも」

 

 

お兄ちゃんとは勝負した事無いけど、姉さんでも勝てないって事は普段から私のスピードに合わせて走ってるって事だろうからね……いつか姉さんに勝てるようになるのかな、なれるのだろうかな。

 

「でも今は……とりあえず完走!」

 

 

勝ちが無くなったからと言って、走り終えなければ勝負が終わらない……負けだと分かっててもとりあえずは走り終えなければ。そうじゃなければ今の姉さんとの差が分からないから。

 

「私は、私の出せる最高のスピードで走り抜ける!」

 

 

追いつける、とは思って無いけど、出来るだけ差を詰めておきたいのだ。目標は高すぎると目標にはならないから……高いと分かってても、出来る事なら低くしておきたい。

 

「姉さんの上にお兄ちゃんが居る。今は無理でも、何時かはお兄ちゃんと並んで走りたい」

 

 

私のスピードに合わせるのではなく、お兄ちゃんのスピードに合わせて並んで走ってみたい。それが今の私の夢だ。

 

「……ゴール!」

 

「もっと遅れて帰ってくるかと思ったが、2分離せなかったか」

 

「私だって、何時か追いつくんだから!」

 

「なら、私はもっと先に行く。一夏に置いていかれないようにな」

 

「姉さん、今度また一緒に走ろうね」

 

「当たり前だろ。妹と一緒に走れるなら、私は何時だって歓迎だ」

 

「ありがと、姉さん」

 

 

あれ?良く考えてみれば、『姉さん』って詰まらずに言えるようになってる。朝、部屋の前で会った時点ではまだ詰まってたはずだから、この勝負の間に何か私の中で変わったのだろうな……まったくの無自覚だけど。

 

「さて、この後はゆっくりと走ろうか」

 

「姉さんはゆっくりしてれば良いよ。その間に私はもっと速くなるから!」

 

「楽しみだな」

 

 

姉さんは本当に楽しそうに目を細めて笑った。お兄ちゃんもだけど、姉さんも私を慈しむような笑みを浮かべてくれる……姉さんは本当に私の事も愛してくれてるのだろうな。

 

「(もっと早く姉さんと話しておけば良かった……そうすればあんなに憎む事も無かったかも知れないのに)」

 

 

再会して1月足らず、その間ずっと憎み、そして睨んでいた時間がもったいないと思えてくるくらいに、私は姉さんの事を信じても良いと思えるようになったのだろう。

 

「(お兄ちゃんと一緒に居られなかったのは嫌だったけど、それは姉さんだけの所為では無かったんだよね……本当の元凶はあの屑親共)」

 

 

姉さんに恐怖を覚え、お兄ちゃんと私を連れて逃げようとした駄目親……結局捨てるなら最初から姉さんと一緒に捨ててくれれば良かったのに……そうすれば別の生活が出来てたんだから。亡国企業に拾われる事も、姉さんを憎む事も、そしてお兄ちゃんと離れ離れになる事も無かったのに……過ぎた事を怨んでも仕方ないが、今だけはあの両親が憎かった。

 

「(何処で何してるのか知らないけど、見つけたら1発本気で殴ってやるんだから)」

 

 

所在も探してないのでもう会う事も無いだろう両親に、私は想像の中で1発お見舞いしてやった。それだけでちょっとスッキリしたような気になったのだった。




何時かマドカが千冬の事を『お姉ちゃん』と呼べる日が来るのだろうか……それともまた亀裂が入るのか……
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