俺は旅行から帰ってきた次の日にISが動かせる事を認めた。
別にこのままIS学園入学まで黙っていても良かったのだが、あまりにもしつこいので、全て話す代わりにこれ以上付きまとわないと言う条件付きで発表する事にしたのだ。
俺は指定された場所、市民ホールに向かっている。
こんなもの、昔はなかったのに・・・。
俺はまったく縁のなかったこの建物は税金の無駄遣いだと思っている。
「(何故そう思うのですか?)」
須佐之男の質問に俺は答えることにした。
そもそもこんな物を建てる必要があったのか?
こんな建物がなくても生活するのには困らない。
確か市長が変わってから造られたんだっけか。
もしかしたら建築業者との癒着でもあるのかもな。
「(そんなドラマみたいな事があるのですね~。)」
あくまで俺の想像だ。
証拠はないし、そもそもそんな事が実際にあるとも思ってない。
だがしかし、この建物を実際に使っているのなんて俺の知っている限りだがなかった様な・・・。
本当に何のために建てたんだ?
「(もしかしたら一夏様の想像通りなのでは?)」
イントネーションこそ疑問系だが、随分と楽しそうだな、須差之男よ・・・。
ひょっとして俺の妄想を真に受けてそれが事実であって欲しいなんて思ってないだろうな?
「(そ、そんな事は無いですよ~。嫌ですね~一夏様ったら。あはははは・・・。)」
・・・思ってたな。
まったく、そんなのはドラマの中だけだろうが。
俺は俺の妄想で須佐之男が盛り上がってるのが恥ずかしくなり、須差之男にツッコミを入れてこの話題を終わらせた。
「それではこれより、織斑一夏さんに対する質問会見を始めたいと思います。」
司会の人が会見開始の合図となる一言を放った。
なんでこんなに大層にしたがるのだ?
「(それは一夏様が世界で唯一男性でISを扱えるからですよ。)」
・・・確かにISは扱えるが、俺に反応するISはお前だけなんだが。
「(そんなことは関係無いんですよ。ISが扱える、この事実だけで十分に世間が騒ぐ原因になりますよ。)」
・・・世間と言うかマスコミが、だと思うがな。
「(そこは否定できませんね。ですがどちらにしても一夏様に対して不特定多数の人間が興味を持っていることには変わりませんし、本来女性しか扱えないISを男性が扱えるのは世間には興味深い出来事ですからね。もしかしたら他にも扱える男性が現れるかも知れないって、別の興味も湧くかもしれませんし。)」
・・・俺は別に娯楽を提供するために事実を発表する訳では無いのだがな。
しかし、世間はそんな事思うほど暇なのか・・・。
俺はワイドショーなど一切見ないので世間がどういったものに興味を持ち、どのような見解をするのかがさっぱり分からん。
「(そこが一夏様の良い所。世間の考えに流されず自分の考えをしっかりと持てている証拠ですよ。)」
・・・随分と恥ずかしい事を言ってくれるな。
だが、そんな風に思ってくれているのはありがたい。
俺は、お礼を言おうとしたが・・・
「(だから私はそんな一夏様の事が好きなんですよ。本当にカッコよくて、それでいてその事を自慢するでもなく、下手に謙遜もしない。そんな態度取られたら惚れるなって言う方が無理ですよねまったく。そもそも私が反応したのも・・・ブツブツ。)」
なにやらお取り込み中なので、放っておくことにしよう。
「では、質問のある方は挙手をお願いします。」
その言葉にほぼ全員の手が挙がる。
俺はいったいどれだけの質問に答えればいいんだ?
「では、そちらの方どうぞ。」
司会の人が指名し、指された人が起立する。
「ではまず、ISが扱えるのは本当なのですか?」
「とりあえず事実です。」
俺は説明が面倒くさいので扱えるという事実のみを答える。
・・・だってわざわざ説明してやる義理もないだろう。
「何時ごろから扱えるのですか?」
別の人からの質問・・・まったく芸の無いな。
「最初にISを扱ったのは、誘拐された時です。」
この一言に会場がざわめいた。
まさか其処まで前とは思わなかったのか。
「何故今まで黙っていたんですか?」
随分と気の強い人だな。
典型的な女尊男卑に染まりきった女性だ。
「別に黙っていた訳ではなく、発表する事でもないと思っていただけです。」
「何ですか、それは?私達を馬鹿にしているのですか?男の貴方が私達女性を馬鹿にするなんて・・・。」
「別に馬鹿になんてしませんよ。そもそもが初対面の貴女を、なんで俺が馬鹿にするんですか?」
「そんなのは屁理屈です。」
「屁理屈も立派な理屈ですよ。そもそも、俺が今回こういやって発表しようと思ったのは、貴女方マスコミが必要以上に俺の周りを嗅ぎまわったからなんですよ。俺だけならまだしも、俺の周りの人間まで巻き込んで・・・それが申し訳ないから事実を話すことにしたんです。それにこの際だから言いますが、俺は女尊男卑なんて興味がありません。」
「何ですって!」
「良いですか、そもそも女性だから無条件に偉いわけでは無いんですし、男性だから無条件に卑屈になる必要も無いんです。確かに力のある立場の女性は近年増えてきていますが、それが全ての女性が力を持っていると勘違いして必要以上に偉ぶられても困るんですよ。」
「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」
俺に持論に会場が静まり返る。
もっと言ってやるか。
「其処の貴女、貴女は今の世界を創ったと言われている篠ノ之束博士を知っていますか?」
「当たり前です!」
「じゃあ俺の姉、織斑千冬は?」
「当然知っています!それが何だって言うんですか!」
だいぶ頭に血が上ってるな。
其処まで怒鳴らなくても聞こえてるって。
「(一夏様が煽ったのでしょ・・・まったく。)」
いつの間にか現実に復帰した須差之男にツッコまれる。
・・・此処まで簡単に煽れるなんて思ってなかったんだが。
「まずその2人ですが、今の女尊男卑の世の中を良しとは思ってません。」
俺の一言に先ほど以上にざわめく場内。
「篠ノ之束博士、言いにくいのでいつものように束さんと言わせてもらいますが、あの人は世間には興味がありません。そもそもが兵器として造られたわけではないISを使えるからと言って偉ぶって、力を手に入れた気になっている女性なんて興味がないとも言っていました。」
「それが事実と言う証拠でもあるの!」
もはやヒステリックを起こしてるな。
「なら、電話しましょうか?」
俺の一言に、今度は静まり返る場内。
これは面白いな。
「(遊んでいる場合ですか。)」
・・・分かってるって。
俺は束さんに電話し、スピーカーモードにする。
「もしもしいっくん、何かな~?」
「ちょっと聞きたいことがありまして。」
「何々~、何でも答えちゃうよ~。」
「束さん、今の世の中如何思います?」
俺の質問に周りが緊張しているのが解る。
「ん~と、おかしいよね。」
「如何おかしいと思います?」
俺は更なる質問をする。
「だって、IS使えるだけで偉ぶっちゃうゴミ虫ドモがわんさかいるんでしょ。しかも専用機持ってるわけでもないのに・・・ほんと馬鹿みたいだよね~。」
束さんの一言に衝撃を受ける女性陣、だから先に言っといたのに・・・。
俺の言う事信じないからこうなるんだよ。
「もしかしていっくん、今会見なんかやってる?」
「ええ、俺の言う事信じない人が多かったので束さん本人に言ってもらおうと思って。」
「いっくんの言う事信じない奴なんて死ねばいいのに。」
「言い過ぎですよ。今度家に来てください、お礼に束さんの好きなもの作りますよ。」
「ほんと~、やった~。それじゃあ今度行く時にまた電話するね~バイビ~。」
束さんとの電話が切れ、俺は再び話し始める。
「束さん本人に確認が取れたところで、今度は俺の姉。織斑千冬の考えですが・・・」
俺の声を聞きたくないのか、さっきまでヒステリックを起こしていた女性はうつむき耳を塞いでいる。
・・・耳を塞いだところで、現実が変わるわけではないのだがな。
「(誰もが一夏様みたいに強いわけではないのですよ。)」
・・・何時か簪にも言ったが俺は強くは無い。
俺はこの事だけは考えを変える気は無い。
「姉も今の世の中はおかしいと言ってます。本当に力のあるものが出世や重要な役職につくのは当然だが、力を持ったならそれに伴う責任をしっかりと果たせとも言ってました。」
「責任ですか・・・?」
別に女性が尋ねてくる。
この人は其処まで悪しき風習に染まってないのか。
「その力を弱者に振るうのではなく、弱者のために振るうべきだと言ってました。」
いくら普段が残念な姉でも力のあり方をしっているので世界大会で連覇できたのだろう。
「千冬姉も別段女性が無条件で偉いとは思ってません。むしろ何も根拠なく偉くなったつもりになっている女性達に苛立ちすら覚えてるそうです。」
今でも千冬姉は自分の立場に恥じないように努力している。
見えないところで努力してそれを自慢しない、それは理想な形であり俺達姉弟の現状だ。
それなのに、世の女性の大半は何の努力もなく強くなったつもりになっている。
この現状を作り出してしまったのは、束さんがISを発表し千冬姉がそれを使って無類の強さを見せた結果なのだろうと言って責任を感じているらしい・・・。
あの千冬姉が責任を感じるなんて、俺に対する行動からでは考えられない・・・。
「(千冬様は、一夏様に対してはぶっ飛んでますけど、他の場合ではしっかりしているではないですか。ドイツで教官をやったりIS学園で教師をしたりと、人に教える立場をしっかりとしていますし。)」
それは分かってるが、世間から尊敬されている
本性はただの変態残念ブラコンなのだから・・・。
「(普段の千冬様を知らない人に言ったら殺されますよ。)」
言ったところで信じないだろうがな・・・。
「他に聞きたい事はありませんか?ないなら帰りたいのですが。」
すでにやる気の無い俺はさっさと帰りたいのだ。
「では、貴方自身の考えを教えてください。」
「何に対しての俺の考えを知りたいのですか?」
「今の世の中に対してのです。」
俺の考えね・・・そんなの知りたいのか?
「(一夏様の考えは今もっとも注目されることですので、興味があるのでしょう。)」
・・・なるほどね、また話のネタか。
俺は貴方達を喜ばせるためにこの場を設けた訳ではないのだがな・・・まあいいか。
「俺の考えも2人とほぼ同じです。」
「ほぼ・・・ですか?」
あの女性記者は目敏いな、いや耳聡いと言うべきか?
「ええ、女性が社会に出て実力で出世しているのも事実ですからね。だから自分も偉くなった気になるのもなんとなく分かります。ですが行き過ぎた傲慢、また逆もですが行き過ぎた卑屈は見ていて気分が悪い。勝手に強くなったつもりの女性、勝手に弱くなった気になっている男性、どちらも反吐が出る。だから俺の発言を男性代表と取られたくない。目のかたきにされるのも、代表にしようとする今の世の中にはそういった意味で興味は無いです。」
一気にしゃべり俺は一息入れる。
「貴方はどちらの味方にもなる気は無い、と言うことですね。」
「ええ、今のところは何処にも尻尾を振るつもりは無いです。」
そもそも今俺には尻尾を振る相手がいない。
国籍がないので振ろうにも振れないと言った方が正しいのかもしれないが・・・。
「(更識姉妹や布仏姉妹に尻尾を振ってみたら如何ですか?思いっきり可愛がられると思いますよ。)」
・・・尻尾を振るの意味が違うだろ。
須佐之男のボケにツッコミを入れ、俺は立ち上がる。
「もうこれ以上は話すことは無いです、これで終わりにさせてもらいます。」
会見を打ち切り、更識の屋敷に戻る事にする。
無駄に疲れた俺を癒してくれるのはあの場所しかないからな・・・。
「お帰り~一夏君。」
「お帰りなさい、一夏さん。」
夏休みなので屋敷にいる刀奈さんと虚さんに迎えられる。
・・・ああ癒される。
「一夏、お帰り。」
「おりむ~おかえり~、テレビ見てたよ~。」
簪と本音も奥から出てきて俺を迎えてくれた。
「ただいま戻りました、刀奈さん、虚さん。ただいま、簪、本音。」
俺は迎えてくれた4人に返事をして部屋に戻った。
この会見のおかげで、俺の周りに集まっていたマスコミ達は激減した。
これで残りの中学校生活を過ごせるな・・・。
秋、束さんからの連絡が来たので、俺はお礼の食事を作ることにした。
「いっく~ん来たよ~~。」
珍しく玄関から入ってきた束さんを千冬姉のアイアンクローが迎える。
「の~~~~う、ちーちゃん、今日は束さんはお客様だよ~。だから離して~。」
「分かってるが、何か気に入らない。」
「ただの八つ当たりじゃないか~、束さん悪くないじゃ~ん。」
・・・あの2人は本当に仲が良いな。
「(何処がですか?攻撃する側とされる側にしか見えないのですが・・・。)」
あの2人は身体能力が人間レベルに無い。
だから戯れるのも相手を選ばなきゃいけない。
だから、千冬姉のアイアンクローを受けて笑顔でいられるのは束さんくらいだろう・・・そもそも俺はくらわないし、千冬姉も俺には攻撃してこない。
「いらっしゃい束さん、今日は沢山食べていってくださいね。」
「うん、いっくんの料理ならいくらでもたべられるよ~。」
「ふざけるな、一夏の料理を沢山食べるのは私だ!」
・・・友達が来ている時くらいは勘弁してやるか。
俺は千冬姉に殴りかかろうとしたが、束さんが来ているので何時もよりテンションが高い。
この事を束さんが指摘するとまた攻撃されていた。
今日一日くらいは平和に過ごしてくれよ・・・。
そして、あっという間に俺達は卒業する。
「もう俺達も卒業だぜ、早いな~。」
卒業式の前に弾が話しかけてきた。
「そうだな、だがよく卒業できたな、弾。お前は馬鹿だから中学で留年するかと思ってぞ。」
数馬が冷やかす。
・・・お前らまさか最後まで・・・
「あ?お前が言うな数馬。お前だって赤点ギリギリで補修だったじゃねえか。」
「うるせえ弾、お前だって高校入試ギリギリ合格じゃねえか。俺は普通に合格してぞ。これじゃあ、高校では確実に留年だな。」
「やるのか?」
「ああ、やってやる!」
・・・いい加減にしろ。
一人一発ずつ鉄拳制裁で沈め、俺は卒業式に向かう。
・・・殴られた二人は若干涙目だった。
式が終わり俺達は教室に戻った。
そこでも俺達は一緒に居た。
「一夏、お前はIS学園に行くんだろ?うらやましいぜ。」
「確かに女の園だもんな。」
「別にいいものでも無いだろう。女子高という事はトイレや更衣室が無いだろうからな。」
「なんでお前はそう冷静なんだよ。」
「まったくだ。」
・・・別に何人の女子が居ようが俺にはあの4人だけだからな。
「あの、織斑君。」
ん?誰だ。
見るとクラスメイトの女子数人がカメラを持ってこっちに来た。
「一緒に写真撮ってくれますか?」
写真くらいなら別にいいが、俺だけか?弾や数馬は?
「いいぞ、でも誰が撮るんだ?」
「え、五反田や御手洗がいるじゃん。」
他の女子の回答にへこむ弾と数馬・・・。
だからがっつくなよ。
「はいはい撮りますよ、撮ればいいんだろ。」
ついに不貞腐れたか。
とりあえず女子数人と一緒に写真を撮り、帰ることにした。
「それじゃあな、お前らは同じ高校だからいいが、たまには俺も誘えよ?」
「当たり前だろ、お前が居ないとこいつと二人きりだからな。」
「それはこっちの台詞だぞ弾、お前と二人きりなんてゴメンだぜ。」
最後まで俺達らしい会話だ。
色々在った中学時代だったが、楽しかったな。
「(これからも色々ありますよ。)」
分かってるさ、これからもよろしくな須佐之男。
「(はい。これからもよろしくお願いします、一夏様。)」
俺達は別れそれぞれの家に帰る。
何時も通りだが、これからはこの3人で帰ることもないだろう。
俺は心の中で呟く。
じゃあな親友、また会おう。
断固として認めなかったが、あいつらは俺の親友だ。
最後くらいはいいだろう、恥ずかしいがな。
少し感傷的になってしまった。
これも、卒業といった一区切りから来るものなんだろうな。
俺はそんな事を思いながら、更識の屋敷に戻る。
簪と本音も今日が卒業式だからな。
刀奈さんは卒業パーティーをすると張り切っていたから、今日は疲れるな。
これからも俺は4人と一緒に生活するのだ。
学年が変わり、環境が変わってもこれだけは変わらないだろうし、変えるつもりも無い。
俺は感傷的な気持ちを断ち切り前向きに考え直す。
いくら環境が変わっても、関係は変わらないのだ。
これからも弾や数馬とは、悪友であり親友なのだろうから。
そして帰宅途中で会った簪と本音と共に屋敷に着いた。
刀奈さんが迎えてくれ、いきなりパーティーになった。
本当にこの時間だけはなくしたくは無い。
そう思い俺は4人に抱きつきキスをした。
いきなりで戸惑っっていたが、4人ともよろこんでくれた。
これからもよろしくお願いします、刀奈さん、虚さん。
そして今度からは同じ学校だな、簪、本音。
IS学園に入れば必然的に同じ時間を過ごす事が多くなるだろう。
これからの生活を思い描きながら、俺はパーティーを楽しんだ。
余談だが楽しみすぎて疲れた本音と刀奈さんは寝てしまい部屋まで俺が運ぶ事になり、翌日顔を赤らめてお礼を言いにきたのだ。
そして虚さんに怒られたのも言うまでもない事だ。
次回IS学園入学、ようやく原作に入ります。
お楽しみに。
p.s.
黄昏WZRD様
ミス指摘感謝です。
むしろ一夏爆発しろ!!
ラインバレル様
むしろ気を失ってしまうかもしれません。
今度書いてみようかな・・・
闇を統べし赤龍帝様
前にも書きましたが束はこのままでいきます。
ですが原作以上に一夏との交流機会はあります。
伊丹様
誤字脱字指摘感謝です。
なんとか今日中に仕上げましたがまた誤字があるかも知れません。
その時はまた報告よろしくお願いします。
ウィング00カスタム様
まさか須佐之男に反応する人が出てくるとは・・・。
あくまで準ヒロインポジションですが、これからさらに活躍させますのでお楽しみに。
鍛冶様
簪は髪留め、虚と本音はネックレス、楯無は指輪で一夏は腕時計の形の設定です。
書くタイミングがなかったので急遽決めました。
いつの間にか20話ですね、なんだかあっという間でした。
これからも下手糞ながら頑張っていきますので、よろしくお願いします。