もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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新しい作品に合わせて、書き方を変えてみました。


ゲーム王者簪

 一夏君が帰って来ないので、私たちは誰も止める人無くゲームをし続けた。私は見てるだけの事が多かったけど、確かに一夏君が言う通り目が疲れてきた。これはぶっ続けでやってる更識さんは相当目にきてるだろうな……

 普段眼鏡をしてる更識さんだけど、あれはISを動かす時の補助みたいなものらしく、普段はかけなくても十分生活出来る視力は持ち合わせているようだ。

 そのお姉さんの更識先輩も、一夏君が先生たちを送っていく為に部屋を出て行ってから今まで、ほぼゲームをし続けている。もし今一夏君が帰ってきたら、間違い無く怒られるのはこの2人だろうな。

 

「また負けた~!」

 

「もうちょっとだったのに~!」

 

「悔しいです!」

 

「でも、私も危なかったよ?」

 

 

 またしても更識さんに負けた3人が悔しさを露わにしてるのに対して、更識さんは危なげ無いような顔でそんな事を言った。

 普段の冷静さからは考えにくいほど熱中してるのに、表情は普段通りなので一見すると楽しんでないのかと誤解しそうだ。

 

「危ないって何時も言ってるけど、結局簪ちゃんには勝てないのよ」

 

「かんちゃんの危ないはあてにならないからね~」

 

「加減してくれてるのでしょうが、私や本音様では歯がたちませんよ」

 

「それじゃあ次はマドカと虚さんが入って」

 

 

 更識さんの独壇場となりつつあるこの場で、更識さんに逆らおうとする人は誰も居ませんでした。逆らうどころかむしろ嬉々として参戦しているようにも見えるのですが、数分後にはその表情は悔しさに歪んでる事でしょう……それだけ更識さんはゲーム上手なのです。

 

「鷹月さんは次に参戦してもらうから」

 

「え……分かった」

 

 

 はっきり言うと、私はあまりゲームとかが得意では無く、むしろ見ているだけで疲れてくるタイプの人間なのだ。その私が参戦下からと言って、更識さんに勝てる可能性は、万に一つも無いだろう……その事を分かっていて参加しろと言ってるなら、更識さんはゲーム中は普段と性格が違うのだろう。

 そんな事を考えながらゲームを眺めていると、徐々に更識さんが優勢になっていってるのがなんとなく分かる。画面からプレイヤーに視線を移すと、やはり更識さん以外のプレイヤーは少し表情が硬くなってきていた。つまりは余裕が無くなって来たのだろう。

 

「かんちゃんが勝つね」

 

「これは我々では歯がたたないのは確定ですよ……」

 

「だってかんちゃんはこう言ったゲーム得意だもん」

 

「遊びなのですから少しは負けようと思っても良いと思うんですがね」

 

「遊びにも全力を出すのが当然なのだ~!」

 

 

 布仏さんと須佐乃男の会話を聞きながら、どちらの言い分ももっともだと思った。ぶっ続けで参戦してるよりも、少しは休んだ方が良いと思うし、だからと言ってワザと負けるのは相手に失礼だから常に全力で相手するのは良い事だとも思う。だけどどちらの言い分も正しいからと言って、この場に一夏君が居たら絶対に怒るのは間違い無いだろう。

 一夏君は少し休憩を入れるように言っているらしいし、そもそもゲーム自体にあまり前向きでは無いようだったので、今のこの状況は一夏君にとって果して耐えられるのか如何か定かでは無いのだから……

 

「あっ、また負けた……」

 

「惜しかったですね」

 

「私と虚さんは早々に負けちゃってたんで」

 

「お姉ちゃんも強くなったね」

 

「くやしー!」

 

 

 妹に上から目線で物を言われ悔しがる姉……その構図がはっきりと見られた。更識先輩だって決してゲームが下手では無いのだろうが、それ以上に更識さんが上手なのだ。

 この2人が対戦してからどれだけ回数を重ねてきたのだろうか。今日だけで見ても相当な数対戦してるのだが、2人のやり取りから推察するに、更識さんの全勝なんだろうな。

 

「簪お嬢様、そろそろ止めませんか?」

 

「さすがに疲れたよ」

 

「え、まだまだ出来るけど?」

 

「私だって簪ちゃんに負けたままでは終われないもん!」

 

「かんちゃんも楯無様も元気だね~」

 

「私もさすがに限界が近いのですが……」

 

 

 更識姉妹以外は限界が近いらしく、全員が参戦したがらなくなった。2人で対決するのを見てるだけでも良いのだが、その2人の視線は私に突き刺さっている……つまり私も参加しろって事なのだろう。

 だけど此処まで4人対戦だったのに3人だとちょっと物足りないような気もしてるのだが、だからと言ってヘロヘロの他のメンバーに参加しろとは、私の口からはちょっと言い辛いのだ。

 

「誰かもう1人やらないの?」

 

「だってかんちゃんには勝てないし、さすがにちょっと休憩なのだ~」

 

「私も遠慮させてもらいたいです」

 

「お嬢様にも勝てませんし、ましてや簪お嬢様にはもっと勝てませんので」

 

「私は応援してるよ~」

 

 

 全員が拒否の姿勢を示すと、更識姉妹は揃ってため息を吐いた……普段あまり似てない姉妹だと思っていたが、変なところがそっくりだったのに驚いた。一夏君も織斑先生や織斑さんとはあまり似てないけど、変なところが似てるのかな?

 

「仕方ないねお姉ちゃん、3人でやろうか」

 

「私は簪ちゃんが居ればそれで良いよ」

 

「絶対に負けないからね」

 

「それはこっちのセリフだよ!」

 

「……私は蚊帳の外なんだ」

 

 

 数合わせにしか思われてないのだろうか、更識姉妹の眼中に私の存在は無いらしい……確かにあまりまともな勝負にはならないだろうが、ちょっとくらい意識してくれても良いと思うんだけど。

 そんな事を思いながら画面に目を移すと、もう既に開始直前だった……完全に私の事は無視されていたのだろうか、私のタイミングは考慮されてない様子だった。

 

「鷹月さん、頑張ってくださいね」

 

「応援してるよ~」

 

「せめて喰らいついてください!」

 

「頑張れ~」

 

 

 後ろからまったく気持ちが入っていないように感じられる応援を受け、私は必死に更識姉妹に挑む……ISだけでは無くゲームでもこれほど差があるとは思って無かったので、ちょっと本気でへこみかけた。

 

「あれ? 4人目が居る……」

 

 

 よくよく画面を見ると、私と更識姉妹のほかに誰かが参加していた。だけど私の後ろにはこの部屋に居る全員がやる気の無い応援をしてるし……おかしいと思い出したらそっちばかり気になってしまい、私はあっさりと負けた。だが負けたけど別に当然の結果なので悔しがる事はしなくて良いと思えた。

 それよりも気になるのは謎の4人目だ……CPUでは無いとすると、誰か人間が動かしてるのだろうが、この部屋にもう1人居たっけ?

 

「行け~! おりむ~!」

 

「一夏様、そこです!」

 

「簪が押されてる、さすがお兄ちゃん!」

 

「一夏さん、これで終わらせてください!」

 

「あっ、なるほど……」

 

 

 私の応援に力が入ってなかった事も、私に気付かれる事無くこの部屋に入ってきたのも、一夏君がやったのなら納得が行く。この部屋の住人であり学園で1番気配を殺すのが上手な一夏君ならこれくらい出来て当然だろう。

 それにしても一夏君、ゲーム嫌いって聞いてたけど上手なんだ……さっきまで余裕の表情しか浮かべてなかった更識さんもさすがに余裕が無くなってるみたいで、顔つきが更に真剣になっているし、更識先輩も妹だけを相手にしてれば良い状況では無くなってしまったのでかなり必死になっている。それくらい一夏君はこの姉妹にプレッシャーを与えているのだろう。

 

「危なっ!」

 

「さすが一夏君。でも負けないわよ!」

 

「俺としてはさっさと終わらせてお説教と行きたいんですがね」

 

「「ま、ますます負けられない」」

 

 

 お説教と言う単語が出てきて、更識姉妹の表情は更に引き締まった。勝つにしろ負けるにしろ怒られるのなら、せめて勝ちたいのだろう。普段の生活で一夏君に勝てるチャンスなど滅多に無いのだから尚更か。

 その後も白熱した勝負が繰り広げられてたが、徐々に一夏君が優勢になってきた。更識さんが負けそうなのを見て、後ろの4人は更に応援に力が入っていた。

 

「行けーお兄ちゃん!」

 

「おりむ~頑張れ~!」

 

「一夏様、早いとこ勝っちゃってください!」

 

「一夏さん、お嬢様と簪お嬢様を止められるのは一夏さんだけです!」

 

 

 確かに普段でもゲームでもこの2人を止められるのは一夏君しか居なさそうだな……布仏先輩の応援が他の3人の応援よりも力が入ってる感じがしたのに、私は妙な納得をしてしまった。だって布仏先輩だけがさっきから休憩を申し出ていたから……

 

「ああぁ!」

 

 

 悲痛な声を上げ更識先輩がコントローラーを床に落とす……画面を見れば更識先輩が負けたのが分かった。これで残るは一夏君と更識さんだけになったのだ。

 

「私は一夏に勝つ!」

 

「その意気込みは買うが、ぶっ続けでゲームしてたのは関心しないな」

 

「だって一夏が居ないから思いっきりゲーム出来たんだもん!」

 

「だからって休憩無しにしてたら、本当に眼鏡が必要になるかもなんだぞ?」

 

「元からかけてるから違和感無いと思うよ」

 

「違和感が無ければ良いって問題じゃ無い!」

 

「ッ!?」

 

 

 言葉に力が入ったのと同時に、一夏君が決めにかかった。元々ゲームが好きでは無い一夏君だからなのか、さっさと終わらせようと言う気概が見て取れた。

 それにつられてなのかは分からないが、更識さんの動きもさっきまでとは違い、完全に本気になったようだった。

 

「簪ちゃんが本気になってる……」

 

「それだけ余裕がなくなってるって事でしょうね」

 

「おりむ~の力に引っ張られただけだと思うけどね~」

 

「それでも簪様が本気になってるのは確かです」

 

「やっぱお兄ちゃんは凄いな~」

 

「感想そこなんだ……」

 

 

 織斑さんのブラコンには呆れたが、他のメンバーが言った通り更識さんの全力を一夏君は引き出したのだろう。全力を出したからには、更識さんとしては負けられないのだろうが、更識さんの全力をもってしても一夏君の優位は揺るがない……現実だけでは無くゲームでも一夏君は強かったのだ。

 

「これで終わりだな」

 

「まだ終わりじゃ無いもん!」

 

 

 一夏君が決めにかかった攻撃を、更識さんが超反応で回避する。決めに行ったが為に大振りになった一夏君は、この戦闘でまったく見せなかった隙を見せる形になった。もちろんそれを更識さんが見逃す訳無く、今度は更識さんが決めにかかった。

 

「これで私の勝ちだ~!」

 

「……掛かったな」

 

「えっ!」

 

 

 隙だらけに見えた一夏君だったが、それはワザと。更識さんが決めにかかって来るのを待っていたのだ。決めに行った更識さんに、一夏君の仕掛けた罠から逃れる術は無く、一夏君の止めの一撃にあえなく沈んだ……

 更識さんが負けたのを見れたのは何となく嬉しかったけど、それ以上に現実でも虚実でも一夏君に力の差を見せ付けられた形になった気分になった。

 

「さて、終わったから全員今から説教タイムだ」

 

「でも一夏君、そろそろ夕ご飯の支度とかしなきゃいけないし……」

 

「部屋も片付けないと……」

 

「手分けしなければ間に合いませんよ?」

 

「お兄ちゃんが全力を出してもねぇ……」

 

「消灯時間を過ぎちゃうのだ~」

 

「……私は大人しく怒られます」

 

 

 布仏先輩のみが、無駄な悪あがきをせずに一夏君の前に正座した。この中で1番怒られなくても良い人が覚悟を決めてるのに、他のメンバーは未だに言い訳を言い連ねているのだから一夏君の機嫌はますます傾いていく。

 私はと言うと、特に言い訳が思いつく訳でもなく、布仏先輩のように覚悟を決めるでもなく、ただただ立ち尽くしていた。

 

「安心しろ。夕飯の支度は終わってるし、寮長不在の為消灯時間を過ぎてもそこまで酷い事にはならないから」

 

「い、何時の間に……」

 

「まったく気付かなかった……」

 

「おりむ~の早業にはビックリだよ~」

 

「でも、お兄ちゃんなら何でもありかな」

 

「一夏様ですものね」

 

 

 確かにキッチンからは美味しそうな匂いが漂ってきている。何時の間にかは分からないのだが、一夏君が夕ご飯の支度を終わらせているのは確かなようだった。

 この匂いにさすがのメンバーも言い訳をするのを止めて正座し始めた……これって私もした方が良いのだろうか?

 

「静寂は帰っても良いぞ」

 

「え、でも……」

 

「大半は見てるだけみたいだったからな」

 

「何処で見てたのよ!?」

 

 

 一夏君の発言に、更識先輩が驚きの声を上げる。声を上げたのは更識先輩だけだったが、他のメンバーも同じように驚いた顔をしている。見られていた当事者である私も、何処から見られていたのかまったく検討がつかないのだが、一夏君なら何でもありかなって思えてきた。

 

「部屋の気配を常に見張っていただけですが」

 

「でも職員寮から学生寮まで結構距離があるけど……」

 

「私も一夏様の気配を掴むのがやっとで、何をしてるのかまでは掴めなかったんですが」

 

「おりむ~はそれが出来たの!?」

 

「一夏の常識外れの能力を忘れてたよ……」

 

「お兄ちゃんはやっぱり凄いんだね!」

 

「マドカさん、そこは喜ぶところでは無いと思うんですが……」

 

 

 一夏君の監視は、何もその場に居なくても大丈夫なようで、見張られていた全員が素直に驚き、そして諦めた。

 そんな中一夏君は布仏先輩を立たせ、私を部屋まで送るように指示した。その事に驚いた全員だったが、布仏先輩はこの中で唯一途中休憩をさせようとしてたので、その事が考慮されたのだろう。

 

「それじゃあ一夏君、また明日」

 

「また明日」

 

 

 一夏君に挨拶をして私は一夏君たちの部屋から自分の部屋に戻る……部屋から出て行く時に縋りつくような視線を感じた気がしたが、私には如何しようも無いので気付かないフリをする事にした……だって助けようとすれば私も一夏君に怒られる事になりそうだったから。

 部屋から出てすぐに、中からもの凄いプレッシャーを感じた。一緒に外に出た布仏先輩も同じように感じたようで、身体が震えている。

 

「行きましょうか……」

 

「そ、そうですね……」

 

 

 別に私たちが怒られてる訳でも無いのに、何故だか反省しなければいけない気持ちになってきたのは、少なからず怒られているメンバーと同罪だからなのかもしれない……一緒になって遊んでたのは紛れも無い事実なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏君の前に全員で正座して、お説教を受けている……虚ちゃんは鷹月さんを部屋まで送っている為にこの場には居ないけど、後で少なからず怒られるだろう。だけど私たちに比べたらきっと楽なお説教になるのは間違い無いと断言出来る。だって虚ちゃんはそこまでゲームに夢中になってた訳でも、休憩をする事を拒否してた訳でも無いのだから。

 

「おりむ~、お腹空いたよ~」

 

「この良い匂いの中でのお説教は拷問です」

 

「お兄ちゃんのご飯食べた~い!」

 

「一夏、空腹を満たしたら怒られるから、今はご飯にしよ?」

 

 

 確かに良い匂いが充満してるこの場所でお説教されても、そっちに意識が行ってしまう為に耳に入ってこないのだ。

 一夏君はその事を気にしてなかったようで、訴えが上がるまでお説教を続けていたのだ。一夏君はお腹空いてないのかな……

 

「これだけお菓子を食べて、まだ腹が減ってるのか……」

 

「お菓子は別腹だからね~」

 

「育ち盛りを甘く見ない方が良いですよ」

 

「お兄ちゃんのご飯ならいくらでも食べられるもん!」

 

「……虚さんが帰ってきたらご飯にするから、それまでは大人しく怒られてろ」

 

 

 一夏君もせっかく作ったご飯を無駄にはしたく無いようで、お説教の時間を短くしてくれる事になった。それでも虚ちゃんが戻ってくるまではお説教を受けなければいけないのだが、それでも短くなったのには変わりないので少しは気分が晴れた。

 私には一夏君や須佐乃男のように誰かの気配を感じ取る事は出来ないけど、今だけは虚ちゃんの気配を目一杯探す事にした……だって出来るだけ早くに帰って来てほしいから。

 

「一夏」

 

「何だ?」

 

 

 お説教が一区切りついたのを見計らって簪ちゃんが一夏君に話しかける。一夏君も鬼では無いので簪ちゃんを無視する事はしなかった。

 

「一夏ってゲーム嫌いなんでしょ?」

 

「好きでは無いな」

 

「じゃあ何であそこまで強いの?」

 

「何となく動かしてるだけだが」

 

「それであの強さ……」

 

「おりむ~はやっぱり普通じゃ無いんだね~」

 

「まぁ、一夏様ですし……」

 

「お兄ちゃんだもんね~」

 

 

 一夏君の規格外の凄さに、それぞれがそれぞれの感想を言い合う……その中で今一つ納得行ってないような顔で一夏君が腕を組んだ。

 

「如何かしたの?」

 

「いえ、何か釈然としないんですが……」

 

 

 自分が規格外なのを認めている一夏君だが、それぞれに言われたい放題の状況が微妙な気分にさせているのだろうな。それでなくても一夏君は色々と言われているんだからね。

 その後少しお説教をされてから虚ちゃんが戻ってきたので約束通りお説教は一先ず終わった。後で続きがあるのかもしれないけど、今は一夏君の作ってくれた夕ご飯を楽しもうと全員が思ったのだった。




これで読みにくさは軽減されたと思うのですが、自分的に凄く書きにくいです……
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