もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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台風は何処に行くんでしょうか……


騒がしい風呂

 一夏君と虚ちゃんが簪ちゃんの様子を見ている間に、私たちはナターシャ先生と一緒にお風呂に向かった。相変わらず此処のお風呂場は綺麗でありがたいわね~。

 

「広いのね……」

 

 

 初めてなナターシャ先生は、お風呂場の広さに圧倒されている。それもそのはず、この部屋のお風呂は他の部屋と比べて、圧倒的に広いのだ。もちろん教員用の寮のお風呂よりも広いのだ。

 

「一夏君が拘って作ってもらったみたいですよ」

 

「一夏君が?」

 

「一夏様は大浴場使えませんから」

 

「何で……あぁ、そうだったわね」

 

 

 一夏君はこの学園で唯一の男子だ。入学前に今の状況を想像してなかった一夏君が自ら大浴場を使う事を拒否して、このお風呂場を作ってもらったのだ。

 

「おりむ~なら大浴場に入ってきても全然大丈夫だと思うけどね~」

 

「むしろお兄ちゃんが襲われそうだよ」

 

「一夏様ならありえません」

 

「それにしても……」

 

「?」

 

 

 ナターシャ先生のある一点を見つめる。見つめられているナターシャ先生が不思議そうに私を見ているが、そんな事は気にならないくらい重要な事なのだ。

 

「大きいですね……」

 

「何がよ?」

 

「さすが学生とは違うんですね」

 

「私といい勝負かも~」

 

「何時かは私だって姉さんみたいに大きくなるもん!」

 

「だから何がよ?」

 

 

 私たちの視線の意味が分からず、ナターシャ先生が困ったように聞いてくる。本音といい勝負と言う事は、私よりも大きいんだ……2位の座は明け渡すしか無いようね。

 

「でも、一夏様は気にしてませんし……」

 

「でも、負けは負けよね……」

 

「強敵現るだね~」

 

「お兄ちゃんが見たらどんな反応するのかな?」

 

「だから何がよ!」

 

「「「「おっぱい」」」」

 

「はい!?」

 

 

 四人同時にナターシャ先生のおっぱいを指差して教えてあげる。そうしたらナターシャ先生は慌てておっぱいを腕で隠すようにする……とてもエロい行動だった。

 

「何だか興奮する格好よね……」

 

「一夏様が居なくて良かったです……」

 

「お兄ちゃんなら気を失ってたかもしれないね……」

 

「おりむ~は耐性低いからね~」

 

「何なのよ~、もう!」

 

 

 自分がからかわれていると理解したナターシャ先生は、片腕を解き上に挙げる。所謂怒っているアピールだ。

 

「先生を怒らせると大変な目に遭うんだからね!」

 

「例えば?」

 

 

 ナターシャ先生が担当してるクラスである三人が少し震えながら聞く。何かされるならまずこの三人でしょうしね。

 

「そうね……成績を最下層評価にするとか」

 

「いや~!」

 

「それだけは止めてください!」

 

「そんな事されたらおね~ちゃんとおりむ~に殺される……」

 

「あれ? 冗談だったんだけど……」

 

「一学期に酷い目を見てますから……」

 

 

 赤点ギリギリだった本音、二学期になってからのテストで補習の恐怖に襲われた須佐乃男とマドカちゃんには、ナターシャ先生の脅しは冗談抜きで恐ろしいものだったのだ。

 成績に関しては一夏君と虚ちゃんはお父さんとお母さん並に怒るし、悲しそうな目をするのだ……実際にお父さんやお母さんに怒られた事は、この部屋の住人は誰一人無いのだが。

 

「兎に角、私をからかって遊ぶのは止めてね?」

 

「はい!」

 

「もうしませんので成績の件だけは……」

 

「もうお菓子禁止の恐怖は嫌なのだ~!」

 

「お、お菓子?」

 

「二学期最初のテストで赤点だったら一夏君と虚ちゃんにお菓子禁止令を発令されるところだったんですよ」

 

「そうなんだ……本音ちゃんも大変ね」

 

 

 本音ちゃんって……意外な呼び方に思わず噴出しそうになる。だって本音の事をちゃん付けで呼んでたのって、更識の屋敷には居なかったもんね。

 

「本音、ちゃん付けで呼ばれるのって、近所に居たお婆さん以来じゃない?」

 

「そうかも~……あのお婆ちゃん、お菓子くれるから好きだったんだ~」

 

「もう随分と前にボケが始まっちゃって、私たちの事覚えて無いんだよね……」

 

「残念だよ~……」

 

 

 小さい頃の話で盛り上がっていると、脱衣所に人の気配を感じた。私でも感じ取れるんだから、マドカちゃんや須佐乃男が感じ取ってない訳はないんだよね。

 

「お兄ちゃんだ!」

 

「覚悟を決めたのでしょう」

 

「そこまで覚悟が必要な事じゃ無いと思うんだけど……」

 

「ナターシャ先生は一夏様の初心さ加減を知らないから言えるのですよ」

 

「お兄ちゃんはこう言った事苦手だもんね」

 

 

 一夏君が私たちと混浴する事は、私たちにとっては嬉しい事だが、一夏君にとっては結構な覚悟を有する事なんだよね。お風呂に入って疲れてたら意味無いと思うんだけど、それでも一緒に入りたいと思っちゃうのよね。

 

「しかも今日は珍しくタオルも何も指示してませんからね」

 

「そう言われれば……珍しいわね」

 

 

 何時もなら水着なりタオルなりを着けるように言われるんだけど、今日は何も言われて無いわね……一夏君、何時の間に弱点を克服したのよ?

 

「って事は、今おりむ~はおね~ちゃんの裸を見てるって事?」

 

「一夏様、大丈夫なんでしょうか?」

 

「指示して無いって事は大丈夫なんじゃないの?」

 

「如何だろう……一夏君は簪ちゃんの世話してたから忘れてたとか」

 

「ありえそうね……いくら一夏君が優秀だからって、簪さんの世話に集中してたらうっかりもありうるわよね」

 

 

 一夏君と付き合いの短いナターシャ先生は、一夏君でもうっかりする事もあると思ってるようだけど、今まで一緒にいて一夏君のうっかりを見たことは、私たちでも無いんだよね……今回はうっかりなのかな? それとも知らぬ間に克服したの? もしそうならいったい何で?

 疑問が浮かんできて止まない私たちの前に、一夏君と虚ちゃんが現れた……裸で。

 

「おりむ~もすっぽんぽんだ~」

 

「あまり見るな恥ずかしい!」

 

「でも~おりむ~だって私たちの裸を見てる訳だし~」

 

「なるべく見ないようにする」

 

「別に私たちは見られても平気だよ?」

 

「マドカ……お前は少し恥じらいを覚えた方が良いぞ」

 

 

 一夏君は少し恥ずかしそうにしているが、確かに何も着ていない状態でお風呂場に現れたのだ。

 

「一夏君、如何言う風の吹き回し?」

 

「……何がだ?」

 

「だって何時もなら水着なりタオルなりを着用させてるでしょ?」

 

 

 私の指摘に一夏君は気まずそうに頭を掻きながら答えてくれた。

 

「何時までも恥ずかしがってたら皆に悪いと思ってな……」

 

 

 確かに付き合ってるのに何時までも恥ずかしがられたらそれはそれで寂しいと思う時もあるだろう。だけど一夏君がそうなら私たちは仕方ないと思ってたんだよ?

 

「一夏君、辛そうだけど大丈夫?」

 

「あぁ……大丈夫」

 

「ナターシャ先生、あまり近づかない方が良いかと……」

 

「あっ、そうね」

 

 

 心配で近づいたナターシャ先生だったが、その行動が逆に一夏君を追い詰める事になると気付いたようだ。

 

「別にそこまで気を使ってもらわなくても平気だ。それなりに耐えれるはずだから」

 

「一夏さん、無理しなくても良いんですよ?」

 

「平気だ……」

 

「じゃあ……えい!」

 

「「「「「ああ!!」」」」」

 

 

 一夏君の背中に虚ちゃんがしがみつく……いや、抱きついた。互いに何も着ていない状況で背後から抱きつけば、当然胸が背中に当たる訳で……

 

「いや、ちょっと、虚!?」

 

「大丈夫なんですよね?」

 

「あ、あぁ……大丈夫だ」

 

 

 見る見るうちに顔面蒼白になっている一夏君……誰が如何見ても大丈夫そうには見えない状況でも、一夏君は気丈に振舞っている。

 

「なら、もっと強く抱きついても平気ですよね?」

 

「いっ! ……大丈夫だと思う」

 

 

 一瞬嫌そうな悲鳴を上げかけたが、一夏君は拒絶はしなかった。それなら私だって考えがあるんだからね。

 

「じゃあ私もくっつく~!」

 

「!?!」

 

 

 虚ちゃんが後ろから抱き着いてるので、私は前から一夏君に抱きつく。一夏君のお腹辺りに私のおっぱいが密着している……一夏君の顔は既に苦しそうだった。

 

「ズルイですよ~! 私だっておりむ~に抱きつきたい!」

 

「私だって一夏様に抱きつきたいです!」

 

「わ、私だって!」

 

「お兄ちゃん、私も抱きつくからね?」

 

「!?!?!」

 

 

 言葉にならない悲鳴を上げているが、誰一人その事には触れずに抱きつき始める……そんな中虚ちゃんがゆっくりと一夏君から離れる。

 

「冗談はこれくらいにして……一夏さん、無理してなくて良いんですからね?」

 

「あ、ありがとう……すまない」

 

 

 その場にしゃがみこんだ一夏君に、私はそのまま抱きついていた。急にしゃがまれたから私もその力に持ってかれてしまったのだ。

 

「お嬢様も、何時まで抱きついてるつもりですか?」

 

「もうちょっと……」

 

「一夏さんが辛そうだから駄目です」

 

「は~い……」

 

 

 ゆっくりと離れていく私を、一夏君は虚ろな目で見ていた……如何やら本当に危ない状況だったらしい。

 

「せっかくおりむ~に抱きつけるチャンスだったのにな~」

 

「今度は私たちが優先ですからね!」

 

「そうよ! 虚さんと楯無さんは今度は駄目ですからね!」

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

 

 抱きつけなかった四人はそれぞれの気持ちを言っているが、マドカちゃんだけは一夏君の心配をしている……さすがは義妹ね。

 

「ちょっと危なかった……」

 

「一夏さんも無理して私たちに付き合う事無いんですからね?」

 

「あぁ……もう少しゆっくり慣らしていこうと思うよ」

 

 

 顔に精気が戻ってきた一夏君は、ゆっくりと立ち上がって移動する……湯船に入る前に身体を洗うのだろう。

 

「それじゃあ私が洗ってあげるね、お兄ちゃん」

 

「あっ! 抜け駆けはズルイよ~」

 

「此処は公平に私たち三人で一夏様を隅々まで……」

 

「三人って……私は!?」

 

 

 一人のけ者扱いされてるナターシャ先生が、慌ててツッコミを入れる。付き合った期間は短いけど、しっかり彼女の自覚はあるようね。

 

「大丈夫だ、自分で洗えるから」

 

「そう言う事じゃ無くって、私たちが洗ってあげたいだけだよ!」

 

「そう言う事です。諦めて洗われちゃってください!」

 

「おりむ~、覚悟は良いかな~?」

 

「えっと、私も頑張って洗うからね!」

 

 

 何時もの一夏君なら簡単に撃退出来たんだろうけど、生憎今の一夏君は万全の状態では無いのだ。さっきまで私と虚ちゃんに抱きつかれてたからね。

 

「だから大丈夫だって……」

 

「「「遠慮しないの!」」」

 

「一夏君、私だって洗いたいの!」

 

「は、はぁ……」

 

 

 勢いに気おされた一夏君は不承不承と言った感じながらも、抵抗を諦めたようだった。意外と押しに弱いのよね、一夏君って。

 

「それじゃあ虚ちゃん。私たちは私たちで洗いっこしよっか?」

 

「自分で洗えますよ」

 

「だって向こうは楽しそうじゃない!」

 

「だからって私を一夏さんの代わりにしないでくださいよ」

 

「良いじゃない別に。昔は良く洗いっこしたんだからさ」

 

「はぁ……今日だけですからね」

 

「やった!」

 

 

 虚ちゃんに承諾してもらった事だし、今日は目一杯昔の気分を味わおっと!

 

「ただし!」

 

「ん?」

 

 

 気分高々に洗い始めようとしたら、虚ちゃんが手で私の動きを制してきた……何か嫌な予感がするんだけど。

 

「はしゃぎすぎは駄目ですからね。もしそんな事をしたら、明日の仕事はお嬢様一人でしてもらいますから」

 

「だ、大丈夫よ……そこまで私も子供じゃないわ」

 

「だと良いのですが……」

 

 

 危なかった……もし虚ちゃんに昔みたいにアワアワ攻撃をしていたらと思うと、背筋に冷たい汗が流れた……虚ちゃん相手には自重した方が身の為なのね。

 

「それじゃあお嬢様、頭を洗いますから座ってください」

 

「おねが~い!」

 

 

 昔みたいに頭を洗ってもらいながら、横目で一夏君たちの状況を見る。楽しそうに洗っている本音や須佐乃男を見ると、私も加わりたくなるけども、一夏君の表情を見ると加わっても楽しそうじゃないから別に良いやと思えた。

 

「如何かしましたか?」

 

「ううん、一夏君が辛そうだな~って思ってさ」

 

「一夏さんには辛いでしょうが、それだけ皆さんが一夏さんの事を想ってると言う事だって分かってるでしょうからね。絶対に口には出さないのが一夏さんです」

 

「でも、あれは言ってるも同じだと思うけどね」

 

「確かに……あそこまで苦い表情をされてたら分かりますけどね」

 

「四人が楽しそうだから良いのかな?」

 

 

 一夏君の表情は普段のポーカーフェイスが崩れかかっているけれど、洗ってる四人はもの凄く楽しそうで嬉しそうな表情だ。その事が一夏君にも分かってるから、何とか表情を抑えているんだろうな。

 

「お嬢様、流しますよ?」

 

「え?」

 

 

 考え事をしていたらいきなり頭からお湯をかけられた。油断していた訳では無いが、シャンプーが目に流れ込んできて痛かった……

 

「虚ちゃん……せめて返事を待ってからにしてほしかったわ」

 

「昔、お嬢様にされた事の仕返しだと思ってくれれば文句は言えませんよね?」

 

「そんな事! ……したわね」

 

 

 記憶を探ったら、確かに小さい頃に声もかけずに虚ちゃんの頭にお湯をかけて目にシャンプーを入れた事があった。でもあの時はちゃんと謝ったはずなのに、今更仕返しって……虚ちゃんも意外と根に持つタイプなのね。

 

「ですが、あの時よりは痛くないようになってますからね」

 

「改良されてるからって言っても、痛いものは痛いよ~」

 

「我慢してください。洗い流しますから」

 

 

 そう言って虚ちゃんは私の目にシャワーを直接当てようとする……

 

「それはさすがに自分でやるわよ!」

 

「そうですか?」

 

「虚ちゃんを信用してない訳じゃ無いけど、全力でお湯をかけられたく無いもの」

 

「そうですか……残念です」

 

 

 残念って……まさか本当に全力で洗い流すつもりだったんじゃ無いでしょうね? そんな事されたら大変だったわ……

 

「おりむ~流すよ~」

 

「ん」

 

 

 向こうでは本音が一夏君の頭を洗い流そうとしていたが、一夏君は最初から目を瞑っているので何も問題は起こらないだろう。

 多分一夏君はシャンプー云々よりも四人の裸を見ない為に目を瞑っているんだろうな~。見ても良いのに見ないなんて、本当に一夏君はこう言った事が苦手なんだね。

 

「本音! こっちに跳ねたよ!」

 

「勢いつけすぎです!」

 

「目に、目に入った……」

 

 

 向こうでは洗っていた側に被害が出たようだった……それにしてもナターシャ先生、何たる不運なんだろう……

 

「だって勢いつけた方が面白いんだも~ん!」

 

「だったらせめて私たちに注意してからしてよね!」

 

「そうですよ! 現にナターシャ先生には被害が出てるんですから!」

 

「いや、そこまで酷い被害じゃないから……もう洗い流したから」

 

 

 ナターシャ先生は迅速に洗い流したようで、ちょっと充血してるが特に問題は無さそうだった。

 

「さてと……今度は俺が洗う番だな」

 

「「「「え?」」」」

 

「頭だけだが洗ってやろう」

 

 

 ゆっくりと立ち上がった一夏君に、四人の視線が向く……一夏君に洗われるなんて滅多に経験出来る事では無いのだが、何故だか嫌な予感がするのは何でだろう?

 

「普段からまともに洗ってない本音と須佐乃男は特に念入りに洗ってやるから、覚悟しとくんだな」

 

「お手柔らかにしてほしいな~……なんて」

 

「私は本音様ほどテキトーではありませんよ!」

 

「でも、私たちと比べれば須佐乃男だってテキトーだよ」

 

「そうなの?」

 

「軽く洗っておしまいだからね」

 

 

 遊ぶ事に全力を向けている本音と須佐乃男は、普段一緒に入ってない一夏君でも分かるくらい洗髪方法がいい加減なのだ。

 

「汚くは無いけど、女の髪にしたら酷いぞ」

 

「お兄ちゃんの髪の毛は綺麗だもんね」

 

「一応気を使ってるからな」

 

 

 確かに一夏君の髪の毛はちゃんと手入れをしてある。それに比べて本音と須佐乃男は……軽く洗っておしまい、トリートメントもしないでドライヤーで乾かす事もせずに遊びまくるのだ。痛みきっていてもおかしくは無い。

 

「今日はしっかりと手入れしてやるからな」

 

「「ひえ~」」

 

「その前にマドカとナターシャの髪を洗うか」

 

 

 問題児二人は後回しのようだ……マドカちゃんとナターシャ先生は嬉しそうに一夏君の前に座り、今か今かと嬉しそうに待っている。

 

「私も一夏君に洗ってほしかったな~」

 

「刀奈と虚はまた今度な。簪と一緒に洗ってやるから」

 

「本当ですか!」

 

「約束だからね!」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 私と虚ちゃんの勢いに気おされたのか、一夏君の返事は歯切れが悪かった。でも約束したんだから絶対に洗ってもらわなきゃね。

 

「お兄ちゃん、早く早く!」

 

「焦るな。今洗ってやるから」

 

 

 義兄に甘えまくってる義妹を、羨ましいと思う反面、ちょっとブラコンが過ぎるんじゃないかとも思ってしまう……でも織斑先生の実の妹じゃこれが当然なのかもしれないわね。

 

「えへへ~」

 

「如何かしたか?」

 

「ううん、子供の頃に戻ったみたいだな~って思ったんだ」

 

「子供の頃か……一緒に風呂に入ってたんだな」

 

「あれ? 一夏君は覚えて無いのにマドカさんは覚えてるんだ」

 

「お兄ちゃんは昔の記憶が無いからね」

 

「そうなの!?」

 

 

 あれ、ナターシャ先生は知らないんだ……一夏君の昔の記憶が無い事は、この部屋の住人は全員知ってるから他でも有名だと思ってたけど、意外と知られてないんだ。

 

「ちょっと色々あってな。小学校以前の記憶は全く無い」

 

「苦労してると思ってたけど、そんな事まであったんだ」

 

「別に気にしてないんだが、こう言った昔の付き合いを覚えて無いのはな……」

 

 

 マドカちゃんの頭を撫でながらしんみりと言う一夏君は、何処か寂しそうだった。義妹との記憶が無いのは、一夏君も辛いのかもしれないわね。




ちょっと一夏が羨ましい……
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