もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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デートまで行かなかった……


デート前日、簪の午後

 明日は一夏と二人きりでデート……なんだけど、今日は全く一夏と会えなくて残念だなぁ。一夏が忙しいのは知ってるけど、少しくらいは会える時間があっても良いと思うんだよね……

 

「かんちゃん、食べないならそれ頂戴!」

 

「駄目! これは一夏が作ってくれたんだもん! それに本音はもう食べたでしょ!」

 

「本音様の前に手付かずで置いてあったら食べて下さいと言ってるようなものですよ」

 

「それがお兄ちゃんの手作りなら尚更だね」

 

 

 さっき屋敷の人が運んで来てくれたおやつ、如何やら一夏が時間になったら運んでくれと頼んだらしい。

 初めは一夏がそんな事するのかとも思ってけど、見た目や匂いだけでこれが一夏の作ったものだと言う事は此処に居る全員が分かったのだった。

 

「おりむ~のケーキ、もっと食べたい~!」

 

「食べちゃったんだから諦めなさい。私はこれから食べるの」

 

 

 本音がだらしなく口を開けて見ているが、私は特に気にせずにケーキを自分の口に運ぶ。うん、やっぱり一夏が作ったのは格別だな~。

 

「本音は一気に食べちゃったからね」

 

「気持ちは分からないでも無いですが、せっかく一夏様が作ってくれたんですから味あわなければもったいないですよ」

 

 

 マドカも須佐乃男も、自分の分のケーキを口に運ぶ。一夏の作ってくれたケーキだと気付いた本音は、私たちが止める暇なく凄い勢いで自分の分を平らげたのだった。

 

「うう~、おりむ~がまた明日も作ってくれるといいな~」

 

「それは無いと思いますよ」

 

「そうだね」

 

「如何して~?」

 

 

 一夏の明日の予定は決まっている。だから本音にケーキを作ってる時間など無いのだ。その事を分かってる須佐乃男とマドカは、理解していない本音を見て、呆れたようにため息を吐いた。

 

「明日の一夏様は、朝から夕方まで簪様とデートですからね」

 

「それが終わったら学園に戻るんだから、ケーキなんて作ってる暇は無いよ」

 

「かんちゃ~ん、明日おりむ~とデートするんだから、そのケーキ頂戴よ~!」

 

「どんな理屈よ! 大体自分の分を食べたんだから、いい加減諦めなさい」

 

「だって~……おりむ~のケーキなら何個でも食べられる自信があるんだも~ん」

 

「だからって人の分まで食べようとしないでよ! もし一夏か虚さんが居たらもっと怒られてるんだからね」

 

 

 本音を叱る人は主に一夏と虚さんだ。私もこうやって叱る事はあるけれど、それは一夏や虚さんが居ない場合が多いのだ。二人が居る時は二人に任せるし、私が気付く前にあの二人が気付いて叱ってくれるのだ。

 

「虚さんならお説教でお兄ちゃんなら大目玉かな?」

 

「一夏様なら自分の分を本音様に渡して終わりだと思いますけど……あまり甘い物は食べませんし」

 

「でも、その前に一応叱るだろうね」

 

「そうですね、本音様の教育の為に一応は叱るでしょうね」

 

「何だかんだ言っても、虚さんも一夏も本音には甘いからね」

 

「えへへ~」

 

 

 私たちの中でも、圧倒的に甘やかされてるのは本音だろう。これは間違い無い。その次に甘やかされてるのはお姉ちゃんかマドカのどちらかだろうな。私や虚さんは全然甘やかされてないような気がする……でも、気付いて無いだけで結構甘えさせてもらってるんだろうな。

 

「ご馳走様でした」

 

「やっぱりお兄ちゃんの作ったお菓子は美味しいね~」

 

「そうだね、普通の料理も上手なのに、お菓子作りまで上手だなんて……私たちの立つ瀬が無いよね」

 

「美味しいから別に気にしないのだ~!」

 

 

 確かに美味しいから良いんだけど、女の子として、彼女としてちょっと複雑な思いくらい本音にだってあると思うんだけどな……私はすっごく複雑だもん。

 

「一夏様に対抗しようと思うから複雑なんですよ。私みたいに諦めてしまえば素直に感動出来ますよ」

 

「そうなんだけどさ……何か諦められないと言うか、少しくらいは対抗心を持っておかないと駄目になっちゃいそうなで、ちょっとね」

 

「虚さんもお兄ちゃんに教わってるらしいけど、簪は習わないの?」

 

「習いたいけど、最近じゃ虚さんも習えてないほど一夏が忙しいからね……」

 

 

 私は一夏が忙しくなっている原因の一人を、思いっきり睨んだ。しかし睨んだ相手、本音は何で睨まれたのか分かってないようで、間抜けな声を上げたのだった。

 

「ほえ~? かんちゃん、何でそんな怖い顔してるの~?」

 

「本音がもう少し仕事してくれれば、一夏も時間的余裕が出来るでしょうに……もう一人仕事しない人が居るけどね」

 

 

 言うまでも無くお姉ちゃんだ。生徒会長としても仕事も、更識家当主としての仕事もしないで遊び呆けてるお姉ちゃんの所為で、一夏と虚さんがもの凄く忙しそうにしているのだ。

 

「そんなことより~、食べ終わったんだから続きしよ~?」

 

「そうですね。せっかく一夏様に怒られない日なんですから、思う存分遊びましょう!」

 

「楯無さんも呼べば良かったのに」

 

「しょうがないですよ、楯無様は一夏様の部屋で勉強会中なんですから」

 

 

 美紀のIS学園編入の為に、またしても一夏が骨を折っているのだ。学園の警備の強化だとか何とかお姉ちゃんが言ってたけど、別に美紀じゃなくても良いじゃないの。そりゃ私だって美紀が学園に来てくれたら嬉しいけど、その為に一夏が大変な思いをするんならこのままでも良いと思ってるんだから。

 

「かんちゃんが考え事してる……ひょっとしてチャンス?」

 

「今のうちに簪様には脱落願いましょうか!」

 

「総員、簪目掛けて突撃ー!」

 

 

 お姉ちゃんが楯無を継いでから、四月一日のおじさんは私たちと美紀を近付かせないようにしてたもんね。昨日まで一緒に遊んでたのにいきなり遊べなくなって、当時は凄く悲しかったけど、事情が事情だもんね。おじさん、自分が楯無を継ぎたかったんだろうな……

 

「あ、あれ? 全然隙が無いよ?」

 

「むしろ此方がピンチですね」

 

「撤退! 総員、急いで撤退しろー!」

 

 

 でも、IS学園ならおじさんの目は届かないだろうし、美紀とまた一緒に遊べるかもしれない。そう考えると一夏には頑張ってもらいたいけど、こんなに大変で明日のデートは大丈夫なんだろうか……体調崩して中止なんて事にはならないだろうけど、疲れ果てた一夏とデートはしたく無いなぁ~……でも、中止になるのはもっと嫌だな。

 

「うわぁ!」

 

「マドカさん、本音様がやられました」

 

「構うな! 一々構っていたら私たちまでやられるぞ!」

 

「ですが!」

 

 

 一夏とお姉ちゃんと虚さんに勉強を見てもらえば、いくら美紀でも試験に合格出来るくらいの頭には成長するだろうな。本音の時もそうだったけど、一夏が本気になれば、試験なんて簡単に合格出来るだけの知識を得る事が出来るようだし。なんせあの本音が九割正解したんだからね。

 

「スミマセン、マドカさん……私は此処までのようです……」

 

「分かった、須佐乃男の犠牲は無駄にしないからね!」

 

「はい、頑張ってください……グフ」

 

「須佐乃男! こうなったら私一人でもやってやる!」

 

 

 それにしても、美紀一人に対して三人の教師って、随分と大変な思いをしてるんだろうな、美紀も。普段から勉強してるフリなんかしてたから入試に失敗したんだろうに……普通に勉強してれば美紀の操縦技術があればペーパーなんてある程度で合格出来ただろうにな。

 

「くそ、何で隙が無いのよ! 全くの無意識だと言うのに、全然勝てる気がしない」

 

 

 美紀が受かったら、部屋は何処になるんだろう? もしかして私たちと一緒かな? でもそうなると美紀も一夏に惚れちゃうし……かと言って護衛が別の部屋じゃ意味無いし……そこのところは如何なってるんだろう? 後で一夏か虚さんに聞いてみよう。

 

「やられた!」

 

「……あれ? 何時の間にか勝ってる」

 

 

 考え事しながらだったから全然気付かなかったけど、三人共ゲームオーバーになってるから私が勝ったんだろう。だけれど、いったい何時私は動かしてたんだろう……

 

「かんちゃん強すぎ~!」

 

「考え事してる風を装って私たちを欺くとは……」

 

「実はもの凄い集中してたんでしょ!」

 

「えっと……もしかして三人共私が?」

 

 

 勝手に潰しあったんだと思ってたけど、如何やら違うらしい……

 

「三人でかんちゃん相手に挑んだんだけど、まず私がやられちゃって」

 

「その後で私がやられました」

 

「そして、最後に私が特攻したんだけど、一撃も報いる事が出来ずにやられちゃったんだ」

 

「……そんな事してたんだ、私」

 

 

 一夏の事を考えてたから、ゲームに全く集中してなかったんだけどな……如何やら無意識でも操作出来るレベルにまで到達してたと言う事なんだろうな……また一夏に怒られそうな特技を身に付けちゃったな……

 

「ところでかんちゃん、いったい何を考えてたの~?」

 

「美紀の事をね」

 

「美紀ちゃん?」

 

 

 私は、さっきまで考えていた事を本音と二人に話す事にした。美紀の事を知っている本音には当然として、一夏関係者であるマドカと須佐乃男にも聞いてもらった方が良いだろうと思ったからだ。

 

「なるほど……護衛なら一緒の部屋になる確率は高いでしょうね」

 

「でも、その美紀って子、お兄ちゃんに惚れたりしないよね?」

 

「如何だろう、一夏に惚れないようにする方が護衛より難しいと思うんだけど……」

 

「でも~、楯無様やかんちゃんと付き合ってるのは美紀ちゃんも知ってるんだし~、おいそれと手出しは出来ないと思うよ~?」

 

「でも、四月一日のおじさんならそれくらいやれって言いそうだけど」

 

 

 昔は優しかったおじさんも、お父さんが死んじゃってからは態度が一変しちゃったんだよね。やっぱり自分より年下の当主に仕えるのは嫌だったんだろうな……でも、お姉ちゃんが継ぐのはおじさんも分かってたはずなのに、如何してあんなにも反発するんだろう?

 

「おりむ~ならその陰謀ごと丸呑みしそうだけどね~」

 

「お兄ちゃんは鯨じゃないよ?」

 

「ものの例えだよ~。おりむ~が鯨さんじゃないのは分かってるよ~」

 

「本音様が比喩表現をお使いに!? もしかして具合でも悪いんですか!」

 

「大丈夫だよ~? ところで、比喩表現ってな~に?」

 

「……良かった、何時もの本音様でした」

 

 

 本音のおバカ発言に胸をなでおろす須佐乃男……傍目から見ると須佐乃男は相当失礼な事してるわよね……でも、本人は気付いて無いようだし、無駄な事は言わないでおこう。

 

「でも、今回の選出は碧さんが行ったんですよね?」

 

「そうだろうね。美紀は今碧さんの部隊の一員だし」

 

「ISの操縦技術だけなら私より上かもね~」

 

「本音が専用機持ちなのは、虚さんのついででしょ?」

 

「そんな事ないよ~。おりむ~がコネを使ってくれたからだよ~」

 

「コネ? 企業代表なんだからお兄ちゃんのコネじゃなくて家のコネじゃないの?」

 

「虚様と本音様の専用機のコアは、束様のお手製なんですよ。ついでに楯無様の専用機と簪様の専用機も束様のお手製です」

 

「四つもコアを作ったの!?」

 

「いえいえ、楯無様のと簪様のは武装などが束様のオリジナルで、コアは既存のものです」

 

「それでも、二つは作ったって事でしょ? あの篠ノ乃束がコアを作るなんて……お兄ちゃんはさすがだね」

 

 

 確かに一夏が居なかったら、私の専用機も、虚さんと本音の専用機も完成しなかったかもしれない……そう考えると私もコネで専用機を手に入れたって事なのかな?

 

「おりむ~がおねだりして、篠ノ乃博士を篭絡させたんだよ~」

 

「篭絡? お兄ちゃんが?」

 

 

 マドカが不思議がるのも仕方ないと思う。私も一夏があんな事を言って篠ノ乃博士をやる気にさせるなんて思って無かったし……

 

「その所為で千冬様が嫉妬の嵐を巻き起こしましたけどね」

 

「あれは大変だったよ~」

 

「一夏が宥めてくれなかったら屋敷が半壊してたかもね」

 

「姉さん……いったい何をしようとしてたのよ」

 

 

 当時はまだ一夏も織斑先生と仲良かったし、私たちとも普通に接してくれてたしね。最近は忙しくてまともに会話出来てないけど……

 

「兎に角、美紀がIS学園に来るのなら、一夏に惚れさせないようにしないとね」

 

「これ以上増えるのは御免だよ~」

 

「最終的な問題は本人の気持ちとは言え、さすがにこれ以上は看過出来ませんしね」

 

「お兄ちゃんは私たちで守る!」

 

「……でも、私たちじゃ力不足なんだろうな」

 

 

 ボソッとつぶやいた私を、三人がビックリしたような目で見てくる……何かおかしな事を言ったかな?

 

「そこは嘘でも気合を入れるところだよ~」

 

「そうですよ! 私だって一夏様の専用機なのに殆ど一夏様の役に立ててませんけど、気合で乗り切るんですよ!」

 

「大体お兄ちゃんを守れるほど強い人なんて、この世に存在するか如何か……それくらいの次元に居るからね、お兄ちゃんは」

 

 

 確かに文化祭の時も、真剣一本でISを撃退してたし、銀の福音の時だって結果的に一夏一人で暴走を止めて事件も解決しちゃったし……そう考えると、私たちって専用機持ってるのにあまり活躍出来てないんだな……

 

「兎に角、お兄ちゃんを守る為にも、休める時に休んでおくのが一番! てなわけでもう一回戦しましょ?」

 

「今度は負けませんからね」

 

「かんちゃん相手に勝てるのはおりむ~くらいだよ」

 

 

 私の気持ちなんて無視して、三人は明るい声でゲーム再開を宣言した。確かに悩んだところで急激に強くなる訳でも無いし、守るって気持ちがあればきっと大丈夫だよね。

 

「それじゃあ今度こそ完膚なきまでに叩き潰してあげる」

 

「うわぁ……簪様が本気ですよ」

 

「また纏まって攻める?」

 

「本気のかんちゃん相手に、いくら手を組もうと勝てっこないよ……」

 

 

 さてと、一夏の事は気になるけど、今はゲームを楽しまなくちゃね。さっきの対戦は気付いた時には終わってたし、今回はじっくりと楽しませてもらおうっと!

 

「ひやぁ!」

 

「これは……」

 

「マズイよ~!」

 

 

 逃げ惑う三人を、私は遠距離から攻撃する。逃げ惑うのをただ追いかけるのはつまらないし、かと言って無理矢理接近戦に持ち込んでも一瞬で勝負がついちゃうからね。こうやってジワジワと追い込んで最後はざっくりと決めるのが結構な快感なんだよね。実際には出来ないからこそなんだろうけど、私ってば結構陰湿な趣味があるんだなと最近になって気付いたんだよね。

 

「ほらほら、もっと逃げないと殺っちゃうよ?」

 

「かんちゃん、キャラが違ってる……」

 

「ゲームになると態度が変わるってやつでしょうか?」

 

「こんな怖いのはお兄ちゃんだけで間に合ってるのに!」

 

 

 失礼だな、私は一夏ほど怖い顔なんてしてないのに……そんな事言うなら、マドカから仕留めちゃうもんね。

 

「貰った!」

 

「何時まで遊んでるんだ!」

 

「「「「ヒッ!?」」」」

 

 

 いきなりドアが開いたと思ったら、一夏がもの凄い顔で部屋に入ってきた。あれ? 今日は美紀の勉強を見るから忙しいはずじゃ……

 

「何時まで遊んでれば気が済むんだ、お前たち。もう夕飯だぞ」

 

「えっ!」

 

「嘘!?」

 

「そんなに経ってます?」

 

「あっ、本当だ……」

 

 

 おしゃべりとゲームに夢中になりすぎて、時間が経ったのに気付かなかったのか……それにしても急に来られると心臓に悪いよ……

 

「簪は明日デートなんだから、少しくらい我慢しろよな。ゲームで八つ当たりはみっともないぞ」

 

「え……何で知ってるの?」

 

「……マジかよ」

 

 

 一夏は冗談で言ったようだが、私は確かにゲームで三人に八つ当たりをしていた……今思うと確かにみっともないな……

 

「兎に角、早いところ食堂に来てくれ。もう刀奈を抑えてるのも限界だからな」

 

「わ~い! ご飯だ~!」

 

「こら本音、片付けはしっかりとするように」

 

 

 食堂に駆け出した本音の襟首を掴み、一夏が本音を部屋に戻した。ケーキの他にも色々と食べていたので、そのゴミを片付けなくてはいけないのだ。

 

「一夏、美紀は?」

 

「ん? 家に帰ったが」

 

「そう…なんだ……」

 

「一緒に食べたかったのか?」

 

「ちょっとね」

 

 

 中学に入ってから疎遠だった幼馴染と、久しぶりに一緒にご飯を食べられると思ってただけに、ちょっと残念だ。

 

「美紀が受かれば、明後日から何時でも一緒に食べられるだろ」

 

「そう…だね……? 一夏、美紀と親しいの?」

 

「いや、それほどでは無いが……何でだ?」

 

「だって美紀って……」

 

 

 一夏は基本的には苗字にさん付けで呼ぶことが多いのに、美紀の事は既に名前で呼び捨ててる。これは警戒しなくてはいけないかも……

 

「何か苗字で呼ばれるのが嫌なんだとさ。それで名前で呼んでるんだ」

 

「そうなんだ……美紀も大変だね」

 

 

 恐らくだが、おじさんの所為で自分の苗字が嫌になったんだろうな。私も一時お姉ちゃんと比べられるこの苗字が嫌だったもんね。でも、一夏のおかげで今は嫌いじゃないよ。

 

「簪、明日何処に行きたい?」

 

「一夏が決めてくれた場所なら何処でもいいよ」

 

「何処でも? 本当に何処でも良いのか?」

 

「……常識の範囲ならね」

 

 

 一夏のドSな笑みを見て、私は条件を付け足しておく事にした。もちろん一夏が変な場所に連れて行く訳ないんだけど、あの笑みを見ると万が一が起こりそうな気がしてくるのだ。

 

「冗談だ。もちろん変な場所に簪を連れて行くつもりは無いから安心しろ」

 

「分かってたけど、一夏のあの笑みは怖いね」

 

「偶には良いだろ。俺だって皆にからかわれてるんだから……」

 

「おりむ~、片付いたよ~」

 

「よし、それじゃあ食堂に行くか」

 

 

 何かを言いかけた一夏だったが、本音に邪魔されてその続きを聞く事は出来なかった。何を言いかけたのか気になったけど、夕ご飯の後明日の事で緊張してた私は、一夏が何かを言いかけた事など思い出せないくらいの状況だったのだ。

 

「如何しよう! 明日着ていく服が無い!」

 

 

 せっかくの二人きりのデートなのに、普段着てる服しか無かった私は、大慌てで須佐乃男の部屋を尋ねたのだった。

 

「須佐乃男! 可愛い服を出して~」

 

「いきなり尋ねてきてそれですか……私は未来の世界の猫型ロボットじゃないんですからね」

 

「分かってるよ。でも、本当に服が無いんだよ~」

 

「簪様なら何を着ていっても大丈夫だと思いますが……仕方ありませんね」

 

 

 須佐乃男に具現化してもらった服を部屋まで持って帰り、私はそれで安心したようにベッドに倒れこんで寝てしまったのだった。

 そして、一夏と二人きりでのデートの朝を迎える……




次回こそデート回です
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