もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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要するに案内です


寮内散歩

 美紀ちゃんからのメールを見て、私はとりあえずホッとした。テストのみでは不合格だったみたいだけれど、推薦状のおかげで無事合格したとの事なのだ。

 

「お嬢様も出されてたんですね」

 

「虚ちゃんもでしょ? やっぱり有能な子は育てなきゃいけないからね」

 

「如何やら一夏さんも出していたようなので、テストを受けなくても入学は出来たようですよ」

 

「その事、美紀ちゃんには黙っておきましょう」

 

 

 せっかく一生懸命勉強したのに、それが無くても良かったなんて聞かされたら落ち込んじゃうかもだからね。

 

「良かったわね、碧さん。貴女も心配だったんでしょ?」

 

「そりゃそうですよ。何て言ったって部下ですからね」

 

「これからは生徒でもあるのよ?」

 

「私に教師が務まるのでしょうか?」

 

 

 美紀ちゃんがIS学園の生徒になるのと同時に、碧さんも明日からIS学園の教師として赴任する事になってるのだ。

 表向きは臨時教師だが、本来の目的はIS学園の警備の強化。一夏君が学長に手を回して作らせた枠を使って碧さんを派遣すると言う目的だ。

 

「美紀ちゃんは何処の部屋になるのかしらね?」

 

「一夏さんの予想では、日下部さんとルームメイトになるはずだと」

 

「日下部さん? ……あぁ、あの一夏君の隣の席の」

 

 

 そう言えばあの子、一人部屋だったわね。そうなると美紀ちゃんも一組に編入するのかしらね? 簪ちゃんと同じクラスの方が馴染みやすいかもしれないけど、一組は色々な意味でハチャメチャだから、美紀ちゃんも緊張せずに済むのかもね。

 

「おね~ちゃんたち、さっきから何の話してるの~?」

 

「内緒話してるのを見ると、盗み聞きしたくなるんですよね~」

 

「お兄ちゃんの名前が聞こえたような気がしたけど?」

 

 

 今回の件の裏事情を知らないであろう三人は、暢気に私たちの会話に加わってきた。

 

「ん? 美紀ちゃんが無事合格したって話よ。一夏君も苦労した甲斐があったってね」

 

「そうですね。二日殆ど寝ずに面倒見てましたからね」

 

「初日は布団を借りちゃったし」

 

 

 そう言えばそんな事を虚ちゃんが言ってったっけ……一夏君の部屋の一夏君の布団で美紀ちゃんと碧さんが寝てたって……いくら疲れてたからって、一夏君の布団で寝るなんてうらやま……いや、もう少し我慢して自分の部屋に戻れば良かったのに。

 

「お兄ちゃんなら二日三日寝なくても大丈夫だけどね」

 

「そのかわり、寝てない分怒りやすくなるけどね~」

 

「それは本音様が何回も同じ事で怒られてるからですよ」

 

「そうかな~?」

 

 

 一夏君が怒りやすくなるのかは置いておくとしても、さすがに三日も寝てなかったら一夏君でも普通には生活出来ないと思うのよね……

 

「そう言えば、ナターシャさんは美紀ちゃんの事聞いてるのかしら?」

 

「如何でしょう? 一夏さんが報告してるのかは私には分かりませんし」

 

「ナターシャさん? 何方ですか?」

 

「あれ? 碧さんは知らないんだっけ? 一夏君の新恋人よ」

 

「その言い方は少し違う気がします……IS学園の教師で、碧さんの同僚の方です」

 

 

 私のおふざけを軽く流し、虚ちゃんがナターシャさんの説明を始めた。そう言えばナターシャさんも一夏君が手を回して教師にしたんだっけ? 詳しい事は織斑先生が握りつぶしたから世間には知られてないけど、アメリカ軍が銀の福音の暴走をナターシャさんの所為にして密かに始末するつもりなのを一夏君が見抜いて、保護と言う形でIS学園に身を寄せたんだよね。それにしても、何処からアメリカ軍の情報を持ってきたのかしら……臨海学校中の一夏君にそんな事出来る訳無いし、独自のルートでも持ってるのかしらね?

 

「そうだったんですか。そんな頃から一夏さんは活躍してるんですね」

 

「そんな頃って、高々二ヶ月前くらいの話よ?」

 

「その間に一夏さんは色々とご活躍してますから」

 

「特に二学期になってからは、一夏さんは忙しいですからね」

 

「私がお兄ちゃんの傍に帰って来たり」

 

「文化祭で襲撃されたり」

 

「誕生日に小さくなったりね~」

 

 

 言われてみると、二学期になってから一夏君は周りに振り回される回数が増えてるような気がするわね……

 

「ですが、一夏さんは弱音一つ吐かずに動いてくれてます。それに比べて……」

 

 

 虚ちゃんがため息でも吐かんばかりに私と本音の事を見る。虚ちゃんが言いたい事を理解した私は、ばつが悪いので目を逸らしたが、本音は虚ちゃんの嫌味に気付かないようで首を傾げて笑っている。

 

「本音様、嫌味を言われてるんですよ?」

 

「ほえ~? 嫌味って、おりむ~が頑張ってるのは本当だよ~?」

 

「だから、お兄ちゃんが頑張らなきゃいけない原因は、楯無さんと本音だって虚さんは言ってるんだよ」

 

「そんな事ないよ~。おりむ~が頑張らなきゃいけない原因は、かんちゃんやおね~ちゃんにだってあるんだし、もちろん須佐乃男やマドマドにもあるよ? それにクラスでもおりむ~が頑張らなきゃいけない原因になってる人は居るし、私や楯無様だけじゃないでしょ~?」

 

 

 本音が言った事に、私も虚ちゃんも驚いた。意外な事に、本音は結構的を射てる分析をしていたのだ。

 

「それが分かってるのなら、本音も少しは一夏さんに迷惑を掛けるのは止めなさい」

 

「私、そこまでおりむ~に迷惑掛けてないよ~」

 

「朝自分で起きればそれだけで一夏さんの負担は減るんですから」

 

「そんな事言ったらおね~ちゃんだって、もっと料理が上手になればおりむ~に教わる必要がなくなって負担が減るんじゃないの~?」

 

「グッ!」

 

 

 珍しく綺麗に決まった本音のカウンターに、虚ちゃんは何も言えなくなっていた。

 

「本音様、今日は随分とキレが良いですね?」

 

「かんちゃんがおりむ~と仲良くしてると思うと、何か勢いが涌いてくる気がするんだよね」

 

「嫉妬?」

 

 

 如何やら本音は簪ちゃんが一夏君と二人きりでデートしてるのが気に食わないらしく、それで舌戦が好調なようだ。

 

「来週はおね~ちゃんだし、私の番は何時になったら来るの~?」

 

「再来週じゃ無いんですか?」

 

「そこはおりむ~用事があるようだから駄目なんだって~。だから早くてもその次の週かな」

 

 

 でも、順番はジャンケンで決める為、必ずしも本音の番になるとは限らないのだ。碧さんかもしれないしナターシャさんかも知れない。もしくは須佐乃男だと言う可能性だってあるのだ。

 

「早く私もおりむ~とデートしたい!」

 

「何を騒いでるんだ貴様らは」

 

「あっ、織斑先生」

 

 

 ドアを開けて織斑先生が部屋に入って来た。この部屋の先に寮長室があるので、入ってきてもおかしくは無いのだが、何故このタイミングでこの部屋を訪れてきたのだろう?

 

「コイツに寮の案内を頼む。私は忙しいからな」

 

「美紀ちゃん? 合格おめでとう」

 

「ありがとうございます。ですが、楯無様や虚さん、そして一夏様の推薦が無ければ落ちてました」

 

 

 合格点に5点届かなかったらしいのだが、私たちの推薦状が美紀ちゃんを合格させたらしいのだ。それでもあの美紀ちゃんがテストでそんな点数を採れるようになったなんて……お姉さん嬉しいわね。

 

「それじゃあ任せるからな。あと、あまり騒がしいようだと一夏に怒られるからな」

 

「おりむ~はまだ帰って来てないですよ~?」

 

「いえ、外に居るようですよ」

 

「須佐乃男?」

 

 

 須佐乃男がグラウンドの方角を睨みながら、そう言った。一夏君が学園に帰って来てるって事は、今日のデートは終わったと言う事なんだろう。それなのに何故一夏君は部屋に帰って来ないんだろう?

 

「如何やら今日も来てたようですね」

 

「来てた?」

 

「何の事~?」

 

 

 この中で事情を知らないのは本音だけなのだが、マドカちゃんも咄嗟には何の事か分からなかったようだった。

 

「いえ、もう居ないようですので」

 

「そうか…それじゃあ私はこれで」

 

「お疲れ様です」

 

 

 織斑先生が部屋から出て行った。恐らくだが見回りに行ったのだろ。碧さんも一礼して部屋から出て行ったのを見ると、碧さんも織斑先生同様見回りに行ったのだろう。

 織斑先生も碧さんも一夏君にその事を頼まれているのだし、気付けなかった分今から挽回しようって事なんだろうな。

 

「それじゃあ私たちは今から美紀ちゃんを案内するわよ~」

 

「一夏様を待たないんですか?」

 

「あれ~? 美紀ちゃんもおりむ~が居た方が良いの~?」

 

「い、いえ! そうじゃないけどほら! 皆は一夏様が居た方が良いかなと思って」

 

 

 美紀ちゃんが慌てだしたのを、私たちは疑いの目を向けながら見ていたが、如何やら見美紀ちゃんは一夏君に憧れのような感情を抱いているようだ。恋愛感情じゃなければそれで良いんだけどね。

 

「一夏君は途中で合流するだろうし、今は私たちだけで案内するわね」

 

「お願いします」

 

「まずはこの場所ね。此処は寮長室に続く廊下で、あの角からこっち側は関係者以外とくに用が無い限り立ち入り禁止だからね」

 

「あっ、でも美紀ちゃんは私に報告とかする場合は例外になると思うから、それだけは思えておいてね」

 

「分かりました」

 

 

 携帯だと誰かに聞かれてる恐れもあるから、報告は直接あってしてもらうようにしているのだ。この部屋なら一夏君も碧さんも私も居るから、纏めて報告出来るしね。

 

「それじゃあ次に行きましょうか」

 

「そうですね」

 

 

 美紀ちゃんは大人しく私たちの後についてきている。昔は私の隣にくっついて歩いてたのに、さすがに当主相手に昔のように振舞うのは難しいのかな?

 

「此処が一年の食堂だね」

 

「私たちはあまり利用しないけどね~」

 

「利用しないって、本音が自分で作ってるの?」

 

「ううん~、おりむ~が私たちのご飯を作ってくれてるから、滅多に学食には来ないんだよ」

 

「一夏様が? 何でも出来るんだね、一夏様って」

 

「完璧超人って言葉がピッタリだよね~」

 

「お兄ちゃんは昔から色々な苦労を積んできてるからね」

 

「そうなんですか」

 

 

 学年が同じと言う事で、美紀ちゃんは本音やマドカちゃん、須佐乃男と話している事が多い。別におかしくは無いのだけれど、ちょっぴり寂しい気持ちになるのは仕方ない事なんだろうな。いくら幼馴染と言っても、ここ数年ろくに会話してなかったし……

 

「ん? 何してるんだ?」

 

「一夏君! 美紀ちゃんを案内してるんだよ」

 

「そうか。てことは受かったんだな」

 

「あれ? 一夏君、メール見てないの?」

 

「メール? デート中は電源切ってたからな……」

 

 

 一夏君はポケットから携帯を取り出し、メールを見て苦笑いを浮かべた。

 

「刀奈も虚も推薦してたのか」

 

「そりゃ優秀な人材ですもの」

 

「更識だけでは才能を伸ばしきれないかもしれませんからね」

 

 

 現に更識だけ……てか四月一日家だけでは美紀ちゃんの学力を伸ばすことは出来なかったのだから。

 

「とりあえずおめでとう。これで同学年だな」

 

「一夏様と同じクラスになるようですので、これからもお願いいたします!」

 

「それじゃあ私とも同じだね~!」

 

「私ともですね。よろしくお願いします」

 

「私も一緒だ」

 

 

 多分問題児扱いされて、織斑先生のクラスに入れられたんだろうけど、実際面倒を見るのは一夏君なんだろうな。

 

「おめでとう、美紀」

 

「簪ちゃん! 私、受かったよ!」

 

「うん、知ってる」

 

 

 一夏君の背後に居た簪ちゃんに気付いた美紀ちゃんは、抱きつかんばかりの勢いで簪ちゃんの手を取った。

 

「美紀は頑張ったもんね」

 

「うん!」

 

「おじさんやおばさんの嫌味にも耐えてきたもんね」

 

「うん!」

 

 

 如何やら簪ちゃんとは付き合いがあったようだ。同い年だし私みたいに当主って肩書きが無い分相談しやすかったんだろうな。

 

「それじゃあ次の場所を案内しましょう」

 

「後何処が残ってるんだ?」

 

「大浴場と教室までの道程。後は美紀ちゃんの部屋まで案内して終わりかな?」

 

「それじゃあ俺は居ない方が良さそうだな。教室までの道程は兎も角、大浴場と部屋には行かない方が良いだろうし」

 

「大丈夫だよ。別に入る訳じゃ無いし、一夏君が居てくれた方が美紀ちゃんも喜ぶし」

 

「楯無様!」

 

 

 美紀ちゃんが顔を赤らめて抗議してきたけど、私はその抗議を取り合わずに移動を始める。憧れてるのなら傍に居たいだろうから気を利かせたのよ。それくらい分かりなさい。

 

「あれ? 一夏君。如何したの大勢で」

 

「ん? 静寂か。編入生を案内してるんだ」

 

「編入? こんな時期に? それとその人は?」

 

「この人は臨時教師の小鳥遊碧さんだ。此方も明日から赴任なので案内してるんだ」

 

「ふ~ん……珍しい時期に編入生と臨時教師が来るものね」

 

「入学早々転校してきたヤツも居るから問題無いだろ」

 

「そう言えばそうだったわね。凰さんもデュノアさんもボーデヴィッヒさんも編入だったわね」

 

「同じクラスらしいから、織斑先生に任されたんだ」

 

「そんなんだ、大変だねクラス委員長様は」

 

「まぁ俺一人じゃないからな」

 

 

 一夏君は振り返って私たちを見渡して鷹月さんに視線を戻した。それだけで事情を察した鷹月さんは、それ以上掘り下げる事はしなかった。

 

「それじゃあ私はこれで」

 

「ん」

 

 

 手を振った鷹月さんに、一夏君も左手を挙げて応えた。クラスメイトで一番仲の良い子は恐らく彼女なんだろうな。

 

「それじゃあ続きを回るか」

 

 

 一夏君はあまり乗り気では無さそうだけど、頼めばしっかりと仕事をこなしてくれるのよね。その後大浴場までの道と、教室までの道を案内して、残るは美紀ちゃんの部屋までの道程だけとなった。

 

「そう言えば、美紀は誰と同室なんだ?」

 

「一夏君の予想通りだったよ」

 

「日下部さんか」

 

 

 彼女は訳あって今まで一人部屋だったのだが、今日から美紀ちゃんと同室になるのだ。一夏君の話では、上がり症で人付き合いが苦手だそうだけれど、美紀ちゃんと同室で大丈夫なのかしら?

 

「カスミンの部屋はコッチだね~」

 

「本音ちゃんは相変わらずおかしな渾名をつけてるんだね」

 

「美紀ちゃんは無かったっけ?」

 

「あったけど恥ずかしかったので止めてもらいました」

 

「ミッキーは駄目って言われたんだよ~」

 

「だって、某ネズミの王国のキャラみたいなんだもん」

 

 

 てか、まんまそのキャラなんだけどね……確かに恥ずかしいか嬉しいかの二択になりそうな渾名ね。

 

「此処か?」

 

「そうだよ~! カスミン~! 遊びに来たよ~!」

 

「違うでしょ」

 

「本音様は本当に遊びたいんですね」

 

 

 本音のお惚けに、マドカちゃんと須佐乃男が反応する。何だか三人で一つの集団みたいになってきてるわね。

 

「本音? 何か用事……って! 織斑君!?」

 

「今日からこの部屋の住人になる人を案内しに来たんだ。こちら、四月一日美紀さん」

 

「はじめまして、よろしくね」

 

「で、此方が日下部香澄さん」

 

「ど、如何も……」

 

 

 ぎこちない挨拶をする日下部さんを見て、美紀ちゃんは困った顔で一夏君を見ている。

 

「彼女はちょっと人見知りなんだ。でも慣れれば大丈夫だからそれまで我慢してくれ」

 

「一夏様がそう仰られるのでしたら」

 

「……仰々しいしゃべり方も止めてくれないか?」

 

「いえ! 一夏様にはこのしゃべり方が相応しいと思ってます」

 

 

 一夏君の身体的能力と、圧倒的な頭脳に感服したようで、美紀ちゃんは碧さんに話しかける時以上に畏まった話し方をしているのだ。

 

「まぁ、こんな子だけど仲良くしてあげてくれ」

 

「織斑君の知り合いなの?」

 

「俺のと言うか、更識の関係者なんだ」

 

 

 同室になる日下部さんには、ある程度の事情を話しておいた方が後々楽になると考えた一夏君は、心配させない程度の情報を日下部さんに話した。

 

「なるほど、この前のような襲撃者に備えての警備の強化なんだ」

 

「俺一人で撃退出来るか如何かも分からないし、ウチのクラスは専用機持ちが居るから良いが、他のクラスには代表候補生すら居ないクラスもあるからな。まぁ、それが普通で、ウチのクラスが異常なだけなんだが」

 

 

 確かに、専用機持ちが七人も居るクラスなど、過去に例を見ないくらいの異常事態なのよね。美紀ちゃんも専用機は持ってないにしても、候補生レベルの操縦技術の持ち主だ。学園が特例で訓練機の一機を美紀ちゃん専用に改造すると聞いてるし、それくらいの事はしても問題無いくらいの働きも期待出来るでしょう。

 

「それじゃあ美紀、俺たちはこれで」

 

「はい、わざわざ案内してくださって、本当にありがとうございました!」

 

「お、織斑君、部屋って決定なの?」

 

「嫌なら直接織斑先生に言ってくれ。変更するか如何かは知らないけどな」

 

「あうぅ……」

 

 

 織斑先生が一度決めた事を簡単に変えない事は、日下部さんも分かってるんだろうな。捨てられた子犬のような目で一夏君に縋ってるけど、一夏君には効果は無かった。

 

「何日か過ごしてみて、それでも駄目そうだったら相談には乗るから」

 

「本当?」

 

「だから泣きそうな顔は止めてくれ。まるで俺が苛めてるみたいじゃないか」

 

 

 一夏君でもそう言う事を気にするんだ……てっきりそんな事を気にするほどの余裕が無いのかと思ってたけど、そうでもないんだね。

 

「分かった。とりあえずは一緒に住んでみるよ」

 

「そうしてくれ」

 

 

 美紀ちゃんたちと別れ、私たちも部屋に戻る事にした。

 

「碧さんは誰の隣にベッドを置くの?」

 

「空いてるのは本音様の隣かマドカさんの隣かのどちらかですけどね」

 

 

 一夏君の隣は不可侵になってる為、空いてるスペースはそこだけなのだ。何時かは一夏君の隣を陣取りたいと皆が思ってるのだが、それは当分先になりそうなんだよね。

 結局碧さんはマドカちゃんの隣にベッドを置く事になり、その日の夕食は一夏君が疲れてた為に学食で摂った。やっぱり一夏君のと比べると、一枚ほど落ちるのよね……でも美味しかった。

 明日からはまた授業も始まるし、碧さんと美紀ちゃんの任務もスタートする訳だし、色々と大変だわ。

 

「あれ? そう言えば他に派遣したの?」

 

「既に配置済みです」

 

「そうなんだ……」

 

 

 費用は一夏君と学園で折半らしいから心配してないけど、本来なら更識が出すべきなんだろうな……なんだか情けないわね。

 微妙な気持ちになったけど、寝たらそんな事は忘れてしまうだろうから深く気にする事は無かったのだった。




次回からちょっとだけ授業風景を見せて、さっさと虚とのデートまで行きたいと思ってます。
したい事も出来たので……
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