もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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とりあえず戦闘回は終わりですかね


残党処理

 一夏さんに頼まれてオルコットさんたちの部隊のフォローをしに行き、ある程度片付けてから一夏さんに通信をいれた。

 

「一夏さん、此方は終わりそうですが、そっちは如何ですか?」

 

『こっちは大体片付いたな。後は残党を追い出せば終わりだ』

 

「そうですか、なら良かったです」

 

『終わったら生徒会室に戻って状況を教えてくれ』

 

「一夏さんの方が早く終わるんじゃないですか?」

 

 

 残党と言う事は、殆ど片付け終わっているのでしょうし、一夏さんならその残党もさっさと片付けられるでしょうしね。

 

『いや、此処が終わったら他の場所の援護に行くから、生徒会室にはやっぱり虚が行ってくれ』

 

「分かりました。その代わり無茶はしないでくださいよ」

 

『……既に結構無茶はしてるんだが』

 

 

 正直に言ってくれたのは嬉しいですが、それはそれで心配なんですけど……一夏さんの無茶は普通の人の無茶とはまったく違うんですから……

 

「それじゃあ無茶は許しますけど、無理だけはしないでください」

 

『善処しよう』

 

 

 ほぼ毎日無茶してる一夏さんに、無茶するなは言っても意味が無かったんでしたね……無茶の範疇ならまだしも、一夏さんは無理する事もありますからね……非常に心配です。

 

「それじゃあ生徒会室に着いたらまた連絡します」

 

『了解』

 

 

 一夏さんとの通信を切り、私はオルコットさんたちに簡単な指示を出す。

 

「この場は鎮圧させましたが、まだ交戦中な場所があるはずです。オルコットさんとデュノアさんは二手に分かれて交戦箇所を探し、可能なら援護してあげて下さい」

 

「分かりましたわ!」

 

「了解です」

 

「ハミルトンさんたちは一旦後方に行き、非戦闘員の警護の手伝いをお願いします。もし何かあれば此方からまた呼びかけますので」

 

「分かりました」

 

 

 候補生では無い生徒は、やはり戦い方が荒く、エネルギーの回復に結構時間がかかりそうだったので前線から下げた。これが吉と出るか凶と出るかは分かりませんが、無理をされてISを壊されでもしたら一夏さんに怒られますし……

 

「とりあえず私は一旦生徒会室に戻りますので、何かあればオープンチャネルで報告をお願いします」

 

 

 作戦指揮なんて執ったこと無いですけど、一夏さんから任されてる以上最低限の仕事はしなければいけませんしね。

 

『おね~ちゃん、私は如何すれば良いかな~?』

 

「本音? 貴女今何処に居るの?」

 

『部屋の前だよ~。暇だからISを展開して指示でも貰おうと思って~』

 

「校内でISを展開したら後で怒られるわよ」

 

『緊急時だし問題無いでしょ~』

 

 

 確かに緊急時ではあるのだが、意味も無く展開したらさすがに怒られると思うのだけれど…まぁ良いでしょう。

 

「それじゃあ本音はそのまま待機。お嬢様の警護を最優先にする事」

 

『それじゃあ退屈なままじゃ~ん! 私も出撃したいな~』

 

「……それじゃあ一夏さんと交代で本音が前線に出る?」

 

『おりむ~と? おりむ~の代わりはさすがに無理だよ~』

 

「一夏さん、かなり無茶をしてるから、出来るだけ休ませてあげたいのよ」

 

 

 恐らくこのままだとまだ無茶を繰り返すでしょうし、私たちが心配してるって分かってても自己犠牲を惜しまない人ですしね。

 

『それじゃあおりむ~の正確な位置を教えて~! すぐに交代してくるから~』

 

「一夏さんは須佐乃男を纏ってるから、オープンチャネルで呼びかければ分かると思うわ」

 

『りょうか~い! それじゃあ私は急ぐから、バイバーイ!』

 

 

 本音との通信が切れ、私は再び生徒会室へと急ぐ。勝手に一夏さんの事をお嬢様の警護にしてしまったけど、身体の負荷などを考えれば一夏さんは前線に出るべきでは無いでしょうし、これ以上無茶を続ければさすがの一夏さんも最悪の事態にだって陥るかもしれませんし……本人は納得しないでしょうけども、此処は大人しく下がってもらいましょう。

 

『虚さん、簪です。こっちは大体片付きました』

 

「了解しました。それじゃあ簪お嬢様も本音と一緒に一夏さんの代わりに前線に出てください」

 

『一夏の代わり? 一夏に何かあったの?』

 

「いえ、さすがに無茶しすぎですので、大人しくしてもらう為にお嬢様の護衛をしてもらおうと思いまして」

 

『なるほど……でも、一夏が大人しく下がるかな?』

 

「首に縄をつけてでも下がってもらいます。説得は私も付き合いますので」

 

『虚さんに言われたら一夏も言う事聞くかな? お姉ちゃんだったら聞かなかったかもしれないけど』

 

「兎に角これ以上無茶させないためにも、簪お嬢様も前線に出てもらわなければ」

 

『分かった。本音と一緒ならそれなりに出来ると思うし、一夏の代わりは無理でもそれに準ずる働きくらいはしてみせる』

 

「お願いしますね」

 

 

 校内に入る為、私は一旦専用機を解除して生徒会室へと急ぐ。これ以上荒らさない為にも専用機は使わないでおいたほうが後々楽が出来ると思ったからだ。

 

「何だか思考が一夏さんと似てきたような気がしますね」

 

 

 誰も居ない廊下で一人つぶやき、私は廊下を疾走する。緊急時ですし、廊下を走った事は見逃してもらいましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 如何やら虚に心配させすぎたようで、簪と本音が俺の許にすっ飛んできた。如何やら刀奈の護衛に託けて俺を休ませるようだ。

 

「別にそこまでしなくても大丈夫なんだが……」

 

「でも~、おね~ちゃんが言うには、おりむ~は相当無茶してるって」

 

「まぁそれなりに無茶はしたが、そんなに心配されるほどでは無いんだよ」

 

「でも、一夏にこれ以上負担をかけない為にも、大人しくお姉ちゃんの護衛をやってくれないかな?」

 

「………」

 

 

 その言い方はズルイ。断れば泣くと雰囲気で訴えかけながらのお願いを、俺は断る事は出来ない。俺の無茶で彼女に泣かれるのはさすがに堪える……

 

「分かった、分かったからその顔は止めてくれ。俺が泣かせてるみたいだろ」

 

「実際おりむ~が原因でかんちゃんが泣きそうになってるんだけどね~」

 

「……スマン」

 

 

 本音に言われなくても何となく分かってはいたのだが、実際に言われると更に堪えるな……後で他の彼女や友人にも頭を下げておかなければいけないな、こりゃ……

 

「それじゃあ一夏、大人しくお姉ちゃんの護衛しててね」

 

「了解だ。でも状況によっては手伝いに行くかもしれないからな」

 

「無茶は駄目だよ~」

 

「無茶なんて日常茶飯事だろ。無茶はするかもしれないが、無理はしないと約束する」

 

 

 微妙に納得してないような顔を簪がしていたが、とりあえずは分かってくれたようで、俺は二人を見送って部屋まで戻った。

 

「怒られてしまいましたね」

 

「しょうがないだろ。お前が居なきゃまともに動けなかったんだから」

 

 

 ISを解除し、再び人の姿になった須佐乃男に肩を借りながら部屋まで向かう。気丈に振舞っていたのだが、結構ヤバイ状況なのだ。

 

「一夏様、私も心配してるんですからね」

 

「分かってる。さすがに無理し過ぎた」

 

「本当ですよ。逃げるのだって立派な戦法なんですから、これからは生身でIS二機に挑もうなんて思わないでくださいね」

 

「いけると思ったんだがな……」

 

 

 オータムだけならいくらでも相手出来たんだが、スコールのあの冷静さは迷惑極まりなかったな……

 

「無理はしてないって言ってたくせに、自分で無理だったって認めてるじゃないですか」

 

「リミッター外さずにあの二人の相手が無理だっただけで、他の事は別に無理だとも無茶だとも思って無いんだがな」

 

「リミッターを外したら冗談では無く無理するじゃないですか! お忘れかもしれませんが、私にだって少しばかりダメージは来るんですから!」

 

「別に忘れてはねぇよ。ただお前だってダメージを受ければ俺に来るって事忘れてねぇか? お前が何発か貰ったのでこっちも結構ヤバかったんだから」

 

 

 須佐乃男自身はISだか銃弾を喰らっても大した事無いのだが、そのダメージが俺に来れば結構効くのだ。つまりあの二人相手に本気を出さなければいけないくなったのは須佐乃男にも原因があるのだ。

 

「私は一夏様みたいに生身で銃弾を避けられるほどの身体能力を有してませんからね」

 

「だからって直撃はねぇだろ。せめて避ける努力をしてくれよ」

 

 

 十割では無いにしても、二割くらいはこっちに来るんだから……

 

「それを言うなら一夏様の疲労だってこっちに来るんですからね」

 

「ISが疲労を感じるのかよ」

 

「……そこは気にしちゃ駄目ですよ」

 

 

 つまり感じないんじゃないかよ……

 

「兎に角今は大人しく部屋の警護をしながら休んで下さい。一夏様がこんな状態だと敵にバレたら再び襲い掛かってくる可能性だってあるんですから」

 

「分かってるさ。でもスコールもオータムも既に戦線から離脱してるし、厄介な敵は居ないんだから、碧や美紀が居れば十分だろ」

 

「それでも一夏様が居るのと居ないのとでは天と地の差があるんですから、大人しく休んでて下さい!」

 

「はいはい……こんな時間に休んだ事なんて無いから、ちょっと不思議な感じだな」

 

 

 何時もなら授業中か生徒会室で書類を片付けているかのどっちかだし、屋敷に居る時も本を読んでるか碧の部隊に稽古つけてるかのどっちかだしな……何だか新鮮な気分と不安な気持ちが綯い交ぜになって気持ち悪いな……

 

「やっぱり大人しくしてなきゃ駄目か?」

 

「駄目です! 一夏様はそれでなくても働き過ぎなんですから」

 

「……そんなに言われるほど働いては無いと思ってるんだが」

 

「一夏様が思って無くても、周りで見てると働きすぎなんです! 良い機会ですから一夏様は休むって事を覚えて下さい!」

 

「覚えるもなにも、知ってはいるんだが……」

 

 

 ただ使わないが……休んでる暇があるのなら、兎に角動いていたいと思ってしまうのが長年苦労してきた結果なのだろうか。ちょっとでも時間が空くと不安になると言うか、何もしていないと焦ってくるんだよな……

 

「兎に角! 一夏様はこんな状態なんですから、大人しく警護と言う名の休憩をしっかりとして下さい!」

 

「部屋に着いたら虚に電話でもして状況の確認でもするか」

 

 

 戦線に出れなくとも出来る事はあるだろうし、片手間でも警護は十分出来るだろうしな。

 

「そう言う事をしてるから、一夏様は何時まで経っても休まないんですよ! 良いですか! 部屋に着いても連絡はしちゃ駄目です! 大人しく楯無様と一緒にベッドに入って寝てて下さい!」

 

「あのな、須佐乃男……刀奈は風邪引いてるんだから、一緒に寝たらうつるだろうが……」

 

「一夏様が風邪でも引かない限り休まないのなら、この際うつってもらった方が一夏様の為です!」

 

「どんな理屈だよ……」

 

 

 休まないんじゃなくって休めないの間違いだとは思うんだが、それを今言うとまた面倒になりそうだから黙ってよう……

 

「それじゃあ大人しくしてますか?」

 

「してるさ。現にお前の力を借りなきゃ動けないんだから」

 

 

 さっきも言ったように、俺は今須佐乃男の肩を借りている状況だ。この状況で暴れられる訳がないのだ。

 

「大体一夏様は私の事を全然頼ってくれないじゃないですか」

 

「何だいきなり」

 

「せっかくのハイスペックな私の事を頼らずに、最近では訓練機にうつつをぬかしてるじゃないですか!」

 

「嫉妬かよ……別にうつつをぬかしてる訳では無いんだが」

 

 

 一人でも、一つでも多く警備に使えるものを準備していただけなのだがな……自分で使えないのが残念だとは思ったが、別に本気で須佐乃男の事を蔑ろにしてた訳では無いのだ。

 

「一夏様とのリンクも、最近では半減してますし」

 

「縛られてるようで嫌だって言ってたのはお前だろうが」

 

「あれは冗談に決まってるじゃないですか! 一夏様との絆を誇示する為の冗談ですよ!」

 

「誰に向けて誇示してるんだよ……そもそもなし崩しとは言えお前だって俺の彼女なんだから、別段誇示などしなくても絆はあるだろうが」

 

「それでも! 私は一夏様と特別な関係だと誇示したかったのです!」

 

 

 乙女心……とは違った感情なんだろうな……相変わらずそう言う事はさっぱり分からない。

 

「リンクを半分に制限してたおかげで、色々とISについて分かってきたからな。今度からはもう少し強めに繋いでおいても大丈夫だろうから」

 

「本当ですね! 一夏様の言った事なんですから、絶対に守って下さいよ!」

 

「分かった、分かったから耳元で大声を出すな」

 

 

 それにそろそろ部屋に着くからな。刀奈が大人しく寝てるとも思えないが、一応病人相手なんだから無理させるのは良く無いだろう。

 

「一夏様だって無理出来る身体じゃないんですよ?」

 

「リンクを強めた途端にこれか……思考を読むのは止めろ」

 

「これが私の特権ですからね。止めろって言われても止めませんよ」

 

「コイツは……」

 

 

 さっきまで不貞腐れていたのにすぐこれだ。やっぱりコイツの考えは良く分かんないや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園のピンチだと言うのに、私は一人一夏君のベッドで横になっている……普段なら嬉しいし、昼までは嬉しかったのだが、今はちょっと不安と寂しさに苛まれている。

 

「何が学園最強よ、肝心な時にこんなんじゃ駄目だよ……」

 

 

 今のきっと大勢の生徒が学園を守る為に戦っているんだろうな。それなのに私はこんな時に風邪なんか引いて……

 

「一夏君や虚ちゃんにまた迷惑を掛けちゃったな……」

 

 

 何時も掛けているんだけど、今回のは本当に申し訳無いと思っている。現場で指揮を執るにしても、生徒会室で各方面に指揮を執るにしても、どっちにしろ生徒会長である私の仕事なのに、私の身体はまともに動かない。これは普段からサボっていた罰なのだろか……

 

「へこむわね、こんな考えをしてると……」

 

 

 風邪を引くとネガティブになりやすいって分かってるんだけど、こうもネガティブ思考になるとは思って無かったわね……誰か話し相手でも居ないと体調が治っても当分はネガティブ思考になりそうだわ……

 

「おーい本音ー! 悪いけど部屋の中に入ってきてくれない?」

 

 

 確か部屋の護衛として本音が居るはずだし、この際誰でも良いから話し相手が欲しかったのだ。

 

「呼ばれてますよ」

 

「俺は本音じゃ無いんだが」

 

「楯無様は本音様が護衛だと思ってるだけで、本当は誰でも良いんですよ」

 

「あれ?」

 

 

 ドアの向こう側から聞こえてきたのは、本音の声では無くもっと傍に居てほしかった人の声だった。

 

「よう刀奈、やっぱり寝てなかったな」

 

「一夏君!? え、何で? 一夏君は外で戦ってるんじゃ……」

 

「一夏様は無茶しすぎたので虚様に部屋の警護を命じられたんですよ」

 

「見ての通りボロボロだからな、さすがに大人しくしてる事にした」

 

 

 一夏君は須佐乃男に寄りかかるように部屋の中に入ってきて、近くの椅子に腰を下ろした。

 

「何を如何したらそんなになるのよ……」

 

「オータムとスコール相手に生身で戦ったらこうなった」

 

「正確に言うのならその前に歩兵たちとも戦ってますし、尋常では無い避け方で麻酔銃を避けてます」

 

「それで、一夏君は大丈夫なの!?」

 

「少し休めば大丈夫だろ。無茶はしたが無理はしてない」

 

「私から見れば十分無理してるんですけどね」

 

 

 須佐乃男の言う通り、一夏君は明らかに無理をしてる。それでも心配掛けまいと振舞ってくれてるんだろうな。

 

「一夏君、辛いんなら私のベッドで寝てても良いよ? 一夏君のベッドは私が使っちゃってるし」

 

「別に横にならなければいけないほどダメージは負ってないんだが」

 

「自分一人で歩けない人がよく言いますよ」

 

「何割かはお前のダメージの所為だろうが。脚に銃弾なんぞ喰らいおって」

 

「一夏様ならそれくらいで歩けなくなる訳無いと思ってたんですよ」

 

「……お前は俺を何だと思ってるんだよ」

 

「不死身の化け物ですかね」

 

 

 須佐乃男の顔を見れば、それが冗談だと言う事は明らかだった。だからなのか一夏君はグッタリと椅子の背もたれにもたれこんだ。

 

「不死身でもなければ化け物でも無いんだぞ、俺は。銃で撃たれればダメージを負うし、下手すれば死ぬ事だってあるんだ」

 

「分かってますよ。ですが冗談でも言っておかなければしんみりとしてしまう雰囲気でしたし」

 

「まぁいい。兎に角少し休めば大丈夫だから刀奈もそんなに心配するな」

 

「大丈夫なら良いけど、あんまり無理しないでよね。心配する人がいっぱい居るんだからさ」

 

「だから無茶はするけど無理はしてないっての」

 

「嘘、明らかに一夏君は無理してたでしょ」

 

 

 脚から流れてる血を見ればその事は一目瞭然だった。攻撃を喰らった訳では無いのだろうが、あの脚じゃまともに立つ事だって辛いはずだ。

 

「一夏君は無理も無茶もし過ぎなのよ。これからは少し反省して控えてね?」

 

「そうなると生徒会の仕事を誰かさんが真面目にやってくれないと駄目だな」

 

 

 一夏君は半分笑いながら私に視線を向けた。それにつられるように須佐乃男も私に視線を向けてきたのだけれど、私は気まずさと踏んでしまった地雷の威力に絶望しながら視線を逸らした。さっき反省してたけど、いざやれといわれても早々出来る訳無いんだから仕方ないよね。




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