もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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次辺りで一夏復活を考えてます…


美紀の覚悟

 昼に続いて夕食も食堂で済ますなんて初めてかもしれない……入学からずっと一夏がどっちかを担当してくれてたし、此処最近は両方とも一夏が作ってくれてた事が多いから、私たちは食堂にはあまり詳しくはない。正確に言うのならば食堂のメニューに詳しくないのだが、そこはあまり変らないだろう。

 

「おりむ~のご飯が食べられないなんて……」

 

「しょうがないですよ。一夏様は暫く安静にしてなきゃいけないんですから」

 

「でも~!」

 

「こんな時には本音が作れば良いんじゃない? 一夏の次に料理上手なのは本音でしょ」

 

「自分で作ってもしょうがないじゃ~ん! 私はおりむ~の作ってくれたご飯が好きなの~」

 

 

 確かに一夏が作ってくれたご飯は美味しいし、私たちとは比べ物にならないくらいのレベルだ。そして何より私たちが作るよりも遥に早く出来るので、空腹の時間が短くて済むのだ。

 

「ねぇ須佐乃男、おりむ~って後どのくらい安静にしてなきゃいけないの?」

 

「知りませんよ。第一何故私が知ってると思ったのですか?」

 

「だって須佐乃男、おりむ~と念話出来るしさ~。おりむ~に聞けば分かるんじゃないの?」

 

「一夏様本人もどのくらいかかるかの分かってない状況ですので、私に聞かれても答えは出てきませんよ」

 

「何でおりむ~はあんな無茶したんだろう」

 

「それは私たちを守る為ですよ。一夏さん以外にはスコールとオータムを同時に相手にして撃退出来た人は居ませんし」

 

「そうだね。口惜しいけど私じゃあの二人相手じゃ五分も持たなかっただろうな……だからお兄ちゃんは私を簪たちのところに行かせたんだよ。私を守る為と須佐乃男が早くお兄ちゃんの傍に行けるようにって」

 

「確かにマドカさんが来てから歩兵を片付ける速度が上がりましたからね」

 

 

 単純に人数が増えたからだけでは無く、マドカはあの程度の敵なら相手にならないくらいの実力があるからだ。そのマドカが五分もたないって、いったいどれだけの戦力なんだろう……

 

「せめて織斑先生が居たらまた違ったんだろうな~」

 

「政府の呼び出しでは仕方ないですよ。いくら千冬様とは言え国に逆らえば如何なるか分かりませんから」

 

「政府もタイミング悪かったよね。まさか襲撃される日に呼び出すなんて」

 

「それと同時にお嬢様が体調を崩しましたからね。今回はかなり不運が重なった出来事でした」

 

「碧さんと美紀をIS学園に連れてきてたのは良かったけど、それも無かったら如何なってたんだろう……」

 

 

 少なくとも一夏が戦ってた場所に相応の敵戦力が居ただろうから、一夏もかなり苦戦したんだろうな。良かった、碧さんと美紀がIS学園に来てくれてて。

 

「そう言えばその碧さんと美紀さんは?」

 

「美紀さんならあそこでクラスメイトと食事してますよ。碧さんは屋敷から何か連絡があったようで一度戻ってるようです」

 

「何かあったのかな~?」

 

 

 虚さんに報告が行ってるのは、お姉ちゃんは今報告出来る状況では無いからだろう。一夏が居れば一夏に報告したのだろうけど、一夏も今はダメだしね。

 

「医務室に行ける人って誰なんだろうね~?」

 

「如何したの急に?」

 

「その人にお願いすればおりむ~に会いに行けるかな~って」

 

「確かめてみましたが、千冬様と山田先生が知ってるそうですよ」

 

「じゃあかんちゃん、山田先生に聞きに行こう!」

 

「教えてくれないよきっと。だって普通の生徒には教えられないような場所なんでしょ?」

 

 

 それだけ機密性が高いのだ。いくら山田先生がうっかりだからって、そんな重要な事をペラペラとしゃべるようなドジは踏まないだろうな。

 

「脅せば行けるんじゃなかな~?」

 

「では本音様、山田先生を脅せばもれなく付いてくるのは何でしょう?」

 

「何かオマケがあるの~?」

 

「正解は千冬様のお説教ですね。しかも体罰付きの」

 

「……やっぱり止めておこう」

 

 

 須佐乃男にありえそうな現実を突きつけられ、本音は大人しく計画を退けた。

 

「千冬様のお説教を凌いだとしても、一夏様にも怒られるかもしれませんねー、無茶してまで会いに行って怒られるのはさすがに嫌ですよね?」

 

「そうだね~。おりむ~のお説教は疲れるもんね~」

 

 

 疲れるのは本音では無く一夏だと思うのだけども……まぁ怒られる方も疲れるって言うのは分からないでも無い。現に私もゲームのやり過ぎで一夏に怒られた事があるけど、その時は足が痺れてまともに立てなかったもんなぁ~……疲れてたのは一夏では無く私だったのを思い出し、本音の言い分も分からないでは無いと改めて思ったのだった。

 

「お兄ちゃんなら怒らないと思うけど、それでも姉さんには確実に怒られるだろうね。しかも体罰とか生易しいものでは無くって粛清がありそうだけどね」

 

「何時もの出席簿アタックですか?」

 

「もっと強いものがくるかもしれないよ」

 

「ビンタですか? 確か千冬様のビンタは並大抵の男なら泣くほどの威力だと聞いた事があります」

 

「泣くの?」

 

 

 須佐乃男の話に引っかかりを覚えて聞き返す。実際に織斑先生に叩かれた人が居るのだろうか? そしてその人は泣いたのだろうか?

 

「何でも一夏様を苛めていた不届き者の親を当時高校生の千冬様がビンタした所吹っ飛んで泣いて帰ったそうです」

 

 

 ……かなり過激な人なんだな……でもそれだけ一夏の事を大事にしてたんだなぁ~。

 

「そしてその後、ビンタした千冬様を一夏様がビンタして千冬様が泣いたそうですよ」

 

「やっぱりおりむ~が最強なんだね」

 

「本音もそんな事されたくなかったら大人しくしてるんだね」

 

「お兄ちゃんが本気になると必ずお兄ちゃんにも影響が出るから、なるべく本気にさせない事だね」

 

 

 そう言えば一夏の本気って見た事ないような……大体は本気を出す前に終わっちゃうし、ちょっと本気を出せば何処の国でも国家代表になれるだけの力があるから、一夏の本気と言われてもあまりピンと来ないのだ。

 

「そう言えば須佐乃男は一夏の本気を知ってるんだよね?」

 

「全力では無いかもですが、一応見たことはありますよ。その代わりもの凄い疲れましたけど」

 

「何が原因だったんですか?」

 

 

 虚さんが珍しく興味津々な様子。まぁ私も気になるんだけどね。

 

「一夏様と碧さんが交際してる事が千冬様にバレて、千冬様が認めないと暴走したのにキレて一夏様がある程度の力を解放して千冬様をボコボコにしてました」

 

「うわぁ……」

 

「織斑先生がボコボコって……おりむ~は怒らしちゃいけないんだね」

 

「そうですね。本音がボコボコにされたら姉として複雑な気持ちになりますし」

 

「お兄ちゃんにボコボコにされる状況になりえるのは本音と楯無さんくらいだしね」

 

 

 でも、一夏はその二人には甘いような気がする……もちろん私たちの事も甘やかしてくれるのだけれども、お姉ちゃんや本音は特に甘えてるような感じがするし、一夏も甘やかしてるような気がする。

 

「簪様? 如何かしましたか?」

 

「一夏の甘やかせの基準って何なんだろうなーって」

 

「大抵の事は一夏さんは甘えさせてくれますよ。お嬢様や本音を見ていれば分かると思いますが」

 

「そうなんだよ。その二人には特別甘い気がするんだ。マドカは別の意味で甘えさせてもらってるから仕方ないけど、お姉ちゃんと本音は立場的には私たちと一緒のはずなのに」

 

「言われてみればそうかも知れませんが、私や簪お嬢様だって一夏さんには甘えさせてもらってますよね?」

 

「でも、あの二人ほどじゃ無い」

 

「簪様の言う通りかもしれませんが、それを言うとナターシャさんや碧さんはより甘えられてないような気がするのですが」

 

「……あの二人は大人だし」

 

 

 自分で言っててなんて説得力の無い言葉なのだろう……そんな事が理由になる訳無いし、あの二人だって立場的には私たちと同じなのだ。

 

「兎に角、一夏様が回復したら思う存分甘えさせてもらえば良いじゃないですか。一夏様もそれくらいなら許してくれますよ」

 

「おりむ~に甘えたいのならかんちゃんからもっと甘えさせて欲しいオーラを出せば良いんだよ~」

 

「またいい加減な事を……」

 

 

 虚さんが呆れながら本音の事を見てたけど、そんなオーラが存在するのなら出してみたいと思ってしまった……だってそれがあれば一夏に甘えられるんだから……

 

「そろそろ戻りますか。碧さんも部屋で食事を済ませてるでしょうし」

 

「お姉ちゃんの看病をお願いしてきたけど、碧さんって家事出来るんだっけ?」

 

「確か簪様くらいは出来ると言っていたような気がしますが」

 

「それじゃあ大丈夫だね~! かんちゃんだって普通に出来るんだし」

 

 

 何だか貶されてるような気もするけど、確かにマドカや虚さんよりは出来るし、世間一般の女の子と比べれば結構上の方だとも思っている。現にクラスでは結構出来る方だから。しかし私たちの部屋の中限定にするならば、私は中の中って事になるのだろうか? それとも中の上かな? 兎に角平均的な評価しかされなくなってしまうのだ……

 

「一夏さんと同い年で、一番家事が出来るのは美紀さんでしょうか?」

 

「あれ~? 美紀ちゃんって家事出来ないんじゃなかったけ~?」

 

「謙遜してるだけでは? 実際に見た事無いので分かりませんが」

 

「今度作ってもらおうよ! そうすれば美紀の料理の腕も分かるし、もしかしたら美味しいかもしれないじゃない?」

 

「マドカ、自分が出来ないからって他人を当てにするのはダメだよ」

 

 

 そもそも美紀は部屋別だし……まぁ作ってもらえるのなら嬉しいけどね。

 

「じゃあ明日にでも頼んでみようか」

 

「それはいくらなんでも急じゃない? 美紀にだって都合があるだろうし」

 

 

 恐らくだが美紀は一夏に食べてもらいたいと思うんじゃないだろうか。恋愛感情かは別にしても、美紀は一夏の事が好きなんだと思う。勉強を見てもらったとか、入学の時に便宜を図ってくれたとかはあるだろうけども、美紀が一夏の事を好きになってもおかしくは無いと思ってる。なぜなら一夏は世界中が注目する男の子で、そしてかなりカッコいいのだから。

 

「かんちゃん? 急に黙って如何したの?」

 

「ううん、何でも無い」

 

「そうですか? なにやら難しい顔をしてましたけど」

 

「本当に大丈夫。ちょっと気になる事があっただけで、もう結論は出たから」

 

「解決したなら良いけど、何かあるんなら相談してよね? お兄ちゃんみたいに頼りにはならないかもだけど」

 

「うん、ありがとう」

 

 

 相談しても今回の事は解決しないだろうし、自分の中で結論は出したからこの事はもうお終い。それよりも明日の事を考えないとね。お姉ちゃんもまだダメそうだし、一夏なんて可能性すら無いだろうしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同室の香澄と一緒に大浴場に向かう途中で、私はふと気になった事を香澄に聞いた。

 

「ねぇ、香澄って一夏様と仲良いの?」

 

「えっ!? 何急に……」

 

「いやね、一夏様が普通に話されてるのって、本音ちゃんや須佐乃男、マドカちゃんと静寂くらいでしょ? それと香澄を足した計五人じゃない」

 

「クラスでももう少し話してる人は居るよ……」

 

「でも一夏様から話しかける人となるとそれくらいでしょ? だから仲良いのかなーって」

 

 

 静寂ほどでは無いにしても、香澄も一夏様と話してる姿が様になっているように見える。そもそも一夏様から話しかける人が少ないのだから比べようが無いのですがね。

 

「織斑君は私の恩人なんだ」

 

「恩人?」

 

 

 何だか私と似たような感じがするわね。でも香澄は私みたいに編入では無くちゃんと入試に合格して入学したんじゃ無かったっけ……

 

「実技も座学もダメで、これ以上成績が伸びなかったら辞めようと思ってた」

 

「もの凄い競争率に勝って入学したのに!?」

 

「うん……だってお父さんやお母さんに負担掛けたくなかったし」

 

「如何言う事?」

 

 

 香澄の成績とご両親の負担、いったい何の関係があるのだろう。

 

「見込みの無い事にお金を掛けられるほど、私の家は裕福じゃないから」

 

「それで、香澄の成績と一夏様とどんな関係があるの?」

 

「織斑君は落ちこぼれの私にも優しく接してくれた。ISの実技で全く出来なかった私の為に個人レッスンをしてくれたし、小テストの前に勉強を見てくれたりしてくれて、赤点を取らずにすんだんだ。静寂も勉強を見てくれたけど、やっぱりそれも織斑君が計画してた事だったんだよ」

 

「そうなんだ……実は私も一夏様に勉強見てもらってたんだ。そうでもなきゃ私がIS学園に受かる訳無かったし」

 

「そうなの? だって美紀って会長や四組の簪さんのお家に仕えてる名家だよね?」

 

「仕えてるんじゃなくって血縁関係なんだけどね。今は何だか仕えてるような感じだけど、楯無様と簪ちゃんは幼馴染だよ」

 

「そうなんだ……でも、そんな名家のお嬢様が何で織斑君に勉強を見てもらってたの?」

 

 

 随分と聞かれたく無い事を聞かれてしまったな……でも、私も聞いた以上答えなきゃダメだよね。

 

「私はね香澄、四月一日家の落ちこぼれって言われてるんだ」

 

「落ちこぼれ? だって美紀はISの操縦技術が候補生クラスだって聞いたよ?」

 

「それは小鳥遊隊長……香澄には小鳥遊先生って言った方が良いのか。兎に角先生が私を拾ってくれたからだよ。それまでは動かせる程度だったし、勉強は本音ちゃんと昔から良い勝負だからね」

 

「布仏さんと……」

 

 

 香澄が呆れてるのが分かる。何せ本音ちゃんはクラスで最下位を争ってるほど勉強が苦手なのだ。その本音ちゃんと良い勝負だと言う事はそう言うことだと理解したのだろう。

 

「私はIS学園の入試に失敗して、その後で小鳥遊先生に拾ってもらって部隊に入ったの。そこでISの操縦の腕を磨いてたのよ」

 

「そうなんだ……でも、織斑君のおかげでIS学園に入れたんでしょ? ご両親も認めてくれたんじゃないの?」

 

 

 そんなに現実は甘くないんだよ、香澄……

 

「むしろお父さんとお母さんは私の事を道具としか見てくれなくなった」

 

「道具?」

 

「先代の楯無様……生徒会長の更識先輩や簪ちゃんのお父様が亡くなった時、お父さんが楯無の名を継ごうとしてたらしいんだけど、先代の直系である刀奈姉さんが楯無の名を継いだのが面白く無いみたいで、一夏様を四月一日陣営に引き込む為に、私に色仕掛けをして来いって言ってきたの」

 

「色仕掛け……」

 

 

 香澄の視線が私の胸に下りてくる。いくら同姓とは言えさすがに恥ずかしいので私は腕で胸を隠す。

 

「如何しても楯無様に仕えるのが気に食わないらしくて、色々とやって来たらしいんだけど、どれも上手く行かなかった……と言うか、一夏様と虚さんに見破られて駄目になってたらしいんだけどね」

 

「そうなんだ……それで?」

 

「ん?」

 

「美紀は織斑君に色仕掛けをしたの?」

 

「する訳無いでしょ! 一夏様はその事を知っていて私を本家に住まわせてくれるように動いてくれたんだから!」

 

 

 あのまま四月一日家に居たら、きっと私は壊れていただろう。お父さんからはきっと色仕掛けも出来ないのかと罵られ、お母さんからはそれしか出来ないでしょうと馬鹿にされていただろうから……私だって好きでこんなに成長した訳じゃ無いのに。

 

「だから一夏様は私の恩人。感謝してもし足りない人。だから私は一夏様に命令されたら何でもする」

 

「何でも……」

 

「うん、多分香澄が考えてる事だって一夏様に言われたら躊躇無く出来る」

 

「それってかなり凄いよね」

 

 

 だって一夏様は私の恩人であり、刀奈姉さんや簪ちゃんを救ってくれた人でもあるんだから。だから私は一夏様に求められたら素直に応じるつもりだ。

 だけど一夏様はそんな事は望まないだろう。私が自由になれるように尽力してくれたのに、自分が縛りたくないとか言いそうだから。

 

「一夏様を守れなかったのが悔しいんだけどね……」

 

「昨日の襲撃? 私なんか何も出来なかったよ」

 

「香澄はISを使えなかったでしょ? 私はISがあったのに敵の侵入を防ぐので精一杯だった。せっかく一夏様が交渉してくれて造ってくださったのに……」

 

「織斑君は美紀の戦果に満足してると思うよ。だった美紀と小鳥遊先生が敵の侵入を防いでくれてなかったらこの学園は如何なってたか分からないから」

 

「それでも、悔しいよ……少しでも恩返しが出来るチャンスだったのに」

 

 

 小鳥遊隊長も気にしないでとは言ってくれたけど、それでもやっぱり悔しいのは悔しい……亡国企業が攻め入ってくる可能性があるから私がこの学園に呼ばれたのに、結局侵入を防いだだけで何も変っていない。むしろ敵に此方の戦力を知られてしまったのだ。

 

「織斑君が最初からISを使ってたら違ったんだろうけど、全ては終わってから言える事だよ」

 

「そう…なんだよね……でも、次攻めてきたら絶対に一夏様を守る! そして学園も守る!」

 

「学園がついでなんだ……」

 

 

 香澄に少し呆れられたけど、私にとって一夏様が何よりも優先されるんだよ。だって一夏様は今の私の生活を創ってくれたと言えるから……




女の子にそんな事思われてみたいですね…無理でしょうけども
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