もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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悪い子は叱らないといけませんからね


制裁

 織斑先生に用事が出来たので、私は今織斑先生を探して彼方此方歩き回っています。

 

「小鳥遊先生、織斑先生を見ませんでしたか?」

 

「いえ、見てませんね。美紀ちゃんは知ってる?」

 

 

 途中で小鳥遊先生に出会ったので聞いてみたが、やはり知らなかったようだ。

 

「デュノアさんを懲らしめるって授業終わりに引き摺って行きましたけど、何処に行ったのかは知りませんね」

 

「デュノアさんを?」

 

 

 この間特別指導室に入れられたばかりだと言うのに、また何か仕出かしたのでしょうか。そうなるとまた特別指導室って事なんでしょうか?

 

「一夏さんに聞けば分かると思いますけど」

 

「ですが隊長、一夏様は今生徒会の仕事を部屋でしてますし、邪魔するのは……」

 

「一夏さんなら少しくらいなら大丈夫だと思うよ。それと此処では隊長じゃなくって先生でしょ?」

 

「スミマセン……何か隊長って呼んじゃうんですよね」

 

「ちょっとずつ慣れていけば良いよ」

 

 

 そう言えばこの二人は更識さんの家で働いている人たちでしたね。それで小鳥遊先生が隊長で四月一日さんが部下でしたね。だから隊長と呼んでいるんでしょう。

 

「それで、織斑君に連絡するには如何すれば?」

 

「普通に携帯に掛ければ良いんじゃないですか?」

 

「いや、知りませんけど……」

 

 

 私は織斑君と特別に親しい訳じゃ無いですし、クラスでも織斑君の番号を知っているのは少数ですしね。

 

「それじゃあ私が掛けてみます。怒られたら庇って下さいよ?」

 

「一夏さんなら大丈夫だってば。美紀ちゃんに怒ったりはしないよ」

 

「そうでしょうか……」

 

 

 織斑君が怒るのは大体仕事や考え事をしてる時に邪魔されたり、あまりにしつこく付き纏ったりする時だけですし、それもあまり親しく無い相手だけですからね。信頼され、名前で呼び捨てにされている四月一日さんなら大丈夫だと私も思います。

 

「い、一夏様ですか? ……ええ、はい。ちょっと山田先生が聞きたい事があるようなのでお電話したのですが……はい? ……えぇ、ちょっと待ってください」

 

 

 四月一日さんが私の方を向いて携帯を差し出してきました。

 

「えっと?」

 

「一夏様が代わってほしいそうです」

 

「……怒ってる?」

 

「いえ、なにやら少し疲れてるようでした」

 

 

 電話越しでも分かるくらい疲れてるって事は、下手な事聞いたら機嫌を損ねて怒られるかもしれない……一度怒った織斑君を見た事あるから分かるけど、千冬さんが恐れてる理由に、今なら同感出来る気がします。

 

「も、もしもし……」

 

『山田先生、聞きたい事って何です? まさかまた仕事を溜め込んだ訳じゃ無いですよね?』

 

「え、はい! それは大丈夫です!」

 

 

 ついこの間織斑君に手伝ってもらったばかりなので、さすがに仕事は溜め込んでいない。それどころか最近は溜めないように努力しているんですから。

 

『それじゃあ俺に聞きたい事って何です? 授業なら明日から出ますけど』

 

「いえ、そうじゃなくって……織斑先生、いや千冬さんが何処に居るか分かりませんか?」

 

『何故それを俺に?』

 

「小鳥遊先生が織斑君なら分かるんじゃないかって……」

 

『碧が?』

 

 

 そう言えば小鳥遊先生は織斑君の恋人だったんでしたね。織斑君が彼女の事を呼び捨てにしたのに若干の違和感を覚えながらも、少し羨ましいと思ってしまいました。だって私には呼び捨てにしてくれる異性など居ないのですから……

 

『まぁ分からなくは無いですが……山田先生、駄姉に何の用です?』

 

「政府要請の書類で、一箇所だけ不備があったようなので修正を願いたいと通達が来まして」

 

『不備? ちゃんとしたはずですが』

 

「ええ、此方の不備では無く政府側の不備だそうです」

 

 

 実際に処理したのが織斑君なのを知っている私は、織斑君が此方側に不備が無かった事を知っていても別に驚きません。むしろ織斑君が処理して不備があったほうが驚きですよ。

 

『それって急ぎですか?』

 

「いえ、明後日までに送って欲しいと……」

 

『じゃあ今は行かない方が良いでしょうね。巻き込まれる可能性が高い』

 

「巻き込まれる?」

 

 

 そう言えば四月一日さんがデュノアさんが何か仕出かしたと言っていたような……それと関係があるのでしょうか。

 

「参考までに聞きたいんですが、千冬さんは今何処で何をしてるんです?」

 

『知りたいのなら場所教えますから、ご自身で確認してみたら如何ですか?』

 

「いやだって、巻き込まれる可能性が高いんですよね?」

 

『確実に巻き込まれるでしょうね。そしてその場に俺が居合わせたら再び三人は特別指導室でしょうね』

 

「……織斑君は来ないんですよね?」

 

『行くつもりは今のところありませんが、酷くなったら止めには行きますよ。無茶しない程度に』

 

 

 織斑君の無茶は、普通の人間にとっては無謀とも言える事です。つまりそれくらい危険だと言う事なのでしょうか……

 

「やっぱり教えてくれなくて良いですよ。急ぎでは無いので、後で寮長室に戻った時にでも千冬さんに頼む事にします」

 

『それが賢明でしょう。それじゃあ美紀に代わって下さい』

 

「分かりました。四月一日さん、織斑君が代わってほしいと」

 

「は、はい!」

 

 

 随分と緊張してるようですが、何で四月一日さんは織斑君の事を崇拝してるんでしょうか。

 

「如何かしました?」

 

「四月一日さんって織斑君と如何言う関係なんです?」

 

 

 事情を知っているだろう小鳥遊先生に聞いてみたが、彼女は黙って首を横に振った。つまりは教えてくれないと言う事だろう。

 

「知りたければ本人に直接聞いてください。少なくとも私の口から教えられる事は何もありませんよ」

 

「四月一日さんに聞いても教えてくれないと思いますけど……」

 

「なら一夏さんに聞いてみたら如何です?」

 

「もっと教えてくれなさそうですよ……」

 

 

 ただでさえ迷惑掛けているんですから、関係無い事でまた織斑君に迷惑を掛けたら、冗談抜きで殺されてしまうかもしれないんですから……

 

「はい……では失礼します」

 

 

 相手は電話なのにも関わらず、四月一日さんはペコペコと頭を下げている。同級生の織斑君相手にするような態度では無いと思うのですが……

 

「それじゃあ美紀ちゃん、見回りを再開しようか」

 

「その事ですが、一夏様から伝言が……」

 

 

 四月一日さんが小鳥遊先生の耳に手を当て、何か小さな声で織斑君からの伝言を耳打ちしました。いったい何を言っているんでしょうか……

 

「分かった。それじゃあ山田先生、織斑先生が見つかると良いですね」

 

「え、ええ……」

 

 

 なにやら含みのありそうな事を言われ、小鳥遊先生と四月一日さんは見回り再開の為に行ってしまった……

 

「触らぬ神に祟り無し、職員室に戻ってお茶でも飲みましょうか」

 

 

 不気味な気配を感じて、私は大人しく来た道を戻るために回れ右をしました。織斑君に釘をさされ、小鳥遊先生からも忠告じみた事を言われた為に、私は今千冬さんに会うのはとても良くない事だと思い知らされたのです。

 しかし大人しく帰ろうとした時に限って、相手を見つけてしまう事が多いのが私なのです。つまり如何言う事かと言うと、私の目の前に千冬さんが立っているのです……

 

「真耶か、良い所で会った」

 

「私はとても悪い所だと思ってます……」

 

「そうか? まぁいい。少し手伝ってくれんか?」

 

「手伝う? 何をですか?」

 

 

 とてつもなく嫌な感じがするのだが、今此処で千冬さんの頼みを断るなんて事は私には出来ない。恐らく織斑君以外の人間には出来ないだろう。

 

「コイツの性根を叩き直すんだが、生憎アリーナが使えないだろ? だから武道場を使いたいんだが、貸切にしてくれんか? お前の名前で」

 

「何で私の名前なんです!? 千冬さんの名前でも出来るじゃないですか!」

 

「私の名前だと一夏にすぐバレる。そうなるとコイツの性根を叩き直す事が出来なくなってしまう」

 

 

 さっきから千冬さんがコイツと呼んでいるのは、襟をつかまれ窒息寸前になっているデュノアさんの事だ。

 

「デュノアさんが何かしたんですか?」

 

 

 いくらデュノアさんが反抗的でも、こんな短期間に問題を起こすなんて思えませんし……

 

「教師に暴言を吐いた挙句反抗したからな。キッチリと指導してやらなければいけないだろ」

 

「……暴言と反抗ですか、千冬さん相手にですか?」

 

「だから私が直接指導するんだろうが。だから武道場の件、頼んだからな」

 

「ちょっと千冬さん!? 私、まだ引き受けるとは……行っちゃった……」

 

 

 別に貸しきらなくても千冬さんならすぐに指導出来ると思うんですが……

 

「仕方ない。逆らって私まで指導されるのは嫌ですし、大人しく言われた通りにしましょう」

 

 

 今日は全面的に部活動は休止ですし、武道場を使いたがる物好きも居ないでしょうし、簡単に押さえられるでしょうしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美紀さんから電話があったようですが、一夏さんはその事は一切私たちには話してくれずに黙々と作業しています。

 

「あの、一夏さん」

 

「ん? 如何かしたか?」

 

「いえ、先ほどの電話は……」

 

「山田先生が駄姉を探してるって言ってた」

 

 

 織斑先生を探してる山田先生が、何故美紀さんを通じて一夏さんに電話してくるのでしょうか?

 

「俺ならあの阿呆の居場所が分かるんじゃないかと思ったんだろ」

 

「なるほど……それで、教えてあげたんですか?」

 

「いいや、教えなくてもあの人なら見つけられる……いや、見つかるだろうしな」

 

「?」

 

 

 ニュアンスが代わったような気もしますが、一夏さんの事ですから何かちゃんと意味があるのでしょうね。

 

「さてと、一息入れるか」

 

「そうですね。そろそろお嬢様が限界ですし」

 

 

 視線をベッドに向けると、頭から湯気が出てるんじゃないかと思うくらい煮詰まっているお嬢様がそこにいました。

 

「おい、刀奈? 大丈夫か」

 

「うにゅ~……細部って言うから簡単だと思ってた……」

 

「何言ってるんだ。細部が一番大変だろうが」

 

「そうですよ。大まかな事は大まかで良いんですが、細部って言うくらいなんですから細かいですよ」

 

 

 お嬢様は普段から仕事をしてないので勘違いしてるようですが、大まかに事を決めるのよりも細部を詰めていく方がよっぽど大変なんですから。

 

「とりあえず一旦止めておけ。今お茶淹れてくるから」

 

「甘めでお願い……」

 

「了解」

 

 

 一夏さんはキッチンに向かってお茶の準備を始めました。その間に私はお嬢様が頑張って細部を詰めている体育祭の書類に目を通します。

 

「なかなか頑張ってますね」

 

「一夏君も虚ちゃんも頑張ってるのに、私だけ怠ける訳にもいかないでしょ」

 

「普段からそれくらいの思いで居てくれると助かるのですが」

 

「逃げられないの分かってるくせに……ゴホ」

 

「大丈夫ですか?」

 

 

 お嬢様がこれほど弱ってるのも珍しいので、私も如何扱って良いのか困るんですよね……やはり一夏さんに任せるのが……って、こうやって一夏さんに頼りっきりだからいざと言う時に困ってしまうんですよね。ですが、お嬢様が普通の風邪か如何かも分からないので、下手に看病してうつされたら困りますし……

 

「準備出来たぞーって、如何かしたのか?」

 

「お嬢様が咳きを……」

 

「咳くらい前からしてるだろ? 何をそんなに慌ててるんだ?」

 

「い、いえ……一夏さんにまかせっきりだったので、お嬢様の体調が優れないのを忘れかけてまして……」

 

「ヒドーイ」

 

 

 お嬢様は少しおどけながらも非難の目を私に向けてきました。これだけ見ると元気そうなので忘れてしまうんですけどね。

 

「結果は夜には出るだろうし、それを見てからじゃないと如何とも言えんな」

 

「私ってそんなに重症だったんだね……」

 

「もしかしたらただの風邪かも知れんがな」

 

「それでも此処まで大げさになるなんて思って無かったわよ」

 

 

 お嬢様は元気が取り得だと豪語するだけあって、楯無を襲名する以前からこれほど寝込んだ事は無かったんですがね。

 

「それで一夏君、お茶は?」

 

「ん? ああはい」

 

 

 一夏さんは淹れてきてくれたお茶を私とお嬢様に手渡し、ご自身はコーヒーを少し飲んで私同様お嬢様が作業していた書類に目を落としました。

 

「ふーん、結構苦労してるみたいだな」

 

「さすがに手伝ってとは言えないからね」

 

「別に手伝っても良いぞ? こっちはそろそろ終わるんだし」

 

「そうですね。後少しで終わりますね」

 

「嘘っ!?」

 

 

 お嬢様は私と一夏さんが処理した書類に目を通し、そしてガックリと肩を落としました。

 

「やっぱり二人の処理スピードは私なんかじゃ太刀打ち出来ないわね」

 

「太刀打ちするつもりだったんですか? お嬢様が普段から仕事してないのは知ってますので、あまり無謀な事はしない方が良いですよ」

 

「無謀とか言わないで! ……ゴホ」

 

「はら、あまり騒ぐな。お前は一応病人なんだからな」

 

「一応って……一夏君、何だか酷くない?」

 

「酷くない、酷くない。刀奈がふざけなければもう少し優しく接してやるが、散々ふざけたからな。これくらいが妥当だろ」

 

 

 一夏さんはお嬢様をベッドに押し倒し、シーツを掛け直してあげました。

 

「後はこっちに任せて、お前は休んでるんだな」

 

「そうですね。お嬢様の症状が何であれ、とりあえず休んでるのが一番だと思いますよ」

 

「うん……ありがとう」

 

 

 お嬢様はそれだけ言ってシーツの顔を隠してしまいました。私は一夏さんと顔を合わせて、そして同時に笑い出してしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不良生徒を更生させるもの私の大事な仕事だ。教師に逆らい襲い掛かろうとしてきたデュノアを更生させる為に、私は結構長い時間をデュノアに費やした。

 

「少しは反省したか?」

 

「僕は……何も悪い事してない……」

 

「まだ認めないか。教師相手にISで襲い掛かったのは悪い事では無いとでも?」

 

「貴女が僕を不当な扱いをしたからでしょうが……」

 

「反抗する気力はまだ残ってるようだな。ならもう一度行くぞ!」

 

 

 先ほどからデュノアとの徒手格闘をしているのだが、候補生だけあってなかなか筋が良い。だが荒削りな部分が多く、私と対等な勝負は出来ていないのだ。

 

「僕は、貴女が権力を振りかざして僕たちを痛めつけているようにしか思えない!」

 

「何故私がお前ら如きを痛めつけなければならない?」

 

「強者の立場を楽しんでるんだ!」

 

「そんな趣味は私には無い。お前の妄想だそれは!」

 

「ッ! 貴女こそさっさと認めたら如何です? 自分が気持ち良くなる為に僕たちを痛めつけてるって!」

 

 

 コイツの妄想も此処まで来ると立派とさえ思えてくる。大体私には誰かを痛めつけて興奮するような性癖は無いんだがな……

 

「セシリアたちだって貴女に苦しめられた!」

 

「暴言を吐かれた私の心の方が苦しいわ!」

 

「貴女に人の心が分かる訳無い! この化け物め! ッ!?」

 

 

 その言葉を聞いた途端、私は自分の力を制御出来なくなった。そのワードは遥昔、あのゴミ同然の両親に言われた最後の言葉。一夏とマドカを連れ去ろうとしたあいつら相手に立ち向かい、一夏だけを取り戻せた時に言われた、実の娘に向けて言うような事じゃない言葉。私のリミッターを解除する言葉でもある。

 

「お、織斑先生?」

 

「デュノア、貴様は言ってはならない言葉を言い放った。その度胸に賞賛を送って、特別に見せてやる」

 

「な、何をですか……」

 

 

 デュノアの顔が私の視界いっぱいに広がる。恐怖に染まった顔だ。あの時と同じ、あのクソ親共と同じ……

 

「私の本気をだ!」

 

「ヒィッ!?」

 

 

 悲鳴を上げたデュノアに、私は私の腕を振り下ろした。しかし捉えた感触は無い。

 

「誰だ!」

 

「嫌な気配がして見に来てみれば、やっぱりアンタかよ」

 

「一夏!」

 

 

 何故一夏が此処に居る。一夏は部屋で生徒会の仕事をしてるんじゃ無かったのか!

 

「邪魔するな、一夏。ソイツは言ってはならない事を言った。この私にだ! よって粛清をする」

 

「ああ、聞いていた。確かにシャルは言ってはいけない事を言った。だが教師が生徒に体罰は如何なんだ?」

 

「これは体罰では無い。教育的指導だ!」

 

「それは現代では同じ事だ。それくらい貴女にも分かってるだろ?」

 

「退け、一夏。今のお前では私を止められん」

 

「そうだろうな。無茶したら刀奈や虚に怒られる。簪や本音を泣かせてしまう。だがな、アンタが暴走したら悲しむ人も居るんだよ」

 

「誰だ……ッ!?」

 

 

 そう言って一夏はずっと背後に居たであろう人物を前に出した。

 

「マドカ……」

 

「姉さん、姉さんがこんな屑の為に教師を辞める必要なんて無いよ」

 

「屑って僕の事!?」

 

「シャルは黙ってろ」

 

 

 一夏に睨まれてデュノアは大人しくなった。まさしくヘビに睨まれたかえる状態だ。

 

「コイツは前みたいに何処かに閉じ込めておけば良いでしょ? 姉さんが始末する価値も無いよ」

 

「そう……だな……」

 

 

 マドカに説得され、私は平常心を取り戻した。それと同時に涌いて出た疑問を、一夏に問う。

 

「なぁ一夏、何でこんな所に来たんだ?」

 

「検査結果を取りに来たんだ。マドカは付き添い」

 

「えへへ」

 

 

 一夏に頭を撫でられて。気持ち良さそうにマドカが笑った。う、羨ましいなんて思って無いんだからな!

 

「検査結果とは何だ?」

 

「刀奈の血液検査。風邪か如何か疑わしくってな」

 

「それで?」

 

「案の定ウイルスだったさ。まぁ抗体を打てば大丈夫だろうが、二,三日は安静にしてもらうがな」

 

「誰が、何の為に」

 

 

 更識姉が誰かに怨まれるような事に、少なくとも私には心当たりが無い。

 

「俺も分からん。だが、ロシア国籍の刀奈を面白く思わない連中になら、アンタも心当たりがあるだろ」

 

「日本政府か!」

 

「あまり憶測で物を言うべきでは無いだろうな。何処で聞かれてるか分からない」

 

 

 一夏に言われ、確かにそうだと思い私は声をひそめた。

 

「政府の人間が如何やって更識姉にウイルスを打ち込んだんだ?」

 

「遠隔操作出来る何かを使ったんだろうが、何時打ち込まれたのかがはっきりしない事には特定出来ん」

 

 

 一夏は視線でデュノアを押さえながら首を捻った。

 

「とりあえず帰るわ。沸点が低いのも考え物だな」

 

「じゃあね、姉さん」

 

 

 一夏とマドカが部屋に帰っていき、私は学長に例の部屋を使う許可を貰うために電話を掛ける。その結果、最短でデュノアは特別指導室に逆戻りする事になった。…まぁ、あの部屋自体デュノアが初めての使用者なんだがな。




ドロップアウトは可哀想だったので、再び特別指導室に入れる事にしました。ただし今度は一人だけですが…
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