お兄ちゃんが専用機製造を終えた為に、今日はお兄ちゃんが作った料理が食べられる。もちろん楯無さんや簪が作ってくれたものも美味しいんだけども、やっぱりお兄ちゃんのが一番なんだよね。
「おりむ~のご飯、おりむ~のご飯!」
「本音、浮かれすぎじゃない?」
「マドカさんもさっきからそわそわしてますよ?」
本音の事を指摘した私だけども、如何やら私も浮かれてるらしい。たった数日お兄ちゃんのご飯を食べて無いだけで、こんなにもそわそわするなんて思わなかったな。
「ところで、お姉ちゃんは何で死にそうになってるの?」
「生徒会の業務をかつてない速度で終わらせたために、体力が限界に達したようなのです」
「そうなんだ……これに懲りたら普段から真面目に生徒会の業務をやったら?」
「今言われても……」
楯無さんがヘロヘロになってるので、私たちは写真を撮る。IS学園最強である生徒会長様も、生徒会業務には勝てなかったらしいから。
「でも、同じ量……いや、それ以上やった一夏が平気で、お姉ちゃんがヘロヘロって、普通逆じゃないの?」
「一夏君を普通の人間だと思っちゃ駄目よ……彼は私たちとは比べ物にならない体力なんだから」
「ほう。せっかく刀奈に甘い物でもと思って作ったんだが、如何やらいらないようだな」
お兄ちゃんが楯無さんに作ったというのは甘そうなケーキ。あれを食べれば疲れなど吹っ飛んで行ってしまいそうだな……食べてみたい。
「刀奈はいらないようだから、みんなで分けて良いぞ」
「待って! 食べる! 食べさせて下さい!!」
お兄ちゃんのイジワルに、楯無さんは本気で慌てている。そんなに慌てなくてもお兄ちゃんはちゃんと食べさせてくれるのにね。
「それで一夏君、もちろん私たちの分もあるのよね?」
「一応はな。刀奈のよりかは甘さ控えめだが」
ナターシャ先生が確認の為に聞くと、お兄ちゃんは奥から別のケーキを持ってきてくれた。甘さ控えめでも美味しそうだな……
「お前たちは食後のデザートな。刀奈ほどバテバテではないんだし」
「やったー! おりむ~のケーキだ~!」
「はしゃぎすぎですよ、本音様」
「須佐乃男だって顔がにやけてるよ?」
みんな程度の差はあれ、お兄ちゃんのケーキは楽しみなのだ。だってお兄ちゃんは私たちが喜ぶようにしてくれてるのだし、私たちは作ってもらえた事が嬉しいのと、お兄ちゃんに構ってもらえてるのが実感できるから。
「それじゃあ今から飯を作るから、もう少し待ってろ」
「分かった~」
「一夏様相手だと、本音様も聞き分けが良いですね」
「お兄ちゃんに逆らうほど、本音もバカじゃないもんね」
お兄ちゃんに逆らえば、ゴミ置き場で生活させられるのだ……しかも監視は姉さんという末恐ろしい事になるのだからね。
「ねぇねぇおね~ちゃん、セッシーたちは修学旅行にいけるの~?」
「私に判断する権利はありません」
「じゃあ楯無様は~?」
「もぐもぐ……え?」
楯無さんはお兄ちゃんが作ってくれたケーキを頬張っており、本音の疑問は聞いてなかったようだ……それにしても、美味しそうなケーキだな……
「オルコットさんたちは修学旅行にいけるのかって聞いたんだよ、お姉ちゃん」
「そうね~……セシリアちゃんは反省の色が見えてきてるらしいんだけど、シャルロットちゃんと箒ちゃんは今のままだと無理そうなのよね……まぁ最終判断は織斑先生が下すんだけどもね」
「ナターシャ先生や碧さんは何か聞いてないんですか?」
虚さんが先生二人に聞いたけども、二人は同時に首を左右に振った。見張りは任されれてるけど、判断には関係無いのかな?
「判断するのは織斑先生だし、意見を聞くのは一夏君と山田先生だけだしね」
「私たちは見張りをするだけです。一夏さんに聞かれはしましたけども、最終判断には影響しないでしょうね」
「そうなんだ~。でも、ユッキーやツッキー、ハナハナが増えたんだし、セッシーたちが来なくても問題無いんじゃない?」
「あの三人の費用は一夏様が出すようですよ?」
「お兄ちゃんが? 学園じゃないの?」
だってあの三人は学園所属の訓練機のはずなのに……お兄ちゃんが費用を持つ理由が分からない……
「学園としては、訓練機が修学旅行に行く意味が分からないって事で拒否したそうです。一夏さんが予算を浮かせて何とか学園の資金を保ってるのに、なんだかケチだとは思いますけどもね」
「しょうがないわよ。一夏君が予算を確保したからといって、それは一夏君のお金って扱いにはならないんだから」
ケーキをホールで食べ終えた楯無さんが会話に加わってくる。小さいヤツとはいえ、ケーキのホール食いだなんて……女の子の憧れを実行出来て羨ましいですね……
「そもそも何故IS学園は一夏君に予算の確保を頼んだの? 普通は教員か理事長の仕事なんじゃ……」
「一夏さんがそちらも優秀だったので、学園長が一夏さんに頼んだそうなんです。更識の資金も一夏さんに増やしてもらいましたし、一夏さん個人も株をやってますので……」
「そういえば私の給料は一夏さんが増やした資金から出てるんでしたね」
「まぁ更識内部も今は問題だらけだからね。一夏君が増やしてくれた資金は確保しておかないと怒られちゃうのよ」
そういえば美紀のお父さんが亡国企業に資金の横流しをしてるらしいんだっけ。でも本音にはその事を教えてないとか……うっかり美紀に言いそうだからってお兄ちゃんが言ってたけど、確かに本音ならありえそうだよね。
「明々後日出発なのに、私たち何も用意してないよね?」
「修学旅行の話? また急に戻ったね」
「でも、確かに何も準備してない……」
前日に準備すれば大丈夫なんだろうけども、絶対に焦るからな……せめて明日から準備しておいたほうが良いのだろうか?
「でも持っていくものって着替えくらいでしょ? そんなに焦る必要は無いと思うけど」
「夜遊ぶゲームとか持っていかなきゃ! 臨海学校では遊べなかったし」
「しょうがないよ。あの時は一夏と織斑先生が同じ部屋だったんだし」
「そうでしたね。あの時私は擬人化したんでしたね」
「そうなんだ……」
その時の事を私は知らない。まだ亡国企業に居たし、姉さんの事を勘違いで恨んでいた時だもんね……でも、お兄ちゃんが活躍したのは知っている。
「その時にナターシャ先生は一夏君に助けてもらったんですよね?」
「うん。この子が暴走させられちゃってね。一夏君が助けてくれなかったら今頃海に沈んでたかもね」
「大げさでは? アメリカ軍だって回収に来たでしょうし」
「それだったら今頃は収容所かな。どうもアメリカ軍はこの子を暴走させて何かをしたかったらしいからね」
ナターシャ先生が銀の福音を見せると、楯無さんと虚さんが気まずそうに視線を逸らした。多分二人はその理由を知ってるんだろうな。
「ナターシャ先生も碧さんも修学旅行に行っちゃうとなると、学園の警備が手薄になるわね」
「専用機持ちも大半が一年生だもんね」
「その間に学園が狙われたら大変だ~!」
本音がワザとらしく慌てると、私たちは同時に噴出した。緊張してるよりもこっちの雰囲気の方がよっぽど良いわね。
「ほれ、完成だ。熱いから気をつけて食べろよ」
「わ~い! いただきま~す……熱ッ!?」
「だから言ったんだ……」
慌てて食べた本音が口の中を火傷して、お兄ちゃんに治療してもらってる……かわいそうだけど羨ましいのは何でだろう……
「食べ終わったらみんなでお風呂に入ろう!」
「どうぞご勝手に。俺は片付けをしてるから」
「何言ってるの? 一夏君も一緒に決まってるじゃない♪」
「……刀奈は先に寝たいようだな」
「じょ、冗談よ冗談……だからその拳を開いてくれると嬉しいかな?」
割かし本気で怒ったお兄ちゃんに、楯無さんは冷や汗を垂らした。お兄ちゃんの恐ろしさは此処に居る全員が知ってるし、怒気だけで気絶する事も知っている。だから楯無さんが怒らせたのと同時に、私たちは全員物陰に隠れたのだった。
「……別にそこまで本気で怒ってないんだが」
「ですが、万が一って事もありますし……一夏様の怒気は私たちには強すぎですので」
「そうそう。この間香澄たちが気絶したしね」
「あれは駄姉と駄ウサギが悪いだろ、如何考えても」
お兄ちゃんの作ってくれたご飯を食べながら、私たちは談笑する。口に入れたままだと怒られるけども、お箸をおけばお兄ちゃんは会話しても良いって認めてくれたのだ。ホントは嫌なんだろうけども、お兄ちゃんもある程度の融通を利かせてくれたんだろうな。
「ねぇ一夏、何時も思ってたんだけど」
「何だ?」
「何で一夏は自分の分を作らないの? 何時もパンや残り物で済ませてるから気になるんだけど」
「自分で作ったものを食べてもな……満足がいかなくて作り直す可能性があるからなるべく食べないんだよ」
「でも、私たちのは食べてくれるよね?」
確かにここ数日、お兄ちゃんには楯無さんや簪が作ったお弁当が渡されていて、お兄ちゃんはそれを残さず食べている。お兄ちゃんより料理の腕が下な楯無さんや簪のお弁当は食べるのに、自分の美味しい料理は食べないなんて、お兄ちゃんはおかしいな。
「刀奈や簪が作ってくれたのは、満足出来るから良いんだが、自分のだとどうしてもダメなところを探してしまうんだよ。だからなるべく自分の料理は食べないんだ」
「一夏君と比べられるほど、私たちのは美味しくないわよ?」
「彼女が作ってくれたものをマズイと思うわけ無いだろ。まぁやり過ぎなのは食べないが」
「だからいったんだよお姉ちゃん。あれはやり過ぎだって」
「卵焼きは苦手なのよ!」
楯無さんが作った卵焼きは、砂糖を入れすぎて黒焦げになっていたのだ。さすがのお兄ちゃんもあれだけは食べてなかったけど。
「とりあえず時間が出来たら纏めて教えてやる。虚やマドカも教えるといってからあまり時間が取れなかったしな」
「約束だよ、お兄ちゃん」
「ああ」
そういってお兄ちゃんは私の頭を撫でてくれる。義妹の特権としてこうやって甘える事が出来るのだ。
「いいな~マドマドは」
「でも、本音だってお兄ちゃんに撫でてもらった事あるでしょ?」
「もちろん!」
むしろ私は本音たちの方が羨ましいのだ。私は何処までいっても義妹でしかない。義理だからそれ以上も望めるのだけども、お兄ちゃんにとって私はどうしても妹なのだ。だから彼女である本音たちの方が、私から見たら羨ましいし上に位置しているのだ。
「さて、食べ終わったしお風呂にしましょう。一夏君は片付けするみたいだから、私たちだけだけどね」
「当たり前です! お嬢様は最近悪ふざけが過ぎますよ」
「ごめーん」
謝る気ゼロの謝罪に、虚さんが頭を抱えてます。楯無さんは悪びれた様子も無く、お風呂のしたくを始めているので、簪が少し怒った表情になっている……お風呂で問題起こらなければ良いんだけどな……お兄ちゃんが居ないから止められる人居ないし……
早々に片付けを済ませた俺は、問題児三人の様子を見に行く為にゴミ置き場へと向かった。ついでに晩飯も届けるんだがな。
「一夏、こっちだ」
「何でそんなとこに居るんだ?」
「隠れてあの三人の作業を見ていたんだ。やはりオルコットは反省してるようだな」
「後の二人は?」
シャルと篠ノ乃はなかなか反省の色が見られないんだよな……これ以上キツくすると反動で余計問題児になりかねないし……
「駄目だな。デュノアは相変わらず復讐とか考えてるし、篠ノ乃は自分が悪いとはまったく思って無い。これじゃあ解放はおろか学園に留まれるかすら怪しくなってきた」
「最終判断は明後日か……なぁ駄姉、明日あの三人と模擬戦をさせてくれないか?」
「三人? オルコットもか?」
「一応な。自分の力を正確に把握してるのか、そしてそれを反省に生かせるのかを見たい」
「何なら今からでも良いが?」
「須佐乃男は風呂だぞ。そして俺は他のISは月乃たちくらいしか使えん」
その三人は部屋で寝てるしな……だから今すぐは出来ないのだ。
「オルコットのブルー・ティアーズとデュノアのラファールは如何した?」
「俺の部屋に保管してある。主と離れ離れになってるので不安がってたが、理由をちゃんと説明したら分かってくれたさ」
「待て! 一夏お前……アイツらの専用機の声も聞こえてるのか?」
「最近な。月乃たちの声が変わった辺りから一応は聞こえるんだが……第四世代のISの声は聞こえないな」
つまり刀奈たちの専用機の声は聞こえないのだ。須佐乃男も第四世代だが、アイツは俺の専用機だし、白椿と黒椿はコア造ったのが俺だから別物だしな。
「明日一時的に返却し、模擬戦後の態度次第ではセシリアは解放しても良いんじゃないか?」
「だが、そうなると作業するヤツが二人になってしまう。やる気の無い篠ノ乃と裏で黒い事考えてるデュノアだけじゃ作業が終わらないぞ」
「罰掃除もろくに出来ないんだから、今更な気もするが」
この間あまりにも汚かったから掃除したが、業者ももう少し丁寧に掃除してもらいたいよな。やっぱり資金ケチって変な業者に頼むのがいけないのか……
「それじゃあ明日の実技の授業には、あの三人を参加させるって事で良いんだな?」
「ああ。だが篠ノ乃を乗せてくれる子が居るかどうか……負けるとISの所為にするからなアイツは……」
「なら、篠ノ乃の相手は剣道でしたら如何だ? 自分の力のみで戦えば誰の所為にも出来ないだろう」
「剣道か……剣術じゃ駄目か?」
正直剣道は面倒なんだよな……俺が納めたのは剣術だし、剣道には使えない技も多々あるのだ。
「篠ノ乃の土俵で戦わなければ、己の未熟さが分からないだろうし、ここは我慢してくれ」
「……しょうがねぇな」
確かに篠ノ乃に自分の未熟さを知らしめる為には、剣道の方が良いだろう。だが剣道なんてここ暫くやってねぇしな……防具着けるのも面倒だ。
「とりあえずそれで反省しないようならあの二人は学園に放置だな。ゴミ置き場に二泊三日してもらう」
「それ以上泊まってるような気もするが……まぁそれが妥当だろうな」
下手に解放してまた面倒事を起こされても困るしな。
「さてと、それではそろそろ飯にするか。悪いな一夏、これはもらうから」
「別にアンタらに作ってきたのだから、悪いとか言われても……それにもう俺は飯を済ませてるんだ」
刀奈たちに作ったあまりの食材で駄姉たちの分を作ってるのだ。正直食材を無駄にしない為に作ってるだけで、余った食材が無ければ作る事も無いだろうと思っている。
「貴様ら、一旦手を止め飯にするぞ! とりあえず手を洗ってこい!」
相変わらず偉そうなやつだな……まぁ実際偉いんだろうけども。だが俺からすればただの駄姉だし、偉ぶってるだけの勘違い女とさほど変わらないんだがな。
「そう思わないか? 美紀」
「……何時気が付かれたんですか?」
「最初からだ。まぁ駄姉に気付かれないだけ成長したのか」
さっきから俺らの会話を盗み聞きしてた美紀に声を掛け、部屋まで戻る事にした。
「隠密行動は成長したと思ってたのですが……」
「十分だろ。駄姉の興味が他に向いていたとはいえ、隠れ通したんだからな」
「でも、一夏様には気付かれてしまいました」
「常に警戒してるからな……そうじゃないとまた面倒な事になるから」
少し前疲れ切ったまま街にでてスコールの罠に掛かったからな……思いっきりキスされて大変だったんだよな……
「一夏様がお相手するような人ですかね? オルコットさんとデュノアさん相手なら私がしましょうか?」
「いや、俺がやる。反省させる為にも、須佐乃男の調整にも丁度良いんだ」
「調整……ですか?」
「ああ。新しい武装を積む為にいろいろとあるんだ」
駄ウサギに頼むと設定がピーキー過ぎて面倒なんだよな……だからこの際新しい武装を自分で造ったのだ。それのテストにも丁度良いしな。
「授業で行うようですが、私たちは見学してれば良いんですよね?」
「まぁそうだろうな。ところで、何て格好で修行してるんだお前は……」
「……服を着てると気付かれそうで」
美紀の格好は上下白のビキニ、つまりは水着だ。この時期に水着だけって風邪引くぞ……
「部屋まで羽織ってろ」
「あ、ありがとうございます」
俺の制服の上着を美紀に羽織らせ、さっさと部屋まで戻る事にした。美紀のルームメイトは香澄だし、それほど問題にはならないか。
「一夏様」
「ん? どうかしたのか?」
「いえ、明日の模擬戦、楽しみにしてますね」
「美紀がする訳じゃないのに、楽しみなのか?」
「はい! 一夏様の試合を見学出来るので、今から楽しみです」
それほど大げさな事じゃ無いんだがな……それに、その格好で言われてもイマイチ説得力に欠けるような……まぁ美紀の表情から本気で楽しみにしてるってのは分かるんだけどな。
疲れた時には甘い物、でも苦手な人は如何すれば良いのでしょうか……