スコールと二人で強行突破を決め、リーダーがいると思われるフロアまでやって来た。
「ようこそ、始めまして。いや、久しぶりと言うべきかな?」
「アンタが今の亡国企業の実質的なリーダーか?」
逆光で顔は見えないが、口ぶりからしてそんな感じだ。久しぶりというのも、恐らく俺の父親だからだろう。
「そうだ。私が今の亡国企業のリーダー、小林ジークムント隆俊だ。そしてお前の父親だよ」
「スコールから話しは聞いている。だが父親だから如何こうって訳には行かないがな」
「まったくもってその通りだ。大体私は息子などいらなかったのだからな。なのにあの女は勝手に産み勝手に死んだ」
「あの子は! ナタリアは本気でお前を愛していたんだ! 例え遊ばれてたと知っても子供は産みたいって!」
「だから如何した? 私はあんな女と子を成すつもりなど無かった。目障りだったから織斑と義妹にその子供を攫わした。そうしたらあっさりと精神崩壊を起こしてくれてね。始末する手間が省けたよ」
聞きに勝る屑だな、コイツも……自分の父親だって言うのに何の感情を抱かないのも納得出来るくらいの屑っぷりだ。もしかしたら織斑の屑親より屑なんじゃないだろうか。
「さて、せっかくの父子の対面だが……」
「感動も何もしてねぇから気にするな。俺に両親はいない」
「そうだな。お前は私の子でも無ければ織斑と義妹の子供でも無い」
「随分な言い草ね。一夏は間違いなくアンタの子供だって言うのに」
「生物学上は父子関係にあるのは認めよう。お前が送ってきたDNA鑑定では間違いなく血の繋がりはあったのだから。だがそれだけだろ? 私はその男を息子だと思った事は一度もなければ、欲しかった訳でもないのだから」
スコールのやつ、何時の間にDNA鑑定なんてしたんだ? もしかして俺が駄姉との血の繋がりを調べた時にデータが漏れたのだろうか? それともマドカがまだ亡国企業に居たときに何かしらの方法で俺の毛髪なり何なりを手に入れたのだろうか?
「大体スコール、お前は此方側の人間だろ? 何故ソイツの味方をしている?」
「私は今の亡国企業には組しない。私が所属していたのはあくまでも昔の亡国企業だ」
「あのジジイに恩でも感じてるのか? 人間では無いのに随分と人間くさい事を」
「アンタこそ人間の癖にまったく人間らしくないわね。情ってものが無いのかしら?」
「ああ無いね。死にかけの父親なんて必要ないからな。既に殺した。つまり実質的なを省いても、私は亡国企業のリーダーな訳だ。裏切り者は貴様らだぞ、スコール」
何だ、俺って本当に亡国企業の跡取りだったのか……生物学上だけとはいえ、父親もその上も亡国企業のリーダーだったなんて……
「殺した? アンタどれだけ人を殺せば気が済むのよ」
「犯罪組織のリーダーが人を殺めて何が悪い。大体お前だって散々殺したんじゃないのか? 正義の名の下に何人の悪人を殺したんだスコール」
「それは……」
「一緒だよ。私もお前もな」
何だか暇だな……今のうちにあそこにあるISを解体しても良いんだろうか?
「(一夏様、こんな時に暇だとか考えてる場合なんですか?)」
「(そんな事言われてもなぁ……暇なものはしょうがないだろ)」
何だかスコールと亡国企業のリーダーがシリアスな雰囲気で睨みあってるのに、そこに割り込むなんて面倒な事したく無いし……
「(ならさっさと終わらせましょうよ。楯無様たちだって頑張ってるんですから)」
「(それもそうだな……さっさと終わらせて修学旅行の続きでも楽しむか)」
実際神社仏閣巡りなんてして何が面白いのか俺には分からないけども、楽しみにしてるやつらだっているんだし、昨日は本音たちに誘われたけどもトランプゲームとか出来なかったしな。せっかくだから交ざって遊ぶのも悪く無い。
「さっきから黙ってるが、お前は如何なんだ?」
「は? 悪い何も聞いてなかった」
急に話しかけられたが、今何の話しをしてるのか俺にはまったく分からない。興味も無かったし耳に入って来なかったからな……
「だから、私が父親だという事で何か変わるのかと聞いたのだ」
「変わらないんじゃねぇの? 今更父親だとか言われてもなぁ……それにスコールは母さんに思いいれがあるらしいが、俺はあった事もどんな人だったのかも分からないし」
「ほら、その男だって私と大して変わらないだろうが」
「だがよ、アンタに殺意を抱いたのは確かだぜ」
挨拶代わりに蹴りで衝撃波を放つ。須佐乃男との会話では無いが、さっさと終わらせてのんびりしたいしな。
「随分と物騒だねお前は。仮にも父親だぞ?」
「息子だと思って無いのに都合が悪いと父親面か? 随分と小物感漂うんだなアンタ」
「言ってくれるな。名前は何て言ったかな?」
「織斑一夏。だが本当の名前は俺にも分からん。織斑でも無いのだし、実際に生まれたのと織斑の屑共が出した出生届には誤差もあるだろうしな。誕生日も分からなければ名前も無い。ただの一人の人間だよ」
「そうだな。本当に私の息子なら、お前の苗字は小林だろうしな」
母さんが俺に名前をつけてたのかは知らないし調べようも無い。十六年前に亡くなってるんだし、スコールも俺の事は「一夏」と呼んでいた事を考えると聞いてないんだろう。
「では私もお前の事は一夏と呼ぼうではないか」
「勝手にしろよ。この時間しか話し合う事も無いんだし、この後アンタと会う事も無いだろうしな」
「随分な自信だ。一夏よ、お前がISを動かせるという事は、同じ遺伝子を持つ私が動かせてもおかしく無いと思わないのか?」
「動かせるんだろ? だから倉持技研の人間を抱きこみそこにおいてあるISを完成させた。白騎士のコアを受け継いだそのISをな」
「そこまで分かるとはさすがとしか言いようが無いな。この白式はかつて織斑千冬が使った白騎士のコアを受け継ぐ第三世代型ISだ。そこら辺の専用機とは訳が違うんだよ」
第三世代ね……そんなので偉そうにされても全然怖く無いんだが。
「武装はビット兵器と刀が一本。それだけで勝てるとでも?」
「!? 何故それが分かるんだ」
「コアが教えてくれた」
白騎士のコアはこの男に使われるのを嫌ってるし、最悪回収してしまえば日本政府の中に居る膿も根こそぎ捕まえる事が出来るだろうしな。
「だが武装が分かったからなんだと言うんだ。これから死ぬお前たちには関係無いだろうが」
「なぁスコール」
「何かしら?」
「小物臭がするのは俺の気のせいか?」
コイツがリーダーだというのに、オータムやスコールの方が強そうだと思ってしまうのは、俺の感性がおかしいからだろうか? それとも本当に雑魚なのだろうか?
「無駄話はそこまでだ。蜂の巣にしてやろう!」
小林ジークムント隆俊が白式を展開しビット兵器を同時に十機動かす。だが十機くらいで蜂の巣に出来ると思ってるんだろうか?
「面倒だな……」
十機全てにマシンガンを撃ちこみさっさと終わらせようとしたのだが、普通のマシンガンではビッド攻撃を相殺するだけしか出来なかった。
「舐めるなよ一夏。このビッドは倉持技研の英知の結晶なのだから。そこら辺のマシンガンで壊せると思うな」
「ふーん……英知の結晶ねぇ……」
正直イギリス政府が造ったビットと大して変わらない性能しか発揮で来てないぞ……
「そして十機で全てだと思うな」
「一夏、危ない!」
ビットが倍の二十機に増えて一斉に俺を目掛けて攻撃してきたが、正直この程度かとがっかりした。だが急にその攻撃のスピードは増し避けられないくらいにまで迫ってきた。
「(一夏様、如何しますか?)」
「(一回くらい使ってみるか)」
「(了解しました)」
須佐乃男に乗ってから三年、一度も使わなかった単一仕様能力を使う事にした。エネルギー効率が悪く満タンに残ってても二回くらいしか使えないと言われたので、出来るだけ使わなかったんだがな……
「草薙!」
全ての攻撃を無効化するこの単一仕様能力は、恐ろしいほどのエネルギーを消費した。駄ウサギめ、二回も使ったらエネルギーが枯渇するじゃねぇかよ。
「須佐乃男、エネルギーは勝手に回復してろ」
「一夏様は?」
「あれくらいなら三十分は生身で対抗出来る」
「畏まりました」
エネルギーを回復させる為に須佐乃男を解除して、俺は腕に装着してある武装からテキトーに武器を展開して白式に斬りかかる。
「君の機体の単一仕様能力には驚かされたよ。まさか全ての攻撃を無効化するなんてね」
「そりゃどうも。実際に使ったのが初めてだから俺にもあれほどの威力があるとは分からなかったんだがな」
「だが生身で如何戦う? 何もビットだけじゃないんだよ、この機体は」
そう言って一本の刀を展開した小林ジークムント隆俊。あれは雪片に似てるな……
「この白式最大の武器、『雪片二型』だ」
「パクリか……正直がっかりだ」
展開した武器をしまい別の武装を展開する。雪片には雪片で対抗するのが良いだろうしな。
「シールド・エネルギーを気にしなきゃ使えないアンタと、そんな事関係無く使える俺とでは、果してどっちが良いんだろうな」
「ほざけ! 生身でISに歯向かうなどバカのする事だ!」
向こうが零落白夜を使ってくるのは最初から分かっている。だが向こうはISを使えるってだけで稼働時間はそれほど無い様だった。瞬間加速も出来なきゃセンサーを上手く使えてないのもバレバレだ。
「何処狙ってるんだ? 俺はこっちだぜ」
「何故だ……何故生身でそれだけのスピードが出せるんだ」
「一夏様は人間じゃないですからね」
お茶を啜りながら須佐乃男が聞き捨てならない事を言った。
「俺は一応人間なんだが」
「ですが、『普通』の人間では無いですよね? 生身でIS二機と戦って怪我程度で済んだんですから」
「その怪我で大騒ぎしたのは何処の誰だよ」
少し動こうものなら目くじら立てて怒鳴ってきたのは須佐乃男だったような気がしてるんだがな。
「ところで須佐乃男」
「何でしょうか一夏様?」
「回復しとけとは言ったが、何故お前とスコールでお茶をしてるんだ?」
あのちゃぶ台、何処から持って来たんだろうか……
「スコールさんの出番も無さそうでしたので、私たちは一服でもしましょうかと誘いました」
「意外と悪く無いわね、こう言うのも」
「人が真面目に戦ってるのに、お前らは……」
まぁらしいっちゃらしいんだがよ……ほら、小林さんが驚いてるだろ。
「殺す……お前ら全員殺してやる!」
「一夏様、頼みましたよ」
状況に切れた小林ジークムント隆俊がスコールと須佐乃男に斬りかかろうとしている。まぁ初見の人間からしたら舐められてると思っても仕方ないよな……
「冷静さを失った時点で、アンタの勝ちは無いよ」
「舐めた事しやがって! 私は犯罪組織、亡国企業のリーダーだぞ! もっと恐れろ! もっと崇めろ!」
「子供かよ……面倒だから一撃で終わらせる。死ぬんじゃねぇぞ」
斬りかかってきた白式をかわして、俺は零落白夜を喰らわせる。
「何故……シールド・エネルギーを使わずに零落白夜を……」
「悪いが、これは雪片そっくりに改造した雪月でな。シールド・エネルギー無しでも零落白夜が使えるんだよ。単一仕様能力でもないから、生身でも何の問題も無いんだよ」
「そんなの……ありか……」
それが亡国企業のリーダーの声を聞いた最後だった。シールド・エネルギーが尽きた白式は待機状態に戻り、意識を失った小林ジークムント隆俊は床に叩きつけられた。
「終わったわね。一夏、ソイツ如何するの?」
「さぁ? 殺すなら別にかまわないが、使い道はある」
「如何いう事?」
「スコールとオータムの罪を相殺出来るかもしれないぜ」
亡国企業のリーダーを捕まえたんだから、国際警察もスコールとオータムの罪を軽減せざる得ないだろうしな。元々スコールとオータムは亡国企業と対立してたんだし、犯罪組織になってから犯した罪は、俺の誘拐とサイレント・ゼフィルスの強奪くらいだから。
「一夏様、とりあえず帰りましょうか」
「まだ無人機が残ってるだろ。白式は回収出来たが、帰路は確保されてないんだぞ」
「そうでしたね。では頑張ってください」
「お前も働け!」
須佐乃男を強制展開して俺とスコールは再びあの無人機の中に飛び込んでいった。
一夏君とスコールが強制突破したせいで、無人機たちの動きはより厄介になってしまっていた。私たちで片付けようとしても、これはかなり時間がかかってしまう……さっき一夏君が死亡フラグを建ててたからきになるのに……早く加勢しにいかないと本当に一夏君が……
「お姉ちゃん、セシリアたちのエネルギーが」
「セシリアちゃん、シャルロットちゃんは下がって! ラウラちゃんとエイミィちゃんは二人を安全な場所まで誘導。その後は二人を守るように戦って」
一機一機はそれほど強い訳じゃないけど、突破された事と数の多さで私たちのエネルギーは着実に削られているのだ。
「楯無様、リンリンも限界だよ~」
「それじゃあ本音が安全な場所まで誘導してあげて」
「チッ、数が多いってのは面倒だな」
「ぼやかないでください。私たちだって思ってるんですから」
オータムがぼやいた言葉に虚ちゃんが反応してツッコミを入れる。私も思ってたしきっと簪ちゃんも思ってたんだろう。その言葉の所為でちょっとやる気が削がれた。
「お姉ちゃん、危ない!」
「え?」
その一瞬の隙を突かれた私は、目の前に無人機たちが迫ってきてるのに気付けなかった。なんだ……死亡フラグが建ってたのは私なんだ……ゴメン、一夏君……
「?」
何時まで経っても衝撃が来ないので、私は不思議に思い目を開けた。
「ぼさっとするな。いくら刀奈だってやられれば死ぬんだぞ?」
「一夏君! あれ、その男の人は?」
一夏君が脇に抱えてる男の人が気になりそんな事を聞く。何処と無く一夏君に似た雰囲気を纏ってるけど、見た目とかは全然似てないわね。
「これが小林ジークムント隆俊、亡国企業のリーダーで俺の生物学上の父親だ」
「もう倒したの?」
「正直拍子抜けだった。まだオータムの方が楽しめた」
「一夏が本気だしたからでしょ。私たち相手の時は力を制御してたし」
「まぁ、最後だし」
何が最後なのかは分からなかったけども、一夏君が本気で相手したら誰だって弱いと感じるわよ……
「悪いが刀奈はコイツを持って下がれ。後は引き受ける」
「お願い。正直私も簪ちゃんもエネルギーがギリギリなのよ」
「さてと、人の彼女を襲った罪、どれくらいか分かってるだろうな」
一夏君がビット兵器を取り出して一斉に放射した。それだけで無人機の大半は動かなくなってしまったのだけど……
「やっぱ一夏君は別格ね……」
「だって一夏だし……」
「お兄ちゃんだしね……」
少し離れた場所で見ていた私たちは、相変わらずの規格外に言葉を無くした。そして数分後には全ての無人機はその動きを止めていたのだった。
「さて、帰るか」
「そうね。後処理が大変そうだしね」
「それで一夏、その白式のコアは如何するのかしら?」
「持ち主に返すさ。最初はやっぱり裏切ってるのかとも思ったが、倉持技研の独断だって分かったしな」
裏切ってる? 誰がと聞きたかったけども、どうせ帰れば分かる事だったので聞かなかった。
亡国企業の本拠地から京都まで戻る間、私たちは一言も言葉を発しなかった。疲れてるってのもあるけども、話さなくても大丈夫な空気だったからだ。
「お帰りいっくん!」
「アンタ今回何もしてないな、珍しい」
「何だよ~束さんだって大人しく出来るんだよ~」
「はいはい。あとこれ。アンタのだろ」
「おー愛しの白騎士ちゃんじゃないかー! でもいっくんにあげる。元々そのつもりだったんだから」
そうか、持ち主って篠ノ乃博士だったんだ。考えれば分かりそうなものだったわね。だってコアを造れるのは篠ノ乃博士と一夏君だけなんだから。
「一夏、コイツと織斑の屑共は如何するんだ?」
「亡国企業の悪さは基本的にコイツらが原因だ。データも抜いてきたからスコールとオータムはこれをもって国際警察に出頭しろ。すぐにお前らは解放されるだろうしな」
「殺さないの?」
「コイツらの罪は世界がちゃんと罰してくれるだろうよ。母さんを殺した罪もな」
一夏君がデータの入ったUSBメモリーと捕らえた三人をスコールとオータムに引き渡す。これで騒動は終わりなのね。
「さてと、それで織斑先生」
「何だ?」
「修学旅行はどうなるんですかね? このまま続けるんですか?」
「そうだな。ホテルとかも安全確認が取れたし、幸いバスも無事だからな。このまま再開するとするか」
「じゃあ私たちはこれで。一夏、また何処かで会いましょう」
スコールとオータムがISを纏って飛んでいくのを、私たちは黙って見送った。いろいろとあったけども、最終的には悪い人では無いって思えるくらいには仲良くなれたし、また何処かで会いたいわね。
「じゃあ束さんもこれで。いっくん、箒ちゃんの見極めは君に任せるからね」
「何で俺が……」
「さすがの束さんもコアの声は聞けないから! それに、反省した箒ちゃんはきっと強くなるはずだからね!」
篠ノ乃博士も、クロエさんと一緒に何処かに行ってしまった。相変わらず神出鬼没な人だと一夏君と織斑先生がそろってため息を吐いたのを見て私たちもそう思った。これでもう当分は平和になるのかな……それともまだ何か起こるのかしら?
倉持技研を出したから白式も出すかって事で登場させ、本当なら一夏と相打ちで終わらせる予定だったのですが、デットエンドは駄目そうだったので改良していったら何だか雑魚キャラに……
次回最終回、自分らしく終わらそうと思ってます。