もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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福音戦終了。


守るモノ、守られる者

眩い光を放ち、再び浮上してくる銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

なにやら形態が変わってないか?

 

「まさか、第二形態移行(セカンド・シフト)!?」

 

 

俺の疑問は簪の発言によって解決した。

第二形態移行(セカンド・シフト)、前に何か調べものをしていた時に見たのを覚えている。

また厄介な事になったな・・・。

 

「簪、距離を取って攻撃してくれ!俺と本音で動きを止める。」

 

「分かった!」

 

 

本来が遠距離型の機体なので未知数相手に近距離戦はまずいと判断して簪を遠ざける。

しかし銀の福音もそのことを分かっているように簪を狙う。

 

「随分と利口だな!」

 

 

相手の弱点を突くのは勝負の鉄則だからな。

簪に攻撃している銀の福音に俺は突撃しながら簪を庇うようにミサイルを斬り捨てる。

レーザーじゃなくて良かったぜ。

いくら俺でもレーザーを斬る事は出来ないしな。

 

「(斬れ無くても反射させる事は出来るんじゃないですか?)」

 

 

馬鹿言え、精々斬撃をとばして相殺するくらいだ。

 

「(十分じゃないですか!それだけ出来ればレーザー相手でも十分勝機がありますよ。)」

 

 

まあ、やった事無いんだけど・・・。

 

「(なら言わないでくださいよ!変に期待を持たせるような発言は戦闘中にしないでくださいよ、まったく。)」

 

 

悪かったって。

須佐乃男が拗ねたので謝る。

・・・しかしあの機体、何かを守ってるような気がするんだが?

 

「なあ本音。」

 

「な~に?今ちょっと大変なんだよ~。」

 

「それぐらい捌けるだろ。いやちょっと気になってな。」

 

「おりむ~、手伝ってよ~。」

 

「しょうがない。少し大人しくしていろ!」

 

 

銀の福音に斬撃を飛ばし、本音から注意を逸らさせる。

よし、こっちに来たな。

俺は向かってくる銀の福音に零落白夜を決め、動きを止めた。

 

「簪!悪いがこいつを足止めしといてくれ、少し気になる事があるんだ。」

 

「気になる事?分かった!けど、後で教えてよ?」

 

「もちろん!」

 

 

簪に足止めを頼み、本音と相談するために距離を取る。

 

「それでおりむ~、気になる事ってな~に?」

 

「ああ、たしかあれは無人機だって資料にあったよな?」

 

「そういえば~・・・あったけ?」

 

「覚えてろよ・・・。」

 

 

確認しようとしたが本音は覚えていなかった。

 

「本音、簪と変わってきてくれ。」

 

「え~!オープンチャネルじゃ駄目なの~?」

 

「それならわざわざ離れる必要は無かったろ?まあいいや。俺が行くからフォローしてくれ。」

 

「りょ~かいだよ~!」

 

 

俺は銀の福音のもとに向かい、簪と相談するためにオープンチャネルを開く。

 

「簪!交代だ、下がれ!」

 

「!分かった。でも早くない?」

 

「本音が役に立たなかった。」

 

「そうなの?」

 

「うう~酷いよおりむ~。ちょっと覚えてなかっただけじゃん。」

 

「覚えてろよ!お前作戦室で何してたんだよ?」

 

「え~とね~・・・お菓子食べてた~。」

 

 

えへへ~と笑ってとんでもない事を言った本音。

あの空気の中でお菓子だと・・・ある意味肝が据わってるな。

 

「お前な~、ああいった場所でそういった行動はやめとけよ。さすがに笑えないぞ!」

 

「だって~、山田先生がくれたんだも~ん。」

 

「山田先生が?あの人何やってるんだ?」

 

 

特命任務レベルAの作戦中にお菓子を上げるなんて何を考えてるんだよ。

 

「ウトウトしてて何か食べたくなったんだ~。それで山田先生に何かないか聞いたら織斑先生用に持ってたおせんべいをくれたんだ~。」

 

「持ってた理由が自分の姉のためとは・・・なんかもうすみません山田先生。」

 

 

俺は山田先生に感じていた憤りが申し訳ない気持ちに変わっていくのを感じていた。

これは後で千冬姉に説教だな。

 

「ともかく簪。あの銀の福音は無人機だったよな?」

 

「うん、報告書にはそう書いてあったよ。でも一夏、何でそんな事聞くの?」

 

「いや、銀の福音が何かを守っているような気がしてな・・・。勘違いなら良いんだが、もしかしたら人が乗っているかもしれないって思ってな。」

 

「じゃあ~あの銀の福音は人が動かしてるの~?」

 

「そこまでは分からない。もしかして意識が無いのかも知れない。そもそもが操縦者の意思と関係なく動いているかも知れないしな。」

 

「じゃあ助けきゃ!」

 

「そうだな、早いとこ助けないと手遅れになるかも知れないしな。まあ、あくまで可能性の段階の話なんだが。」

 

「でもでも~おりむ~の勘は当たるからね~。」

 

「じゃあまずはコックピットを開ける。簪、本音、フォローしてくれ!」

 

「分かった!」

 

「了解だよ~!」

 

 

本音と簪に陽動を頼み、俺は銀の福音のコックピットを探す。

 

「(一夏様、人の反応をキャッチしました。随分と深くに隠されてまして時間は掛かりましたが、今の私ならばこの程度造作も無いですよ!)」

 

 

やはり人が居たか。

俺の探知だとISの反応が強すぎて人が居るかどうか判断出来なかったからな、感謝する須佐乃男。

俺は須佐乃男にお礼を言い、操縦者を助けるために銀の福音に斬りかかる。

 

「もう守らなくても良いんだ。ご苦労だったな。」

 

 

そう言ってコックピットを切り開き銀の福音を労う。

出てきた操縦者を抱え、銀の福音を機能停止にした。

 

「本当に人が居た~!やっぱりおりむ~は凄いな~。」

 

「でも大丈夫なの?最初から分かってたらもっと早く助けられたのに!」

 

 

素直に人が居た事に驚く本音と人が乗っている事を隠された事に憤る簪。

まあ気持ちは分かるがな。

 

「意識は無いが、呼吸はしている。一先ず大丈夫そうだな。」

 

「良かった・・・。」

 

「だが、早めに医者に診せた方が良いだろう。とっとと旅館に戻るぞ!」

 

「分かった~・・・けど他の皆は~?」

 

 

・・・忘れてた。

 

「連絡を入れておけば良いだろう。各自で戻ってきてもらおう。」

 

「(相変わらず他人を意識してないんですか?一緒に戦った仲間ですよ?酷くないですか?変わろうと努力しているって言ったのは嘘なんですか?)」

 

 

・・・そこまで言う事ないだろ。

今回は目の前の事で手一杯だったんだ。

 

「(言い訳かっこ悪い!素直に認めちゃえば良いんですよ、自分は興味が無かったから忘れてたって。)」

 

 

興味は有ったが忘れてたんだ!

須佐乃男とやり取りをしていたら・・・

 

「おりむ~、急いでるんじゃないの~?」

 

 

本音に突っ込まれた。

 

「ああ、そうだったな。とにかく急ぐぞ!簪、本音、遅れるなよ?」

 

 

俺は須佐乃男で出せるスピードの最大出力で旅館を目指す。

当然救出した女性は危なくないように抱えている。

 

「(十分危険だとは思いますけど、今はそんな事言ってる場合ではありませんしね。)」

 

 

・・・いや、言ってる。

須佐乃男にツッコミを入れ、その後は何も会話する事なく旅館を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は何を見せられていたんだ?

戦闘が終わって、私は唖然としていた。

 

 

 

急に山田先生に連れてこられ、一夏達がこの事件の解決のために出動した事を知った。

問題が起こっていることはなんとなく皆気が付いてはいるようだったが、まさか一夏達が主力となって事件解決に挑んでいるとは露とも思わなかった。

そこで織斑先生に言われた事は・・・

 

「お前はしっかりとこの事を見ておけ。きっとお前の悩んでいた事のヒントになるはずだ。分かってるとは思うが見た事は他言無用だ。」

 

 

これだった。

私が悩んでいたことは力の意味と力の使い方だ。

それが一夏達の戦闘を見て分かると言うのか?

今まで散々一夏達の戦闘は見てきた。

確かに実戦では無かったが、訓練や模擬戦、クラス対抗戦など録画されていたものからアリーナで観戦したりしてきた。

だが分からなかった。

私に何が足りないのか、私の何がいけないのか。

一夏に言われ散々考えてきた事のヒントがこの戦闘にはあるらしい。

ならばしっかりと見ておこう。

つれてこられた時の私はこんな事を考えていた。

しかし、そんな考えは一夏の姿を見ているうちに無くなっていった。

今まで見た事ない一夏の顔。

誰かに指示を出し、自分もしっかりと役目を果たしている。

普段の一夏は、本気の中に少し遊び心が見え隠れしているが、今の一夏は完全に本気だ。

 

「織斑先生、中国の戦艦がちょっかい出しているみたいですね。」

 

「そのようだな・・・だが織斑が対処するだろう。現場の判断はあいつに一任している。私達がとやかく言う事も無いだろう。」

 

「そうですね。既に凰さんとオルコットさんが対応に向かっているみたいです。恐らくですけど織斑君の指示かと。」

 

「だろうな。中国相手なら凰を向かわせるのが一番だ。交渉相手が同じ中国人だからな。」

 

「でも凰さんはすぐ頭に血が上ってしまう癖がありますよ?」

 

「そのためのオルコットだろうな。織斑のヤツは、オルコットに交渉内容を録音させるつもりなんだろうな。凰が頭に血が上ることになっても、恐らくは相手が此方の要求に応じないとか、そんな所だろうしな。向こうが挑発してきたのなら、こっちから問題にしてやればすぐに問題は片付くしな。」

 

 

恐ろしいことをあっさりと言う織斑先生。

だが一夏ならやりそうなんだよな・・・。

 

「あっ!終わりましたね。」

 

 

随分とあっさり終わった戦闘に、私はこれをみて何を感じろと言うのかと言ってやろうと思ったが・・・

 

「まだ終わってはないようだな。」

 

 

モニターを見ると、倒したはずの相手が眩い光を放ち再び浮上していた。

 

「あれは・・・第二形態移行(セカンド・シフト)!?」

 

 

山田先生が言った第二形態移行(セカンド・シフト)が何なのか分からなかったが、どうやらまだ終わりではないらしい。

相手のスピード、攻撃の威力などが高まっているのがモニター越しでも分かる。

頑張れ、一夏!

心の中で応援していると・・・

 

「織斑のヤツ、何かあったのか?」

 

 

織斑先生が一夏の動きに疑問を持ったようだ。

 

「何かとは?」

 

 

私はこらえられずに聞いた。

 

「さすがに此処からではなんとも言えないが、何かあったあのは確かだろう。織斑達の動きが不自然だ。」

 

「機体に問題でもあったのですか!?」

 

 

もしそうならかなり危険だ。

私は一夏を心配したが、どうやら違ったみたいだ。

 

「それはないだろうな。問題があったとすれば銀の福音の方だろうな。」

 

「相手の無人機に何の問題があるって言うんですか?」

 

 

今まで黙って聞いていた山田先生もさすがに気になったのだろう。

私が思っていた事と同じ事を織斑先生に聞いた。

 

「分からんが、どうやらコックピットに何かあるらしいぞ。」

 

 

一夏達の動きから、問題を推測する織斑先生。

そこからの動きは、正直私には真似出来ないし、しようとしても無理だろう。

一夏は正確に二人に指示をだし、自分はその隙を突いてコックピットを切り開いた。

 

「ええ!?」

 

 

一夏が切り開いたコックピットには人が居た。

 

「何で・・・無人機じゃ・・・」

 

 

私はうわごとのようにつぶやいた。

アメリカ・イスラエル両国から来た報告書には確かに無人機と書かれている。

だが実際は人が乗っていた。

もし私だったら気付けただろうか?

考えたが絶対に気付けなかっただろう。

それどころか、前の密漁船や中国の戦艦の時の対処だって自分には出来なかっただろう。

目の前の事に必死すぎて周りが見えない、これは自分でも分かっているが直せない。

そして周りを傷つけてでも目標を達成しようとする、そのために力を振るうのをためらわない、だから一夏は私が力に振り回されていると言ったのだろう。

 

「分かったか、篠ノ乃?これが織斑の力だ。」

 

「一夏の力・・・?」

 

 

これまで十分一夏の力は見てきた。

だが、まだ別の力が一夏には有ったようだ。

 

「戦闘能力もそうだが、状況判断、周囲の観察、対応、そして自分の出来る事を無理なくやる。自分の力を過信せずに周りと連携して物事に対する。これが織斑の・・・一夏の強さだ。普通は力を持てば過信してしまうが一夏には一切の油断が無い。問題をじっくり考え、そして見て自分に出来る事を探す。お前みたいにとにかく突撃なんて戦い方をしていたら、実践ではすぐに死ぬぞ。」

 

「私には真似出来ませんね。」

 

「ん?いまさら気付いたのか?」

 

「いえ。心のどこかでは気付いていましたが認めたくなかった。私は一夏の隣に立ちたかった。だから力を欲した。ですが、その力では一夏の隣には立てませんね。」

 

 

認めてしまえば簡単な事だった。

私は、自分に無いものを欲していたのだ。

 

「これじゃあラウラと同じ・・・いや、それ以上に酷い。一夏が私のことを避けていたのがわかります。」

 

「反省したか?なら自分に出来る事をしろ。決して専用機が欲しいなどと思わないことだな。大きすぎる力は、制御出来なければ己自身を傷つけるからな。」

 

「それ、姉さんにも言われました。」

 

 

そう言うとそっぽむいて不貞腐れる織斑先生。

どうやら姉さんと同じ事を言ったのが恥ずかしいのだろう。

 

「ともかく作戦は終了だ。山田先生、報告書の作成をお願いします。」

 

「分かりました。それじゃあ篠ノ乃さん、部屋に戻ってください。」

 

 

そう言われ私は部屋に戻った。

これからは自分にあった力を身につけよう、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご苦労だったな。」

 

 

俺達を迎えてくれた織斑先生がそう言った。

 

「ええまあ・・・一先ずこの人を医者に診せたいんですけど。」

 

「分かっている、更識!」

 

「は、はい!」

 

 

急に名前を呼ばれて驚いている簪。

 

「彼女を医務室に。地図はこれを見れば分かるだろう。」

 

「分かりました。」

 

 

簪に女性を渡し、俺は織斑先生に鉄拳を喰らわす。

 

「な、何だいきなり!」

 

 

突然殴られて驚き、文句を言う織斑先生。

悪いが今から先生と生徒ではなく姉弟として会話させてもらうからな。

 

「千冬姉、どうやら山田先生にお菓子を用意させているらしいな。」

 

「な、何故それを!?」

 

「本音が山田先生からせんべいをもらったそうだ。その時に山田先生が千冬姉用だと教えてくれたらしい。」

 

「真耶め、余計な事を・・・。」

 

「山田先生を恨むのはお門違いだろうが!この駄姉め!後輩に菓子を用意させているだけでも恥ずかしいのに、そのことがばれたら後輩を怒ろうとするなんてもってのほかだ!」

 

「うっ、だが・・・」

 

「言い訳するな!これからしばらくはおやつ抜きだ!!」

 

「そ、そんな~。一夏、それだけは勘弁してくれ!」

 

「そもそも大人なんだから~おやつ抜きでも問題ないんじゃないですか~?」

 

「暢気に言ってるが、お前もだぞ。」

 

 

本音が人事のように言っていたが、俺の一言で慌てだした。

 

「な、何で!?私~何もしてないよ~?」

 

「重要な作戦会議中にせんべいを食べてただろうが。すこしは我慢というものを覚えなさい。」

 

「「そ、そんな~。」」

 

 

二人がひざをついて落ち込んでいる。

そこまでお菓子に魅力があるのか?

 

「(女の子はお菓子が大好きですからね~。禁止されたら辛いですよ~。)」

 

 

そんなものか?

須佐乃男の言っていることは、俺にはピンと来なかったが、どうやらそれが正解のようだな。

 

「反省したか?」

 

「「はい、反省しました~。」」

 

「なら今日は我慢する事。また食べる量も減らすように努力する事。これが守れるのなら、明日から食べても良いぞ。」

 

「分かった、努力しよう。」

 

「私も~、頑張って減らすよ~。」

 

 

二人の返事を聞いて頷く。

 

「(随分と甘くないですか?)」

 

 

そうかもな。

だけど辛いんだろ?お菓子禁止されるの。

 

「(それは・・・そうですけど。)」

 

 

なら次やったら本気で禁止にしてやれば良いんだ。

俺は再犯したときに完全にお菓子を禁止する事を須佐乃男に伝える。

 

「(相変わらずの鬼畜さですね~。)」

 

 

ほっとけ。

俺は疲れたので部屋に戻ることにした。

二人から距離が出来たら須佐乃男が普通に話しかけてきた。

 

「一夏様、何か甘いものを食べましょう!」

 

 

・・・こいつも禁止にしてやろうか。




前回書いた番外編で福音戦は終わりでも良いというコメントを貰いましたが、あれだと福音は無人機になってしまうのでこっちも書きました。
次回は事後処理と束と千冬の会話、そして臨海学校最終日を書きます。
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