「それじゃあまずはISを使わないで連携を確認してみよう。」
生徒なのに教師と同じ事をやらされているのは不満に思えばいいのか?それとも光栄に思えばいいのか?
こう言った時に普通の感性が無いのが恨めしい。
「おりむ~、考え事?」
「いや、なんでもない。それで本音、どうした?」
「連携の確認ってどうやるの?」
そうか、それも説明しなければいけないのか。
「まずこのグループは・・・10人か。それじゃあ2人ずつに分かれてそれぞれ前衛と後衛を決めてくれ。決まったらまた説明する。」
まずは最小人数との連携を体験してもらおう。
しかし本音はすでに実戦での連携を体験してるしな・・・。
「おっりむらく~ん!出来たよ~!」
「ああ、分かった。それじゃあこれ。」
「これは?」
「おもちゃの銃と木刀だ。」
「何に使うの~?」
「実際に見てもらった方がいいな。本音、ちょっと出てきてくれ。」
「な~に~?」
「ペアは?」
「きよきよだよ~。」
「きよきよ?」
本音の呼び方は独特すぎて分からない。
きよきよとは誰なんだ?
「私だよ織斑君!相川清香!」
「ああ!相川さんか。」
清香だからきよきよなのか。
普通に清香って呼んだほうが文字数少ないような気がするんだが・・・。
「どっちが前衛?本音か?」
「私は後衛だよ~。」
「じゃあ相川さん、これつけて。」
「これセンサー?」
「似たようなものだな。致命傷だと判定されると音が鳴るから。今回は前衛を倒したら勝ちとする。前衛が一人で倒しても良いが、相手にも後衛が居る事を頭に入れて戦う事。ちょっとやってみよう。誰か前衛をやってくれないか。」
「じゃあ私がやる~。」
周りを見渡すと岸原さんが手を上げている。
「じゃあこれね。俺が後衛をやるからしっかり相川さんを引き止めておいてくれよ。」
同じくセンサーを渡し、耳元で指示を出す。
「わ、分かった////」
「?」
何で赤くなってるんだ?
まあ良いか。
「それじゃあ3カウント後に開始とする。鷹月さん、カウントをお願い出来るか?」
「ええ、分かりました。」
さて、銃なんてまともに使わないからな・・・さっさと終わらせよう。
本音も多分だが同じ作戦に出るだろうな。
「3・・・2・・・1・・・開始!」
合図とともに前衛二人がつばぜり合いをする。
そこへ本音が銃で攻撃をする。
やはりそうきたか。
前衛の二人は後衛の大事さを分かってはいないし、その行動は正しい。
だがそれじゃあこの戦いには勝てない。
「残念だな、本音。その行動は正しいが、それだけじゃ弱い。」
「おりむ~、この銃弱いの~?」
「そう言う意味じゃない。普通の銃でも致命傷にはならないんだ。」
そう言って本音の弾丸を俺の弾丸で相殺し、相川さんに攻撃する。
本音の攻撃とは違い、しっかりと狙いを定めて引き金を引く。
『ビィーーーー』
センサーがけたたましい音を鳴らす。
つまり致命傷判定だ。
「そこまで!」
つばぜり合いをしていた二人に終了を告げる。
「おりむ~、何でおりむ~の攻撃は致命傷判定なの~?私のはおりむ~に邪魔されたけど致命傷じゃなかったんでしょ~?」
「単純に心臓を狙ったんだ。いくらおもちゃでも心臓に当てれば致命傷判定になる。だがこれはただの力技だ。本来は前衛が相手の気を誘い、後衛に攻撃させるのが正しい。だが本音も俺も実践を経験しているからこそすぐに終わらせようとしたんだ。時間がかかればかかるほど不利になるからな。」
「おりむ~は私の行動がお見通しだったんだね~。」
「まあそう来るとは思ってた、てか俺もそうするつもりだったからな。駄目な例を見せておけば、もうこの力技は使えないだろ?」
「怒られちゃうもんね~。」
「じゃあどうすればいいか。さっきも言ったように前衛が後衛のために相手の隙を作らせるのが理想だ。もしくは後衛が隙を作り、前衛が斬りつけてもいいが、こっちは難しいかな?本音なら出来そうだが、やるなよ。」
「は~い。」
あくまでも連携訓練だからな。
他のクラスメイトの連携を強化しなくてはいけないのに、この中では本音は一人レベルが違う。
どうしようか・・・あっ!
「本音。お前が対戦する相手グループに須佐乃男を入れる。」
「ええ~!ズルイよ~!!」
「まあ聞け。お前の銃の扱いや戦闘技術はこの中じゃトップだろう。だから須佐乃男を入れ相手の後衛を二人にする。それならお前の訓練にもなるだろうしな。」
「せっかく楽が出来ると思ってたのに~。」
「楽しようとするなよ、授業だぞ。」
本音に釘を刺しそれぞれのペアにセンサーと武器を渡す。
審判はあまったペアにやらせるとして、さて俺はどうするか・・・。
指導するにもまずはどれくらい出来るかを見たいしな・・・少し離れるか。
これが教師とそうでないの違いなのだろうか。
すぐに自分がどうするか判断出来ないのと有効な練習方法を提示出来ないのは悔しいな。
「そんなに簡単にされたら此方の立つ瀬がないだろ。」
「おや織斑先生。あの4人は如何したのですか?」
確か特別指導とか言っていた気がするのだが・・・。
「あの4人なら今はグラウンド20周している。」
「20周ですか・・・大変ですね。」
IS学園のグラウンドは1周1.5キロのはずだ。
それを20周とは・・・考えるだけで疲れるな。
「織斑、あのセンサーは何処から手に入れた?」
「あれですか?あれは俺が図面を引いて束さんが作ったオリジナル作品ですよ。」
「またアイツか・・・。それでどういった仕組みなんだ。」
どうやら興味があるらしい。
「使ってみます?此処に一個あまってますし。」
「ああ、使おう。だが原理を聞いてからだ。」
「さすが、しっかりしてますね。」
束さん関連で織斑先生が簡単に手にするとは思ってなかったからこの反応は当然だろう。
「これは所持している人間が攻撃を受けた時に反応するように作られています。体の何処にあってもダメージを感知します。」
「それで?」
「さっきの戦闘のようにおもちゃの武器でも当たった場所によっては反応しますし、反応する威力を変える事によって回避出来たかの確認にも使えます。」
「なかなか面白いものだな。だが何故私に相談しなかった。」
「だって織斑先生、こう言った事苦手ですよね?」
「・・・否定はしない。」
「そうですか。まあ今度何か作る時は相談しますよ。」
「本当だな!約束だぞ!」
「え、ええ分かりました。」
ただ仲間はずれにされたのが嫌だっただけか。
「それで、何でこんなもの作った?」
「何でって、さっきも言ったように回避の確認ように作ったんですよ。ISを使わない訓練もしてますから役に立ちますし、刀奈さんは当たっても当たってないって言いますからね。これがあれば嘘ついてもすぐバレますので。」
「なるほどな。数は幾つあるんだ?」
「とりあえず15個作りましたけど・・・何故そのようなことを聞くのですか?」
「なに、ただの確認だ。」
「確認、ですか・・・。」
会話をしながらもしっかりと戦闘を確認する。
さすがに須佐乃男の相手は本音でも辛いのだろう、簡単には終わっていない。
「お前の考えたこれ、なかなか面白い。今度教師陣で演舞でもやってみるか。」
「教師が演舞するならこれは使わなくても良いのではないですか?そもそも演舞じゃ攻撃を当てるのは目的に無いですよね?」
「だからだ。もし下手な奴が居たらこれでバレるだろ?」
「・・・嫌いな先生でも居るのですか?」
珍しく毒を吐く織斑先生をいぶかしむ目で見る。
「別にそうでは無い。ただ気に入らない相手と言うのは何処の世界にも存在するだろ?」
「・・・それは否定出来ませんね。」
「そう、嫌いではないけど気に入らない、こんな感情は誰しもあるだろう。だからそいつと演舞をして不自然では無いように相手の攻撃に当たるんだ。」
「悪趣味ですね、完全に嫌がらせじゃないですか。」
「なに、これくらい良いだろ。普段は私に無理難題を押し付けてくるんだから。」
「誰ですかそれは・・・。」
「それは内緒だ。」
どうやら一つのペア同士に戦闘が終わったようだ。
けたたましい音が鳴っているのが此処まで聞こえる。
音量は抑えたはずだが・・・もしかして束さんまた何かいじったな。
「それじゃあ指導してきます。」
「ああ、こっちもそろそろ帰ってくるだろうしな。」
「・・・20周ですよね?そんなに早く帰ってきますかね?」
「ISを装着して20周だ。」
「機能している状態でですよね?」
「当然だ。」
良かった、機能していないISを装着してなら下手したら死にかねない。
「それは最大の罰則だからな。」
「あるんですか!」
いったい何をしたらそんな罰則を喰らうんだ?
「まだ使ったことは無いがな。」
「あってたまるか!いえ、たまりませんよ!」
つい素が出てしまった。
「ほら、もう一つも終わったぞ?」
「分かってますよ。それじゃあ失礼します。」
織斑先生と別れ皆の所に移動する。
「初めてにしてはなかなか良かったよ。前衛もしっかりしていたし、後衛もしっかりフォローしていた。だが裏を返せば前衛は隙を作れなかったし後衛は責め切れてないって事だ。次のペアはそのことを意識して動いてくれ。」
「「「「「はい!」」」」」
厳しい事を言った自覚はあったが、今の俺は指導者のポジションだから皆も素直に言う事を聞いてくれた。
後で謝らなければな。
その後は一瞬の隙を突いたり、連携が上手くいってあっさり決まるなんて試合も見られた。
「よし!じゃあ今度は人数を増やす。三人組みを作って。ああ残った一人は俺と須佐乃男が組むから心配しなくて良いぞ。」
「じゃあ私が一人になる。」
「いや私が。」
「私だよ~。」
・・・3人組を作れよ。
結局ジャンケンで夜竹さんが一人になった。
「それじゃあ交代で試合をしてもらう。各グループに2個ずつセンサーと前衛、後衛の武器を渡しておく。どんなフォーメーションにしても良いが必ず前衛と後衛は分けること。」
二人より三人の方が連携を取るのが難しい。
最終的には俺一人対皆をやりたいが、今日はそこまで時間が無いだろうしな。
「さて、夜竹さんには悪いけど前衛お願いね。」
「え?織斑君が前衛をやるんじゃないの?」
当然そう思っていたんだろう。
俺も後衛よりは前衛の方が合っている。
だが俺が前衛をやっても意味がないのだ。
「夜竹さんには隙を見つける練習をしてもらう。」
どうやら夜竹さんは隙を突くのが苦手のようだ。
遠くから見ていたが、決められる場面で決めに行けていなかった。
行けないのではなく隙に気付いていないように感じたのでこの組み合わせはとても良かった。
「分かった。でもしっかり援護してよね?」
「援護じゃなくて俺と須佐乃男で隙を作るからそれを見つけてくれ。負けても良いから隙を見つけたら攻撃をして。それで見つけられているかの判断をするから。」
「なんだか本当に先生みたいだよ、織斑君。」
「精一杯頑張ってるんだよ。それじゃあ始めるから準備して。」
「はーーい!」
相手は本音のグループだ。
前衛二人の後衛一人、当然後衛は本音だ。
「じゃあカウントするぞ。3・・・2・・・1・・・開始!」
カウント終了と同時に相手二人が突っ込んできた。
やれやれ、それじゃあこっちも作戦通りにいきますか。
「須佐乃男、やるぞ。」
「はい!」
俺と須佐乃男で前衛の動きを止め、隙を作るために攻撃をする。
果して夜竹さんは幾つ気付けるのかな。
結果として夜竹さんは半数以上気付けなかった。
だが試合には勝てた。
俺と須佐乃男が前衛二人の動きを完全に止めていたので本音が攻撃を決めれない限りこちらは負けなかったからだ。
それも俺と須佐乃男で阻止していたので本音は少し悔しそうだ。
「お疲れ様。夜竹さん、やっぱり動きが変だったね。変に意識した?」
「う、うん。織斑君に言われた通りに隙を見つけようとしてたら、動きが疎かになっちゃったんだ。難しいね・・・。」
「初めはそんなものだろ。次は少し上手く、また次は前より上手くなれば良いんだ。俺だって最初から出来たわけではないんだ。気にしないでいい。だが諦めたら駄目だ。」
「そうだね・・・そうだよね!最初から何でも出来る人なんて居ないよね!!」
「あ、ああ。少しずつ出来るようになれば良いんだよ。」
「うん!」
テンションが急に上がって驚いたが、前を向いてくれたので良しとしよう。
「それじゃあ今度はISを使って戦闘をしてもらう。今の戦闘レベルを確認したいので一対一でやってもらう。それを見てペアを決める。」
なるべく実力の近い人と組ませた方が、ISに関しては良いだろう。
「本音はやらなくて良いぞ。」
「やった~!」
楽をしたかった本音は以上に喜んだ。
「その代わり連携の時はしっかりやれよ?」
「わかってるよ~。」
「あの~織斑君、また一人足りないよ?」
「ん?そうか・・・じゃあ相川さんと岸里さんと鷹月さん対俺でやるか。」
「えっ!勝てないよ~。」
「ちゃんと手加減はする。それにIS戦闘の実力を見るための戦闘だから、勝ち負けは気にしなくて良い。」
「それじゃあお願い!織斑君と戦えるなんてうれしいな~。」
「そうだね。織斑君と戦うなんて滅多に無いだろうし、本気でいきます!」
「頑張るぞー!」
やけに張り切っている三人を尻目に、他のペアを確認する。
「それじゃあ打鉄かラファールかを選んで戦闘を始めてくれ。」
それぞれ二機ずつあるので二戦同時に出来るな。
一対一の試合を全部消化して、残りは俺対三人の試合だけになった。
「おりむ~頑張ってね~。」
本音に見送られ須佐乃男を展開する。
「それじゃあ準備は良いか?今出せる本気を見せてくれよ。」
実力を見るために俺は回避に専念するとするか。
鷹月さんはラファール、相川さんと岸原さんは打鉄だ。
つまりは前衛二人に後衛一人ってことか。
須佐乃男、準備は良いか?
「(もちろんですよ!私はいつでも大丈夫です!!)」
ならば良し。
今回は剣一本と銃器しか使わないからな。
「(分かりました!)」
カウントを本音に任せ、集中する。
「はっじめ~!」
本音の間延びしたしゃべり方で開始の合図を出された。
こんな時くらい普通にしゃべれないのか?
「織斑君、いっくよ~!」
「私もいくよ~!」
相川さんと岸原さんが突っ込んでくる。
「よっと。」
二人の時間差攻撃をかわし鷹月さんに向けてマシンガンを放つ。
けん制以上の意味は無かったのだが、鷹月さんは体制を崩した。
・・・隙だらけだな、だが今回は決めに行かない方が良いな。
「させない!」
おっと相川さんが戻ってきた。
「ちゃんと仲間の事を見てるんだな。」
再び攻撃をかわし、岸原さんに攻撃する。
「わっ、危ない!」
「大げさに動きすぎだ。だから隙が出来る。」
よろけた岸原さんに接近して指摘する。
「次は気をつけるんだぞ。」
とりあえず脱落してもらった。
「うっそ!もう負け?」
「さて、残りは二人だな。まだやるか?」
「やめとくよ~。三人であれだもん、二人じゃもっと駄目だよ。」
「確かに。」
「そうか・・・じゃあこれで終わりだな。」
ちょうど終わったと同時に終了のチャイムが鳴った。
「よし!各班片付けをして次の授業に行け!」
「「「「「はい!」」」」」
織斑先生の一言で授業終了。
「お疲れ様、一夏君。」
「お疲れ様です、ナターシャ先生。」
片付けをしていたらナターシャ先生に話しかけられた。
「今度は私と戦ってね!」
「良いですよ。時間があえばやりましょう。」
ナターシャ先生との模擬戦の約束をして更衣室に向かう。
いつかはナターシャ対一夏の話を書きたいです。