「おりむ~こっちこっち~。」
「本音、そんなにはしゃぐと危ないよ。」
「平気だってかんちゃん。」
「そうそう。簪ちゃんは心配性なんだから。」
「お祭りを楽しみましょう、簪様。」
「須佐乃男まで・・・人多いからぶつかるよ。」
「平気平気~・・・あっスミマセン。」
「ほら、ぶつかった。」
祭りの空気に当てられはしゃぐ刀奈さん、本音、須佐乃男を注意しながら先に行っている簪を見ながら、俺は虚さんと後ろから着いていっていた。
「何やってるんでしょうか、お嬢様は。」
「前方不注意で人とぶつかってますね。」
「ええ。しかも随分と柄の悪い人に・・・」
「「はぁ・・・」」
面倒にならなければいいけど。
「おい!何処見て歩いてんだ!」
「スミマセン、少し周りを見ていて・・・」
「謝って済むなら警察なんかいらねえんだよ!この落とし前、如何つけてくれるんだ?ああん!」
「古典的なチンピラね。」
「お姉ちゃん・・・」
「誰が時代遅れだ!」
「あれ?声に出てた?」
「ええ、おもいっきり。」
「お前ら、絶対にゆるさねえ!やっちまえ!」
「はいゴメンなさい~。」
今にも殴りかかろうとしていたチンピラたちの前に割り込む。
「何だテメエは!」
「往来のど真ん中で迷惑ですよ。」
「うるせえ!」
「はい、これで正当防衛かな。」
「は・・・グェ!」
殴りかかってきたチンピラの腹に一発いれる。
あっさりと倒れた仲間を見て、残りのチンピラは激昂した。
「テメエ!よくもやったな!」
「また古典的なセリフを・・・スミマセンが周りの人たちは離れててください、邪魔です。」
「余裕こいてるのも今のうちだ!」
「よっと。」
周りの人たちを非難させている間に殴りかかってくるとは、さすがチンピラ。
自分たちだけ良ければそれで良いのか。
「おら!」
「はい残念。」
「この!」
「ハズレ。」
「くそ!」
「何処狙ってるんだ?」
「・・・一夏君、遊んでるね。」
「そうだね~。でも周りの人たちに配慮するから、おりむ~は真面目さんだね~。」
「そもそも原因はお姉ちゃんでしょ。」
「えへへ~、でもあのチンピラたち、まったく連携が取れてない訳でもないのに一夏君に一発も当てられないのね~。」
「一夏様は一夏様で攻撃しませんし、完全に遊んでますよ。あれは。」
一夏の舞うような動きを少し離れて見ている須佐乃男たちは、冷静にその動きを分析していた。
「そもそもお嬢様たちが注意していればこんな事にはならなかったんですよ。少しは反省してください!」
「「「は~い・・・」」」
そしてはしゃいでいた三人は虚に怒られた。
「何事ですか!」
「おっ、遅いですよ責任者さん。」
「あら一夏君。これはどうなってるの?」
「見ての通りチンピラに絡まれてるんですよ。」
「余所見すんなや!」
「だから当たらないって。」
騒ぎを聞きつけ、雪子さんがやってきた。
「早いとこ終わらせたいんですけど、さすがにこの騒ぎを責任者に確認させる前に終わらせたらこっちが悪者にされかねなかったでね。もう良いですよね?」
「ええ、思いっ切りやっちゃって良いよ。ちゃんと証言してあげるから。」
「なら・・・やります!」
祭りの責任者の許可も貰ったし、俺は一気にチンピラたちを片付けた。
「「「おお~!」」」
今まで避けていただけの俺が一撃で相手を鎮めた事に周りから感嘆の声がもれた。
別にそこまでの事じゃないだろ。
「お疲れ様~、一夏君。」
「別に疲れてはいませんけど、これに懲りたらこれからは注意してくださいよ楯無さん。」
「は~いこれからは気をつけま~す。」
「反省する気ゼロじゃないですか・・・」
「一夏くん、ありがとね。これでお祭りが台無しにならないわ~。」
「まあ余興になりましたからね。」
周りにいた客たちは、途中から見世物だと思っていたみたいで祭りそのものへの影響はほぼ無かった。
「でも一夏君ならすぐに片付けられたでしょ?何ですぐに終わらせなかったの?」
俺の力量を知っている雪子おばさんが首を傾げながら尋ねてくる。
「何でって・・・祭りを台無しにしたお詫びとして篠ノ乃と結婚しろなんて言われたらたまったもんじゃないからですよ。」
「その手があったか。惜しいことしたな~。」
「はぁ・・・許可取っておいて良かった。」
「冗談よ。でも一夏君のおかげで大事にならなかったわ、有難うね。」
「まあこいつらが暴れた原因は元々俺の連れがぶつかったからですし、これくらいはしますよ。」
「でも謝ったよ?」
「こう言った奴らに常識は通用しないんですよ。謝ったからと言って許してくれる訳ないですし、楯無さんは美少女なんですから何されるか分からないんですよ?分かってます?」
「美少女・・・えへへ///」
「あれ?楯無さん、聞いてます?」
注意していたのに何故か顔を赤らめて照れている刀奈さん。
何かあったのか?
「(一夏様が美少女とか言うからですよ。)」
また思考をよんだな。
でも事実を言ったのに何で照れるんだ?
「(それが乙女心と言うものです。)」
?良く分からないが、俺が悪いのか?
「(ええ、一夏様が悪いんです!)」
・・・何で拗ねてるんだよ。
「(別に拗ねてなんか無いですよ。・・・楯無様が羨ましいなんて思ってないです!)」
・・・思ってるのか。
「(え、あ、いや・・・違いますよ~。)」
今更誤魔化しても遅いぞ。
よく見たら簪も本音も、虚さんでさえそんな視線でこっちを見ていた。
「・・・何か?」
「別に・・・」
「何でも・・・」
「楯無様うらやまし~な~って思ったんだ~。多分二人も同じだと思うよ~。」
「「本音!?」」
「ふえ~?違ったの~?」
「それは・・・」
「え~と・・・」
図星を指され困惑する虚さんと簪。
「えへへ~美少女か~///」
「まだ照れてるんですか?」
「だって一夏君が私のこと美少女って・・・えへへ~///」
「・・・これは暫く駄目だな。」
再び夢想の世界に旅立って行った刀奈さんは置いておくとして、こっちの問題を片付けるか。
「本音もそうだが、簪も気をつけろよ。二人も楯無さん同様美少女なんだから。」
「!うん気をつけるね一夏!」
「私も気をつけるよ~!」
「一夏さん、私は?」
「虚さんは俺が言わなくても注意してると思いますけど・・・」
「そうでは無くて!」
「・・・虚さんは美人ですからね。これからもしっかりと注意してくださいね?」
「はい!」
やれやれ、言葉一つで大変な目にあったな。
そもそも俺は注意したかっただけなのだが・・・。
「一夏君って随分とモテるのね~。」
「油売ってる暇があるなら本部に戻ったら如何ですか?」
「あらそうね~。そろそろ箒ちゃんの巫女舞だし、そろそろ戻るとしますかね~。それじゃあ一夏君、この後もお祭りを楽しんでいってね。」
「この後もって、俺はまだほとんど祭りを楽しんでないですよ。来ていきなりあの騒ぎですからね。」
「それもそうね~。まあ楽しんでいってね~。」
それだけ言って雪子おばさんは本部へと戻って行った。
「やれやれ・・・?須佐乃男、如何したんだ?」
「別に良いですよ~だ。」
「ん?お前も注意されたいのか?」
「言われたいのはそっちじゃないですよ・・・」
「美ISとでも言えば良いのか?」
「何でそうなるんですか!」
「はぁ・・・お前も十分美少女だよ。だから気をつけるんだぞ。」
「分かりました!」
単純で良いんだが、明らかに言わされた感じなんだがそれでも良いのか?
「さて、そろそろ行きますか。皆さん、現実に帰って来てくださ~い。」
夢想の世界に旅立っていた四人の目の前で手を叩く。
「「「「はっ!」」」」
「行きますよ?」
「え~と、何処に?」
「何処って・・・祭りに来たんですよね?」
「そうだった、遊ぶわよ~!」
「楯無様~私も行きます~!」
「私もご一緒します!」
「だからはしゃぎすぎだってば!」
「「はぁ・・・」」
さっき注意したばっかなのに反省が見られない三人を見てため息を吐く俺と虚さん。
須佐乃男の冗談ではないが、手のかかる子供の相手をしている親みたいだな。
「俺たちも行きますか・・・」
「そうですね・・・」
すでに疲れている感じの虚さんと一緒に、俺も出店に向かった。
「おっ、一夏じゃねえか!久しぶりだな。」
「弾か、確かに2ヶ月ぶりくらいか?」
「この間お前が家に来て以来だからそうだな。・・・ところでそちらの方々は?」
「ん?この前言ったろ。俺の彼女たち。」
「こんの!本当に複数人の彼女が居るのかよ!」
「血涙ながすほどかよ・・・」
「一夏君、この人は?」
刀奈さんに裾をひっぱられ聞かれる。
「俺の悪友の一人、五反田弾です。」
「はじめまして。一夏君の彼女の更識楯無よ。」
「はじめまして。同じく一夏の彼女の更識簪です。」
「はじめましてごったん。おりむ~の彼女の布仏本音だよ~。」
「はじめまして。一夏さんの彼女の布仏虚です。」
「は、はじめまして。五反田弾です・・・ごったん?」
「本音は人に変な略称をつけるんだ、気にするな。」
本音の略称に戸惑っている弾に、そう言って納得させる。
「そうなのか・・・それで残りのその子は?」
「ん?ああ須佐乃男の事か。」
「須佐乃男?」
「ああ、俺の専用機だ。」
「専用機って・・・IS!?この子が!?」
「はじめましてでは無いですけど、一夏様の彼女の須佐乃男と・・・」
「おい!」
「冗談ですよ。一夏様の専用機の須佐乃男と申します。以後お見知りおきを。」
「はあ、ご丁寧にどうも。」
「それで、お前は一人か?」
「いや、蘭と・・・」
「おにぃ!何処に行って・・・一夏さん!?」
あっ、何か前にもあったな、こんな展開。
「今さっきばったりとな。久しぶりだな、蘭。」
「はい!お久しぶりです!それで一夏さん、そちらの方々は?」
「彼女だとよ。」
蘭の質問に弾が答えた。
「そう言えば彼女が居るって言ってましたね・・・ええ!?五人も居るんですか!?」
「一人は俺の専用機の待機状態だ。」
「・・・ISって人間の姿になれるんですか?」
「さあ?束さんにも分からないって言われたし、よく分からないんだ。」
「束さん?・・・篠ノ乃束博士の事ですか!?」
「何をそんなに驚いてるんだ?」
「だって篠ノ乃束博士ですよ!?普通は驚きますって!」
「そうかな?ここの神社だって篠ノ乃なんだから、知ってると思うんだが・・・」
「ええ!?ここって篠ノ乃博士の関係してる場所なんですか!?」
・・・余計な事言ったかな?
興奮状態の蘭を見て、俺はそんな事を思った。
「おい蘭、お前巫女舞見たいんだろ?そろそろだぞ。」
「へ!?もうそんな時間!?」
「ああ、ほら。」
腕時計を蘭に見せる弾。
確かにそろそろ巫女舞の時間だ。
「何でもっと早く言わないのよ!この馬鹿おにぃ!!」
「いって~な~何で俺にあたるんだよ!って待てよ俺も行く!じゃあな一夏!」
「ああ。・・・相変わらず騒がしい兄妹だな。」
五反田兄妹を見送ってため息と共につぶやいた。
「一夏君のお友達って面白いのね~。」
「夫婦漫才ならぬ兄妹漫才だね~。」
「それ、本人の前で言うなよ。蘭が本気で怒るから。」
「面白いのは私も思った。」
「まあ結局仲良いからな。」
「一夏様、私たちも行きましょうよ。篠ノ乃さんがどんな舞をするのか気になりますし。」
「そうだな・・・見ておいて損はないだろうな。」
昔に見た記憶があるが、あれは見ておくべきかもな。
「それじゃ~しゅっぱ~つ!」
「だから危ないですよ。」
「おりむ~、置いてっちゃうよ~。」
「一夏様、早く早く~!」
「ああ!だから危ないよ!!」
「「はぁ・・・」」
三度同時にため息を吐き、俺と虚さんも移動する事にした。
「ほえ~!しののん綺麗~!」
「雰囲気って大事ね~。」
「普段の篠ノ乃さんからは想像出来ないくらい落ち着いてるね。」
「そうですね~。篠ノ乃さん凄く落ち着いて舞ってますね~。」
「お嬢様たち、静かに見るものですよ。」
「まあ少しくらいなら平気ですよ。」
篠ノ乃の舞を見て感想を言い合う四人。
周りの人たちも感動しているようだし、小声なら平気だろう。
「おりむ~は見たことあったの~?」
「昔にな。当然篠ノ乃では無いが。」
「それくらい私だって分かるよ~!」
「声が大きいぞ。」
「だっておりむ~が!」
「はいはい、悪かった。」
本音の頭を撫でて落ち着かせる。
「はふ~・・・気持ち良いよ~。」
「良いな~。」
「羨ましい。」
「本音、ズルイ。」
「もう良いな。それで昔の話だが・・・」
「おりむ~、もう少し~。」
「やれやれ・・・」
本当に猫みたいだな。
結局巫女舞が終わるまで撫で続けた。
「一夏君、後で私たちのことも撫でること!」
「・・・はい?」
巫女舞が終わって、篠ノ乃に会いに行こうと本部に向かっている途中でそんな事を言われた。
「だから、本音だけズルイから私たちも撫でて!」
「こうですか?」
刀奈さんの頭を撫で、落ち着かせる。
「うん!」
「お姉ちゃんだけズルイ!一夏、私も!」
「・・・私も。」
「そろそろ本部ですから、二人は屋敷に帰ってからで。」
「分かった。」
「分かりました。」
刀奈さんを撫でながら本部への道を歩く。
何がそんなに気持ち良いのか俺には分からない。
分からないのだが、どうやら四人はお気に入りらしく、一人を撫でると残りの三人も撫でる事になってしまうのだ。
・・・最近撫ですぎて手首が少し痛いのだがな。
「(一夏様、私も撫でてください!)」
思考をよむな!そしてよんだのに頼むのかお前は!
「(私だって撫でてほしいですよ!今までは我慢してましたけど、こうして人の姿になれたんですからもう我慢しません!)」
・・・ずっと我慢しててほしかったな。
そんな事を思いながら本部へ到着した。
「刀奈さん、もう終わりです。」
「ええ~!もう少し撫でてよ~!」
「人前で更識の当主を撫でるのはさすがに・・・」
「それじゃあ後でもっと撫でてね!」
「・・・本音と同じくらいなら。」
「約束ね!」
「はぁ・・・」
刀奈さんと約束をして、頭を撫でるのを止める。
「すみませ~ん。誰か居ませんか~?」
「は~い。おや一夏君じゃないか。」
「ご無沙汰してます。篠ノ乃・・・箒は居ますか?」
「箒ちゃん?もうすぐ出てくるから待ってて。」
「出てくる?・・・分かりました。」
それだけ聞いて外に出る。
「あれ?一夏君、良いの?」
「今風呂だそうです。」
「あれだけで分かるんだ・・・」
「出てくるって言ってましたし、こっちに来るならもうじき来るって言いますしね。」
「そうなんだ・・・さっすが一夏君ね。」
「無駄に付き合いがありますからね。」
その間刀奈さんの頭を撫でる事にした。
「はう~・・・一夏君に撫でられると何故か気持ち良いのよね~。」
「俺にはよく分かりません。」
「一夏!お待たせ!」
撫でるのを止めると同時に篠ノ乃が出てきた。
「走ったらまた汗掻くぞ。」
「平気だ!」
「そうか・・・巫女舞見たぞ。」
「知ってたのか!?」
「偶々だ。神社の前を散歩していたら祭りの看板を須佐乃男が見つけたんだ。それで雪子おばさんから今年は篠ノ乃が巫女舞をするって聞いたんだ。」
「そうか・・・それで如何だった?」
「しののん綺麗だったよ~。それに落ち着いてたね~。」
「そうだな。普段からあれは無理だろうが、もう少し落ち着いたら俺も安心できると思った。」
「そうか・・・少しは落ち着いてきたと思ってたが。」
「だからもう少しと言ったろ?二学期は頼むぞ、本当に。」
「一学期はすまなかった・・・」
「反省出来るなら成長したんだろ。まあ改めてよろしくな篠ノ乃。」
「ああ!・・・ところで何時まで私の事を篠ノ乃と呼ぶんだ?」
「さあ?ずっと篠ノ乃って呼んでたからな。俺にも分からん。」
俺の発言に篠ノ乃は肩を落とした。
「いつかは箒と呼ばせてみせるからな!」
などと捨て台詞を残して本部に戻って行った。
「一夏君、呼ぶの?」
「さあ?少なくとも今は呼ぶ気は無いです。」
「そっか・・・良かった。」
「ん?何で刀奈さんが安心してるんですか?」
「だってまた勘違いで一夏君の事を付回したら心配じゃない!」
「・・・そうですね。これ以上問題を俺に持ち込まれたくは無いですね。」
「おりむ~、花火だよ!早く見える場所に行こうよ~。」
「分かった。じゃあ刀奈さん、行きましょうか。」
「そうね。よ~し、行くわよ~!」
「お~!」
「はい!」
「だから走ったら危ないって!」
「まったくお嬢様は・・・」
「まああれが刀奈さんですし、俺たちでしっかりと守れば平気ですよ。」
「・・・そうですね。これからもしっかり見守らなければいけませんね。」
「少しは自分でもしてほしいですけど、これだけ言ってもしませんからね。」
「「・・・はぁ」」
四度同時にため息を吐き、移動する。
「わぁ~綺麗。」
「良く見えるね~。」
「これが花火ですか。実際に見るのは初めてです!」
「凄いねこれは。」
先に行っていた四人に追いつき、一緒に花火を見る。
そういえば弾と蘭は帰ったのか?
そんな事も考えたが、今はこの六人で花火を楽しもう。
そう心の中で決めたのだった。
やっと祭りの話が書けた。
次回は屋敷での日常を書こうと思ってます。