もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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やっと碧と一夏のデートの場面を書けた・・・
そしていつの間にかお気に入り登録が800に。
皆さんありがとうございます!!


デート当日

「あ、朝になってしまった・・・」

 

 

寝ては緊張で目覚めるという事を繰り返していたら外が明るくなってきた。

私、小鳥遊碧は生まれて初めて異性と二人きりで出かける、所謂デートだ。

その相手は10歳年下の男の子。

いや、見た目だけなら男性と言った方が良いかもしれないくらい大人びている。

少し子供っぽい私と丁度良い感じかもしれない。

でも彼にはすでに彼女が居る、しかも四人も・・・

これは彼が浮気性な訳ではなくて、彼女たちから言い出したようだ。

全員が諦められなくて、全員が他の彼女を思っての事らしい。

その一人は共同戦線と呼んでいるが、まさしくその通りなのだろう。

彼もその事を知っているし、全員を大事にしている。

あの年では考えられないくらいの包容力と落ち着いて物事を判断できる冷静さ、彼をよく知らない人に彼の年齢を言っても信じてはもらえない可能性が高いだろうな。

現実逃避をしても年の差は変わらない。

私は彼の姉より年上、10年といえば一昔と言うくらい離れている。

私もそろそろ30手前、所謂アラサーと言われる年齢に差し掛かってきてる。

こんな私とデートしても彼は楽しくないだろう。

 

「やっぱり断ろう。」

 

 

そう決めた所にメールが届いた。

差出人は彼。

メールを開いて苦笑いをしてしまった。

その内容は、

 

「今更断るのは無しですよ。」

 

 

どこかで見ているかのようにタイミングが良い。

私の思考などお見通しなのだろう。

これじゃあ断れない。

彼にバレて、彼女たちが認めてくれたのだ。

私に初めから退路は無かったのだ。

 

「よし!覚悟を決めなきゃね。」

 

 

誰に言うでも無く、私は大声で気合を入れる。

今はまだ朝の7時前だが、幸いこの屋敷の朝は早いため、寝ている誰かを起こすと言う問題は起こらなかった。

 

「でも、やっぱり早起きなんだな~。」

 

 

こんな時間でもすでに起きている彼を思い、顔が熱くなってくるのを感じた。

近くに居なくても私をドキドキさせる。

 

「やっぱり私は一夏さんの事が好きなんだ///」

 

 

自分の気持ちを口にしたら、更に顔が熱くなった。

最早誤魔化しきれない。

私、小鳥遊碧は織斑一夏さんの事が好きなんだ。

分かってはいたけど、認めるのが怖かった。

主の彼氏、10歳年下、私とは釣り合わない、言い訳ばかりしてきたが、もう自分に嘘はつけない。

だから、今日気持ちを伝える。

それがどんな結果だろうと受け止めてみせる。

 

「やるぞ~~!」

 

 

今から気合を入れても、出かけるのはまだ当分後なのだから意味が無い。

しかし今の私にはその事を考える余裕は無かった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、軽く走ってくるか。」

 

 

時を遡り早朝4時。

織斑一夏は、普段通りの生活をしていた。

この男に緊張と言った概念は無い。

恥ずかしい事も素面で言ってのけるのだ、デートくらいで緊張などしない。

緊張はしていないが、悩んではいる。

自分は彼女の事を如何思ってるのか、結局結論は出なかった。

すでに四人の彼女が居て、更に自分を慕っている専用機の女の子まで居るのだ。

そこに新たに年上の女性から好意を寄せられているようなのだ。

確信は無い、だが行動や態度でほぼ決定的なのだ。

 

「勘違いなら、どれだけ楽な事か・・・」

 

 

本人の口から聞いた訳では無いのでそうあってほしいと願うが、自分の直感とここ数日一緒に行動して得た感触はその願望を否定する。

 

「悩んでも仕方ないな、走るか。」

 

 

走ってる間は悩む事も無いと思い、何時のように屋敷の外周を軽く走る。

もちろん一夏基準での軽くなので、普通の人間がやったら半分も無理だろう。

それくらいこの屋敷は広い。

しかしこの広い屋敷の中で、一夏は少なくとも六人から好意を寄せられており、すでに四人と付き合っている。

友達が少ないことを悩んでいる一夏だが、同性は兎も角、異性は一夏の容姿、雰囲気、言動、行動、そして強さに憧れ、惚れてしまうため友達では満足出来ないのだ。

もちろんこの屋敷内でも例外なく一夏に憧れる異性は大勢居る。

だが、屋敷の当主とその妹、そしてその二人の専属の付き人の彼氏にちょっかいを出す猛者は居なかった。

まあ普段から一夏と絡む機会の少ない者は密かに想うだけで満足なのだが、此処最近一緒にいたために、彼女は我慢出来なくなったのだろう。

 

「(結局考えてるよ・・・)」

 

 

その事を考えながら走っていたため何時もより少し遅いペースなのに気付き、苦笑いをしてペースを上げる。

外周を4回りして屋敷内に戻る。

何時ものように道場に行き、今度は体術の動きを確認する。

これがこの屋敷に来てからの一夏の日課だ。

 

「ん?誰か居るな・・・誰だ?」

 

 

普段なら誰も居ないはずの道場に人の気配がある。

この距離では個人の特定は難しい。

個人を探すために集中していれば判断は可能だが、さすがに集中していない今は漠然としか分からない。

 

「まあ他に人が居ても関係は無いが・・・動いてる気配が無いのは気になる。瞑想でもしてるのか?」

 

 

気になったので、何時もより早足で道場に向かう一夏。

道場が近づくにつれて、気配の持ち主を特定出来た。

 

「何であの人が?」

 

 

それは一夏にとって意外でしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早いですね、虚さん。」

 

 

道場に居たのは虚だった。

普段虚は道場に近づかないのだが、一夏は驚く事無く声をかける。

 

「さすがに一夏さんを驚かすのは無理でしたか。」

 

「少しは驚いてますよ。こんな時間に道場に人が居るんですから。しかもそれが虚さんだったので更に驚きましたよ。」

 

「その割には落ち着いていますね?」

 

「まあ気配で分かりましたからね。虚さんは消していたようですけど、俺にはバレバレです。」

 

「これでも練習してるんですよ?」

 

「普通の相手には十分でしょうけど、此処は暗部の家ですからね。その程度ではバレる恐れがありますよ。」

 

「厳しいですね。」

 

「誰も死んでほしくないから厳しくするんですよ。そうしないと何時何が起こるかわからない世界ですからね。」

 

「やっぱり一夏さんは優しいですね。」

 

「世話になってる人に死んでほしくないと思うのは普通だと思いますよ。」

 

顔をそらしながら言う一夏を見て、虚は可愛いと思った。

普段は恥ずかしがらずになんでも言う一夏だが、誰かを心配する時は少し恥ずかしそうにするのだ。

 

「こう言う事を言うのは恥ずかしいんですか?」

 

「こんな事素面で言える奴なんて居ませんよ。」

 

「これ以上に恥ずかしい事は素面で言うくせに・・・」

 

「?」

 

 

小声で言ったために一夏には聞こえなかったようだ。

 

「ところで虚さんは何しに道場に?俺を驚かすだけな訳ないですよね。」

 

「もう少しお話してくれても良いじゃないですか。」

 

「生憎時間は有限ですからね。今度暇な時に付き合いますよ。」

 

「やっぱり一夏さんは現実的ですね。そこは嘘でも付き合ってくれるって言う所ですよ。」

 

「すみません、今日はどうも調子がおかしいんですよ。」

 

「体調でも悪いんですか?」

 

「いえ・・・碧さんの事で。」

 

「ああ、そうでしたね。」

 

 

すでに碧の気持ちを聞いている虚は複雑な心境を表に出さないように必死だった。

だが、

 

「虚さんはすでに聞いてるようですね。」

 

「!?」

 

 

一夏の前で動揺しようものならすぐにバレるのだ。

 

「それで虚さんたちは如何思いますか?」

 

「何が・・・ですか?」

 

「彼女の気持ちですよ。あくまで虚さんや他の三人が如何思うかですよ。碧さんの気持ちは俺は聞いてないので、今は置いておくとして、虚さんは如何思いました?それに他の三人は?」

 

 

珍しく動揺しているのか、普段より声が大きい。

あくまで彼女の気持ちは彼女自身から聞きたいと言う一夏。

それは問題の先延ばしであり、彼女の気持ちを大事にしたいと言う優しさからの発言なのだろうと虚は思った。

 

「そうですね・・・私個人としては応援したいですね。」

 

「応援?つまり反対はしないと?」

 

「もちろん、一夏さんが冷たくなるのなら反対しますけど、そんな事しませんよね?」

 

「ええ、それはまあ・・・」

 

「なら問題ないですよ。それに、もう一人一夏さんともっと仲良くなりたい子が居ますしね。」

 

「もう一人?・・・でもアイツはISですよ?」

 

「それでも一人の女の子ですよ。」

 

「・・・アイツの事も了承済みなんですか?」

 

「ついでにね。」

 

 

普段の真面目な話し方ではなく、年上のお姉さん風に話す虚を見て一夏は噴出す。

 

「如何したの?」

 

「いえ、虚さん似合ってないですよ。」

 

「私だってこう言った話し方するんだよ?」

 

「すみません、でも初めてだったので、つい・・・」

 

「まったく。今度何かおごってね?」

 

「まあそれくらいは・・・でも何で話し方変えたんですか?」

 

「新しい刺激?」

 

「何故疑問系なんですか。それに別にマンネリ化してる訳じゃないんですから新しい刺激は必要無いんじゃないですか?」

 

「じゃあ対抗意識?」

 

「誰に対しての対抗意識なんですか・・・」

 

「え~と・・・小鳥遊さん?」

 

「明らかに後付けの理由ですね・・・」

 

 

虚の変化に若干戸惑ったが、虚本人が何故変えたのかはっきりしないために戸惑いは呆れに変わっていった。

 

「とにかく、私は一夏さんが如何しようと文句は言いません。だから一夏さんはしっかり考えてあげてね。」

 

「ゴッチャになってますけど・・・」

 

「もう!今は良いの!」

 

「・・・あははははは。」

 

「何!?如何したの?」

 

「いえ、ありがとうございます。おかげですっきりしました。」

 

「そう?それなら良かった。」

 

「ええ、ですから虚さんも無理して刀奈さんの真似しなくても良いですよ。」

 

「!?」

 

「刀奈さんが碧さんの気持ちを聞きだしたんですよね。それで刀奈さんは歓迎までとは言わなくとも認めてくれた、でもその事を俺に言いたくない。だから変わりに虚さんが俺に言ったんですよね?」

 

「・・・参りました。」

 

 

一夏の推理力に驚き、素直に負けを認める。

元々一夏に隠し事をしようとした事自体無理な話なのだから、驚く必要は無いのだが、まさかここまで言い当てられるとは思ってなかったのだ。

 

「ですが、これは私の独断です。お嬢様は関係ないです。」

 

「それも分かってますよ。虚さんは優しい女性ですからね。」

 

「///」

 

「ん?何で赤くなってるんですか?」

 

「この鈍感さだけは直ってほしいですね。」

 

 

鋭い一面を見たからこそ際立つ一夏の鈍さ。

相手の事をさらっと褒める事が出来るのは良いが、その事で恥ずかしがっているのを理解出来ないのが、一夏の欠点だと虚は思っているのだ。

 

「とにかく、私たちは一夏さんの決断を認めますので。ですから一夏さんは私たちを気にせずに決めてくださいね。」

 

「分かりました。」

 

「では、私はこれで。」

 

「あっと、虚さん・・・」

 

「何か?」

 

「可愛かったですよ、刀奈さんの真似。」

 

「!?まったく一夏さんは///」

 

 

またしても天然発言で褒められ赤くなる虚。

しかし今回だけは一夏も狙ってこう言う発言をしたのだ。

 

「なるほど・・・こう言う発言は恥ずかしいのか。普通に褒めるのも難しいんですね、普通の人は。」

 

「一夏さん!!」

 

「すみません。でも本当に可愛かったですよ。」

 

「もう、知りません///」

 

 

これ以上褒められるのに耐えられなくなった虚は道場を後にした。

 

「やはり俺はズレてるな・・・あれくらい恥ずかしくないだろ。」

 

 

そして自分のズレを確認してぼやく一夏が道場に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「如何しよう、もう時間が無い!」

 

 

ダラダラと過ごしていた訳では無いのだが、すでに約束の時間が迫ってきている。

一夏さんは時間に正確な人だ。

遅れたら大変な気がする・・・

 

「え~と、服はこれでしょ。それから財布、携帯、バッグに・・・」

 

 

普段しっかりとしていると言われるが、私生活では抜けていることが多いので指差し確認をしないと忘れ物をしてしまうのだ。

 

「って時間!大変だ~!」

 

 

慌てて部屋を出て行く。

待ち合わせの場所である門についてからバッグを忘れた事に気付いた・・・何でこんなに抜けてるんだろう。

泣きたくなってきた・・・

 

「すみません、待ちました?・・・如何かしましたか?泣きそうですけど。」

 

「いえ、バッグを・・・」

 

「バッグ?部屋に忘れたんですか?」

 

 

コクン。

泣きそうなのを我慢して頷く。

一夏さんに呆れられた。

 

「なら取りに行きましょう。幸いまだ屋敷の前ですし。」

 

「良いんですか!」

 

「良いも何も、部屋に忘れたんですよね?それなら時間も掛かりませんし、必要ですよね?」

 

「はい!じゃあ取ってきます!」

 

 

急ごうと走りだしたが・・・

 

「ふにゃ!?」

 

 

何も無い所で躓いて転んだ。

何でこんなにドジなんだろう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「え?うん、平気・・・」

 

「特にすりむいては無いですね、良かった。」

 

 

私の顔に付いた汚れを払いながら優しい言葉をかけてくれる。

呆れられても仕方ないと思ってたが、一夏さんは心配してくれるだけで、特に呆れた様子は無い。

 

「え~と、ゴメンね。」

 

「何で謝ってるんですか?」

 

「こんなドジで・・・」

 

「気にしませんよ。個性の内だと思いますよ。」

 

「でもこんな個性ほしくなかった。」

 

「それは・・・でもさっきの悲鳴は可愛かったですよ。」

 

「!?忘れて///」

 

「ほら、バッグ取りに行きますよ。」

 

「何で冷静なの!?」

 

 

完全に一夏のペースだが、特に気にする必要は無いと碧は思っていた。

年は自分の方が上だが、こう言った経験は一夏の方が豊富なので背伸びする必要は無いと思ったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう忘れ物は無いですか?」

 

「うん!もう平気だよ。」

 

「それじゃあ行きましょうか。」

 

 

部屋に忘れたバッグを取りに戻り、今度こそ出発する。

 

「しかし、碧さんも人間なんですね。」

 

「何よ?どっから如何見ても人間だよ、私は。」

 

「いえ、そうでは無くて・・・」

 

「じゃあどう言う意味なの?」

 

「仕事中はしっかりしてるのに普段は意外と・・・」

 

「どうせ抜けてますよ!」

 

「別にそこまで言うつもりは無かったんですけど・・・」

 

「は!?また墓穴掘った・・・」

 

 

一夏の言いたかった事は意外と可愛らしいだったのだが、碧が早とちりをしたため言えなかった。

 

「兎に角、そろそろ駅ですし、しっかりしてください。」

 

「うん・・・平気・・・」

 

「全然平気に見えませんよ!」

 

 

ああ、私は如何してこうなんだろう・・・

駅に着いたから一先ずパスを買わないと。

え~と財布は・・・あれ?

バッグの中に入れたはずの財布が見当たらない。

 

「あれ?何で?如何して?」

 

「碧さん?」

 

「ゴメン・・・財布忘れた。」

 

「そうですか・・・」

 

「だから今日は・・・」

 

「俺が出しますよ。」

 

「え?」

 

「そもそも今日は俺が全部払うつもりでしたし、碧さんが財布を忘れてくれたおかげで遠慮も出来ませんよね?」

 

「うう~!何か悔しい!!」

 

「碧さんの素ってこんな感じなんですね。」

 

「幻滅した?」

 

「いえ、可愛いですよ。」

 

「もう///」

 

 

素面でそんな事言うんだから。

一夏さんは普段鋭い反面、こう言った事をさらっと言えるくらいズレているって楯無様が言ってたけど本当なのね。

 

「それじゃあおごってもらおうかな。」

 

「ええ。それじゃあ行きましょか。」

 

「ええ!」

 

 

一夏さんに手を握ってもらい電車に乗り込む。

何だか照れるな。

 

「碧さん?如何かしましたか?」

 

「何でもな~い。」

 

「?」

 

 

一夏さんが首を傾げる、そんなしぐさが可愛く思える。

これが楯無様たちが言っていた一夏さんのギャップなのだろうか。

 

「顔赤いですけど、本当に平気なんですか?・・・熱は無いみたいですね。」

 

「///」

 

 

額に一夏さんの額が当たる。

さすがに恥ずかしいよ~。

 

「?もしかしてまたズレてますか?」

 

「ええ///それは思いっきり///」

 

「そうですか・・・これも駄目か。」

 

 

周りに人が居なかったから良かったけど、もし見られたら恥ずかしくて死んじゃうよ~。

今日一日一夏さんのズレに恥ずかしい思いをさせられると思うと更に顔が赤くなった。




さて、次回はデートの内容と碧の告白。
結果はお楽しみに。
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