もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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 本日2回目の更新です。
 皆さんのご指摘を受けて台詞ごとに改行して書いて見ました。これでさらに読みやすくなったかな?
 ではどうぞ。



更識家にて

 簪は父と姉が任務に出かけていったあと自室で考え事をしていた。

「(自分には力が足りないから任務に連れて行ってもらえないのだろう。やっぱり私は出来損ないなのだろうか。)」

彼女のために言っておくが、決して彼女は出来損ないではない。全てにおいて世間の平均を上回る能力を持っている。だが彼女の家は、力が全てを決める暗部を生業にしているのだ。

 したがって家の人間は彼女と姉の刀奈を比べ簪のことを「出来損ない」と影で声をそろえて言っているのだ。

 「(お姉ちゃん・・・お姉ちゃんも私のこと出来損ないだと思ってるの?)」

簪は自分が影で出来損ない扱いされていることを刀奈が知らないとは思っていなかった。

 昔は凄く仲の良い姉妹だった。しかし、刀奈の能力が開花していき自分との差が開いていくにつれて自分たちの関係も変わっていっている気になっていた。

 少し前に簪は刀奈にとある事を聞いていた。

 「どうやったらお姉ちゃんみたいに色々なことが出来るようになるの?高い能力が付くの?」

当然本人の努力が必要なのだが、簪としては少しでもヒントが欲しかったのだ。だが、

 「別に高い能力がなくてもいいじゃない。簪ちゃんは簪ちゃんで。」

と答えた。

 刀奈としては「無理しなくても今のままでいいんじゃない」と言うニュアンスで言ったのだが、簪にとっては、「貴女に高い能力は無理」と言うニュアンスにとっていた。

 「(私だってきっと出来る。お姉ちゃんに近づきたい。)」

そんなことを考えながら眠りに就いた。この家に同年代の男の子が来ることなど知らずに、そしてその男の子との出会いが自分の人生を大きく変えるとは今の簪には知る由もなかった。

 

 

 「へぇ~~~一夏君って私の一つ下なんだ。」

私は日本に戻っている間に家に居候することになった織斑一夏君と仲良くなっていた。

 「そうみたいですね、刀奈さんは今中2ですよね。俺は今中1ですから。」

一つ下なら簪ちゃんと同じよね、などと考えながら私は一夏君との会話を楽しんでいた。

 「それにしても、一夏君も大変だったね、こんなことに巻き込まれて。」

 「今回は俺の油断が生んだことですから自業自得だと思ってますよ。」

見た目どおり落ち着いた感じの話し方をしている一夏君は今回のことを自分のせいだと言った。

 「でも、お姉さんが有名だから今回の事件に巻き込まれたんだよね。なのに自分のせいなの?」

私は、どう見ても彼は巻き込まれた側だと、決して彼が原因ではないと思っていた。

 「俺が油断してなければ誘拐されることはなかったんですから、誘拐の目的はどうあれ俺が原因でこのような事態になったのでやっぱり俺が悪いんだと思ってるんですよ。」

彼はちょっと寂しそうに答えてくれた。

 何でそんなに強いのだろうか。物理的強さも相当だろうがなんといっても精神的に彼は強い。少なくとも自分よりはるかに強い。もしかしたら父よりも強いのではないか?この数時間で私は彼の強さに興味をもった。

 

 「本日よりこの家でお世話になります織斑一夏です。これからよろしくお願いします。」

俺は更識家の人間が集まっている大広間でそう挨拶した。

 「そう硬くなる必要はないよ、一夏君。自分の家のようにしてくれてかまわない。」

自分の前に居る人、更識家十六代目当主更識楯無さんがそのように言ってくれた。

 「ありがとうございます。ですがお世話になる以上、最低限の礼儀はわきまえて行動したいと思っています。」

好意はありがたいが自分はそこまで図々しくはなれないと思っている。(姉があれなので尚更自分がしっかりとしなければいけない思っているのかもしれない。)

 

 私は大広間に呼ばれ何事かと思っていたら急に同年代の男の子が家で生活すると聞いて驚いていた。

男性恐怖症までとはいかなくても、私は男の子と話すのが苦手なのだ。

 「(どんな人なんだろう。怖くなければいいのにな。)」

私はそんなことを考えながら彼の方を見た・・・そこには----

 「本日よりこの家でお世話になります織斑一夏です。これからよろしくお願いします。」

-----凄く礼儀正しくカッコいい『男性』がいた。

私はこの時点で、彼が同い年だとは思わなかった。

 落ち着いた雰囲気、鋭い眼、鍛えられた身体、どれをとっても同年代とは思えなかったのである。でも隣に座っているお姉ちゃんが、

 「(一夏君は簪ちゃんと同い年なんだよ。)」

と小さな声で教えてくれたのを聞いて内心かなり動揺した。

 「(あれで同い年、私とは全然違う。やっぱりわたしは駄目なのかな・・・。)」

 「(かんちゃ~ん何考えてるの~~。)」

とても間延びした声がお姉ちゃんの反対側の隣から聞こえてきた。

 布仏本音、私たちの幼馴染であり更識家に使える布仏家の次女だ。現在は私のメイドということになっている。

 「(・・・何でもないよ、本音。)」

私は親友でもある本音に嘘をつくことに後ろめたさを感じていた。

 「(どうしてこんなに惨めな感じがするのだろう?)」

私はこの場に居ることが苦痛になっていた。

 

 

 俺は、一通り更識家との顔合わせを済ませ、用意された部屋に向かっていた。

 「それにしても広い庭だな。」

廊下を歩きながらそんなことをつぶやいた。決して答えを期待したつぶやきではなかったのだが、

 「たしかに凄いですよね、でもそのうち慣れるとは思いますよ。」

前方から声がした。

 「(また気を抜いていたな、まったく懲りてないのか、俺は。)」

人の気配を探っていなかったのを差し引いてもこれだけ近づかれて気づかなかったのはやはり油断していたのだろう。

 「慣れるのでしょうか?俺は貴女ほど長い時間この場所に居るわけではないので、そこまではならないとは思いますよ。」

女性の登場に驚きながら俺は無難な答えを返した。

 「そんなことはないのでは?貴方は少なくとも1年以上この屋敷で生活するわけなのですから、やっぱり慣れると思いますよ。」

彼女の言っていることはもっともだ。おれは1年以上この屋敷で世話になるのだ。慣れるのかもしれないな。

 「確かに慣れるのかもしれませんね。でも俺はこの景色を見て覚えた感動を薄れさせないようにしたいので、慣れたくはないですね。」

本当に自分は年相応の態度がとれないと思った。相手によっては不快に思うかもしれない態度をとっている自覚はある。でもそんなにすぐ修正できるものでもないのだ。

 「一夏さんは大人なのですね。」

なので彼女がそう言ってくれてすこしホッとした。そこで俺はようやく女性の方をむいた。

 布仏虚、たしか更識家に仕える布仏家の長女だったな。

 「布仏さん、何故貴女がここに?」

俺は疑問に思ったことを彼女に聞いた。いくら更識に仕えると言っても俺のことは、あまり関係ないのではないかと挨拶したときに思っていたので彼女の登場は少なからず動揺を覚えたのだ。

 「おねえちゃ~~ん」

彼女の答えをまっていたのだが別の声がした。彼女のことを姉と呼んでいるのを見ると妹の布仏本音なのだろうか。

 「おお、おりむ~もいっしょだ~。やっほ~~」

なんとも独特の空気を持っている女性だな。確か同い年だと聞いたが、とても同い年だとは思えないな。

 「本音、いったいどうしたの?貴女は確か簪様のとこに居たんじゃ?」

姉である虚さんは、妹が何故ここにきたのかを遠まわしに聞いている。

 「うん、かんちゃんがおりむ~と話したいって言ったからおりむ~を呼びにきたのだ~。」

かんちゃんとはさっき虚さんが言った簪と言う子だろう。というか、

 「なあ、『おりむ~』って俺のことか?」

彼女が言う呼称が気になった。

 自慢ではないが今まで俺は渾名を付けられたことがなかったんだ。決して友達がいないわけではないが、どうも近づきにくい雰囲気だと悪友の一人に言われたことがある。

 「そだよ~織斑一夏だからおりむ~だよ。」

どうやら彼女は俺のこの雰囲気を気にしないようだ。もしくは彼女はこういった雰囲気を感じることが出来ないのかもしれない。

 「むぅ~今おりむ~失礼なこと考えてたでしょ~」

意外にも鋭かった。俺は彼女の評価を早々に改めた。

 「そんなことはない。とにかくまずは部屋の整理をしたいから簪さんにはあとで話そうと伝えてくれ。」

 「了解だよ~。じゃあ~あとでね~~。」

そう言って本音はパタパタと走って言った。

 「はぁ・・ごめんなさいね一夏さん、あんな妹で。」

一連の騒動を聞いて姉の虚さんが謝ってきた。

 「気にしてませんよ。」

俺はああいった感じの人を知っているので、不快感はなかった。当然束さんのことだ、彼女は本音より独特の空気感を持っているから。

 「ありがとうございます。やはり一夏さんは優しい人なのですね。」

とてもむず痒いことを面と向かって言われた。

 「優しいんじゃなくて、ひねくれてるだけですよ、俺は。」

俺は気恥ずかしさからそう返した。

 その後は取り留めのないことを話しながら部屋に向かった。

 

 

 「かんちゃ~ん、おりむ~、後であってくれるって~。」

本音が帰ってきて聞いたことない呼称で彼のことを呼んでいた。いつの間に仲良くなったのだろうか。彼女の行動力は見習いたいものだと思うと同時に私には無理だと言う気持ちがあった。

 「解った。ありがとう本音。」

私が自分でいけないから幼馴染である本音に頼んだのだ。 

 「(お姉ちゃんなら自分で行くんだろうな・・・。本当に私は・・・)」

 「かんちゃ~ん、また暗い顔してるよ~、だいじょ~ぶ?」

本音に言われてハッとした。顔にまで出ているのか。

 「ゴメン本音、大丈夫だよ。」

私はそう返して違うことを考えていた。

 「(どういったら、彼のような強さが手に入るのだろうか?どういったことを話せばいいのだろうか?)」

私は彼、織斑一夏の強さに興味をもったのだ。

 後に恋に変わるのだと現時点では微塵も思っていなかった。

 

 「(一夏くんとこれから一緒に暮らすんだから仲良くしたいな~。)」

私は自室に帰り疲れからベッドに横になりながら一夏君のことを考えていた。

 彼の考えは非常に大人だ。巻き込まれたのにその原因は自分の油断だと言える彼は精神的に大人であり、同年代の男子にはない雰囲気を醸し出しているので非常にドキドキする。

まるで自分よりも年上の人を相手にしている気になってくる。

 「(一夏君は私のこと如何思ってるのかな?)」

まるで恋する乙女のようなことを考えながら私は睡魔に身を任せた。

 

 「さてと荷物の整理はこれぐらいでいいか。」

俺はあてがわれた部屋の整理を終わらせ、先ほど本音に言われた簪さんの下に向かうことにしたのだが・・・

 「どこに行けばいいんだ?」

場所を聞かなかったので簪さんがどこに居るのかわからなかった。

 「(俺は本当に抜けてるな。)」

普段落ち着いていると言われても実はこんなヘマをしょっちゅうしている。

 だから俺自身、自分のことを落ち着いてるとは思わないのだ。

 「虚さんに聞くか。」

そう思ってさっき聞いた虚さんの番号に電話をかけた。

 「(そういえば、電話を使うのも久々だな。)」

携帯をもっていても滅多に使わないので番号を聞くのに手間取ったが彼女が丁寧に教えてくれたため何とかなったのだ。

 「はい、なんですか?一夏さん。」

数コールの後虚さんがでた。

 「すみません、虚さん。さっき本音と約束した簪さんの部屋ってどこなんですかね?聞くの忘れてしまってちょっと困ってしまいまして・・・。」

この屋敷は広いですからね。っと俺は言外に虚さんに言った。

 「解りました、今からそっちに行って案内しますね。」

虚さんはそう言ってくれた。こんなに頼りになる女性の知り合いは始めてかも知れない。

 「(俺の知り合いの年上女性は残念だからな。)」

そんなことを考えながら。

 「ありがとうございます、虚さん。では、待ってますね。」

そう答えて電話を切った。

 いったい簪さんは俺に何を聞きたいんだろうな。

そんなことを考えながら俺は虚さんが来るのを待っていた。




 如何でしたか?布仏姉妹初登場。
 虚さんの口調は丁寧な感じで、本音は間延びする感じなのでこんな感じにしてみました。
 本音の台詞が変換されてないのはわざとです。一夏、虚にいい感情を抱いていますね~。このまま虚さんもヒロインになるのかも。
 次回は簪メインの話にしたいです。
 ではまた~

p.s.
 自分は大学のゼミでむやみに改行するなといわれていて若干の改行恐怖症なので前回までの感じになってました。
 今回も若干恐怖を感じながら書いていました。
 
 またご指摘などありましたらコメントしてください。なるべく反映していきたいとおもっています。
 虚さんや本音のヒロイン化も希望者が多ければ考えます。
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