一夏が私以外とキスした。
私の知らない間に彼女が増えている。
しかも一緒に風呂だと!それもお互いに全裸でだ!!
一夏、何故そんなにお姉ちゃんを遠ざけようとするのだ!
昔はあんなに懐いてくれてたのに。
「ん?何だそんなに睨んで、嫌いなものは入れてないだろ?」
「ああそうじゃない。少し考え事をな。」
「ふ~ん・・・」
「興味なさそうだな。」
「まああんまり。」
「一夏さん?また手が止まってる。」
「え?ああスミマセン。」
私が一夏と会話していたのに横槍を入れられた。
何なんだあの女は!
一夏の護衛だとか言ってたが、そんなもん頼んだ覚えは無いぞ!
護衛なら護衛らしく対象にバレないように行動するべきだろうが、それが何故あんなにも仲良くなってるんだ。
まあ、一夏から隠れ通せる人間など居るはず無いが。
何故なら私や束ですら一夏から隠れ通せないのだ、たかが護衛程度が一夏に気付かれないほどの実力などあるはず無いか。
「ふっふっふ・・・」
「何だいきなり、気持ち悪い。」
「ついつい笑みを押さえられなくなってな。」
「考え事はいいが、あんまり人前でそんな笑み出すなよな。こっちが困る事になるんだ。」
「私のフォローは一夏の仕事だろ。」
「だからするなって言ってるんだ。」
「別に生徒の前ではしないさ。だが、今は教師として居る訳では無いんだ。少しくらいは大目に見ろ。」
「少し・・・ねぇ。」
「またキスしちゃうよ?」
「スミマセンゴメンなさい許してください。」
「・・・そんなに人前でしたくないの?」
「だって恥ずかしいじゃないですか///」
「赤くなって・・・可愛いんだから!」
貴様!私の一夏に抱きつくなんて良い度胸だ!
小鳥遊とか言ったふざけた女が再び一夏に抱きついたのを見て、ついに我慢の限界だ。
私は立ち上がり一夏の首根っこを掴み小鳥遊から引っぺがす。
「小鳥遊と言ったか。」
「ええ。」
「私の一夏に随分となれなれしいじゃないか。」
「別に問題は無いでしょ。彼女なんですし、一夏さんもまんざらでも無いんですし。」
「何!?そうなのか、一夏!」
「まあ一応俺も思春期の男子な訳だし、恥ずかしいけど嫌じゃない・・・」
「それならお姉ちゃんがして・・・」
「それは遠慮する。」
「せめて最後まで言わせろ。」
まさかそこまで嫌がられるとは思わなかったぞ。
首根っこを掴んでいて私の腕を振り払い、一夏は私から離れた。
ああ!せっかく一夏と触れ合ってたのに・・・
「何でそんなに突っかかるんだよ。」
「一夏にはお姉ちゃんの気持ちなんて分からないんだ!」
「分かりたくもないが・・・」
「せめて分かろうとしてくれ・・・」
この悲しき気持ち、一夏が原因なんだぞ。
少しは察してくれても良いじゃないか・・・
「そう言えば碧さん。」
「何かな?」
「護衛って事は泊まるんですよね?」
「そうね、一夏さんが泊まるんなら私もそうなるね。」
「自分の着替えは持ってきたんですか?」
「・・・ああ!」
「やっぱり・・・」
私の事そっちのけで会話をしている一夏。
如何やら小鳥遊が着替えを忘れたらしい。
なんとも阿呆だな。
「う~ん・・・千冬姉、ここの売店女子のシャツくらい売ってるよな?」
「まあそれくらいなら。」
「ならそれで何とかなるか。」
「でも下着は?」
「洗濯して乾燥機で乾かせばなんとかなるでしょ。碧さん確か寝る時着けてないですよね。」
「うん・・・」
「まて、何で一夏がその事を知っている?」
「そりゃ知ってるさ。一緒に旅行して風呂まで一緒に入ったんだから。」
「でも着替えくらいは別だったろ。」
「・・・・・」
何だその沈黙は。
まさか脱衣所まで一緒だったと言うのか!
「そもそも部屋で脱いでたからね~。」
「碧さん!」
「ん?何かな一夏さん。」
「いえ、もう良いです・・・」
一夏が必死に止めようとしていたが、既に聞いてしまった。
そうか、着替えも一緒だったか・・・
「って!納得出来るか~~~~~~~~!!」
「うお!いきなり大声を出すな、ビックリするだろ。特に山田先生が。」
「わ、私は平気ですよ~。」
「思いっきりかんでますよ。」
「きのしぇいです。」
「しぇい?」
うむ、かんでるな。
では無くて!
「一夏!お前はコイツの裸を見たのか!?」
「だから風呂に一緒に入ったて・・・」
「そうじゃなくて部屋でだ!」
「それは・・・少し。」
「一夏様は真っ赤になって目を瞑ってましたからね~。」
「あの一夏さんの反応は珍しいかったね。」
つまり見たんだな。
少しであれ、思いっきりであれ私以外の女の裸を見たんだな!
「よし一夏、今日は一緒に風呂に入るぞ!」
「何だいきなり!入んねえよ!!」
「何故だ?」
「そこで何故と言うアンタが何故だ・・・」
一夏は呆れているが、こっちがその顔をしたいぞ。
「だって一夏は私以外の女の裸を見たんだろ?」
「その表現止めろ。」
「まあまあ、一夏さんは私たちの全部を見たんだから。」
「全部は見てない!」
「見た事は否定しないんだね~。」
「否定しても意味無いでしょうが。」
またもや横槍を入れてきて小鳥遊。
如何やら一度立場を分からせる必要がありそうだな。
「おい小鳥遊、私と勝負しろ!」
「え!?」
「いきなり何言い出すんだアンタは。」
「だって!」
「だってじゃ無いだろ。」
「勝負って何するんですか、千冬様。」
「お前も煽るな。」
須佐乃男が興味を示したおかげで、一夏が私から注意を逸らした。
「うむ、IS勝負では面白くないだろうし、如何するか・・・」
「決定してるんですか!?」
「真耶、お前が驚く場面ではないだろ。」
「いえつい・・・」
何がついだ。
私の一夏を取り戻すためなら、私はどんな労力も惜しまない。
「碧さんも千冬姉で遊ぶのは止めてくださいよ。大体碧さんの方が年上なんですから少しは加減してください。」
「は~い。」
「する気ゼロですね・・・」
・・・待て。
今何かおかしな言葉を聞いた気がする。
今一夏は・・・
「碧さんの方が年上なんですから」
って言ったな。
誰が誰より年上なんだ?
一夏より年上なのは当たり前だとして、あの見た目で私より年上なのか?
「一夏、ひょっとして小鳥遊は私より年上なのか?」
「ああ。」
「嘘だろ?」
「こんな事で嘘吐いて如何するんだよ。」
「じゃあ・・・本当に年上なのか?」
「だからそう言ってるだろ。」
信じられん。
精々真耶と同じか、それ以下にしか見えんのだが。
「幾つ・・・なんだ?」
「え~と・・・26歳でしたっけ?」
「うん、そうだね~。」
「見えませんね~。」
「よく言われるよ~。」
「何か話し方おかしくないですか?」
「気のせい気のせい。」
「う~ん・・・」
一夏がうなってるが、私は別の意味でうなりたい気分だ。
まさか年上だったとは思わなかった。
束といい、真耶といい、私の周りの人間は年相応な見た目をしてないがコイツもそうだったとは・・・
「織斑千冬さん、ついつい悪乗りが過ぎてしまってスミマセンでしたね。」
「悪乗りって、吹っかけたのは千冬姉ですから。」
「でも、私の方が大人なんだから。」
「千冬姉も十分大人なんですし、それくらい気にしてないはずですよ。そうだよな、千冬姉?」
「思いっきり気にしてるわーー!」
私は一夏程人間が出来てる訳じゃない。
頭にくることも多いし、それを我慢出来る訳でも無い。
「やっぱり勝負だ!」
「良いですよ。」
「ハァ・・・また面倒な事に。」
「一夏様、ドンマイです。」
「それで、何で勝負するんですか?」
「丁度良くトランプがありますよ~。」
「真耶、お前何処からトランプ出した。」
「それは内緒です。」
私の目が確かなら、胸元からトランプが出てきたように見えたんだが。
まあ良いか。
「それじゃあトランプで勝負だ!」
「何します?」
「何でも良いんで、早く終わらしてください。」
一夏は既に投げやりモードだった。
自分が関係してる事で、自分で治められない事態になると偶にこうなるんだ。
「神経衰弱で如何だ?」
「二人でですか?」
「別におかしくは無いだろ。」
「記憶力と勘の良さが必要な勝負ですね。一夏様、どっちが勝つと思います?」
「どっちでもいい。早く終わるならどっちが勝っても同じだろ。」
「一夏!そこはお姉ちゃんを応援するべきだろうが!!」
「じゃあ頑張って~。」
「・・・投げやりで無気力だな。」
こうなった一夏を治す方法は無い。
自然に元に戻るまで放っておくしかない。
「よし!真耶、カードを置け。」
「それじゃあ準備しますね~。」
真耶がテーブルにカードを並べていく。
絶対に負ける訳にはいかないんだ!
「準備出来ました~!」
「それじゃあ始めるとするか。」
何かいきなり勝負するとか千冬姉が言い出したせいでこんな事になった。
まったく面倒くさい姉だ・・・
「なあ、俺少し抜けても良いか?」
「良いんじゃないですか?そもそも一夏様が居てもすること無いですし。」
「だよな~。じゃあ少し抜ける。」
興味も無いので、俺は食堂から移動する事にした。
10分くらいふらつけば終わるだろうな。
「あれ?一夏君、何処か行くんですか?」
「興味無いんで少しぶらぶらと・・・」
「そうですか。」
「それでは・・・」
山田先生に見送られ俺は食堂を後にした。
さて、何処行くかな。
食堂から抜け出したのは良いが、別に何処かに行きたかった訳では無い。
そもそも自分が通っている学園なのだから、珍しいものがある訳でもなければ行ってみたい場所がある訳でも無い。
これは大人しく食堂でぼーっとしてたほうが良かったかもしれないな。
「外の空気でも吸うとするか。」
誰に言うでもなくつぶやいた言葉は、虚しくあたりに響いた。
学園の廊下って何でこんなに反響するんだろうな。
別に大した素材を使ってるようには見えないんだが・・・
結局分からないので諦めた。
俺はさっきつぶやいた通り、外に出る事にした。
早く勝負が終われば良いんだが・・・
一夏様が居なくなって既に10分。
意外と緊迫した勝負となっており、佳境に差し掛かった時に外に居た一夏様に手招きをされた。
「如何かしましたか?」
「まだ終わらんのか?」
「意外と真剣勝負になってまして、あと半分はありそうですね。」
「神経衰弱ってそんなに時間掛かったか?」
「真剣にめくるカードを選んでますので、それ相応の時間が掛かってます。」
「帰って良いかな?」
「駄目ですよ。」
相変わらず興味が無いようで、一夏様は帰りたがっていた。
元々は一夏様が原因で勝負に発展したのに、この人はそんな事お構いなしのようだ。
「それじゃあ終わったら知らせてくれ。」
「私は電話持ってないですよ?」
「脳内会話出来る範囲でぶらぶらしてるから。」
「分かりました!」
一夏様は何かしてる訳でも無いのに、疲れた雰囲気で再びふらふらしに行った。
しかし、あそこまでやる気の無い一夏様も珍しい・・・
一夏様が食堂から出て行って30分、ついに決着した。
「私の勝ちですね。」
「くそ!」
「まあまあ千冬さんも惜しかったんですし、大人しくしてくださいね。」
「真耶!この後アリーナで鬱憤を晴らす手伝いをしろ!」
「何で私なんですか!?」
「お前が最初に声を掛けたからだ。」
「理不尽です!」
「世の中は理不尽の連続だぞ。」
「頑張って。」
「ナターシャさんまで!」
すべての人に見限られ、山田先生は千冬様に引きずられて行った。
・・・おっと!一夏様に連絡を入れなくては!
「(聞こえてる。)」
そうでしたか。
勝負は終わったので戻ってきても平気ですよ。
「(今戻れば途中で千冬姉と鉢合わせしそうだからな。もう少し経ってから戻る。)」
分かりました。
それではまた後で。
「(ん。)」
それだけ言って一夏様は脳内会話を打ち切りました。
一夏様からは打ち切れるんですけど、何で私からは切れないんでしょう?
それに一夏様は集中すれば私の考えを全部読めるのに対して、私が幾ら集中しようと一夏様の考えがすべて理解出来ない。
一夏様が本気で隠そうとしたら、私にはその考えを知る事が出来ないのだ。
「須佐乃男?如何かしたの。」
「何でもないですよ。」
「そう?」
よほど難しい顔をしていたのだろう。
碧さんに心配されてしまった。
「それじゃあ私たちは如何しましょうか。」
「千冬さんも真耶も行っちゃったし、トランプでもしますか?」
「それなら一夏様が戻ってきてからの方が面白そうですよ。」
「そうね。一夏さんはトランプ強いし、それに人数は多い方が楽しいし。」
私は一夏様に早く戻ってくるように語り掛けた。
「(今千冬姉と山田先生が出て行った。俺もすぐ戻る。)」
分かりました。
それじゃあ一夏様の分も配っておきますね。
「(何するんだ?)」
えーと・・・
「ところで、何するんですか?」
「そうね・・・大富豪は?」
「それなら強弱の差は無いですかね。」
「駆け引きの上手さが必要になるかもしれませんが、概ね差は無いゲームですかね。」
「それじゃあ決まりですかね。」
「一夏様の分も配ってください、すぐ来ますから。」
既に脳内で一夏様からは了承を得た。
一夏様相手にギャンブル性の高いゲームは危険ですしね。
「(聞こえてるぞ。)」
事実一夏様はギャンブル性の高いポーカーやBJは強いじゃないですか。
「(あれはただの駆け引きだ。)」
それでも強過ぎです。
「悪かったな。」
「お帰りなさい。」
「いきなり会話してるよ、この二人。」
帰ってきた一夏様と特に気にした様子も無く会話をした私を見てナターシャ先生は驚いたようだ。
「それで、順番は如何するんですか?」
「ダイヤの3からスタートでしょ。」
「大まかなルールは如何します?」
「スペ3、7渡し、8切り、10捨て、イレブンバック・・・」
「階段革命は何枚からにする?」
「5枚で。」
「2上がり、革命中は3上がり禁止で。後8上がりもジョーカー上がりも当然駄目です。」
「都落ちは如何します?」
「それは無しで。」
「カード交換は?」
「大貧民が大富豪に二枚、貧民が富豪に一枚で。」
「それじゃあ始めましょうか。」
こうして第一回、大富豪大会がスタートした。
さすがに教師が居るので賭け事は無しだ。
でも一夏様に勝ったら何かおねだりしましょ。
「結構時間経ちましたけど、千冬姉と山田先生戻ってきませんね。」
「そうですね。」
既に大富豪を始めてから30分は経った。
鬱憤を晴らすと言っていたがそんなに溜まってるようには思えないんだが。
「須佐乃男、様子を見てきてくれ。」
「何故私なんですか!?」
「だって、通算で大貧民の回数が多いのは須佐乃男だろ?現に今も大貧民だし。」
「否定出来ないのが虚しいです・・・」
須佐乃男は俯きながらも食堂から千冬姉たちを探しに行った。
恐らくはアリーナの何処かに居るんだろうが、何処のアリーナに居るのかまでは知らない。
「一夏様、気配を探ってくれませんか?」
「まあ効率を考えるとそれが良いか。」
俺は集中して千冬姉と山田先生の気配を探った。
「何してるの?」
「お静かに!一夏様は今千冬様と山田先生の居場所を探ってるんです。」
「へ~え、そんな事出来るんだ。凄いね、一夏君って。」
「私も初めは驚きましたよ。」
ごちゃごちゃ五月蝿いんだが・・・
雑音を払うために、俺は更に集中した。
これは・・・さっきまで居たアリーナに二人の反応があるな。
「須佐乃男、さっきのアリーナに二人が居る。動いてない所を見ると終わってるかもしれん。」
「了解しました。それでは行ってきます。」
須佐乃男に確認させに行った間に、俺は思いっきり休む事にしよう。
午前中はISでの模擬戦三連続、昼休憩もろくに休めなかったし今くらいは休みたい。
「一夏さん、ところで私は何処に泊まれば良いのでしょか?」
「え?更識で準備されてるんじゃないんですか?」
「聞いてないわね・・・」
「困りましたね・・・」
「あれ?確か一夏君の部屋って大部屋よね。そこで良いんじゃない?」
「まあそれでも良いんですけど、これ以上千冬姉を刺激するのは・・・」
「そうね・・・」
俺以外にも多大なる迷惑を掛ける恐れがあるのだ。
かと言って千冬姉の部屋になぞ泊められる訳無いのだが・・・
「バレないように俺の部屋に泊まってください。これ以上千冬姉絡みで悩みたくないんで。」
「それが良いね。一夏さんの部屋なら安心だし。」
「何がですか?」
「千冬さんに襲われる心配もしなくていいし。」
「本当にスミマセン。」
とりあえず碧さんの問題は片付いた。
後は午後の模擬戦だな・・・一対三か。
哀れ真耶よ。
肉食獣に掴まった感じで連れて行かれた草食動物のイメージですね。
次回は再び戦闘シーン、疲れる・・・