何故か風呂に入ったら首に赤い痕が・・・
何なんでしょうね?
「ねえ一夏君、本当にあのメンバーと戦うの?」
「ああ。」
「よく平気で居られるね。普通の神経の持ち主なら緊張してガチガチになっちゃうよ。」
「既に昨日戦ったし、どうやら俺は普通の神経の持ち主じゃないらしい。」
「そんなあっさり・・・」
一夏君は平気みたいだけど、私は既にガチガチだ。
身体はまともに動かないし、手汗も半端無いくらいぐっしょりだ。
女子として如何かと思うくらいなので、今は誰とも手を握りたくないな・・・
「エイミィは緊張してるのか?」
「してるよ~!だってあのメンバーの中に自分が居るんだよ!?緊張するなって言う方が無理な話だと思うよ?」
「そうか?三人は学園の教師だし、ナターシャさんは頼めば誰とでも訓練してくれるぞ?」
「でもさ~・・・」
一夏君は分かってないらしいが、あのメンバーに加われと言われて、簡単に承諾する人間は果して何人いるのだろう。
それくらいの実績と評価を積み重ねてきた人たちなんだよ?
「まあ、何とかなるだろう。まさか本気で来るとも思えないし。」
「本気で来られたら一瞬で終わっちゃうよ~!」
「大丈夫だろ。」
「何でそんな事言いきれるの?」
「エイミィだって候補生なんだし、何かあっても出来る範囲で守るから気にするな。」
「一夏様、それって聞いてる方は相当恥ずかしいですよ?」
「そうか?普通にカバーするから全力で行けって言っただけだぞ?」
「ハァ・・・やっぱりズレてますね。」
「何だよ?」
今迄黙って聞いていた須佐乃男が一夏君に私が思ってた事を言ってくれた。
一夏君のあの表情で守るなんて言われたら勘違いしちゃうよ?
でも、一夏君がカバーしてくれるなら私も頑張らなきゃ!
「それで、一夏君は如何カバーしてくれるのかな?」
「それはエイミィ次第だろ。」
「私?」
「ああ、エイミィは近接戦と遠距離戦、どっちが得意なんだ?」
「私は器用貧乏かな~。どっちも出来るし、どっちも極めてない。」
「なら、どっちをやりたい?」
「一夏君の動きは見たことあるけど、あの動きの後ろから援護出来る自身は無いよ。」
「そうか、なら俺が後衛をやろう。」
「じゃあ私は打鉄を使おう。」
ラファールより打鉄の方が前衛向きだし、私も気が楽だ。
授業でも打鉄ばっかり使ってたからね~。
「一夏様が後衛とは珍しいですね。」
「別に出来ない訳じゃ無い。」
「そうですけど、一夏様は前衛で瞬殺する印象しか無いんですよ~。」
「身体が万全ならそうするさ。だが、昨日の今日でまだ身体が完全ではないからな。」
「ちゃんとご自愛しないからですよ。」
「ご自愛って言ってもなぁ・・・」
一夏君が困ったように頭を掻いている。
この話題は一夏君にとって避けたいもののようだ。
「最初は観戦だが、ちゃんと見とけよ?どんな動きをするかとか戦術とか。」
「大丈夫だよ~。これでも候補生ですから!」
「なら良いが・・・」
不安そうに私を見る一夏君。
そんなに私は頼りないの?
「こんなものか。」
「・・・・・」
模擬戦が終わって、私は言葉を失くした。
あまりのレベルの高さに絶句したのだ。
「織斑先生、最後の方遊んでたな。」
「ええ!?あれでまだ遊んでるの!!?」
「ナターシャさんと碧さんのコンビネーションも悪くなかったが、織斑先生相手にはまだまだって事か・・・それにしても山田先生も意外としっかりしてる。」
「あの~・・・本当に私も出るの?」
出来れば見てるだけが良いな~。
私の願望は叶えられることは無く、
「何を今更。もう次だぞ。」
一夏君のこの一言で粉砕された。
そうだよね~・・・次なんだよね~・・・
「別に勝敗は気にしなくて良いんだ、気楽に行こう。」
「無理だよ~!」
そんな楽観視出来るならそもそも緊張などしないよ。
うう~・・・何で一夏君は緊張しないのよ~!
「とりあえず行くか。アリーナで織斑先生が呼んでるし。」
「・・・逃げたい。」
「逃げても捕まえるそ?」
「一夏様からは逃げられませんよ?」
「何処の魔王だ、俺は・・・」
「織斑家の魔王ですよ。」
「・・・・・」
一夏君は無言で須佐乃男を睨んでたけど、須佐乃男はISに変形して逃げた。
意外と便利なんだな~・・・
「さて、エイミィもISを纏ってアリーナに出るぞ。」
「うん・・・緊張するよ~!」
「さすがに生徒相手に本気を出すほど落ちぶれてないから安心しろって。」
「安心出来ないよ。だってあの織斑先生相手なんだよ!?」
食堂での一面は・・・
「この事は絶対誰にも言うなよ!」
と織斑先生に念を押されたために自分の胸の中にしまっておく事しか出来ないが、IS戦闘においての織斑先生は別だ。
世界最強の称号であるブリュンヒルデ。
前人未到のモンド・グロッソ連覇。
公式戦無敗。
輝かしい経歴の持ち主なのだ。
いくら一夏君が強いからって、織斑先生相手にどれだけ耐えられるんだろう?
「ん?如何かしたか?」
「ううん!何でも無い!!」
「そうか?」
「うん!そうだよ!!」
「う~ん・・・」
一夏君は考え込みそうだったが、
「早くしろ!」
とオープンチャネルで織斑先生が急かしてきたために考え込めなかったようだ。
「ハァ・・・織斑先生も限界みたいだし、行くか。」
「そ、そうだね。」
織斑先生相手に何処まで出来るか分からないけど、頑張らなきゃ!
「随分と遅かったな。」
「そうか?前の試合が終わって、まだ10分も経ってないだろ。」
「私はノーダメージだったから回復が早かったし、真耶もそれほど喰らってないからそんなに時間を必要としなかったのだ!」
「見てたから知ってるって。」
「凄かったです~!」
アリーナに出たら一夏君は織斑先生相手にもタメ口だった。
やっぱり姉弟だから普段はタメ口なんだね。
「エイミィが緊張して動こうとしなかったから。」
「だって!織斑先生と山田先生相手なんだよ!!」
「そうだが?」
「ええ~・・・」
私の精一杯の抵抗は、一夏君の天然で流された。
「それじゃあ準備しろ。」
「合図はまたコイントスか?」
「そうだな。今回もそれで良いだろ。」
「今回も?」
私は二人だけで進められている会話に疑問を持った。
だって、さっきの試合は合図無しで始まったから『も』の意味がよく分からない。
「昨日の模擬戦でコイントスで合図をしたんだ。」
「ああ!それで『今回も』なんだね!」
「そう言う事だ。」
私の疑問に一夏君が答えてくれる。
よかった、これでスッキリしたよ~。
「準備出来たか?」
「ああ。エイミィも問題無いな?」
「う、うん。頑張る!」
「ふん!小娘なんぞ捻り潰してくれる。」
「生徒相手にムキになるなよ・・・」
織斑先生が何故か不機嫌になったのを一夏君が呆れ気味にツッコんだ。
あれは本気で呆れてるだけ?
「ボケッとしてて良いのか?もうトスしたぞ!」
「ええ!!」
「相変わらず狡いヤツ・・・」
「前にも言ったが了解は取ってるんだ、後は私のタイミングだ!」
「ええ~・・・」
「反応するだけ無駄だぞ。それより構えろ!」
一夏君に言われ臨戦態勢をとる。
でも、織斑先生相手に耐えられるかな~・・・
「何だ、一夏が後衛なのか。それなら楽勝だな。」
「くぅ!」
てっきり一夏が前衛なのかとも思ったが、打鉄を纏ったアメリアを見て拍子抜けをした。
この模擬戦はそう苦戦しないだろうな。
「千冬姉ともあろうものが油断か?随分と隙だらけじゃないか。」
「何!?」
小娘相手に斬りかかってたたら背後から一夏の声がした。
真耶は如何したんだ!?
「山田先生なら少し大人しくしててもらってる。」
「如何言う事だ?」
私は真耶の方をセンサーで確認した。
そこには・・・
「何があったんだ?」
顔を真っ赤にした真耶がISごとグラウンドに転がりのたまわっていた。
あそこまで真耶が奇怪な事をするのは珍しい・・・
「一夏!お前、真耶に何をした!!」
「何って・・・ゴニョゴニョと。」
「はっきりと言わんか!」
「少しプライベートチャネルを使った口撃をな。」
「まさか!」
「?」
一夏君は何をしたんだろう?
まあ、私に集中していた織斑先生の気が反れたので今のうちに逃げよう。
「二対一なら千冬姉相手でも問題ないだろ。・・・エイミィ!」
「な、何!?」
「逃げるな!」
「ええ~!」
正直逃げ出したいんだけどな~。
一夏君はコッチを見てる風でも無ければ、センサーを使った訳でもなく、私が逃げようとしてる事に気がついたようだった。
「私が数の不利で負けると?」
「さあな?だが、少なくともエイミィ一人よりは勝てるだろ。」
「それはもちろん!私一人じゃ無理だって!!」
「ほら!護衛するから戦え。」
「でも!」
「さっき言ったろ、勝敗は関係ないって。エイミィの全力を見せてみろ!」
「もう!分かったよ!!」
自棄になって突っ込めば少しくらいはシールドエネルギーを減らす事は出来るかも。
私は恐怖心と冷静さを捨て、織斑先生の打鉄に突撃した。
「ふん!そんな攻撃で私に傷を付けられると?」
「だから言ったろ?二対一だって!」
「何!?」
私に集中していた織斑先生は、一夏君のマシンガンに狙われて体制を崩した。
あれ?これっていけるの?
私はそのまま織斑先生に突っ込み剣で攻撃する。
「甘いわ!」
「!?」
「はい、背後がら空きですよ?」
「何!?一夏!お前は後衛じゃないのか!?」
「後衛が剣使わないって誰が言った?教科書に書いてあるのか?」
「確かに・・・」
一夏君はマシンガンから持ち替えた剣で織斑先生に攻撃する。
チョッとズルイ気がするけど、一夏君の言ってる事はその通りだった。
別に後衛が剣を使っても良いのだ。
「一夏!ズルくないか!?」
「ズルかろうが、隙だらけの背後に居て、わざわざマシンガンを使うのは馬鹿だろ。避けられれば味方に当たるんだ、剣の方が安全だ。」
「それも確かに・・・」
一夏君は私の事も気にかけて剣を使ったようだった。
でも一夏君が前に来たら、それは後衛って言うのかな・・・
「真耶!とっとと戻って来い!!」
「うう~~!!一夏君が・・・」
「一夏!お前、真耶に何をした!!」
「さっき言ったろ?口撃をしたって。」
「だから詳しい事を言え!」
「プライベートチャネルって個人にしか聞こえないだろ?」
「ああ。」
「そしてその声は耳で感じるのと、脳内に直接響かせる事が出来る。」
「だから何だ!」
一夏君はもったいぶった感じで織斑先生の冷静さを削っていく。
これも一夏君の口撃なのだろうか?
「まあ、簡単に言えば名前を呼び捨てたんだよ、真耶って。」
「何!?」
「ああ、それで山田先生が照れて転がってるんだ。」
一夏君に名前を呼び捨てにされるのって羨ましいのかな?
私は略称で呼んでもらってるし、隣のクラスの更識さんも確か名前を呼び捨てだったような気がするんだけど。
あっ!更識さんは彼女だっけ。
でも前に聞いた話だと、オルコットさんやデュノアさん、ボーデヴィッヒさんと凰さんも名前呼び捨てだったはずじゃ?
「一夏!私も『千冬』と呼び捨てろ!」
「何でそんな事しなくちゃいけないんだ。」
「良いから!」
「・・・隙だらけだな、エイミィ!」
「うん!」
織斑先生が一夏君の方を向いているので、私の方に背中がある。
そして、その背中がら空きだった。
「一夏!そこは『千冬』と言う場面じゃないのか!?」
「そんな場面は無い!」
「え~い!」
「ぬるいわ!」
「はい、またがら空きだ。」
「うぬぬ~・・・」
私の方に振り返れば、また一夏君にがら空きの背後を取られる。
この繰り返しで織斑先生は徐々にシールドエネルギーを減らしていく。
「普段なら背後を簡単に取られる事も無いだろうに。冷静さを失えばこんなものか。」
「私は冷静だ!」
「冷静じゃない人間ほど、自分は冷静だと言うんだよ。」
「隙だらけですね~。」
「小娘如きに遅れはとらない!」
「だから二対一だって言ってるだろ。」
「グッ!一夏の攻撃を捌けば小娘に、小娘の攻撃を捌けば一夏に、どうせやられるなら一夏にやられる!」
「諦めるのかよ・・・」
「諦めるんじゃない!自ら受け入れるんだ!!」
「・・・何をだ?」
「一夏の愛をだ!!」
「・・・これがすべてのIS乗りの憧れだと思うと、そしてそれが自分の身内だと思うと恥ずかしいぞ。せめて身内の恥は身内が片付けよう。」
一夏君は盛大にため息を吐いて頭を振る。
ああ、これが一夏君が言っていた真の織斑先生の姿なんだろう。
確かに幻想だったな~・・・
一夏君の容赦ない攻撃で、織斑先生の打鉄はエネルギー切れになった。
その後すぐに山田先生のラファールもエネルギー切れにしてこの模擬戦は終わった。
あれ?勝っちゃった・・・
「なあ?もう一戦するのか?」
「何故だ?」
「だって、碧さんもナターシャさんも戦意が感じられないんだが・・・」
「やっぱり一夏相手は嫌なんだろう。」
「今回は別にそこまでしてないだろ?」
「お前の『攻撃』と『口撃』の両方を捌く自信も技術も無いんだろう。」
「何だそりゃ?」
一夏は首を傾げたが、コイツの口撃は並の女性じゃ耐えられない。
思いっきりやられた真耶が未だに顔を赤くしている。
正直気持ち悪い・・・
「まあ、一夏がやる気が無いなら別に良いが・・・」
「やっても良いが、あの二人が受けるかね~・・・」
「受けないだろうな・・・」
「じゃあやらない。」
「そうか、それじゃあ終わりだ。」
一夏もやる気が無いようだし、私も見ててもつまらないだけだし、最後の一戦は不戦になった。
「エイミィの実力もある程度は分かったし、本来の目的は達成出来たな。」
「本来の目的?」
「織斑先生には関係の無い事ですよ。」
「今は『千冬姉』だ!」
「何時もと逆ですね。」
「普段からお前は学園では呼ばないだろ。」
少しは間違えて呼んでくれても良いだろ・・・
公私の区別をしっかりしているのは良いが、寂しいぞ。
「それじゃあ俺は帰るわ。後、来週の正確な内容を教えてほしい。」
「来週?・・・ああ、合同訓練の事か。」
「それ以外に何があるんだよ。」
「お姉ちゃんとデー・・・」
「あ~無い無い!」
「せめて最後まで言ってから否定しろ!」
途中で切られるのは何か悔しい。
「それで、その合同訓練って何だ?何で俺がそれに呼ばれてる?」
「合同訓練とは、この学園に居る国家代表及び候補生、そして企業代表を集めて行う訓練だ。原則としてそれに該当する生徒は必ず参加しなくてはいけないのだが、今回三年生一人と二年生二人は都合がつかないので不参加だ。」
「それで?俺はそのドレにも該当してないんだが?」
「一夏はまあ、特別参加だ。」
「別に希望を出した訳じゃないんだが・・・」
「希望で思い出したが、箒も来るそうだ。」
「物好きなヤツ・・・それで、日程は?」
「来週の水曜から三日間だ。今回はちゃんと伝えたぞ!」
「そう警戒しなくても良いだろ。すでに小遣いはカットなんだからさ。」
半分もカットされたら生活出来ないぞ・・・
一夏の事だから何とかしてくれるだろうが、それでもカットは厳しい。
「三日か・・・都合つかないから来なくても良いか?」
「駄目だ!一夏の予定は更識姉から入手してあるからな!!」
「何時の間に・・・それに何してるんですか、あの人は!」
更識姉に手を回し一夏の予定は知っている。
怒られるのは私じゃなく更識姉だからな。
「何て言って言いくるめたのかは知りませんが、教師が生徒を巻き込むのは如何なものでしょうか?」
「一夏?怒るのは私に対してじゃ無いだろ?」
「もちろん刀奈さんにも後で怒りますよ。ですが、その刀奈さんが怒られる原因を作ったのは貴女ですよね?」
笑顔でコッチに迫ってくる一夏。
ああ・・・また怒られる。
「だって一夏を参加させるには搦め手しかないだろ!」
「普通に誘えば良いでしょうが。刀奈さんたちが参加するんなら俺だって来ますよ。一人で屋敷に居ても仕事押し付けられるだけですし。」
「何!?じゃあ私の行動は無駄だったのか!?」
「そう言う事になりますね。」
何だよ、これって怒られ損じゃないか・・・
しかも、また一人に本性を知られてしまったし、今日は良い事無しだな・・・
などと現実逃避をしたからと言って、一夏のカミナリはなくならないだろうな・・・
「さて千冬姉よ。何か言う事は?」
「すまなかった!」
「・・・まあ今回はそれで許してやろう。」
「あれ?」
カミナリは来なかった。
これはこれで、何故か残念なのだが・・・
「次からは余計な事するなよ?」
「あ、ああ分かった。」
「それじゃあ須佐乃男、碧さん、帰りましょうか。」
「そうですね~。」
「帰ろっか。」
一夏たちは更識の屋敷に帰るためグラウンドから姿を消した。
ハァ・・・また一週間一夏に会えないのか。
「一夏君が真耶って///」
「いい加減ウザイ!」
「ゲフ!」
完全に八つ当たりだが、真耶の腹に一発入れ正気に戻した。
まったく、一夏!今度こそは千冬と呼ばせてみせるからな!!
次回は合同訓練ですね。
そろそろ原作に戻れるかな?