少し病みの深いアフグロ   作:ちくわぐみ

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大体プロローグを書いてる途中に体力が切れてくることに気づいたので、ばっさりカットしました。


青葉モカ

 ゆさゆさ

 

 何かに揺さぶられる感覚に寝ぼけていた意識が少しずつ覚醒してくる。

 

「おーい、起きてー」

 

 やっと呼び掛けてくる声がはっきりと認識できるようになった辺りでのそのそと体を起こす。

 

「あ、やっと起きたー。相変わらず寝坊助さんですなー」

 

 声のする方に向くと、こちらを見ていた銀色の髪に赤い目をしたかわいらしい少女と目があう。

 

「おはようモカ。昨日ちょっと夜更かししたせいで眠かったんだ。仕方ないと思わないか? あと起こしてくれてありがとうな」

 

 バイト先で知り合った少女、モカに感謝を伝える。6時限目から爆睡していたようで、バイトの時間が迫っている。

 

 危うく遅刻してまりなさんに怒られるところだった。

 

「いいってことよー。でもモカちゃん、美味しいパンが食べたいなー」

 

「奢らせていただきます。山吹ベーカリーのでいいか?」

 

「もちろんー。どのパンを奢って貰おうかなー?」

 

 俺に奢らせるパンを楽しそうに考えているモカを尻目に素早く下校の準備を整える。

 

 幸い持ちかえるべき荷物の大半が既にカバンに入っていたので、あっという間に準備は終わった。

 

「じゃあCircleに向かおうぜ。確か今日練習入ってただろ?」

 

「そだよー。よく覚えてるねー」

 

「常連さんの予定は大体覚えるようにしてるからな」

 

 まだ時間に余裕があるためゆっくりと歩きながらそう答える。

 

 モカの所属するAfterglowは常連だし、他のメンバーともよく会話するから予定を覚えて損はないだろう。

 

「あと自転車の後ろに人を乗せる日がわかってるなら事前に荷物を減らせるしな」

 

「えー、乗せてくれるのー? ありがとー」

 

「白々しすぎる」

 

 あまりに白々しい態度にため息をつくが、その笑顔を見て文句を言えなくなってしまう。

 

 AfterglowがCircleに通いだしてから練習が入っている日は毎回俺がモカをCircleまで送っている。

 

 本当はバイトが入っている時だけという約束だったのだが、人手が少ないため週5でシフトが入っており、結果毎回送るはめになっている。

 

「ぶっちゃけやめたい気持ちはあるんだけどなー。危ないし」

 

 あと重いし。

 

「痛っ」

 

 突然二の腕あたりをつねられる。驚いて隣をみるとすこし不機嫌そうな顔をしたモカがこちらを見ていた。

 

「何か失礼なこと考えてなーいー?」

 

「すみませんでした」

 

「素直でよろしいー」

 

 俺が謝るとすぐに離してもらえたが、まだ話は終わっていないと言わんばかりに前に回り込み、顔を覗きこんでくる。

 

「それにこんな超絶美少女を自転車の後ろに乗せられる機会なんて滅多にないんだよー? むしろ感謝するべきだと思いまーす」

 

「……それもそうだな。いつも荷台に乗せさせていただきありがとうございます」

 

「うむ、よきにはからえー」

 

「ははー」

 

 そうしてふざけあっていると、あっという間に駐輪場に到着した。

 

「はいどーぞー。丁寧に扱ってねー?」

 

「はいはい分かりましたよ」

 

 おなじみとなった言葉を交わし、モカのカバンを受けとる。

 

 そして前かごに二人分のカバンを入れ、ギターを背負ったモカを荷台に座らせる。後はサドルにまたがって……

 

「よいしょっと」

 

 気合いをいれて漕ぎ出すと、自転車はノロノロと動き出した。

 

 少しずつ速度をあげていき、速度がついてきたらある程度のところを維持する。

 

「いつもながらの超安全運転、惚れ惚れしますな~」

 

「いくら茶化されようが、これ以上速度は出さん。怖すぎる」

 

 モカの茶々を受け流しながら夏色ばりにゆっくり進んでいく。

 

 安全運転する理由としては、ここからCircleまでは下り坂が多く、二人乗りしているせいでものすごく止まりづらいため、という実によくありきたりな理由だ。

 

 すこしの労力で大きなリスクを回避できるならしない手はないだろう。それに一番の理由は当然、

 

「モカに怪我させたくないからな」

 

 そう言うと気のせいか抱きつく力が少し強くなった気がした。

 

「……こんなにも愛されてるなんてー。ああ、モカちゃんはなんて罪な女なの?」

 

「モカちゃんの魅力にもうメロメロだー(棒)」

 

 やっぱ気のせいだわ。

 

 モカとの会話と背中に感じる柔らかな感触に集中を乱されながら、なんとか運転に意識を向ける。

 

 特に感触の方に集中を乱されまくるので、会話はなるべく頭を使わないようにしないといけない。

 

 そのためモカと話していると、頭を通さず脊椎で会話するスキルが磨かれているのを感じる。

 

 なかなか使いどころの難しいスキルの上達を実感したところで、Circleが見えてきた。

 

「やっぱり自転車は速くていいねー」

 

「そう思うなら自転車通学にすればいいのに」

 

 そういえばなんで徒歩通学なんだ? 

 

「漕ぐのがめんど……こうしてふれあえる時間が減るからやだー」

 

 思ってた以上に怠惰な理由だった。

 

「隠すならせめて最初から隠してくれ……っと。ほら、着いたから降りなさい」

 

「はーい」

 

 俺が降車を促すと、モカは素直に荷台から降りる。

 

 前かごからモカのカバンを取ると、大して長い間座っていた訳でもないのに何故か伸びをしているモカにそれを手渡す。

 

 その時、例のお守りが目に入った。

 

「そういやそのお守り、俺も作って貰ったぞ。半分押しつけられたけど」

 

「おー、お揃いだー」

 

「いや、俺のはそれに俺をイメージした杖がついてた。ほら」

 

 そう言ってカバンから財布を取り出し、そこについているお守りをみせる。

 

「……オリジナルよりさらに強力な呪術をかけられそうだねー」

 

「でも指先をボロボロにしながら作ってくれたら断れないよな……」

 

 あれを断れる奴はきっと地球上に存在しないだろう。

 

 あれ? そういや……。まあいいか。

 

「じゃあ俺は自転車止めてくるから。練習、がんばってな」

 

「バイト終わったらいつも通りフロント待ち合わせでよろー」

 

「わかった」

 

 二言三言言葉を交わすと、駐輪場向かって走り出した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

『モカに怪我させたくないからな』『モカに怪我させたくないからな』『モカに怪我させたくないからな』

 

「~~~っ!!」

 

 自室のベッドの上でイヤホンから流れる声に悶える。

 

 こんな姿ママに見られたら別の意味で悶えてしまうだろうが、気にしている余裕はない。

 

『盗聴器で録音していた』彼のセリフは何度聞いても圧倒的な破壊力をもってあたしの心を乱してくる。

 

 しっかり録音出来ててよかった。もしノイズとかで上手く録音出来ていなかったら、後悔してもしきれなかった。

 

 そんなことを考えていて、ふと盗聴なんて明らかな犯罪行為をなんとも思わなくなっている自分に気付き、思わず苦笑する。

 

 最初は好奇心だった。いつもあたし達を陰から支えてくれる彼のことが気になって、彼のことを調べ始めた。

 

 彼の友達や家族とかから聞き出してみたり、彼との会話の中で話を誘導してさりげなく聞いてみたりして、少しずつ彼を知っていった。

 

 でも知れば知るほど彼の魅力に惹かれ、気づけば彼はもう失えない大切な存在になっていた。

 

 そんな彼を独り占めしたいと考えてはじめるのにそう時間はかからなかった。

 

 彼に恋をしているという免罪符を手に入れたあたしは、彼の好みに合わせる為には彼のことをもっとよく知らないといけないという建前でストーカー紛いの行為を行いだした。

 

 ある時、我慢出来なくなって盗聴器を買ってしまってからはそれはさらにエスカレートしていった。

 

 身長や体重なんかの彼の身体のこと、癖や習慣、食べ物の好みや好きな場所、特技、経歴なんかの昔のことまで調べられることは全て調べた。

 

 彼の部屋に何度も訪れて隅から隅まで調べ尽くしたし、彼が捨てたものも全てとはいかなかったもののある程度は回収した。

 

 そこまでのことをしても、未だに告白する勇気を持てないでいた。

 

 もし彼に振られてしまったら。そんな嫌な想像ばかりが頭をよぎり、告白に踏み出せない。

 

 しかし優しくて頼り甲斐のある彼のことを想っている人は大勢いる。告白の妨害をしてはいるものの、時間の問題だろう。

 

 そうして悩んでいた時、とある本に出会った。その本の主人公はあたしの悩みと全く同じ悩みを抱えていた。

 

 彼女はあたしと同じように悩み、苦しみ、一つの解決法を思いついた。

 

 それは、既成事実を作ることだった。

 

 彼女は深夜に彼の部屋に忍び込み、そのままことに及んだ。

 

 そして翌朝目を覚ました男に責任をとるよう迫った。

 

 責任感の強かった男は無理矢理とはいえ手を出してしまった彼女を突き放せず、腹をくくって彼女と結婚した。

 

 この話を読んだ時に何故こんな簡単なことに気づかなかったのかと自分でも驚いた。

 

 彼も責任感がある上にヘタレだから一度関係を持ってしまえばあたしを見捨てられないだろう。

 

 さらに彼の部屋への侵入はもう慣れたものだし、彼は眠りが深く、並大抵のことでは起きない。

 

 彼に裸を見せるのは少し恥ずかしいが、抵抗はあまりない。

 

 よって実行すればほぼ確実に成功する。

 

 さらに物語の最後にある閑話でAnother Storyとして無理矢理関係を迫らなかった彼女が親友に男を奪われ、絶望して自殺するという話に危機感を煽られたのもあって、計画を実行するのを決めた。

 

 実行を決意してから数日間計画を練り込み、起きた時用の手錠も通販で購入した。

 

 何度もシミュレーションしたし、安全策もいくつも用意した。

 

 もう準備は完璧に整ったといっていいだろう。実行は3日後、彼の両親が旅行でいない日だ。

 

「えへへー、楽しみだな〜」

 

 怖さもあるが、それ以上に楽しみでしかたない。何故なら彼が()()()()()()になるからだ。

 

 ああ、本当に、楽しみだ。




主人公:音ゲーの主人公。名前はまだない(考える予定無し)。モカのことは友達としてしか見ていないが、好みにドストライクなことに気づいて気になりだした。最近よくお気に入りの保健体育の本をなくしてしまうことに悩んでいる。

モカ:(少し?)病んでしまった少女。可愛い。主人公の部屋で実践的な保健体育の本を見つけた場合は即ズタズタに引き裂くようにしている。

謎の本:本人の一番やりたいことに気づかせ、後押ししてくれる素敵な本。何故かヤンデレとヤンデレ候補の下にしか現れない。著者名のところには平仮名で「さくしゃ」と書いてある。一体何くわぐみなんだ……。
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