マサラタウンのきのみ屋さん(次話執筆中▷▶︎▷▶︎) 作:ソーマ=サン
「⋯⋯っく、⋯⋯あー、頭がふらふらする⋯⋯」
大海を眺める形で滞空するクリアが、小さな欠伸と共に目を覚ました。
多くの車が行き交う音や、橋の土台に砕ける波の音など、普段聞き慣れない環境音が彼の鼓膜を騒々しく打つ。それに加えて浮遊感。
寝惚けた頭で適正に処理できていないが、『何か違くね?』と思う程度には違和感を覚えていた。
そして次第に覚醒していき、彼は自身の置かれた状況を正確に把握するに至った。
──何か浮いてね? と。
背後を見返して見れば、レッドのリザードンと似たような翼が上下に動いている。
「むぅ⋯⋯? メタモンに命令なんかしたっけな⋯⋯?」
以前、こう説明したのを覚えているだろうか。
『幼馴染の中で、クリアは特段、ポケモンに興味を示さなかった』と。
それは正しくもあり、一部誤解を与える表現だった。
この世界では、ポケモンが人々の生活に否応なく絡んでいる。だから全くの無関心でいることは有り得ない。
幼馴染たちが──レッド・グリーンがチャンピオンを目指すために、ブルーがポケモンの可愛さ・可憐さを知らしめるために、イエローが純粋に『ピカチュウ』というポケモンを好きなために──『ポケモン』という種そのもの、あるいは一部に好奇心を示したように、クリアもあるポケモンに関心を
それが、メタモンである。
メタモンは神出鬼没なポケモンだ。何故なら普段は
メタモンがこうも擬態するのは、ある説──『生存競争における優位性』という説にほぼ固まっていた。
他のポケモンには爪があり、
だからメタモンは、
それほどの優れた擬態能力を持つメタモンを、クリアは『意思を持つ粘土』として物珍しさに心を惹かれていた。
はじめて彼がメタモンを知ったのは、ちょうど物心ついた頃だろう。嘗ては農園のある山ではなく、幼馴染と同じようにマサラタウンの町中で祖父と共に暮らしていた。その頃には既にケーシィはクリアの世話係として傍におり、クリアには遊び相手としてメタモン2匹が与えられていた。
『遊び相手』とは言いながらも、その実玩具のように捏ねくり回して遊ぶ。それも幼さ相当の弱い力でしかない。メタモンは特に痛痒を感じることなく、マッサージのように彼の好きに、彼の気の赴くままに弄ばれていた。
それから彼は、メタモンの特性である
彼は生来の気質として、何かを作ることが好きだったのだろう。
飽きもせず、来る日も来る日もメタモンという粘土を祖父が帰宅するまで楽しんでいた。
そして、ふとしたある日、
こういうものを作りたい、という想像を共有することで、より精密に、緻密にものを作れるようになる。それはクリアの想像力を高めると共に、メタモンの想像力をも高めることに繋がった。
通常個体であれが実物を見なければ
それがどれほどの優位性を生み出すか、
そしてその思考は、年月が経つに連れ、研ぎ澄まされていく。
祖父が亡くなり、山林を相続した。
彼の根底にあったのは、メタモンをより上手く使いたいという想いと、祖父の残したポケモンの能力を十二分に生かした生活。その2つだった。
──あ、思い付いた。
そこで名案とばかりに閃いた。
──そうだ、山を拓こう。きのみ農家になろう。
突飛な思い付きだった。
だが、それは間違いなく、祖父のポケモンたちの力を役立てられる環境であり、メタモンを活躍させる舞台でもあった。
その時に彼は、本格的にメタモンを自身の手足として使い始めた。
ただ、道具として、というと彼としては納得し兼ねる。寝食を共にしていたから『家族』という感覚の方が強い。けれども、主に作業をするのはクリア自身で、メタモンはその時々の作業に適した特性を持つポケモンの手足等に
ともあれ、彼とメタモンは一心同体となった。農園のポケモンや幼馴染のポケモンに擬態するのはお手の物。更に条件付きではあるが、他のポケモンにも
如何なる脅威が来ようとも、彼にはそれを払い除けるだけの力があった。
日記風タグ入れてるけど、ここ暫くは三人称ばっかだしタグ追加必要ですかね? 教えて、そこらへんのタグ表記に詳しい人!