マサラタウンのきのみ屋さん(次話執筆中▷▶︎▷▶︎)   作:ソーマ=サン

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 長らくお待たせしました。
 久しぶりだったので三人称の書き方を忘れてましたが、まあ納得できる形におさまったので投稿します。

※ 前話の適当なあらすじ
 クリアが空から落ちてケーシィ化


マサラタウン:キメラ

 

 

「あんなの、メタモンの使い方じゃないだろ⋯⋯!」

 

 想定外のことに対する驚愕を抱きながら、サイキッカーの男は顔を(しか)めた。

 

 ──どこの世界に生身でポケモンの技を使うやつがいるッ!?

 

 彼の苛立ち混じりの感想は、その光景を見た者ならその全てが思わず零す、あるいは吐き捨てるようなものだった。

 一体どの世界にメタモンを己の身として、一心同体として扱う者がいるだろうか。それは決して比喩などではなく、真に『唯一』という表現が当て嵌る。世界広しと言えど、クリア程の精度で行える者など彼を除いて存在しないだろう。

 抜きん出たバトルセンスを持つレッドでさえ、実現不可能。

 職人の手掛ける飴細工のように自由自在に姿を変えさせるその技量は、クリアの幼馴染をして理解の匙を投げさせる。互いに互いの理解不能な部分を内心で抱えながら、その中でもクリアの件は異色過ぎた。

 仮に。仮に人の身でポケモンの技が使えたとして、

 

「なんでそこまで出力が出せるんだよ⋯⋯!?」

 

 人とポケモン。その構造上の差異は然ることながら、耐久面においても言わずもがな。

 単純に爪がある、牙がある、鱗がある──そういった外見上の違いから、固有の内臓器官を持つなど表面的に見えない違いまで、それぞれのポケモンが生き抜くために進化した証がある。淘汰されたポケモンにはない強みがあり、淘汰されたポケモンよりも優れた特徴がある。

 それがあるからこそ、ポケモンは自らの技に、相手からの技に耐えることができる。

 逆に、それがないからこそ、人はモンスターボールを開発した。

 

 その変え難い事実を(くつがえ)すように、サイキッカーに相対する男──クリアはポケモンの技を十分な効果をもって行使した。

 それが『メタモンを纏っているから』と言われればそれまでだが、これまでそんな事例は見たこともなければ聞いたこともない。

 

「くそっ、ムシャーナ! ()()()()()()()()()()()()! ネイティオ達が戻るまで持ち堪えろ!」

 

 攻めに出たはずが、たった一手で打ち崩された。

 サイキッカーの目から見て、クリアという名の青年に取り立てて変わったところがあった訳ではない。

 農家らしい作業着の、日焼けた青年。

 車内でのテレパシーの攻防を抜きにして見た時、サイキッカーの目に映る姿はそんなものだ。

 誘拐前の町を歩く姿にも特別な雰囲気は感じられない。チャンピオンとしてのレッドのように畏怖すべき気配がなければ、グリーンのように人を惹き付けるものもない。ブルーのように侵し難いものもなく、ピカチュウを前にしたイエローのような()()()もない。

 色のある幼馴染たちと比べれば平凡そのもの。

 比較対象がそれぞれの色を持つが故の、相対的な無色。

 それがおそらく、万人から見るクリアという青年だ。

 

 ──クリア⋯⋯、クリア=ライカーロ⋯⋯! ほんと何だよこいつ!

 

 悪態は、そのままサイキッカー側の状況の悪さを示していた。

 外見的な優劣は、間違いなくサイキッカー側に傾いている。クリアは血を滲ませた擦り傷と打撲だらけで、その左腕は折れて力なく垂れ下がる。吐く息も痛みを耐えるように荒く、熱い。

 加えて、その耳はまだまだ周囲を聞き取れない。遅々として外界の音を拾おうとしない。それは(あたか)も、地上にいながらクリアただ1人が水に押し込められたかのようで、満身創痍を絵に描いたような有様だ。

 にも関わらず、

 

「サイコッ、キネシス⋯⋯!」

 

 技の威力は衰え知らず。

 ケーシィ化した右腕は、当然ケーシィらしい黄色い毛皮に覆われている。それが静電気に当てられたように毛が逆立ち、あたかも巨大化した不可視の手と連動するかのように、()()()と力強く握られていく。

 その動きに合わせて()が軋む。

 クリアとサイキッカーを隔てる、定まることなく7色に光る透明の壁。水面に垂らした油を思わせる色合いが、苦しげに歪んでいく。

 

「ガキんちょが⋯⋯なんで、襲ってきたっ⋯⋯!」

 

 クリアに対する明確な害意が、彼に『抵抗』を選ばせた。

 明らかな外傷者を前にした反応として、この現状を悪ふざけで笑って済ますことなどできはしない。サイキッカーの外見的な幼さからある程度の寛容さを備えていたクリアの心は、その範囲から逸脱したサイキッカーの行いに、早い話、キレていた。

 突然落下させられ、重傷を負い、更にオヤジ狩り紛いの襲撃。

 落下時の犯人が誰なのか、その正確なところは分からなかったが、状況的に少年が原因であろうことは明白だった。もし、少年ではなかったとしても、その関係者であることは間違いない。

 ならば、少年にキツいお灸を据えることは合理的であると判断した。

 

「何でもかんでも⋯⋯チャラになるって、思わん方がええぞ⋯⋯!」

 

「ッ⋯⋯」

 

 血混じりの唾を吐いて、青筋を浮かべたクリアが唸る。

 白髪の合間から少年を刺す琥珀色の眼差しが向けられ、思わずサイキッカーがたじろいた。

 

「外骨格:頭部から臀部──デンリュウ⋯⋯!」

 

 クリアの命令で、オーロットに()()()()していたメタモンが凄まじい勢いでクリアの頭部を覆い隠し、赤い宝玉・白の長毛を備えた黄色い龍の頭部を形作る。

 それはまるで生物の腐敗の過程を逆送りで見るかのよう。

 面長の頭龍骨が形成され、神経、肉、皮、体毛が纏われる。続けて頭部からクリアの背筋に沿って真新しい椎骨(ついこつ)が伸び下りて、それは途中で尾椎(びつい)として長い尾の基礎を象った。そうして背骨は剥き出しのままに、尾骨が頭部同様に無数の紅玉と白長毛に覆われた。

 多少のグロテスクさを残しながら、メタモンの()()()()が完了した。

 

「無力化⋯⋯、させてもらうぞ」

 

 デンリュウの頭部が人語を発する。

 放電音を弾かせながら青白く発光する白い体毛。風に逆らうように大きく広がる。

 紅玉から紅玉へ。時折(もた)れ掛かった鉄骨や整備用通路に小さな稲妻が走りながら、今にも爆発しそうな気配を漂わせて電撃がクリアの周囲を侵し始める。

 

 ──⋯⋯くそぉっ、何なんだよこいつ⋯⋯!

 

 目まぐるしく変化するクリアの姿に、サイキッカーの困惑は最高潮に達していた。

 本当に同じ人間かと疑わしくなる程に──メタモンを介しているとは言え──好き勝手に自らの姿形を弄るクリアは、多くの人にとって理解し難いに違いない。

 サイキッカーとて、『超能力』という一介の人間では持ち得ない特異能力を持っている。手持ちポケモンや無警戒な人間に対してのテレパシーは『超能力者』として当然にできるし、重量の軽いものを動かす念動力も使おうと思えば使える。

 素のスペックとして、一般人よりも一段上にいると言っても過言ではない。

 そんなサイキッカーからしても、クリアに得体の知れないものを感じていた。

 

 ──ッ、ネイティオとランクルスはまだ来ないのか⋯⋯!

 

 車外に投げ出され、そのまま風船のように吹き飛ばされたランクルスのため、彼はネイティオをその回収に飛ばしていた。そのため、現在自由にできる手持ちはクリアに(けしか)けているムシャーナ1体のみ。

 今回の作戦上──クリアに接触する関係上、相手の警戒心を煽りにくいポケモンを意図的に選出したとは言え、その実力は折り紙付き。クリアの拉致を完遂するため、搦手が得意であるのは勿論のこと、純粋な戦闘力でも優れた個体を選んでいた。

 

 ──ムシャーナだけじゃ押し切られる⋯⋯!

 

 それでも、クリアを相手にするには力不足だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()など、放った(そば)からサイコキネシスに掻き消される。

 それらはタイプ相性とでも言うべきか。それともサイコキネシスの万能性と言うべきか。(ことごと)くが干渉され、散らされる。

 バンの中で行われた精神下での闘いで済んでいれば、サイキッカーとしてはここまで苦しまされることはないはずだった。

 だが知っての通り、結果は思い通りとはならなかった。

 

()()()()()⋯⋯!」

 

「くっ⋯⋯!?」

 

 一瞬パリッと、()まで細い線が到達したかと思うと、次の瞬間には強烈な閃光を伴って破裂音が響き渡った。

 それと同時に()()が砕けた感覚。クリアとの間にあった衝撃を緩和する何かがなくなり、ダイレクトに産毛が逆立つような悪寒に襲われて、

 

「あ、やばっ──」

 

 サイキッカーの目の前に、光の奔流が迸った。 

 

 

 

 




 
 書いててクリアだけ世界観違うなあって思ったけど二次創作だし仕方ないね。

※ また今後とも、三人称視点に関しては1回/週程度の更新を目指しますので、よろしくお願いします。
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