マサラタウンのきのみ屋さん(次話執筆中▷▶︎▷▶︎)   作:ソーマ=サン

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 先週中には無理だったよ。
 許せサスケ(デコトン)。

 もしかしたら、『マサラタウン:キメラ』の時とサイキッカーのキャラに温度差があるかもしれないので、気になるようでしたら「〇〇に〇〇な違和感がある」等と言った形で指摘していただけるとありがたし。


マサラタウン:分岐点

 

 

 それは、偶然が重なり合ってできた1つの不幸なのだろう。

 防戦一方だったとは言え、ムシャーナの技は確かにクリアの技に拮抗していた。喩えそれが、司令塔たるサイキッカーを守るための偶発的な火事場の馬鹿力だったとして、クリアのサイコキネシスに──そのオリジナルとなった()()()()()()()()()()()()に、耐え得る()を張るという覆しようのない事実を残していた。

 

 対するケーシィと共に成長したクリアという存在。

 人にして人ならざる感覚を後天的に獲得した青年は、メタモンという出力機を備えることで、ポケモンと同等に、しかし人としての離れ業を行使するまでに至っていた。

 その技量はケーシィの技をも自在に操る。更に威力調整も可能であり、サイコキネシスに耐えた()を砕く出力を、瞬間的ながらも放出した。

 

 そして多くの車が行き交う大橋。膨大な電力が消費され、人が血液のように絶えず流れ、運動エネルギーが無限に消費される。

 おまけに橋下(きょうか)では海流が巡り、波が立つ。

 

 ()()がそこに顕れたのは、そうしたエネルギーの消費が閾値を超えたからなのか。

 曲がりなりにも状況を理解できたのは、サイキッカーの男、ただ1人だけだった。

 

 ◇

 

「ぅ、ぐぅ······」

 

 全身に纒わり付く嫌な痺れ。倦怠感とも付かない感覚に囚われて、サイキッカーは堅く冷たい通路に頬を打ち付けた。

 脳からの命令に反し、急速に五体を支える力は喪失した。

 それが()()()()()に起因する神経交錯だと、鈍い痛みが頭蓋に反響する中、彼は正常に判断していた。

 彼は──彼のみならず()()に所属するサイキッカー等は、痛みに対して()()()()()。痛みによる思考の停止が、任務の失敗に高い確率で繋がるからこそ、()()により敢えてその感覚を鈍化させている。四肢の欠損などの大きな傷を除き、思考の揺らぎはそれほど生じない。そういう風に、彼らの精神は作り替えられている。

 彼は先の興奮を落ち着かせ、冷静に頭を回しながら、正確な状況把握に努めていた。

 

 ──一瞬だけど⋯⋯意識が飛んでた。それと⋯⋯、⋯⋯あ、やっぱりダメだ。痺れは良いとして、体を操作できない。⋯⋯これは麻痺だけじゃないな⋯⋯、神経伝達系が一時的にバグってる気がする⋯⋯。⋯⋯くそっ、これだから()()()タイプは嫌いなんだよ⋯⋯、ポケモン相手でさえ必中の技を人間が避けられる訳がないだろ⋯⋯!

 

 内心で舌打ちし、しかし事象の前後関係を理解して、彼の意識は外部へと広がっていく。

 常人であれば『四肢が突然命令を受け付けなくなる感覚』に取り乱し兼ねないものを、彼は客観的に認識することで着実に周囲の把握を固めていく。

 閉じられていた瞼を開き、黒い瞳がクリアを追ってのろのろと動いた。

 

 ──満身創痍は依然変わらず、か。

 

 クリアの体勢は無防備だ。

 メガデンリュウの骨格が解れ、代わりにオーロットの枯れ木が再びその体を支えている。

 一応の警戒──ケーシィ化した腕による継続的なサイコキネシスをムシャーナに向けるものの、サイキッカーの無力化を確認して安堵の息を吐いている。その『安堵』の中にはきっと、手加減が上手くいったことへの『緊張の緩み』もあるのだろう。

 

 クリアが放った()()()()()

 それは間髪入れずに2発放たれていた。

 初撃こそ()()()()()()()()()()()()──2種の()を瞬間的に突破する威力を持ったものの、打ち破ることのみに注力した調整故に、()の消失と共に失せていた。

 そのための、2段構え。

 強烈な光が明滅する中、二の矢で飛んだ()()()()()。サイキッカーの自由を奪うだけの大分威力の抑えられた閃光は、それでも必中の性質は揺るぎない。サイキッカーに回避行動に移る猶予を渡さずに、今の結果を齎していた。

 そんな当のクリアは、鉄骨に凭れながら深く溜め息を吐いていた。

 

 ──うん、暫く動く様子はなさそう。だけど、こちらが動けない以上、状況は変じようがない、かな? ネイティオたちが戻ってくれば話は別だけど、ランクルスが飛ばされやすいから今すぐとはいかないだろうね⋯⋯。

 

 内心で、任務に連れ出すポケモンの選定基準の見直しを検討するサイキッカーは、しかし、常の任務であれば、このような思考は持ち合わせていない。

 敵の前に転がれば、その先にあるのは直近の死か、情報を吐かされてからの死か。いずれにしても、死あるのみ。

 任務達成に向けて、そして生への執着のみが思考を占める。

 だが、現在相対しているのは、その心配のない者。

 クリアは紛うことなき一般人。能力的には『一般人』から逸脱しているが、その常識は十分に『一般人』の範疇に収まっている。(いたずら)に他者を害することはないし、手ずから相手の命を奪ってやろうという倫理破綻もない。

 寧ろ、そういうことを忌避する(たち)なのだろう、とサイキッカーは判断していた。

 あれだけの害意を示しながらも、サイキッカーを大した傷もなく無力化するだけに治めたことがその証拠と言っていい。外見的な幼さを差し引いても、傷が残るような手荒な真似をクリアは取らなかった。技を放つムシャーナに対しても、サイコキネシスによる拘束に留めていることから、その予測はほぼ間違いないだろう。

 無論、明らかに手加減されたと分かる仕打ちであったから、そこに多少の苛立ちを感じなかったと言えば嘘になる。

 だが、任務の継続可能状態を維持できていると思えば、何の問題もなかった。

 

 ──身辺調査の段階では『地方で成功している一般人』程度の認識だったのに、とんだ貧乏くじを引かされた気分だよ⋯⋯まったく⋯⋯。

 

 十把一絡げの『一般人』。

 これまでクリアに対するサイキッカーの認識はそうであったし、恐らく()を知らない者にとっても、今後その認識は変わらない。特殊な一面を知らなければ、『手広く事業を進める若き事業主』程度にしか思わなかっただろう。

 農業に意欲がなければ、ポケモンの世話に関心がなければ、カレー作りに興味がなければ、それこそ一生関わることがない者もいるかもしれない。言わずもがな、サイキッカーのように()()()にいる者とも。

 互いに一生交わることのない()()にいる住民が、表裏(おもてうら)問わずかなりの数がいるだろう。路傍の石として見向きもしない存在が数多いるだろう。

 それがこれまでの普通だったし、UBに出会わなければ、きっと今後も同様の関係性が続いただろう。

 だが、どんな運命の悪戯か、UBがクリアの元に行き着き、その存在を()()により確認された今、こうして交差する筈のなかった者同士が顔を向き合わせている。

 

「ふぅ、きっつ⋯⋯」

 

 体中が意識を朦朧とさせる程の熱を持っている。 

 己の体調が刻一刻と悪化していることを自覚するクリアも、UB02 EXPANSION(きんにくん)をきっかけとした非日常への幕開けには気付けていない。

 社会人として持つべき体調管理能力も、所詮はクリアの中だけに完結した『変化や違和を覚える感覚』に過ぎない。外部で生じた変化を、密やかに動く大きな()()()の中に引き摺り込まれたことを、実感できていない。

 それに彼は、どれほど特異な能力を持とうと()は一般人。安否確認等の優先順位の高さで言えば、やはり自身のことが1番に来る。彼は体調の再確認を行っていた。

 

「ったく、骨折とか何時(いつ)ぶりだよ⋯⋯。ツイてねぇ⋯⋯」

 

 寧ろ、あれだけの高度から落下しておきながら、大きな外傷が骨折のみで収まったことは、運が良い方──ツイていることだろう。だが、左腕を中心に血液が熱湯に成り代わったような錯覚、そして自由に動かせないことが()()()()()、思わず愚痴を零していた。

 そんな悪態を吐く最中(さなか)にも、脈動に合わせて痛い程の圧力が皮膚の下を容赦なく走る。心臓から送り出されるそれも傷を広げるような勢いを感じさせていた。喉奥を圧迫するような、心臓が飛び出てきそうな感覚。吐き気とは違う熱の込み上げる感覚が、静かにクリアを襲っていた。

 

「⋯⋯あー、ほんまキツい。⋯⋯が、さて──」

 

 ──ガキんちょを無力化したとはいえ、どうやって警察に突き出してやろうか。

 

 意識を切り替え、サイキッカーに視線を向けて思案する。

 

 ──こっ酷く叱って貰わんとこっちの気が済まないんだが、そのお世話になるお巡りさんを呼ぶにも連絡手段がなぁ。

 

 軽く考えて、はたと気付く。

 

 ──てか、メタモンに携帯に()()()()して貰えば万事解決だな。

 

 そして恐らくここが分岐点。

 空白の日記が続くことの原因であり、本来想定されていた()()()()()()()からの乖離だった。

 

 

 

 

 




 

 ちなみに、ここで言っている『空白の日記』は、『日記:しばき倒すぞ』の最後のところですね。あそこで何で暫く書かれなくなったか、という理由が次になるかと。
 できれば1週間以内に投稿したいですね。
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