マサラタウンのきのみ屋さん(次話執筆中▷▶︎▷▶︎)   作:ソーマ=サン

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 おまたんせ。
 ちびちび書いてたら出来たので、とりあえず投稿します。
 次話の時期は未定です。

※今更ながら注意。
 この作品では、作者の好きなポケモンについては、色々と優遇される可能性がありますので、ご了承ください。

2021/10/22 後書きに参考物の追加。



マサラタウン:りゅうせいぐん

 

 

 変化は、些細なことだった。

 『空間が、歪み落ちる』。

 突如中空に現れた黒点に、空が吸い込まれるようにして捻じ曲がる。

 殊更論ずるまでもなく、異常であった。異常であったが、しかし、『些細』の一言で済ませられる。

 自然法則に則るならまず有り得ない現象は、逆説的にポケモンの仕業であろうと推測できる。摩訶不思議な生物が存在するこの世界だからこそ、半ば確定的に何某かの影響であろうと予想できる。──ある種原因が明確であるからこそ、そこに住む人々の思考は制限される。

 現にクリアの反応は多少訝しむだけに留まったし、直ぐに興味は薄れてその視線をメタモン(スマホ)に落とした。

 特段可笑しなところは存在せず、だから彼のみならず多くにとって、それは不意打ち以外の何物でもなかった。

 

 視界の隅で、閃く。

 日中であるにも関わらず、燦然とした眩い閃光。

 鏡に陽光が反射したような鋭い光が、膨大な熱量を持って振り抜かれた。

 

「……は……?」

 

 重力に引かれて倒れゆく。

 一瞬の浮遊感の後、足元から落下する。

 両足に違和感。喪失感。

 ──体を覆う、倦怠感を倍する壮絶な熱さ。

 ()()()がカラカラと投げ出され、強かに体を打ち付ける。サイコキネシス代わりにムシャーナを絡めとっていたオーロット(枯れ枝)が、千切れ飛ぶように焼け落ちた。

 

「何……が……?」

 

 ミキサーの中に投げ込まれたような、上も下も分からなくなるような急転直下の状況変化に、クリアの理解が追い着いて来ない。

 そしてその曖昧な認識のまま、彼の意識は暗く閉じた。

 

 ◇

 

 その感情に名前を付けるなら、『怒り』だった。

 

 大橋上空に姿を現した黄色い影。

 海の藻屑と消えた1()()()の電波を元に、ロトムの逆探知によりクリアの居場所を特定したケーシィは、空間転移(テレポート)して早々にその現場を目撃した。

 その惨状は、彼を(いか)らせるに十分だった。

 そしてそれは、『憤怒』と言って余りある感情だった。

 

《███▂▅▇███████ █▇▅████ ▂────────!!!!》

 

 物理的に空間を捻じ曲げる。

 クリアの行使したサイコキネシスの比ではない、真に超常的な圧力。

 『飴細工』などという表現すら生温い容易さで、大橋の一角を巻き込んで空間が収束する。

 ジオラマを徒に壊すように、しかし徹底的に磨り潰すように、アスファルトが粉微塵に砕け散り、鉄骨が飛沫を思わせて弾け飛ぶ。

 半透明の膜に覆われた数多の車種──理性の残るケーシィにより、バリアでガチャ玉のように隔離されたその車窓から覗く()()()に、全ての者が夢であることを疑った。

 もしかするとクリア以上に状況を飲み込めていない観測者が、それでも冷静なまでに、その光景に『容赦』というものを見出せなかった。

 

 ひと目で分かる、理を外れた能力。

 何に対して行使された力なのか。()()()()()()に多少慣れた、偶然バスに乗り合わせた極一部のエリートトレーナー等が思考し、──そう思考したことを自覚する前に、事態は動く。

 

 (おもむろ)に動かされる黄土の細腕。

 余裕を持った一拍の後、ケーシィの眼前で光が弾けた。

 それはクリアの両足を両断するに至った狂熱で、再起する光景に、頭の奥深くで更なる熱が込み上げる。

 

 ──何であれ、逸脱した存在のその心の在り方、あるいは感情の揺らぎは、大きくエネルギーに変換される。

 内面的な突沸は、(わだかま)ることなく波動として世界を揺るがした。

 

《─────散レ──!!!!》

 

 轟ッ、と。

 大海が割れる。巨大な球体を落としたかのように、海原(うなばら)が綺麗な球状を(かたど)っている。

 そこに物理的な圧力があるのは明白で、押し固められた海水に、ポケモンではない唯の魚類がその身を赤く爆ぜさせている。ランターンやパルシェン等の耐久力のある海棲(かいせい)ポケモンでさえ、提灯の圧壊や外殻の破損等、少なくないダメージを負っていた。

 並のポケモンにとっては酷な環境にありながら、しかしその最中にて。

 

《────不快……》

 

 異次元からの来訪者が顔を覗かせていた。

 その身に(ひび)はなく、傷もなく、ただ陽光を反射する固体があった。

 眉根を寄せたケーシィの糸目が、地上の物質で言えば『黒水晶』によく似た何かを睥睨していた。

 

《 ̄ ̄ ̄ ̄███▇▇▆▄▄▄▃▂▂▂____》

 

 ()()は何かしらの心情を表す音を発する。恐らく、広義で『声』と呼んで差し支えない。

 そんな()に従属するように、数多の恒星が瞬いた。

 

 光は、およそ毎秒30万kmで宙を駆る。

 真空中と大気中とで速度に若干の違いはあるものの、その差は僅か0.03%に過ぎない。(※)

 故に、『瞬き』を認識した時には、既にそれは対象物に到達している。如何にポケモンと言えど、純粋に光速を認識することは──観測することは、不可能に近い。

 摂氏数千℃の暴力を孕んだ光線は、真に『()()()()()()()』と呼べる代物だった。

 

 視界を焼く強烈な白。

 空を焦がす激烈な白。

 『光』が想起させるものとは対照的な、悪魔的な白。

 それに相対しておきながら、

 

《────微温(ヌル)いナ────》

 

 彼は微動だにしなかった。

 励起し、仄かに明るい黄土の体毛が、総毛立つ。

 何某かの攻勢に移る前兆であることは間違いない。

 とはいえ、それに続くアクションは皆無だった。

 腕を振るう? ──否。

 開眼する? ──否。

 障壁を解除する? ──否。

 全く以て本当に、それらしい素振りを1つとして見せていない。

 果たしてそれは、事実だったのか。

 続く異常に、(あまね)く全ての者が『そんなはずはない』と断言した。

 

 海水面が上昇する。

 続けて隆起する大地。

 海底から分厚い潮の層を突き破って、鋭い岩肌が顕になる。

 

 それは峻険なる渓谷。

 或いは、峨峨(がが)たる剣山。

 陽を孕む雫を散りばめて、星そのものが牙を剥く。

 

 相反するように、()()()()()

 世間一般に『流星』と呼ぶそれは、群れることで『星雨』と名を変える。

 或いは、『伝説』を冠するポケモンが操る()()()()()()()とも言えるだろう。

 

 殺到する数多の星屑。

 ──赤熱した天の涙が、無数の母なる剣戟と鏡合わせのように降り(しき)る。

 障壁越しにさえ、肌を波立たせる振動。

 想像を絶する音が響きながら、正常に音を『音』として認識する機能が欠落する。人々は余りの轟音に無音を錯覚する程だった。

 

 そして。

 

 ケーシィに到達した熱線は、悉くが()()()()()収められる。

 この場にレッドがいれば既視感に見舞われるであろう光景は、()()()()()──リザードンのブラストバーンへの対処の焼き増しで。

 

《──朽チテ、詫びロ》

 

 硬質な黒が自壊する。

 力任せに水晶を砕いたような荒々しさで、同時に砂に還るような柔らかさで、その肢体が崩れ落ちる。

 

《▄▃▂▂▂___》

 

 掠れた小さな響き。

 見下ろすケーシィのその先で、異次元からの来訪者が深い闇に飲み込まれる。

 表情らしい表情のないその存在が、しかし明確に、苦く敗北を認めたように音を響かす。

 

 この僅かな時間の邂逅で、この場における二者の勝敗は決していた。

 

 




 

話中(※) 参考:名古屋市科学館Q&A
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