マサラタウンのきのみ屋さん(次話執筆中▷▶︎▷▶︎)   作:ソーマ=サン

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 『次話は1週間程度後』と言ったな。悪いがあれば嘘だ。
 ただ、三人称と言ったのはホントだヨ。

※ サブタイトル修正(詳細は11話(6/8 0時更新分)前書き参照)


マサラタウン:きのみカレーの日

 

 

 その日、クリアは午後から休暇をとっていた。

 週に2度ある半日不定休の前半。夕飯の食材を買いに行くとケーシィに伝えて、彼はいつもの作業着姿で町に繰り出していった。

 

 クリアが買い出しに行く日の夕飯は、決まってカレーとなっている。それは農園で働くポケモンたち(従業員)にとっては周知の事実で、新入りのマッシブーンにとっても、ここひと月の生活の中から自然と導き出せる事実だった。

 ポケモンと共に食せるカレーは、ポケモンとの仲を深めるのに効果的というのが分かってからトレーナーにも広まっている。クリアはその数あるカレーの中でも、彼の職業の恩恵を大きく受けるきのみカレーの専門家だった。

 

 豊富なきのみの知識と、ポケモンの好みを選び当てる感性。

 それらは農業界を飛び出して料理業界でも重宝されており、料理雑誌には定期的なコラムが掲載される程。つい先月も馴染みの料理研究家からの協力依頼を受けて、今の時期におすすめのきのみと、主婦向けの店頭での目利きについて情報提供を行ったばかりだ。

 

 彼の作るカレーは、きのみを専門に取り扱う者の矜恃に溢れている。つまり、農園で働くポケモンのツボを寸分の狂いなく押さえているということ。それは当然、マッシブーンでさえも例外でなく。

 あるポケモンには辛味を強く、あるポケモンには渋味と苦味を加え、あるポケモンには仄かな酸味を、あるポケモンには飛び切り甘く。それぞれの好みに合わせたバリエーション豊かなカレーを作っている。

 

 そしてこの『カレーの日』には、もう1つ、『特別』がある。

 それはいつもであれば納屋や倉庫で揃って食べるところを、この日だけは、日中カフェとして解放している建物を食堂として利用できるのだ。普段とは違う場所で食べる夕飯は、いつも以上に料理を美味しく感じさせる。

 だから日が暮れ、1日の仕事が終わると、作業の汚れを落としたポケモンたち(従業員)が続々とここへ集まってくる。

 今日は何種類のカレーを振る舞ってくれるのだろうか。今日も沢山食べられるだろうか。そんな想像を働かせながら、クリアの帰りを待っている。器用に食器を用意して、いそいそと大鍋をコンロに上げて、傍目からでも楽しみな様子で待っている。

 

 そうして短針が6時を回り──。

 いつもであれば()うに料理に取り掛かる時間でありながらも、件の料理人が戻らないことに『嘗てないほど美味しいものを作ってくれるに違いない』と各自の期待を膨らませて、──針は進む。

 短針は7時を過ぎ、8時を超え、9時に達し──、それでもクリアは帰って来ない。

 

 町の明かりが次第に消え、夜の帳が静かに下りる。

 見回りのために後ろ髪を引かれる想いで席を外したオーロットに、朝から作業していたポケモンたちがテーブルに着いたまま船を漕ぐ。耐え難い睡魔に襲われた彼等が本格的に寝入るのに時間はかからず、過ぎた時間を示すように、いつの間にか円の頂上で2本の針が重なっていた。

 

 明かりを灯したままのカフェの中で、規則正しく時計は時を刻み続ける。

 

 ポケモンたちの寝息が響く屋内に。

 

 突如。 

 

 カランカランとドアベルが鳴った。

 

 はっと目を覚ましたケーシィに、眠たげに(まなこ)(こす)り起きたヨクバリス。 

 クリアが帰ってきたのだということに気付いた2匹は、『遅い』『待たせやがって』と内心憎まれ口を叩きながらも、期待に満ちた眼差しで素早く入口に振り返っていた。

 胃袋を掴まれた彼等は主人に弱い。散々に待たされたという想いも、クリアが漸く帰ってきたとなれば知らず知らず思考の彼方に追い遣られる。

 

「悪い、待たせた」

 

 そんな謝罪も何のその。その言葉を言う暇があれば今すぐカレーを作って欲しい。

 2匹はそんなことを()()()()──、

 

「「⋯⋯⋯⋯」」

 

 ドアについた小さなガラスから白んだ空が覗いていた。

 ()()()()()

 鳥の(さえず)りが爽やかな朝の気配を感じさせ、新たな1日の始まりを告げている。

 それは同時に、開業時刻が迫っていることをも意味していて──。

 

 我に返った2匹が、慌てて寝こけているポケモンたちを起こしていく。

 農園での仕事が、主人不在のまま始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 




 この話の次の話が1週間程度後だ。理由は勿論、三人称で書くからだあ。
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