マサラタウンのきのみ屋さん(次話執筆中▷▶︎▷▶︎)   作:ソーマ=サン

9 / 21
 長くなりそうなので、部分ごとに執筆出来次第投稿します。
 暫く三人称が続くと思うので、一応宣言通り、1週間程度の間隔で更新されると思っておいてください(はやく書ければ2-3日で投稿したい)。

 また、決まった形のサブタイトルを付けたいのですが、今現在迷走しているので、暫く巫山戯たり何の捻りもなかったり、色々になることが予想されるのでご了承ください。なるべく中身のネタバレにならないように付けていきたいとは思います。

※ サブタイトル修正(詳細は11話(6/8 0時更新分)前書き参照)


マサラタウン:農場長ケーシィ

 

 

 農園では、クリアが不在の場合でも問題なく運営できるよう、(あらかじ)め体制を整えている。

 故に、開園の時間になってもクリアからの連絡がなかったこの日、農園の全権を担う代理農場長として、ケーシィの裁量に全てが任されていた。

 

 ケーシィとクリアの付き合いは、クリアがまだまだ幼い頃から続いている。それこそクリアはケーシィと共に育ったし、ケーシィもまた、クリアと共に成長した。クリアが農園で最も信を置く存在と言えば真っ先にケーシィの名が挙げられる程、彼等の間には深く強い繋がりがある。人間とポケモンという異種族ながらも、その関係は『兄弟』と呼ぶに相応しい親密さだった。

 ケーシィにとって、クリアの考えは手に取るように分かる。生まれてこの方、クリアとの意思疎通の(おおよ)そをテレパシーで取っていた賜物か、下手な熟年夫婦以上に言葉を介さずに思考を読めてしまう。

 それが、こと今回に限っては全く以て理解できなかった。

 だからこそ、(かえ)ってその実感が、この失踪をクリアの本意ではないことを高い確度で告げていた。

 

 クリアの身に何事かが生じている。クリアの居場所を突き止めるために動かなければならない。

 けれども、今日のケーシィは代理とは言え『農場長』という立場にある。おいそれと行動に移せず、仮に動き出すにしても順序がある。

 

 ケーシィはこれからの事を思案する。

 農園を開くべきか、閉めるべきか。

 従業員はクリアの失踪如何に関わらず農園にいるため、営業はできる。カフェも同様に開店は可能だが、何も言わずにいなくなったクリアを想って心ここに在らずな者達に頼るのは名案とは言えない。

 しかし、そういった様子ながらも、きのみの出荷については既に業者に運送を依頼しているため、緊急時と言えども普段通り行う必要がある。直前になって『今日は出荷できません』などと無理を言っても信用を失うだけだ。利害で繋がる者との信頼関係を損なうことは、観光客など人情で繋がる者との関係に空白をあけるのとは訳が違う。これまで築き上げてきたものに傷を付けるような行いだ。

 

 結果として、ケーシィは従業員に対して『きのみの出荷だけを行い、クリアが戻るまでの間は閉園すること』を通達した。

 

 ◇

 

 ケーシィがまず初めにしたことは、スマホのGPS機能を用いた位置情報の割り出しだった。

 幸い、農園には電子機器に精通している、というより『それそのもの』と言い切っても良いようなロトムがいる。現実と電子世界との間を行き来する性質を十全に発揮してもらい、ロトムには農園のPCを足掛かりに広大な情報世界へと潜ってもらっていた。

 クリアのスマホの特徴は覚えている。日頃、ロトム手ずからセキュリティチェックとセキュリティ対策を講じているため、スマホ内にはロトムの固有因子が多く散りばめられている。情報の通信と共に電脳世界に流れ出したそれを、濃度の濃い方へと辿っていけば、自ずとクリアの居場所は判明する。

 

 ──クリアの居場所を特定するのに、そう時間は掛からない。

 

 確証を持ったその推察は、紛れもない真実であった。

 ただ、ケーシィもロトムも当たり前のことを失念していた。この方法で解決に至るためには、そもそもスマホの電源が入っていなければならないのだと。

 

 ロトムが知り得たのは、『昨日の夕方──恐らくクリアが農園への帰路に就いたところで、位置情報の通信が途切れている』ということ。それ以前の座標がマサラタウンから農園に近付く形で軌跡を描いていたことから、帰り道であったことは間違いない。更に遡って()()()、スーパー内部を歩いていたことから揺るぎない事実だろう。

 位置情報から割り出すクリアの行動歴は、街中で忽然と途絶えていた。それもその時間であれば人通りが疎らということはない。学校からの帰宅途中の学生や、クリアと同じように買い出しに出掛けた主婦が多くいたはずで、事件に巻き込まれただとか、暴力に遭遇しただとか、そういった可能性は極めて低い。その時間帯のSNSの動きを探っても、該当しそうな事柄は話題に挙がってはいなかった。違法な手法から、マサラタウンの住民のものと割り出したアカウントを網羅してみても、だ。

 

 そのことから、クリアは恐らく自発的に電源を切った。相手は顔馴染みか、それ以外の『警戒する必要なく、素直に提示された条件を承諾できる相手』であったということ。

 しかし、それが分かったところで、ケーシィとロトムはこれ以上その相手を特定する術を持ち合わせていない。

 もしも、ここがタマムシシティ等の都市であれば、街中に設置された防犯カメラをハッキングすることで相手の姿形を確認できたかもしれない。今回のような場合に於いては残念ながら、マサラタウンにはオーキド研究所や銀行など、重要施設にしか設置されていない。念の為それらのカメラも確認したが、希望の映像は撮影されていなかった。

 

 PC画面に埋没していた雷状の触手を引き抜いたロトムは、ケーシィに向き直ると否定するように体を振るわせた。そのジェスチャーの意味は誤解のしようがない。クリアの痕跡探しは失敗に終わったのだ。ケーシィは正確にロトムの意図することを把握して肩を落とす。

 

 となれば、ケーシィの取る手は次に移る。

 身内で出来なければ、他者に──権力に頼る。しかし、クリアが直前に出会ったと思われる人物像が大まかに推測されたことから、警察に向かうのはもしかすると大袈裟な結果を生むかもしれない。そんな人間染みた配慮から、ケーシィはクリアの幼馴染の元へと跳んでいた。

 

 その時、時刻は昼を回っていた。

 

 

 

 




 ロトムのイメージは、でんき・ゴーストの普通の形態のロトムです。時期ごとに憑依する対象機械を変えますが、通常の形態で過ごす事が多いです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。