光に目が眩む。
どうやら気を失っていたようだ。
目を慣らすと、そこにあったのは雲1つない青空。
意識を覚醒させ、ゆっくりと起き上がる。
「…………どこだ、ここ?」
オレは静かな平原の上に寝転がっていた。
周囲には鈴蘭が咲き誇っている。キレイだ。
確認すると、服は幻想郷でオレが使っていたもの。
護身用の短刀も懐にあった。
立ち上がる。
遠くに、大きな山が見えた。
────えっ、まさか。
「妖怪の山、遠くね!?」
妖怪の山がかなり遠い。
おそらく来たことのない場所だ。
大量の向日葵が咲き誇る丘も見えた。
太陽の丘か。
「えらい遠くに来ちまったな………」
ただでさえ太陽の丘に着くまで2日かかったのだ。
オレは飛べないし。人間だし。多分。
と、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「春ですよー」
「この呑気な声は………リリーホワイトか!」
「呑気で悪いですねー、ていうか誰?」
現れたのは掌サイズの妖精。
春告精とも言われる春を告げる妖精、
リリーホワイトだった。
幻想郷の春では風物詩である。
「誰って………あ、そうか。
初めましてだな、オレはソラ。よろしく」
「幻想郷の新入りさんですか?
私のことは知ってるみたいですけど」
「ちょっと前に幻想入りしたんだ」
「よくこんな不吉な場所まで来ましたねー。
ホントに幻想入りしたの最近なんですか?」
不吉?
顔をかしげる。
「知らないんですか?
ここ、昔は人間の間引きやってたんですよ?」
「間引き!?
こ、子供をここで!?」
「そうですよー、まぁ
こんなとこまで来る私もですけど」
「まぁ確かに………あ」
と、聞かないといけないことを思い出す。
危ない危ない、これだけは聞いておかないと。
「最近、幻想郷で
行方不明になった人っていないか?」
「………聞いたことないですねー?
私、春告精として家々は回りますが、
どこもそんな場所はありませんでしたよ?」
「……………そか、サンキュー」
「さんきゅー?」
「ありがとう、の意だよ、リリーホワイト」
「そうですか、どういたしましてー。
それでは私はこれで。はーるでーすよー」
飛び去っていくリリーホワイトを見送る。
なんか焼芋売ってる車みたいだな………
「ともかく、オレを覚えてないっぽいな」
確認ができた。
悲しいがやはり、オレを覚えてる人はいない。
リリーホワイトとは何度も会っているので
確認はできた。
「…………人里に向かうのはやめとくか」
そう考える。
慧音さんたちに不信がられるのは避けたい。
前は咲夜の紹介があった訳だしな。
…………建前だ。
本当は、自分を忘れて初めて会うように
接してくる皆が怖い。
自分だけが外れた世界は、
どうしようもなく、怖かった。
頬を叩き、気持ちを入れ換える。
「………っし、博麗神社だ。
金はあるっぽいし、霊夢に会いに行こう」
店には戻れない。
なら有り金使ってしまっても霊夢が
嬉し泣きするくらいだろう。
かかる時間は、おそらく半日くらいか。
オレは、博麗神社へと向かって歩き出した。