強い紫外線を浴びながら、自転車のペダルを漕ぐ。
学校までの道のりは自転車で大体10分弱。
遅刻しそうになって飛ばしていったときは、最短6分で着いたこともある。
最難関なのは学校が山の中にあるので麓から校舎までの坂道だ。
そこそこ角度がきついので、陸上部なんかはよく部活の時に走っている姿を見たことがある。
普段は今日よりは早めに漕ぐのだが、今日は普段よりも大分早めに出てきたので、ゆるーく自転車を漕ぐ。
今日みたいな暑い日にいつもみたいに漕いでいたら、学校に着く頃には汗だくになっていること間違い無いしな。
そんな僕たちの高校である犬神高校は、都市部から離れた山の中にある。
元々は、神社かなんかだったらしいが、そこを取り壊して作られたのが犬神高校らしい。
元が大きい神社だったせいか、山の中にあるくせに広大な敷地を有していて、他校との交流や部活の試合なんかも大体うちの高校でやるのが当たり前になっていると彼が言っていた気がする。
彼というのは、サッカー部に所属している赤坂翼のことで、本来なら部活に属していない僕とは関わることはなかったはずなのだが、1年の初めての席が隣同士だったことで、関わりを持ったのだ。
クラスのムードメーカーである彼と彼を止めるストッパーの僕はほぼ一緒にいることが多くなっていった。
そして、今年も赤坂と同じクラスになった僕はこの1年も彼に振り回されるんだろうなぁなんて思っていたのだが、部活が忙しいのか最近はあまり無茶な事をしないので僕個人としては助かっていたのだが、何だか味気ない気もする。
そんなことを考えているうちに学校に着いたので、駐輪場へと向かう。
しっかりと鍵を掛けて、籠の中の鞄を取り出しクラスに向かおうとすると、肩を思いっきり叩かれる。
「おう真、今日は早いな。いつもならもうちっと遅くねぇか?」
噂をすればなんとやら、先程まで考えていた人物赤坂翼だった。
黒の短髪で身長は170近くある高身長、顔も爽やか系のイケメンというまさしくスポーツ男子というのを体現している男である。
その爽やか系のスポーウェアは汗びっしょりで、顔も汗だくの様子から伺うに今日もこの暑い中、朝練をしていたことがわかる。
「今日は家族みんな早く出るらしくてさ、それで僕も起こされたってわけ、家にいてもすることないし、学校来て眠ろうと思ってね」
へぇ〜って言いながら聞いてきた本人は興味も無さそうに手に持っていたスポーツドリンクを飲んでいた。
これが、彼の長所でもあり短所でもある。
興味のあることには一直線だが、ないことにはてんで興味を示さないのである。
そう考えると、よく僕はこの1年飽きられなかったなと思う。
同じ部活ではないし、彼の行動を盛り上げるわけでもなく、どちらかといえば盛り下げる僕。
それなのに、部活が休みの日や土日なんかにも遊びに行こうと連絡が来るのは僕としては不思議でならなかった。
「…なあ真、今日の放課後時間あるか?」
今日の放課後か、特に予定はなかったはずだ。
ゲームも昨日徹夜したおかげで、無事クリアしたし、鈴からも何も言われてないので多分何もなかったはず。
「特にないけど、また何かするの?」
赤坂はよくぞ聴いてくれたと言わんばかりに顔を輝かせていた。
このパターンは久しぶりに無茶なことをするパターンだな。
1年一緒にいるとわかるのだが、彼が大抵何かしようとするときは大体満面の笑みを浮かべている。
「ああ、実はな今日の放課後こっくりさんをやろうと思ってな、お前以外には昨日連絡入れてOKだったから後はお前だけだったんだ」
「……赤坂、それ本気で言ってるの?」
「ああ、俺はいつだって本気だぜ。それで、真どうする?」
「赤坂、噂は知らないわけじゃないよな?この学校にいるんだし……」
「もちろんだ、あれだろこっくりさんを始めるとやっている人たち全員消えるってやつだろ?その噂が嘘だって事を証明しようと思ってな、ほらこの学校そういうの多いだろ?」
噂か、そうこの犬神高校には心霊系いわゆるオカルト系の噂話がたくさんある。
元々神社だった場所に学校を作ったせいか、生徒たちの間でそういう噂話が作られては消え、作られては消えが繰り返されている。
実際、僕たちも何度かそういうのを確かめに言ったことはあったがそれも全部ただの噂話だった。
放課後に理科室に女の子の幽霊が出るやら、夜プールに行くと水の中に引きずり込まれるやら、屋上のフェンスに腰掛けていると後ろから押されるといったどこにでもあるような噂ばっかりだった。
そんな中でも消えることなく残っているのがこのこっくりさんという噂である。
2年前にも噂を試して意識不明の重体になったみたいな話もあるくらい生々しい噂だ。
けどまぁ、これもただの噂だと僕は思う。
だって、2年前なら今3年生のはず、だがそんな体験をしたなんていう人がいるなんて聴いたこともない。
だから、結局これもただの噂だとこの時の僕は思っていた。
「わかった、いいよ。それで、何か用意するものとかある?あるなら買ってくるけど」
「いや大丈夫だ、全部俺が持ってきてるから、真は手順調べといてくれ」
「OKわかったよ、じゃあまた後で教室で」
「おう、またな真」
赤坂は小走りでグランドに戻っていった。
多分部活に戻るのだろう。
本当によくやるもんだなぁ。
僕は顔や腕にできた汗をタオルで拭いなら教室へ向かった。
「これじゃあ教室に着いても眠れないなぁ」
赤坂が何かやる時は道具や必要な物は自分で用意するくせに、どうやってやるのかは全部俺任せ。
まぁ、それもこの一年で慣れたかと言われれば慣れたけど、睡眠不足のこの時に限っては勘弁して欲しかった。
兎にも角にもとりあえず眠気をなんとかするためにコーヒを買いに先に自販機へと向かうことにした。
まだ日常です