紅月の下、世界は赤く染まる   作:夕闇

16 / 17
リン×ヤクモあり。苦手な人BACK。


裏2/2

 ニコラに姉離れされたミアは、気分が落ち込んだままだった。人の縁を繋ぐといっても伝手があるわけでもなく、弟分が不足した今ではやる気は起きない。何か画期的な案も思い浮かばず、今日も今日とて崩壊都市を当てもなく彷徨っていた。

 

 

「手当たりしだい人助けでもすればいいのかしらね……?」

 

 

 偽善のような気がして気が引ける。だからと、助ける対象を選べばいいのかというのも何か違う。いつもならニコラが何かしら言ってくれたのだが、答えてくれる人はいなかった。

 

 いい加減足も疲れ、途中で発見した道の崩れた公園のブランコに腰を掛ける。小さなヤドリギもあるが、何者かに散らされ、浄化作用はなさそうだった。

 

 

「八つ当たりなのかしら……? 瘴気が濃くなっちゃうんだし、傍迷惑な奴」

 

 

 近頃、転移に使えそうな小さなヤドリギが破壊されているのを時たま目にする。そのせいか、堕鬼の活動が活発になっており、安全そうな寝床を探すのに一苦労であった。

 

 もやもやとして、それを誤魔化すよう体を揺らしてブランコを揺する。

 

 血涙を譲ればいいのか、一緒に血涙を探せばいいのか、悩みを聞いて解決するのがいいのか、線引きが難しい。選択を誤ってしまえば、いいように扱われ、食い物にされるだけの者になってしまう。

 

 それに何よりも……

 

 

「……癪、なのよねぇ」

 

 

 これを機に何処かの組織に入るのもいいかもしれない。弟を守りながら生き抜いただけあって、腕には覚えがあるのだ。そこで自慢できるお姉ちゃんになればいい。

 

 そう思っていると、崖を挟んで向かい側にある寂れた立体駐車場にて、浄化マスクをしていない女性の姿が目についた。若く、何からか逃げているようだ。

 

 ブランコから離れ、原因は何かと崖の端に寄り、辺りを探る。目を凝らせば、離れた位置に吸血鬼達がおり、若い女性を追跡するようにして追っているのが見えた。

 

 

「もしかして人間? 珍しいわね」

 

 

 施設にいた頃は日常的に目にしていたものだが、保護区の外では会うこともなかった。あのままでは若い女性は捕まるだろう。合流しようにも、崖を挟んで対岸にいるミアでは間に合わない。

 

 しかし、都合よく吸血鬼達の装備は近接武器だ。銃剣は見当たらない。加えて、自身の冥血は十分である。ミアに地の理があり、ミア側の標高は高く相手を見下ろしている。現状、向こうは手だしできない地形である。

 

 

「人間なんて、大抵は施設から逃げ出した脱走者で厄介事なんだけどね。それはそれとして、自然と吸血鬼達に銃口を向けて狙いを定める私って案外馬鹿なのかも」

 

 

 賢く生きているつもりだった。なのに、弟から離れた途端にこれである。もうなるように成れだ。

 

 相手は追跡に夢中でミアには気づいていない、攻撃するなら今だ。ミアはブローディアのトリガーに指を添え、若い女性を探している吸血鬼達へ先制攻撃を仕掛けた。

 

 よく狙い、吸血鬼達の不意を突き、立体駐車場に辿り着いた者達を歓迎する。飛来した一発の銃弾が、4人いる内の1人の吸血鬼の足を貫いた。

 足を撃ち抜かれた吸血鬼は転倒し、地面とキスをする。

 

 ミアは軽く息を吐く。最近、背後から狙った狙撃を斬り捨てられただけに変な緊張をしていたのだ。無事に不意打ちが成功したことで、ミアはちょっと自信を取り戻した。

 ただ、呟いたりしない。発見される前に次の狙撃ポイントへ移動しなければならないからだ。

 

 対して、不意を打たれ、突如仲間が倒れたことに騒然とする吸血鬼達。慌てて遮蔽物に身を隠し、倒れた仲間も引きずりこむ。射撃線の進行方向を予測し対岸へと視線を移すが、ミアは既に撤退した後だった。

 

 ミアは真横にある崖から突き出た高層建築の建物へと飛び移り、階段を駆け上がって最上階のフロアの壁に張り付いた。

 壁際の端から吹き抜けの窓へとわずかに顔を出し、ミアは吸血鬼達がその場に縫い付けられたのを視認した。

 

 状況が硬直し、互いに睨み合う。けれども、ミアにとって好都合だった。それだけ女性が逃げる時間を稼げるからだ。

 

 次第に経過していく時間に吸血鬼の一人が痺れを切らし、立体駐車場から離れようとする。ミアはそれをチャンスとばかりに吹き抜けの窓から姿を見せ、一人抜け出そうとした吸血鬼の右足を撃ち抜いた。

 これで二人目の機動力を奪った。姿と居場所を察知されてしまったが、敵は残り半数。十分な成果である。

 

 ミアは窓から離れ、最屋のフロアから下層のフロアまで一気に駆け下り、2階の窓から飛び降りる。下はこちら側とあちら側の対岸同士を繋ぐ、一本の細道だ。

 地面に着地したミアは、前に前転して着地後の硬直を許さず、細道を駆ける。

 

 ミアは速度を緩め、ブラッドヴェイルを展開すると、錬血で創造した地雷の複数をスティンガー型に巻きつけ、立体駐車場の中へ投げ入れた。

 

 残った吸血鬼の内、片方が皆を庇うよう前に進み、大剣を盾に守りを固める。だが、地雷の効果は爆発でなく、パラライズ。迸る電流が筋肉を萎縮させ、大剣を持った吸血鬼を痺れさせた。

 

 あと残るは傲慢そうな吸血鬼だけである。

 

 傲慢そうな男の吸血鬼はショートソードを片手に、立体駐車場から飛び降り、ミアの前へと躍り出た。

 

 

「なんなんだよ、テメェはっ!?」

 

「家族に姉離れされて怒り狂った姉よ! 大人しく八つ当たりされなさいっ!!」

 

「はぁぁぁあああ!?? 余所でやれやっ!!!」 

 

 

 意味がわかっても、訳のわからない珍妙な事案で少女に敵意剥き出しにされ、たまったものではないと傲慢そうな吸血鬼は心から叫んだ。

 

 一対一。対峙した二人であるが、戦いは長く続かない。実は保護区での生活が長く、このたび保護区から追い出された傲慢そうな吸血鬼は体も感も鈍っていた。彼を慕い、ついてきた仲間も同様である。

 一方で、現役であり、ニコラのために幾度となく危険に身を投じたミア。複数対一でも負けたことはなかった。

 

 少女と大の大人に単純な力の差はある。しかし、傲慢そうな吸血鬼は接近戦で挑んだのにも関わらず、技術でミアに翻弄され、フェイントに掛かり、足を撃ち抜かれ転倒してしまった。他の仲間は今だパラライズで痺れているか、足に怪我を負った者だけだ。勝敗は決した。

 

 

「すっきり……!」

 

「テメェはな!」

 

 

 傲慢そうな吸血鬼は悔しそうにミアを睨む。ミアは「弱い者虐めするからよ」と言って麻布から血涙を一つ取り出し、残りは袋ごと地面に置いた。

 

 

「あの子は私が貰う、これはその手切れ金みたいなものよ。少ないとは言わないわよね?」

 

「はんっ、姉離れなんだの言っといて人間狙いだったんじゃねーか」

 

「返事が聞きたいんだけど?」

 

「ちっ、こんなところで死ぬわけにはいかねぇ。それに子供一人倒せないようじゃあ、どっかのグループにあの人間を奪われるわな。ほら、見つかるかもわからねえ奴を連れてさっさと行けっ」

 

 

 確約ではないが、折れた態度の吸血鬼に満足したミア。すぐさま方向転換し、傲慢な吸血鬼達に替わって、若い女性を追った。

 

 その後、ミアは若い女性を見つけ自殺しようとする場面を止めたり、保護したものの、お腹を空かせた若い女性のため食料を探したりと。

 再び保護者になったことで組織に加入する意欲は薄まり、若い女性の居場所を見つけるまでは彼女と共に生活することに、ミアは決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 分身のニコラは本物のニコラがいる雪山に到着していた。今となっては懐かしい感触である。ここに辿り着くまでに力を使い、ただでさえ儚い命を一層削った。されど、もう旅も終わりだ。

 

 棺の近くに見慣れない女性がおり驚いたものだが、軽く挨拶を済ませ、棺の中へと足を踏み入れる。「久しぶり、もう一人の僕」と呼びかけると、本物のニコラは何故ここにいるのかといった面持ちだった。

 

 本物に話すことが沢山ある。自身は持って数日の命だ。消えるその前にすべてを話すことができればいいなと分身ニコラは思った。最後は本物の自分に記憶を譲って終わりだ。

 自分の終わりが迫っているというのに、分身のニコラはどこか満足していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤクモは戦場の中、瓦礫を横切り、不自然な直線上の道をただ真っ直ぐに歩いていた。街は赤く燃え、どこからともなく銃声が辺り一帯に轟いている。

 走ろうとしても走れず、止まろうとしても止まれない。体の自由が利かず、マリオネットのように強制的に歩かされた。

 

 道中、道に佇む金色の堕鬼がいた。金色の狩人である。

 

 武器を持たないヤクモは逃げ出そうとするが、相変わらず己の意志では指一本動かせない。逃げ出したいのに、逃げ出せない。

 けれども、金色の狩人は襲おうともせず、立っているだけであった。

 

 顔が判別できるほどに距離が縮まると、金色の狩人は砂のように崩れ、中から一人の男が現れた。

 それはヤクモの弟分であるミゲルだった。

 

 ミゲルはヤクモに一言謝ると、眠るように目を閉じ、崩れて消える。声を掛ける間もない。ヤクモは得も言えぬ心境で先へ進まされる。

 

 続く道の中、今度は先ほどとは違う人物が道中佇んでいた。鬼フェイスのプレートメイルを着用した者だ。ヤクモは知らないがミドウの実験体である。

 その実験体も金色の狩人と同じく崩れ、中から一人の男が現れる。ヤクモやミゲルと同様、ミドウに孤児として引き取られた弟分だった。

 

 その弟分も一言謝罪し、眠りにつくように崩れて消えた。ミゲルと同じく大切な弟分なのに手も届かず消えてゆく様が心苦しかった。

 

 その後も、新たな堕鬼や実験体が現れては、中からヤクモが探している弟分・妹分達が現われ、眠りにつくように消えてゆく。

 まるで、もう会うことはできないと言われているようだった。

 

 何処かで生きていて欲しい。そう思っていた人物がほぼ全員目の前に姿を現し、皆一様に眠りについていく。ヤクモはそれがどのような意味を持つのか察するものがあった。だからこそ、強制される歩みが止まって欲しかった。

 

 ようやく足が止まったのは、ペレ―帽を被り軍事服風の格好をした妹分の前だった。一番ヤクモに懐いていたエミリーだ。

 エミリーがヤクモに近づき、片手で愛おしそうにヤクモの頬に触れ、双眸を潤ませる。

 

 ヤクモは声を発したかった。どうしたのかと声を掛け、妹分の不安を解消したかった。けれど、エミリーはヤクモを安心させるように静かに笑うと、眠りについてしまった。

 

 ヤクモは固く拳を握る。

 

 気がつけば、束縛から解放されたかのように己の意志で体を動かせた。

 しかし、守りたかった大切な者達はもういない。自身の感情の行き場がなくなったヤクモは、ただ一人、暗くなってゆく街の真ん中で慟哭をする。

 

 そして、そこでヤクモは目が覚めた。場所はベッドの上であり、外はまだ真夜中だった。

 

 

「夢か……?」

 

 

 体が気怠いがベッドから体を起こす。質感ある夢見であった。沈黙した室内が孤独感を掻き立て、嫌な感じだ。

 

 何かしていないと不安で、ヤクモは引き出しからエミリーとミゲルと自身が一緒に写った一枚の写真を取り出す。いつもなら心温まる写真だ。

 けれど、その写真に水滴が落ちた。

 

 

「おかしいな、こんな夜は一度や二度じゃなかったはずだ。なのに、なんで落ち着いてくれないんだよ……涙が全然止まんねえ……」

 

 

 この日、ヤクモは眠れぬ夜を過ごす。

 

 それからしばらく経過し、魔改装された教会の内部にて。BARの客席でヤクモは私物である酒類をハイペースで空にしていた。普段ならば、このような真似はおそろしく勿体無さ過ぎて絶対しない。恐らく今回が最初で最後だ。

 

 眠れぬ夜を過ごしてからというもの、寝たのか寝ていないのかわからない浅い眠りの日々が続いた。体力が回復せず、朝を迎えると悲しみが一層深くなる。

 また、睡眠が浅ければ思考が低下し、判断力も鈍る。ヤクモはルイの仲間の中で主戦力であるのだが、体調が安定するまでは自宅待機となった。

 

 現在、まとめ役であるルイはいない。皆の血の飢えをなくすため、いつもの血涙の源流探索に出ているところだ。他に、秘密裏に協力してくれるサーベラス隊員デイビスも仕事で忙しく、最近顔を見せてない。協会にいるのは商売人ココと装備技師リンだけである。

 

 リンが武具屋のカウンターから抜け出し閉店の看板を置いてヤクモの隣へと座る。いつも兄貴分として頼もしいヤクモが自棄になっている姿を黙って見ていられなかった。

 

 

「少し前から様子が変だったけど、ヤケ酒なんてらしくないね。どうしちゃったの?」

 

「そう、だなぁ……大切な物が両手から零れ落ちちまった。そんな気分なんだ。ああしていれば良かったかもしれない。こうしていれば良かったかもしれない。日常の中、突然不安に襲われる。よくある話さ」

 

「愚痴なら聞くよ?」

 

「リンまで辛気臭くなることはねえって。明日になれば、いつもの俺に戻る。きっとな」

 

「だったら、隣で一緒に飲むくらいならいいよね」

 

「へぇ、意外だな。飲めるのか? てか、リンの酒置いてあったっけか?」

 

「隠してた訳じゃないけど、眠れない夜にはちょっとね。ココさんに都合してもらったの」

 

 

 リンはBARから蒸留酒と塩、柑橘類を取り出し、席を整えてヤクモの隣に座った。

 

 

「ん、なんだそのラベル。見たことがないな、少し貰ってもいいか?」

 

 

 琥珀色の液体は見慣れているが、知らない銘柄に興味が湧く。

 

 

「いいよ。そのグラスに入っているもの、空にして」

 

「おう」

 

 

 ヤクモはコップの中身を飲み干し、リン差し出した。リンは蒸留酒の瓶を持ち、ヤクモのグラスへと傾ける。グラスに少量ほど入り、ヤクモはありがとなと言って、貰った琥珀色の液体に口をつけた。

 

 

「……少しキツイな。だが飲みやすい。キンキンに冷やされたのを抜きにしてもな。俺が知るテキーラの中でも度数がだんとつだ」

 

「密造酒らしいね」

 

「あー、道理で度数が高い訳だ。でも、いいな、これ。酔うにはもってこいだ」

 

「うん」

 

 

 リンは微笑んだ。

 

 それからはヤクモとリンの酒盛りが行われる。

 

 初めは呟く程度に日常の談話を肴としていたのだが、口が緩くなり、次第に深い話に切り替わっていく。

 ヤクモはエミリーとミゲル。妹分や弟分達の暗くも大切な思い出話を。リンは戦わなくなった理由、うっすらとしか覚えていない夜叉と呼ばれた頃の話を。

 

 リンの仲間を裏切りたくないから戦場に出ない。ヤクモはリンの言葉を否定することなく受け入れる。リンはつい甘え、強い言葉を使ってしまうがヤクモは同調した。

 いつしか立ち位置が逆転し、リンの鬱憤をヤクモが聞いていた。口にするのもはばかられる話であったが、それでも二人は楽しそうだった。

 

 お互い知らない身内話を披露をし、話が進む度に主にヤクモの酒が消費されていく。けれど、ヤクモは構わず、酒瓶が空になれば新しい酒を開けていった。

 

 飲みすぎて、二人の判断がだいぶ鈍くなる。ヤクモは個人的に好きな酒米の入ったグラスをリンに勧め、リンは素直に受け口をつけた。

 リンは飲みながら関節キスだと気づくが、呑気にどうしたと問うヤクモにリンはその場を誤魔化す。リンは酒で赤らんだのか、意識をして赤らんだのかわからないままグラスをヤクモに返した。

 

 酒もなくなり、思いつく話もなくなった。お開きである。ヤクモが後で後悔するだろう空になった酒瓶が周りに置き場なく置かれていた。

 

 リンはすっかり酩酊し、赤い顔のまま部屋で休もうと椅子から離れる。だが、酔いも手伝ってバランスを崩し、よろめいた。

 そこへヤクモが割り込んで、がたいのいい体でリンをしっかりと支える。

 

 酩酊状態のリンは小首を傾げ、わけのわからない様子であった。しかも何を思ったのか、ヤクモに寄りかかり子猫のように甘えた。

 ヤクモは困った顔でリンに体を貸し、移動を手伝う。

 

 二人で寝室に入り、ヤクモはリンを寝かしつけようとする。けれど、ふわふわした意識のリンは今の温もりを手放したくなかった。リンから離れようとするヤクモに抱きついたまま離れない。

 こうなってしまうと、物理的にも無理やり突き放すのは難しい。何せリンはかつて軍に所属し、味方に恐れられるほどの実力者であったのだ。現在では裏方であるが、体格差などものともしない。

 

 リンはヤクモが優しく寝かしつけようとしている内に絡みつき、ベッドの中へと引き釣り込んでしまった。

 

 一方のココ。酒盛りする前からいたのだが蚊帳の外である。ヤクモとリンが寝室を通るのにココの前を横切ったはずなのだが、二人の眼中には映らなかったようだ。

 

 ココは呆れ、ヤクモとリンが残した酒瓶達の後片付けをしてやる。グラスなどを洗い、BARの整理が終わって、煙草に火をつけると、寝室から耳にしたことのない甘えた声が聞えた。まさかの濡れた声音にココは体を硬直させる。

 

 ココはまさかと寝室へ目を向けた。が、まだ何も聞こえない。

 

 やはり自分の気のせいかと、興味を失いかけた矢先。耳を澄ます必要もなく、静かな教会の中で女の濡れた声が断続的に聞こえてきた。

 自分の耳に疑ってすまなかったと謝る。寝室からBARまでの距離はそれなりだ。ならば、近づかない方が精神衛生的によさそうだった。

 

 

「はぁ、寝室の壁は薄い伝えてやらないとね。改装の見積書はルイでいいか」

 

 

 突然の経費がルイを襲う。しかしながら、ココはヤクモとリンが説得してくれると信じていた。リンに恋愛経験がないのは知っている。まさかヤクモが役得だけ堪能することはないだろう。

 

 

「浮ついた話が一つもなかったんだ、丁度いいかもね。大事な者ができれば、それだけ生きようとするだろう」

 

 

 だからといって、生々しい営みを聞くつもりもない。ココは二人に気を使って教会の外へ出た。一服の続きを行い、煙草を吹かす。

 

 後日、肌の色艶のいいリンと若干うろたえつつも妙にリンに優しいヤクモ。それからココから渡された改装見積もりに戸惑うルイと、いい取引に期待するココの姿があった。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告