提督「あぁ、聞かせて欲しい。」
提督は妖精さんを撫でる手を止め、私達を見つめる。
正直、話すのは怖い。
海軍、それこそ民間からも『英雄』と呼ばれ特進している人間をこれから貶すのだ。
もし、この提督も『英雄』と心を同じにする人ならば私達は解体されるかもしれない。
そう思うと恐怖で体が硬くなる。
でも、妖精さんがあそこまで懐いている提督を私達は他に知らない。彼女達の幸せそうな笑顔と提督を信頼している態度を見ていたら何故か、話してみたくなった。
そして、少しだけ……羨ましい、と、思えた。
鳳翔「夕張さん…」
そう言って私の手を鳳翔さんが握ってくれる。
恐怖で硬くなった体が少しほぐれたようだ。
私は、深呼吸を2、3回繰り返し提督を見つめ話始める。
夕張「提督にお話したいのは『英雄』様が行ってきた艦隊運営と私達の望みです。」
提督は黙って頷き続きを促す。
夕張「まず、艦隊運営からお話させて頂きます。呉鎮守府の主力は戦艦、空母のみです。重巡洋艦は『英雄』様の接待係、これは接待と称してセクハラ行為がされてました。
軽巡洋艦、駆逐艦は揃って主力艦の弾除け……盾として扱われ、何隻も轟沈していきました。勿論、『英雄』様の命令で報告書は書き換えられ轟沈なんて情報は記載されていませんが…。これが『英雄』様の艦隊運営です。これを聞いて提督はどう思いますか?」
提督「待て、なぜその事を憲兵や大本営、周囲の鎮守府に助けを求めな「求めたにきまってるじゃないですか!!!」
提督の言葉を遮ってまで私は叫んだ。
提督は驚いているようだが私も驚いている。
でも、止まらなかった。涙が出てくるのを無視して話を続ける。
夕張「何度も何度も、助けてって、『英雄』なんかじゃない、大戦果だって私達の、犠牲の上にあるんだって。
でも、大本営も周りの鎮守府も、『英雄』がそんなことするはず無いの一点張りで、憲兵は『英雄』様と一緒になって、重巡洋艦に、接待させたって。」
そこまで言って涙で滲む視界を袖で拭い提督を見る。
提督は「そう、か…。」とだけ答えて何かを考えているように見える。
隣を見ると鳳翔さんも手で口元を隠して泣いていた。
提督「まずは、夕張、話してくれてありがとう。」
唐突な提督の言葉に私は驚いた。
しかもどう答えればいいか分からず黙ってしまう。
なにも答えない私に気にすること無く提督は続ける。
提督「…苦しかったよな。辛かったよな。俺なんかが気持ちが分かる、なんて言えない程の事だ。それでも苦しんで、もがいて、耐えてきたという事実だけは分かってやれる。」
また、涙が溢れてくる。
そうだ、提督に分かるわけがない。
軽々しく分かるなんて言って欲しくない、でも、認めて欲しかった。
知って欲しかった。
私達の苦しみを、必死に生きようともがいたことを、そして誰も味方がいないと知っても耐えてきたことを。
提督「それで?」
提督の言葉に「え?」と呆けてしまう。
提督「ここからが大事なことだろう。夕張達の望みを教えて欲しい。」
そうだ、提督が私達の苦しみを認めてくれたことで泣いちゃったけど、言いたいことはここからが重要だ。
涙をこらえて提督と対峙する。
夕張「まず、弾除けとしての艦隊運営をしないて欲しいです」
提督「ああ。」
夕張「艦娘への接待…セクハラ行為の禁止をお願いします。」
提督「当然だな」
夕張「駆逐艦や軽巡洋艦にもちゃんと個性や性能に目を向けて欲しいです。」
提督「勿論だ。」
夕張「あとは、えと、その……」
提督「…言うだけ、言ってみたらどうだ?」
夕張「……私達を…助けて、ください…。」
提督「了解した、私の持てる力すべてを君らの為に使うと約束しよう。」
提督は私の話を聞いて、望みを、承認してくれた。
それが安心となってもう、涙が止められない。
決壊してしまった私は座り込んでとにかく泣いた。
鳳翔さんが泣きながら私を抱き締めてくれる。
初めて、負の感情以外で泣いている私達の耳に突然聞こえてきたのは満足げな妖精さんの声だった。
「ゲフゥ」
「タベスギター」
「ヤリマシタ」
「モウハイラナイ」
「ネムクナッテキター」
妖精さんがまったく気にせずシュークリームを完食していたようだ……私達の分まで。
それに気づいた提督が「あ、こら。食べ過ぎだろう。」と苦笑いしている光景に私達も口角が上がっていた。
久々に本当に少しだが、笑えた。
あとがき
サブ情報
『英雄』
・年齢34歳
・身長170㎝のダンディーな雰囲気
・何よりも自分の戦果を気にする人間
・階級は少将
提督(榊 柚紀)
・年齢24歳
・身長175㎝の細身の爽やかイケメン
・提督補佐時は忙しく髪を切る時間もなく伸ばしていたが提督着任時短髪に。
・階級は大佐
次回から行動開始です!(提督視点)
まだ艦娘二人しか出してないことにいまさら驚いていますがここから出していきます。
この艦娘出して欲しいとかあればコメントで頂けると嬉しいです。