呉の実情を知った。
『英雄』の愚行を知った。
なにより
鳳翔の涙を見た、夕張の慟哭を聞いた。
提督「さて、どうしたもんかねぇ。」
誰も居なくなった部屋で一人呟く声は、返ってくることなく空気に溶けて消える。
あのあと、夕張と鳳翔が泣き止むのを待ち、部屋に返した。勿論、所属艦娘への挨拶は夕食時にするとだけ話し、シュークリームは1人1つ持たせることも忘れていない。
そして、俺は鎮守府の主要施設を見て回り部屋に戻ってきたところだ。
とにかく、迅速に動きますか。
なにより、自分の周りの害虫を放置してやれるほど俺は優しくない。
俺はさっそく元帥に電話を掛ける。
元帥「…もしもし」
提督「…呉の真相を知った。」
元帥「どうだ?」
提督「報告書の偽装、艦娘への性的暴行及び軽巡や駆逐の弾除け運用等の不当な扱い。ギリギリ使える整備のされていない工廠に、掃除されてないドッグ。数えりゃいくらでもでてくるぞ。」
元帥「…どうにかできそうか?」
提督「やるしかねぇだろ」
元帥「フッ、そうだな。それで?私に何を手伝って欲しいんだ?」
提督「お、察しがいいな。」
元帥「お前がこの電話を使うときは私に動いて欲しい時だけだろう。」
提督「それもそうか……単刀直入に言う、この鎮守府所属の軍人全ての人事権を俺にくれ。」
元帥「…どういうことだ?」
提督「本来、提督の人事権は憲兵には及ばないだろ」
元帥「なるほどな、憲兵も黒か。」
提督「あぁ、全員では無いと思うが艦娘からすれば同じだろうな」
元帥「分かった、明日1日有効の臨時人事権をお前に託し、新しい憲兵団はこちらで手配する。」
提督「分かった。」
元帥「『英雄』や憲兵相手に使える証拠はあるのか?」
提督「…なんとかする。」
元帥「ならばいい、明日の昼頃書類と視察のための憲兵がそちらに行く。それまでにやってみせろ」
それだけ言うと元帥との電話は切れる。
提督「ったく、返事も待たねぇのかよ。」
これで準備の1つは完了だな。
まぁ、あとは証拠の確保だけだが、これが難しい。
現状の荒れた鎮守府を見せればある程度の管理不足の責任は、追及することができるだろうが、肝心の艦娘轟沈の偽装の証拠、憲兵団の調査報告書の不正、『英雄』との癒着の確かな証拠が欲しいところだ。
提督「こればかりは俺1人じゃどうにもならんよなぁ」
愚痴を溢したが手がない訳じゃない。
時計を見る。
18時か…。
夕食は19時を指定したし、まだ時間はあるな。
俺はとある場所に向かうことにした。
憲兵「お疲れ様です、提督殿」
提督「あぁ、皆もご苦労。」
そう、憲兵団の詰所だ。
憲兵「して、本日は何用で?」
提督「あぁ、『英雄』殿からここを引き継いだ際に君達とも懇意にしてくれと伺ってな。」
憲兵「はて?なんのことでしょうか?」
提督「フン、とぼけなくともよい。私は単純に中古を使いたくないのでな。情報共有して欲しいということだ。」
憲兵「……なるほど。」
提督「あぁ。重巡には私も目をつけていたが、私は潔癖だからな。君達にあてがった者以外を使いたいのさ」
憲兵「…提督様もこちら側でしたか!分かりました、我々に『英雄』様があてがった物をお伝えします。」
提督「頼む。それと、分かる範囲でいいから『英雄』殿専用として使われていた者も教えて欲しい」
憲兵「提督殿は徹底して潔癖のご様子ですね。」
提督「仕方がないだろう。軽巡や駆逐のような弾除け艦なぞ興味も湧かん。何隻沈もうが知ったことではないしな。」
憲兵「ハハハッ、間違いありませんな!この間も軽巡洋艦の『龍田』が『英雄』様に逆らって難関海域に1人で遠征に行かせたきりまだ帰ってきてないですからな」
提督「そうか、『英雄』殿に逆らうとは馬鹿な奴が居たもんだな」
憲兵「提督殿、お待たせしました。こちらが我々が使った物に関するデータでございます。」
提督「ご苦労。ちなみに写真や映像などのデータは無いのか?」
憲兵「ありますが、何故そのようなものを?」
提督「上官の性的趣味に口を出す気かな?」
憲兵「なるほど、それは失礼致しました。こちらをどうぞ。」
提督「うむ、今日は楽しめそうだ。それでは失礼する。」
データと映像を貰い、詰所を後にする。
勿論、今の会話は完璧に録音してあるから憲兵共は終わりだろう。
あとは、…艦娘からの言葉が欲しいな。
実際に被害にあった、強要された、同意の上ではないといった明確な否定があれば助かるな。
「………………………………最低だね」
木陰から誰かの呟きが聞こえた気がした。
提督「…………気のせいか。」
あんな害虫共に話を合わせてゴミ野郎を演じたんだ。
きっと罪悪感で幻聴でも聞こえたんだろう。
提督「夕食に向かうか。」
俺は鎮守府の食堂に向かって歩き出した。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
提督が去った後の憲兵の詰所
憲兵A「今回の提督は他人の行為を見たいなんてとんだ変態だな!」
憲兵B「まぁまぁ、俺たちは安定して甘い汁を吸わせてもらうだけだろ」
憲兵C「確かに実際に吸わせてもらってるしな、艦娘からよぉ」
憲兵B「そっちの意味じゃねぇよ、違わないけど。」
憲兵A,B,C「「「アハハハハハ!」」」
憲兵達は自身の終わりを告げる刻が近づいていることなど誰も知らない。
あとがき
前回の投稿から日にちが少したってしまいました、申し訳ないです!
今回、名前だけの出演の『龍田』は個人的に好きなキャラクターで、あのドSな感じなのに相手から来ると途端にあたふたしちゃうみたいな感じまでセットで妄想している主でございます(変態)
さて、物語の最後では誰が提督と憲兵の会話を聞いていたのか、本当に幻聴なのか。
まだまだブラック鎮守府の闇を簡単には払いきれない感じのお話が続きますが最終的にはハッピーエンドを予定しているのでご安心ください。
どの艦娘を出演させるかは全然決まってないので引き続き希望などございましたらコメントで教えて下さい!