提督「二人とも、すまなかったな。」
あれから、執務室につくなり俺は頭を下げた。
勿論、何の説明もなく二人をあんな茶番に付き合わせたことだ。
鳳翔「て、提督。頭をお上げください!!それよりも、艤装を提督に向けてしまい申し訳ございませんでした。」
鳳翔がそう言って頭を下げる。
二人して謝罪を繰り返していると、困った顔をしながら夕張が止めに入った。
夕張「提督も鳳翔さんも謝りすぎですよー!それよりもさ、提督、説明してくださるんですよね?」
夕張のその言葉に俺は「勿論だ」と頷く。
提督「まず、俺がこの鎮守府を再建するために元帥より異動命令を受けたということは理解して欲しい。」
鳳翔 夕張 「「はい」」
提督「その上で二人から話を聞かせて貰い把握はしたのだがな証拠が必要でな。」
俺の説明を聞いている二人は『証拠』という言葉に表情を暗くする。
それもそうだろう、憲兵が俺を『英雄』と繋がってる提督と信じてくれたから証拠は手に入ったけど艦娘達じゃ録音も映像を手にすることさえできないだろうな。
そんな機材を用意するお金も『英雄』に奪われていたのだろうから。
提督「夕張、鳳翔。どうか安心して欲しい。」
鳳翔「え?」
夕張「どういうことですか?」
提督「既に、元帥に話は通してあるし、物的証拠や状況証拠も抑えてある。」
二人は「え?」というと顔を見合わせている。
どうやら理解が追い付いていないようだ。
二人の頭を撫でながら心を込めて話をする。
提督「だから二人に言っただろう?私の持てる力を全て使うとな。」
その言葉に二人は安心してくれたのだろう、笑顔を向けてくれた。
鳳翔「では、提督に全てお任せします。協力が必要な時はお声がけくださいね。」
夕張「私も協力しますよ!」
提督「助かる、早速だがもうすぐ22時になるな。食堂へ行って飯を作るぞ。」
「「はい!」」
三人で食堂に着くと当然だが他に誰もいないことを確認した。
さて、さっさと始めますか。
提督「夕張、机や椅子が壊れかかっている。修理を頼む。皆の食事スペースを綺麗にしてくれ。」
夕張「はいっ!」
夕張が元気の良い返事をしていつの間に着替えたのか作業着姿で工具を持って部屋に入っていった。
提督「鳳翔は食事を作るのを手伝ってくれ。今回は急ぎだからな。米を炊いて欲しい。おかずは私が担当しよう。」
鳳翔「一時間であの人数をとなるとメニューはなんでしょうか?」
提督「チーズリゾットだ。楽だし。何より私が作り慣れている。男の作る武骨な飯だがそこは許して欲しいな。」
鳳翔「ちーずりぞっとですか。申し訳ございません、私の知らない料理です。」
提督「そりゃあ、ここでは料理を学ぶ機会すらないからな。気にするな、それより米は任せるぞ。」
鳳翔「はい!」
鳳翔が米を炊く間に細かく切った野菜や鶏肉をバターで炒め、柔らかくなったところで牛乳を鍋に投入。
どれもこれも量が量なので米を炊くのと同時に始めても問題ないだろう。
実際、米が炊け、蒸らしてる間にようやく次に進めた。
牛乳が馴染むとコンソメを入れ、蒸らした米を鍋にいれ、主役のチーズと絡ませる。
後は味見をしながら塩コショウで味を整えて終わりだ。
本当に時短に武骨に作ってるからプロのリゾットとかとは比べるべきではないが戦時中に食べるような飯よりは遥かにマシだろう。
食堂にはチーズリゾットの少し焦げのある香ばしい匂いが充満し鳳翔と夕張が興味深げに鍋に近づいてくる。
鳳翔「これが、ちーずりぞっと、ですか」
夕張「美味しそうな匂いですね、これ本当に私達食べられるんですか?」
提督「あぁ、勿論だ。」
そう言って俺は一口分をすくいそれぞれに食べさせる。
二人とも「熱っ」と口をハフハフさせながら次第に表情が綻んでいく。
しまったな、冷まして食べさせてあげるべきだったなと一人反省していると鳳翔達から声が上がる。
鳳翔「これは……美味しいですね」
夕張「うん…美味しい…です、凄く。」
二人の声に涙声が混じっているが俺は気づかないふりをして話を始めた。
提督「夕張、食事スペースはどうだ?」
夕張「…はい、修理は終わって掃除は軽くなら終わりです。本格的に掃除するのはちょっと間に合わなくて…。」
提督「充分だ、ありがとう。」
そんな話をしている間に23時になりそうだ。
5分前になると艦娘達がどんどん入室してきた。
入室した艦娘は俺が既に部屋にいることに驚き、敬礼したあと元から決まっているのであろう位置に整列を始める。
そして、23時ちょうどになると俺の後ろに控えている鳳翔と夕張を除く全艦娘が食堂に集まった。
代表して扶桑が声を上げる。
扶桑「提督様、お待たせしてしまい申し訳ございません。呉鎮守府艦娘集合完了致しました。」
提督「ご苦労。では、改めて本日より呉鎮守府を預かることになった榊 柚希だ。よろしく頼む。」
扶桑の言葉を受け、もう一度挨拶をしてみたが返ってきたのは沈みきった目で見つめられながらの拍手だった。
…やめておこう、もう食事に移った方がいいな。
そう判断し俺は口を開く。
提督「では、駆逐艦から一人ずつ今から私がいる場所に来るように。」
俺のその言葉で動いたのは駆逐艦ではなく、扶桑と重巡洋艦だった。
扶桑「提督様、どうか幼い駆逐艦や軽巡洋艦は見逃して頂けないでしょうか?」
愛宕「私達はどうなっても構いませんから」
扶桑・愛宕「どうかご慈悲を…!!」
そう言って頭を下げる二人、そこでようやく気づく。
身体検査とか言ってしまってるし、警戒されてるのは当然だ。だが、人間に傷つけられた怪我の具合等は一人一人確認しなければならないのも事実だしな。
ここは、心を鬼にするか。
提督「これは提督命令だ、私は駆逐艦から順に来いと話をしたはずだ。これは命令であり意見具申に耳を貸す必要性は感じないな。」
そう言うと二人は顔を下に向けて「はい…」とだけ呟く。
なんというか、申し訳ない気持ちでいっぱいだが今まともに説明しても理解されないだろうし明日が終わるまでは皆の気持ちも整理つかないだろう。
そう考え、強制的に夜中の身体検査(食事つき)を開始した。
あとがき
書けるときに書くとなかなか定期更新できず申し訳ないです!!
仕事の合間だと色々追い付かないあたり自分の本職での力も勉強中だなとひしひし感じています。
今回は鳳翔と夕張をメインに食事の準備会でした!
次回は扶桑、愛宕との絡み開始、そして???の声が明らかになるのでお楽しみ頂けると幸いです。
提督の身体検査本当にやるのかよ、って思われた方には安心してください、口頭でのカウンセリング、本人が見せられる範囲での傷の写真撮影のことを言ってるので意味深なものではありません、ご安心下さいませ。