明日方舟 短編集 作:すきゃーいふれあ
、これは彼女たちがロドスに出会う前の話。
彼女たちの所属する組織の名前はブラックスチールワールドワイド。略称はB.S.W。国際的な警備会社で民間警備コンサルタント会社。主に要人警護や拠点防衛、護送などを担当する警備会社と体を打ってはいるが実態は派遣する傭兵のような組織だ。
それに参画するメンバーには…二人の女性がいた。
「…フランカ、目標は?」
「無事逃げたみたいね…でもこのまま追うのを許せばすぐに追いつかれるかも。」
瓦礫に身を隠し、拳銃のマガジンを入れ替えている盾を持った女性…リスカムは瓦礫の向こう側の様子を伺いながら相方である彼女に問うた。
そんなリスカムの言葉に返事をして退路を見た女性…フランカはレイピアを構えて再び出れるようにと構えた。
「つまり私たちがここで足止めするしかないと…」
「そういうこと。あたしたちが退いちゃったらあのお偉いさん死んじゃうから強制的に任務失敗。良くて減給、最悪解雇ってところ。」
「どちらにせよ私たちがやるべきことは一つ。フランカ、やりますよ。」
このような状況になった経緯は…まずBSWの元に一つの依頼が入った。それはなんてことのない要人警護なのだが、それがクルビアの政権幹部であり政敵に狙われているとのことらしく国家の護衛だけでなくBSWを雇い警備を万全にした。
そこで保証員として派遣されてきたのがリスカムとフランカ率いる小隊。彼女たちはSPと協力しその要人の護衛を行っていたが、その幹部が視察中のビルが突如として崩落。敵対している政治家が雇った武装勢力が爆弾を仕掛け、崩落させ、そして強襲した。
SPは崩落で全滅、BSWの小隊はたまたま政権幹部の近くに居たため無事だった彼を保護し、リスカム、フランカ以外のメンバーは彼を連れて撤退していった。そして残った彼女たちはというと撤退戦のためのしんがり、つまり囮になったのだった。
ここまでかなり交戦し多くの敵を倒してきたはずだがそれでもまだ止まらない。リスカムとフランカは一時退避して現状を確認していた。
「戦術はいつも通りに行きます。私が受けます。貴方は遊撃を。」
「戦術っていうよりただのコンビネーションよねそれ。」
「…」
こんな状況でも軽口の絶えないフランカにリスカムはもはや逆に安心感を覚えた。
「…5秒数えた後に私が飛び出します。表で引き受けているうちに側面は背後が任せました。」
リスカムは彼女の軽口を無視して、告げた。フランカも渋々承知し、己の獲物である剣を構えた。
「1…2…」
リスカムが飛び出る構えを作る。
「3…4…」
フランカも全力で走るように構えて。
「5!」
カウントと同時にリスカムが転がり、盾を構えて拳銃を発砲する。今の今までにじり寄って来た敵に牽制し、一人の脳天を打ち貫いた。
彼女が姿を現したことで敵方も攻勢に移り、戦闘員が押し寄せてくる。
飛んで来る矢を盾で弾き、自身は盾を構えながら相手の弓手を撃つ。たとえ当たらなくとも銃弾が真上を飛ぶという事は相手の弓兵方にもプレッシャーを与える。
近接戦闘員がリスカムの周囲を包囲するようにじりじりとにじり寄ってくる。リスカムも拳銃で牽制こそしているが数が如何せん多い。
剣を構えた敵が側面から襲い掛かる。
彼女は盾でそれを受け止め、そのまま力強く弾く。
怯んだ瞬間に敵の腹部に銃弾を撃ち込み戦闘不能にさせる。
更に彼女の隙を狙って今度は長槍を持った戦闘員が襲い掛かる。
すんでの瞬間で彼女は体を躱し、槍の一突きを避けた。そしてそのままスライディングの要領で滑り、戦闘員を転ばせる。地面ですれ違った瞬間に頭部に一発、腹部に一発銃弾を叩き込み、槍の戦闘員を絶命させる。マガジンを引き抜き、それを思い切り、襲い掛かって来ていた斧の戦闘員に投げつけ顔に直撃させる。顔に鉄の塊がぶつかり悶えている隙にリロード。そして怯んでいる斧男に盾で突貫し、その場に倒し、そのまま胸を踏みつけ気絶させる。
再び矢が降ってくる。盾で防ぐが後ろが無防備になり、そこの隙を突かれて後ろから襲い掛かられた…が
「油断禁物ってね。」
強襲した敵たちが一刀の元に斬り伏せられた。
「…フランカ。」
「まだ油断しないで。これからも来る。」
「…油断なんてしてませんよ。」
リスカムの言うとおり彼女はすぐに銃を構えて向かってきた敵を射殺した。そしてリスカムとフランカが背中合わせになった。
「結局こうなるんですね。」
「優等生サマは不満かもしれないけれど今はあたしで満足してね。」
「…こんな時までふざけないでください。…それに不満なんてありませんよ。貴方になら私の背中を任せれます。」
「…きゅ、急に素直にならないでよ。なんて言ったらいいか分からないじゃない。」
フランカの声音が困惑しているのが分かった。ただしここは戦場。そんなことを気にしている暇はない。そして彼女は銃と盾を構えた。
「まとめて片付けますよ。フランカ。」
「りょーかい。行きましょうか、相棒さん?」
その言葉と共に二人は駆けだした。包囲していた戦闘員たちも彼女たちに向かって突っ込む。リスカムが盾で守りながら銃撃で向かって来る敵を蹴散らす。彼女が背中と地面を水平にするように屈んでその背中を滑るようにフランカが躍り出た。蹴りを入れて怯ませたのちに剣で斬る。そしてそのまま流れる動作で足払いをして空中に舞うように跳び、空中から一閃。周囲の敵を蹴散らす。着地の隙をリスカムがカバーする。フランカが着地した瞬間に降り注いできた矢を盾で弾き、フランカに突撃して来た剣を持った兵を盾で突き飛ばし、銃撃する。フランカが体勢を立て直したらリスカムは後ろに跳び、数発銃撃する。それぞれ腕、脚などに当たり怯んだところを前に飛び出たフランカが切り裂く。
リスカムが空になったマガジンを前に投擲し、フランカがそれを首をひねって躱す。フランカの前にいた大男の顔に直撃し怯む、怯んだ隙にフランカが大男に蹴りを入れて、足を崩し、その崩れている途中に大男に致命傷を与える。完全に絶命していなかったが奥から飛んできた銃弾によって命が絶たれる。再びリスカムとフランカが背中合わせなる。
「重装甲とか超こわーい。」
敵もしびれを切らしてきたのか重装部隊を投入して来た。
「…フランカ、決着をつけますよ。」
「同感、あたしもいい加減飽きて来たからね。」
彼女たちから発せられる雰囲気が変わった。重装部隊が彼女たちに襲い掛かる。フランカは身軽な己の身を使いひらりひらりと愚鈍な攻撃を躱していく。リスカムは重装兵の攻撃を盾で防ぎながらぎりぎりまで引き付ける。
そして互いに同時にアーツを発動した。重装兵たちは銃弾を弾く頑強な装甲を貫通していく衝撃に動揺を隠せない、リスカムたちが引き寄せた重装兵たちは悉く感電しその鋼鉄製の装備が皮肉なことなことに電導していった。そして雷鳴を放ち終わるころには彼女の目の前にいた重装兵は全て焼き焦げていた。
一方フランカは剣を振るった。重装兵たちは頑強な装甲で通りもしないと油断しタカを括っていたがそれは大間違い、バターのように鋼鉄の装備は溶けて引き裂かれた。そしてそのまま間を縫う様に走り回り鋼鉄を糸を切るかの如く全て斬り伏せた。
目に見えた勢力は全て全滅し、リスカムは反動で足を付いた、フランカも負荷がかかってなかったわけではなく少し遅い歩調でリスカムに近づいていた。
「…死ねぇ!!」
倒れ伏していた戦闘員の一人が何かを彼女たちに投げた。…それは爆弾だった。
しかもただのモノではなく、源石爆弾。相当高い威力を誇るもので食らえば一たまりもない。リスカムは痺れる体を酷使して銃を構えて源石爆弾を撃ちぬいた。無事撃ち抜かれたそれは上空で爆発したが…その余波は彼女に襲い掛かった。爆風だけでも相当不味いものであると覚悟しリスカムは身構えた…が
リスカムがその爆風を受けることはなかった。…何故ならば
「…フランカ!?」
フランカがリスカムの前に立ちふさがり爆風から彼女を庇ったのだ。体が動くようになったリスカムは倒れたフランカを慌てて抱き起す。
「…どうして私を庇ったんですか!」
「…ほんと、なんでだろ。」
リスカムの悲痛な問いにフランカは弱弱しくにへっと笑った。
「優等生サマのパートナー…だからかなぁ…」
リスカムの腕を掴んでフランカは意識を失った。先ほど爆弾を投げた男が立ち上がり彼女たちにとどめを刺そうと近づいてきている。その手にはボウガンが握られていた。
「手間取らせやがって…でもこいつで仕舞いだ。」
リスカムはフランカの身を抱くように構えた、拳銃は先ほどので弾切れだ。リロードしている時間もない。男が引き金に指をかけた。
次の瞬間に銃声が鳴り響いた。ボウガンを持っていた男は心臓を撃ち抜かれて絶命した。
「…ここにもまだ残党がいたか。だがこれで最後のようだな。」
銃を使ったのはフードを被った謎の男だった。その男がリスカムとフランカの存在に気が付き近づいてきた。
「…怪我をしているな。このままでは長くは持たないぞ…。」
「…貴方は?」
「先ほどあなた方が戦っていた武装勢力を追っていたものだ。過去に何度か敵対し壊滅を狙っていた。だがそれもこれで終わりだ。貴方方のおかげだ。」
「そうですか…いえ、そんなことより。フランカを助けてください、お願いします。」
リスカムは見ず知らずの相手に頭を下げた。だが男は…
「勿論、最初からそのつもりだ。お礼の意味もあるし、何よりこれでも医者だ、けが人は治したい性分なんだよ。」
そして男は迅速にフランカの手当をした。止血などを的確に行い、輸血すら完備し。フランカは安静にしていればもう大丈夫と言うところまで治してしまった。
「……」
男が何かを考え込むようにフランカを見ていた。
「あの、どうかしましたか?」
「…源石爆弾を受けた影響で…彼女は鉱石病に罹ったかもしれない。」
「…本当ですか!?」
リスカムは思わず男に詰め寄った。それはフランカが心配という本心から来るものだった。
「まだ影響は分からない。ただ源石をその身で浴びて傷口から入ったという可能性も捨てきれない。…リスカムさん、貴方は彼女を助けたいか?」
「…はい。」
リスカムは神妙に頷いた。助けなければ助けてもらった恩を返せない。
「ならば…もしも彼女が鉱石病になっていたら…『ロドス・アイランド製薬』に来てくれ。…無名の組織だが治療を提供できる。」
彼もそこの医師だという先ほどの手際の良さを見ていると彼が優れた意志であることは疑いもない。だからもしも鉱石病だとしても上手くやってくれるではないだろうか。リスカムはそう考えた。
「…とりあえずは慎重に様子見をしてくれ。私はそろそろ発たなければならない。」
色々とお世話になりましたとリスカムは頭を下げ、男はそのまま旅立っていった。男の姿が見えなくなった瞬間。
「…ん?」
フランカが意識を取り戻した。
「フランカ!」
「…リスカム?あたし…生きてる?」
「…生きてる。…生きてくれていてありがとう…」
リスカムはフランカの手を取り涙を溢した。フランカはそんな様子を見て
「優等生サマの目にも涙…ってことかしら?」
伸ばした指先でその涙を拭った。
「こういう時は笑うべきでしょ…リスカム。」
自分のために泣いたという事実が急に気恥ずかしくなったのかフランカは顔を赤くして視線を逸らした。リスカムはそんな様子に気が付かず涙を溢している。
片や恥ずかしくてそっぽを向いている、片や泣いているという状況が救援の部隊が来るまで続いていた。