―EXストーリー、04【ネコネちゃんの恋人】―
雨がシトシトと降る日のこと、周囲にあるものに水滴が落ちてくると、ピチャリと音を立ててその雫を受け止める。人の通りは少なく、誰かにかまう余裕もこの雨では無いだろう。普段は乾いている帝都の道も、雨を恵みだと言わんばかりに濡れている。そこかしこに水たまりが出来上がり、杯に水を注いだように見えなくもない。今日の帝都は、雨に濡れて、どこか寒い日だった。
そんな通りの中で、私とハクさんの二人、傘を持って気の向くままに歩いていたのです。吐息は二人分、うるさいくらいの鼓動の音は私一人分なのです。何か話さなければと思い、口を開こうとしても、会話をしている中でも、思いつくのは連れ出して、本当に良かったのかということだけなのです。
・ネコネ「ハクさん、本当に良かったのですか?」
・ハク「ああ、かまわないぞ。気にしなくていい。」
でも、本当は勇気を出して、二人きりになりたくて、適当に行き先を見繕ったのです。そして思いついた用事はお菓子を買ってくることだったのです。雨だから手を繋ぐことは出来なくても、一緒にいられることに意味があるのです。
・ハク「けど、珍しいな。ネコネが誘ってくれるなんて。」
・ネコネ「珍しいというほどではないのです。」
・ハク「そうか?。確かに、一緒にいるのはいつも通りだな」
そうなのです。貴方が一緒にいてくれるなら、それだけで意味があるのです。勉学では教えてくれない事、わからないことを、この時代でも、もう一度教えてくれたのです。だからこそ、この気持ちが本当だというなら、嘘だというならなんて、真実がどうかなんていうのは些末な事なのです。ただ、あなたのことが好きだから。それだけでいいのです。
傘を持っている手に、自然と力が入ってしまうのです。先日のハクさんとアンジュ様との出会いは、未来でも経験したことなのです。もしかしたら、これを機に、数々の出来事が起きて、兄様にさらに気に入られて、右近衛大将になってしまうかもしれない。そう思うと、私だけの大切な人なのにと言う嫉妬が溢れて来たのです。誰のものでもないのに。そんなことを考えていたからなのか、言葉にして漏らしてしまったのです。好意を、これ以上隠しきれないのです。貴方が好きなのです。だから、そう伝えたのです。
・ネコネ「一緒にいるのは、好きだからなのです。」
・ハク「そうか…。それで、ネコネは自分にどうして欲しいんだ。」
・ネコネ「わからないのです。ただ、伝えたかったのです。」
貴方にとっては、出会ってからまだ時間の経っていない女の子からの、突然の告白に聞こえるかもしれないのです。ですが、気付いたのです。私が小さいままでも、大きくなっても、まずは好意を伝えないといけないということに。沢山の時間をかけて思い付くことが出来たのです。だって、知ってもらわなくちゃ、始まることも無いのです。
ハクさんが欲しいのです。もっと、もっと近くにいたいのです。今よりも近くに、私の言うことを本気だと信じてもらえるのでしょうか、不安と期待と、ほんの少しの言葉にできない感情が入り混じっているのです。雨の音は、もう聞こえないほどに緊張しているのです。
傘はいつの間にか取り落として、私は両手を胸の前で固く握りしめていたのです。そうしていると、ハクさんは何をしているんだと聞いてきたのです。当たり前のことのように、私を抱きしめると、落ち着いてくれと言って来たのです。ああ、ハクさんまで雨に濡れてしまったのです。けれど、貴方はそんなことも気にせずに伝えてくれたのです。自分は【ネコネの恋人なのだろう】と、言ってくれたのです。
・ネコネ「えっ…。今…。なんていったのですか?」
・ハク「ネコネが言ったんだろう。【この人は、私の恋人なのです】とか。」
そうして、貴方は続けてこう言ったのです。「………なんだ、覚えていないのか。ネコネが言ったんだろう。自分とネコネは恋人だって。俺は忘れてないぞ、アトゥイ達と一緒にいた時に言っただろう。したいことっていうのは付き合うことなんだろう。なら、今日から自分たちは恋人だ。」
・ネコネ「良いんですか…。私と付き合っても…。」
・ハク「良いも何も、自分は向けられた好意を受け取っただけだ。」
・ネコネ「私は、重い女の子なのですよ。断るなら、今だけなのです。」
・ハク「断らないし、離さないぞ。自分とネコネは、もう恋人なんだからな。」
雨は私達に振り続けていましたが、私が流す、嬉しい涙を隠してくれたのです。涙を見せずに済んだ雨に感謝なのです。だって、恋人になれたのなら、涙ではなく、笑顔を見せないといけないのです。でも、もう少しだけ、このまま抱きしめ合っていたいのです。ハクさんとこのままずっと。
降り続ける雨の中、私とハクさんは抱きしめ合い続けたのです。クチュンと、私がクシャミをするまで。いつまでも、いつまでも、お互いを確かめ合うようになのです。
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クチュン…。うう、寒いのです。これでは、ハクさんのことをお世話してあげることが出来ないのです。体を温めないといけないのです。
・ハク「そうだな、体は温めないといけないな。」
・ネコネ「…ハクさん、少し近すぎる気がするのです。」
冷たくなった体を温めるように今は体を寄せ合っているのですが、ドキドキは止まらないのです。むしろ、体の芯のところがポカポカと熱く感じるのです。もっと近くにいたくて、自然と吸い寄せられるように、ハクさんの体に寄り掛かってしまうのです。
ネコネ「ハクさん、私は、可愛いですか?」
ハク「うん?。可愛いと思うぞ」
ネコネ「そ、そうなのですか。なら良いのです」
けど、記念に一つだけ、叶えて欲しいことが出来てしまったのです。ハクさんはこのお願いを聞いてくれるでしょうか、不安なのです。でも、遠慮をするのはもう無しにするのです。ハクさんお願いがあるのです。私と、接吻をして欲しいのです。
静かにうなずいたハクと、肩をつかまれたネコネの影は、重なり合うように唇と唇を重ね合わせた。ゆっくりと、時間が止まったかのように。お互いの気持ちをさらに温め合うように。確かめ合うように。
そうして、やがて唇を離すと、私は聞いておきたいことを聞いたのです何故私の告白を受け入れてくれたのか、その事がどうしても気になったのです。だから聞いてみると、ハクさんはこう答えてくれたのです。「ネコネが恋人だって声を張り上げた時に、自分には嘘だとは思えなかった。だからだな、告白を受け入れたのは」とのことだったのです。
・ハク「自分には記憶がない、だが、人を見る目はあるつもりだ。」
・ネコネ「じゃあ、もしも本当じゃなかったらどうするのですか?」
・ハク「気にしないさ、少なくとも、あの時のネコネは本気だった。そうだろ?」
もう、言葉は要らなかったのです。いつの間にか雨は上がり、お互いの笑顔を見せつけ合ったのです。指を絡ませ合うと、決して解けないようにしながら、もう一度だけ、唇と唇を重ね合わせて、確かめ合うように接吻をしたのです。
・ネコネ「大好きなのです。ハクさん!」
読んでくれてありがとうです!。