―雑草ちゃんとキウル先生(前編)―
私が帝都にやって来てからしばらくの時間が経った頃。ぽかぽかとした陽射しは温かく、街路樹は緑が生い茂り、人の活気の溢れる賑わいにふと微笑みが零れる毎日に、新しい生活の予感を感じさせる一つの知らせが舞い込んできたのです。オシュトル様が聞かせてくださること曰く、私に足りない礼儀作法の振る舞いや、慣れない環境での生活に指導役の人間がいてはどうかというものなのです。つまり、私に先生が付くのです。
理由はもちろんあるのです。試しにオシュトル様がウコンさんとして活動している時に、私の生活を見ていただいた時があるのですが、下品では無いけど上品でも無い。中途半端な所作になってしまっており、まるで初めて帝都に来て浮かれているような感じに見えるとのことなのです。
そして白羽の矢を立てられたのが、オシュトル様の義兄弟であり、エンナカムイ皇子であらせられるキウル様だったみたいなのです。私は運が良いのかもしれないのです。仮にも皇子であらせられるキウル様に教えていただけるなんて、以前なら夢のまた夢だったのです。なにか忘れているような気もするのですが、彼もイベントに絡んでいく重要なキャラクターの一人なのです。だからまずは初めましてなのです。ありがたく教えを受けさせていただくのです☆。
・キウル「初めまして、僕はキウルと言います。今日からよろしくお願いしま………!?」
・私「…?。どうされたのですか?。キウル様?」
・キウル「…ネコネさんですよね…?」
違うのです。ネコネちゃんではなく雑草ちゃんなのです。後は、ちゃんと私にも名前があるのです。このやり取り、随分と久しぶりな気がするのです。まあ、顔や容姿だけで言うならネコネちゃんと瓜二つになっているのですから。初めて会ったウコンさん以上に驚かれてもしょうがないのですが。さすがはキウル様、あまり驚かれていないようなのです。
・キウル「あの、僕です。キウルですよ、それに初めましてではない気がするのですが。」
・私「いえ、初めてお会いになるはずなのです。キウル様。」
・キウル「…キウル…様?。あの、ネコネさん、いつもみたいにキウルで良いんですよ。」
・私「いえ、それでは皇子様であるキウル様に申し訳が無いのです」
そうなのです。キウル様に粗相を働いたとあっては、ネコネちゃんならいざ知らず。私ではとっても不味いことになるのです。それにしても、キウル様はイベントで見たようにあたふたとした慌てた感じは無いのですね。なんだか呆れているような、悲しんでいるような感じが混じっているのです。うーん、なんでなのでしょう。この不肖、雑草ちゃんにはわからないのです。人間関係のイベントとかも少し忘れちゃっているのです。後はついでに言うと、さっきから言っているように、私はネコネちゃんではないのです。いい加減信じて欲しいのです。キウル様。
・キウル「ネコネさん、僕だって怒る時は怒るんですからね」
・私「いや、だから本当に違うのです……ひゃ!?」
・キウル「失礼しますね。まったく、兄上と一緒に僕をからかっているんですか」
・キウル(声も姿も、ネコネさんそのものだ。影武者と言うには似すぎている。)
……私は少し怒った様子のキウル様に驚いてしまった。怒るとこんな感じになるんだ。プリプリと怒った様子のまま機嫌を直してくれそうにないのです。本当に、本当にどうすれば良いのですか。以前ウコンさんと会った時には、ネコネちゃんの服まで借りていなかったのです。半信半疑どころか、オシュトル様と一緒にキウル様をからかっていることになってしまったのです。
その時、願いが届いたのかどうかはわからないが、部屋に近付いてくる人の気配を感じたのです。ああ、もしオシュトル様ならきっとこの誤解を解いてくれるに違いないのです。
・オシュトル「邪魔をする。急を要する要件が出来た、二人にはすぐにあたってもらいたい」
どうやら、別のお仕事の件で来ただけみたいなのです
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シャッホロと言う國を知っている方は、今回の一件がどれくらい急なのかを理解してもらえると思うのです。そこを治めるソヤンケクル様の娘であり皇女、つまり姫様であるアトゥイ様がいなくなっちゃったらしいのです。ただ、私としては不思議な事に、アトゥイ様の異名を聞かなかったことに疑問を覚えたのです。正史は正史でも、あっちの方なのでしょうか。あちらだとあまりというよりも、異名についての描写自体があったのかを覚えていないくらいなのです。
…それにしても、隣を歩く仮面をつけたキウル様の緊張した姿を見れば、嫌でもこれがどこのイベントなのかがわかるのです。ハクさんとアトゥイ様の帝都でのデートイベントなのです。
・キウル(い、今。僕はネコネさんと二人きりで帝都を歩いているのでは)
・キウル「は、早く。アトゥイ様を見つけて差し上げないといけませんね」
それに、がちがちに固まった様子を見れば、キウル様がどれだけ真剣なのかがわかるのです。今回ばかりはハクさんと、まだ見ぬアトゥイ様には悪いのですが、早めに見つかってもらうです。キウル様にはこの、雑草ちゃんが付いているのです☆。
・キウル「でも、アトゥイ様に心配はいらないとのことでしたが。凄いお方なんですね。」
・私「はいなのです。付き人を撒いてしまうなんて、とんだお転婆なのです。」
いざ、帝都に繰り出すのです。出来れば隣にいるキウル様の胃痛が始まる前に終わらせたいのです。後は、………何気に、これが私にとって初めてのお出かけになる気がするのです。
読んでくれてありがとうです!。