生きることは悩むこと 2   作:天海つづみ

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村人とハンター

 

「ナズナさんの友人なんですか?」

 

「結構可愛い娘だったな?カリナだっけか?」

 ニヤケるハルキ

 

 ココット管轄の狩場へ向かう四人

 管轄内の村から要請があった、

 村にランポスの群れが接近、

しかし当てにしていたハンターの教官が失踪、

 ランポスの群れを退治してくれとの依頼

 

 村の名はベルナ村

 ムーファと言われる家畜の放牧をしている

 

 カリナは村長の娘

 

 そして

 

 

 

 

「あの娘でしょ?イジメてたの」

 

「なっ?!い、言わないでよ」

 盾で顔を隠す

 

「あぁそうでしたか」

 え?バレてた?

 

「そんな感じだよな」

 こっちも

 

「体が強張って震えてましたね」

 ああああああ!!!

 恥ずかしい!

 

「なぁ、訓練受けた連中は何してんだ?

村にいるはずだろ?

 ランポス程度なら何とかなるよな?」

 

「五人いたはずだけど…」

 カリナ含めて

 

「まさかまだ実戦やってないとかw」

 手をヒラヒラする

 

「ありえますね、偽教官みたいですから…」

 

「え?!あの人偽物なの?」

 驚くナズナ

 

 おっと、口が滑りました

 

「センスなんて言うからな、

多分そうだろ?」

 

 助かりましたよハルキ

 

 森の中の街道、朝日に照らされながら

歩く四人徒歩二時間で村に到着

 

 村長に出迎えられるが

 

「あなたはっ?!」

 エミナを見て驚いている村長

 

「なに?」

 ぶっきらぼうのエミナ

 

「いや、そうか、はは…時代が違う…」

 首を振る村長

 

「私はカンナの娘だよ、名前はエミナ」

 

「なんと!娘さんでしたか!」

 聞けばエミナの母親、カンナの出身は

この辺り、そしてハンターの才能があり、

有名人だった。

 

「凄い人なの?エミナのお母さんて?」

 

「むー、腹立つから言いたくない」

 ムスっとするエミナ

 

「俺が説明してもいいぜ?

いいだろ?エミナ」

 最強の四人の一人、ハルキの父親が唯一

天才と認めたらしい

「この辺りから訓練しながら移動して、

ドンドルマで最初の一月にリオレウス

10頭だぜ?」

 

「それって2ヶ月位ってこと?」

 なにそのバケモノ

 

「しかもソロでだよ?腹立つのよ、

ウチのお母さん」

 腕組みする

 

 そりゃ有名にもなるわ

 

「それでは今回のクエストですが、

お前達!こっちへ!」

 

 村長が手招きすると、

 はじっこのほうでミハエルを見て

キャアキャア言ってた娘達と男が一人、

同年代の五人が集まってくる

「この子達を連れて行って戴きたい」

 

 ナズナは固まって震えてしまう、

カリナを中心に全員がイジメてきた

 

 ミハエルは思案する、

 さっきの話もありますし、ナズナさん

の力を見せ付ける良い機会ですねぇ、

 それに足手纏いなど必要無いですし…

 

「クエストはナズナさん一人で十分です、

ランポス程度に人数は必要ありません」

 

 五人がビックリする

「ナズナって…」

「あのナズナ…」

「無理じゃない…?」

「ホントだ、あの娘ナズナだ」

「髪型違うじゃん、なに調子に

乗ってんのよ」

「ランポスの群れよ?死ぬんじゃない?」

「絶対死んだわこれ」

 ヒソヒソ言うが聞こえてる

 

「…行ってくる…」

 居ずらい…視線が刺さる…

 うつ向いてクエストに出る

 

「では、ここに居た教官の

話をお聞きしたい」

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 順調にランポスを狩る、

イーオスに比べると弱いし毒もない

 

 (一人で不安だったけど楽勝だわ、

だけど村に帰りずらいなぁ)

 

 その時岩の影から一際大きなランポス、

ドスランポスが飛び出して来る

 「何だ、コイツもいたんだ」

 閃光玉を投げ安全に狩る

 

 

 …私強くなってる?

 

 

 ハンターとしては強くなってる

 

 

 …でも人としては?

 

 

 女としては?

 

 

 ベルナ村のナズナとしては?

 

 

 

 …………

 

「ナニコレ?」

 ナズナが村へ帰ると村中が集まっている

 

「ナズナ!」

「あんたケガは?!何ともないの?!」

 ナズナの両親が駆け寄ってくる

「あ、うん、なんともないよ?」

 どうしたんだ?

 

「心配したんだよぉ、

一人で行かされたっていうから」

 抱き締める母親

 

「急いで戻って来たんだ、

大丈夫だったか?」

 放牧から走って戻って来たんだろう、

薄い頭髪に汗が見える父親

 

「え?平気だよ?」

 あれ?何かが違う…そんなに心配?

 

「黙って村を出る事ないだろ?

母さんもずっと心配してたんだぞ?」

 

 そうか…ココット村に行くまでは

モンスターと戦う事自体が大変だった

 

 今は当然なのか…

 うん、当たり前になってる

 

 

 村中に注目される

「本当にナズナ一人で」

「凄いぜ?」

「全部倒して来たのか?」

「ケガもしてないぞ」

 村中がザワついている

 

 なんか…私って凄い?

 あれ?あの五人は?

 

「あ、おかえりー」

 ムーファをモフモフしているエミナ

 

「あいつらは?」

 小声で聞くと

 

「気絶してるw」

 

 

 ……………

 

 

 

 

 ナズナが出たあと

 

「どんな訓練をしてたんですか?」

 柔らかい物腰で話すミハエル

 

「なんかセンスがどうとか言ってた

らしいな?」

 腕組みして偉そうなハルキ

 

 二人が質問すると

 

「えっとぉ、あのぉ、素振りしたりぃ」

「回避の繰り返しとかぁ」

「あ、あと採取もしましたぁ」

「ランポスも一匹狩れますぅ」

 猫なで声で答える娘達

 

「ねぇ、ナズナなんか勝てるわけ無い

じゃん、何であんた達は行かないのよ?」

 カリナは不機嫌

 

 エミナが前に出る

「ナズナなんか?

アンタにナズナの何が解るの?」

 エミナは見上げて答える

 

「あんな弱くて才能無いヤツ」

 

「才能?それが何かアンタに解るの?」

 

「なによ!ナズナが勝てるとでも

思ってんの?!」

 顔をまっかにして激昂

 

「逆に勝てないと思う理由は何?

 ナズナを見下す理由は?」

 年下の方が落ち着いた物言い

 

 まあまあ、とミハエルが割って入る

「ではナズナさんが毎日、当然の様にやって

いる訓練をしてみましょう、

 貴女達は当然ナズナさんより

出来ますよね?」

 ニコニコと笑う

 

 ……………

 

 それでこれかぁ

 村の広場に寝かされている五人、

村長はおろおろしている

「あ、気が付いたぞ!」

「起きたぜ」

 

 カリナ達は周囲を見回す

「あれ…私…?」

 

 ミハエルが前に出ると

「どうでした?この訓練はハンターなら当然

なんです、あなた方に偽教官は教えましたか?」

 

「偽物?」

「いったぁい」

「私達がやってた訓練と違う」

 

「こんなのやってないわよ!

 嘘言わないで!」

 カリナが叫ぶ

 

「丁度良いぜ、ナズナ!こっち来いよ!」

 ハルキに手招きされる

 

 オドオドと前に出る、

 目立ちたくないのに…

 

「じゃあ構えろ」

 構えてハルキと向かい合う

 

「せいっ!」

「ガシュッ!」

「どわあっ!」

 蹴り脚を上に跳ね上げられ転ぶハルキ

 

「おおーっ!!」

 村人達が驚く

 

「見ましたか?これが貴方達が弱いと言った

ナズナさんの技術です、

 それにこの訓練を初めてやった時に、

貴方達の倍は蹴りに耐えましたよ?」

 

 まだ立ち上がれないカリナ達に更に寄ると

顔を近付け

 

「センスや才能などと言ってる間に

貴方達は遅れたんです」

 ニコッと笑う

 

「ハンターになりたいならナズナの弟子に

なるんだな、お前らにはそれが丁度良い」

 ハルキは吐き捨てる様に

 

「なんでこんなブスの弟子になるのよ!!!」

 

 そこへランポスを回収した村人達が荷車を

引いて来る

 10頭ほどのランポスと…ドスランポス

 

「………」

 カリナは青ざめ絶句する

 

「どうしました?何か言いたい事は?」

 笑顔だが…目が笑っていない…

 

 …………

 

 

 

 

 村を後にする

「あの、何か色々ありがとう」

 私のためにしてくれたよね

 

「まぁ、イジメの件もありますが、あのまま

では彼女達は結局ハンターにはなれませんから」

 

「まず世の中舐めてるしw」

 

「彼女達は自分を過大評価して、ナズナさん

を過小評価してました」

 

「まぁ、解らなくもないんだ、常に相手を

下に見ないと自分が上で居られない、

そう考えるんだ」

 手をヒラヒラする

 

 「ランポス一匹でな!」

 笑う三人

 

「仲間でもないのに色々…」

 

「は?」

 固まるエミナ

 

「心外ですね」

 ミハエルも

 

「お前そう思ってんのか?

 俺ら仲間だぜ?」

 

「え…だって…」

 いつ仲間になれたんだ?

 お荷物なのに

 

「立派にハンターをしているから

仲間になったんです」

 

 立派?

 

「ナズナってさぁ、

自分を弱いと思ってるでしょ?」

 

 弱いと思う

 

「お前弱くないんだぜ?ギルマスが用意した

クエスト一人でこなして来たんだろ?」

 

「え?だって食べていかなきゃいけないし…」

 お金が無かったんだもん

 

「指導も受けず、聞きもせずにクックまで

倒したんですよ?」

 

「ガンナーでやっちゃうんだもん」

 

「お前は強ェんだよ」

 

「困難、苦労を一人で乗り越えてきたんです、

それを努力と言います」

 

「恥ずかしいとかカッコ悪いとか思ってた

でしょ?」

 

「スゲェ事して来たんだぜ?」

 

「う、うぶぇぇえぇ…」

 勝手に涙が出てくる

 恥ずかしいと思ってた

 

「泣かなくて良いじゃんw」

 

 

 

 

「そういえばハルキ?

あの娘達にはナンパもしませんでしたね?

カリナは可愛いと思いましたが?」

 

「俺な、性格ブスは嫌いなんだよ」

 

「性格ブスってどんなのぉ?」

 

「他の女をブスって言う女だ、そんなヤツで

マトモな女は見たことネェ!」

 

 

 




誰もが認める何かを掴む

当然努力と継続する力が必要

しかし現社会は他の誘惑が多い

田舎の方が良いのかも

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