「むうっ?!」
「?、どうしました?」
ギルマスの部屋、何かを思い付く
「ドリスや、ナズナの戦歴を」
言われるままに書類を出す
「それとこの前の書類を」
「はい」
考えるギルマス、机に書類を並べる
「…これは…まさか!」
書類を手に固まるギルマス
「どうしました?」
…………
どうしよう、どんな顔してギルドに
行けば良いんだろう
エミナにどんな態度で…
なんて言えば…
小屋を出ると
「あー、やっと起きた」
「エミナ!」
笑いながらエミナがソコにいる、
左腕は吊ったまま
「遅いから起こしに来たんだよ?」
無言で立ち尽くすと
「……ふぅえぇぇ…」
「え!何で泣くの?」
エミナの…年下の前で棒立ちで泣いてしまう
慰めるどころかこっちが救われる、
ずっと掛ける言葉を考えてたのに
背中をポンポンされる、
エミナって…私にとってお姉ちゃんみたい
ギルドに入ると
「おせーぞ」
「ようやく起きましたか」
普段通りの二人がいる
エミナに気を使ってる様子もない
ちょっと戸惑うが
「さて、今日から狩りの方針に
変更が必要かと」
そりゃそうだ…ってエミナは休まないの?
「私レウス一式出来たし、今はないかな」
笑うエミナ
「誰か必要な素材あるか?」
「あの、エミナはケガしてるし…休むとか…」
「本人が休む気は無いようです」
ニコッと笑う
「休まないよ?これ位で」
こちらも
いや、これ位?骨折してるよ?
「暗くなってるかと思ったぜ?」
「こんな事でヘコンでられないもん」
笑う
こっちが救われる
いや、もしかして…
…気を使われてる?
「ナズナのクエスト進めるか?」
「ギルマスに聞いてみますか」
カウンターへ行くと
「ハルキ、ギルドマスターがお呼びだ」
…………
「来たか…」
椅子に座ったまま振り返るギルマス
何かを感じ取ると
「……あー…バレた感じだな?」
頭を掻くハルキ
「驚いたぞ?」
「失礼します」
ドリスが入って来る
まるで果たし合いの様な空気に身構える
「何事ですか?」
にらみ合い…ではないが…
「…まったく…解らぬはずだ、
気付かぬはずだ」
「何が…でしょうか?」
ハルキに視線を向けたまま聞くドリス
「元来ハンターは犯罪者が多かった、
自分を大きく強く見せようとする者
ばっかりじゃった」
ハルキは笑っている
「弱いフリをするヤツは…恐らく
前例があるまいよ」
「弱くっ?!」
ドリスは驚く
「弟も気付けんはずじゃ…なぜかの?」
「…理由は…いくつかあるんだけどよ…」
腕組みすると
「一つはミハエルだ」
「ミハエル?」
ギルマスは片眉を吊り上げる
「俺が学校行っちまった後、あいつはハンター
頑張ったんだ、5年もな」
間を置くと
「なのに…五年もやったのに
…まだあの程度だからな」
「お前はミハエルをそう言えるのか!?」
下位が上位をあの程度と?!
「あぁ、まだ全体が見えてねぇからな
…なんつーか出来の悪い弟だ…もう一つは…」
舌打ちして言い辛そうにすると
「母ちゃんだ」
ため息混じりで
「ベッキー…か?」
ドリスの空気が普段に戻る
強ぇハンター、それこそG級になれば困難な
クエストもやらなきゃならねぇ、
それは心配させちまう
だったらよ?そこそこのハンターなら
心配させずに普通に稼げる
「だからよ、イイんじゃね?
俺はフザケたハンターで」
笑う
「ベッキーは知っているのか?」
険しい顔のドリス
「知らねぇ…ドリスさん、
親が泣く姿って見たことあるか?」
「無いが…」
「たまにな、一人で泣いてんだ、
父ちゃん思い出してんだろうよ」
「それでか…」
「俺はミハエルより弱くて平凡なハンター
であるべきだろ?」
「しかしなぁ、それほどの才能、
埋もれさせるのはなぁ、お前は四英雄さえ
目指せるだろうにのぉ」
「オヤジはその『四英雄』の名前に殺された
ようなもんだろ?」
ハルキは勝手に出ていく
「うむぅ…」
頭を抱えるギルマス
「なぜ弱いフリを見抜かれたのですか?」
「これを見よ」
ドンドルマの戦歴とナズナのパーティーの戦歴
「これが…?」
首を傾げる
「解らんよな?」
「はい…」
パラパラページを捲る、
不自然な所など見当たらない
「そう、一見解らん、だがな…」
書類を捲ると
「ハルキ『以外』の記録を見ろ、
キャンプ送りになっとらん」
「は…?」
ドリスも書類を捲る、ハルキがネコタクを
使った記録はあるが…唖然とする
「ミハエルもエミナも…その他のメンバーさえ
…ハルキとパーティーを組んだ者は…誰一人もな」
立ち上がり杖をコツコツ鳴らす
「1度も落ちていない…」
捲る手が震えるドリス
「これは…こんな事が!」
「父親以上のバケモノかも知れん、
ハルキはパーティー全体を守れる男じゃ、
教授の言っていた意味がようやく解ったわい」
「そんなハンターはG級にさえ…」
いないぞ!そんなこと出来るヤツは!
ソロ以上の難易度じゃないか!
「何とかせねばならん!」
カンッ!と杖をならす
……………
二十数年前
「あやつを四英雄にじゃと?」
竜人ココット、現在とあまり変わらない
「そうだ」
腕組みするガストン
「たしかに最速記録ではあるがの、
下積みが足らんぞ?」
ソロでクシャルを倒した程度で…
「確かにな、でもよ、力はあるぜ?」
「お前よりか?」
「なんつーかな…上手く言えねぇが…」
ボリボリ頭を掻くと、
俺は攻撃だ、とにかく叩き潰すが…
ナナキはよ、最適なタイミングで
最高の一撃を入れる…
「多分天才ってヤツだろうよ」
「タイプは違うがそれほど強いんじゃな?
お前が認めるほどに…」
「モンスターの動きなんざ一回見たら
覚えるしな、ナナキが同じ攻撃食らう
ところは見たことネェよ」
…………
「カエルの子はカエル…いや、
天才の子はバケモノかも知れん…」
………………
ココット管轄 密林
これがダイミョウザザミ…
赤白のストライプで他のモンスターと比べると、
何だかカワイイ仕草…
ザザミがジャンプする
「ナズナ!」
「影見て!」
「回避です!」
「ドカンッ!!」
着地するザザミと
「ぶばらぁっ!!」
余波で泥を被り、吐き出すナズナ
全っ然カワイくない!!
「大丈夫!?」
エミナは回避しながら器用に喋る
「平気!」
ペッと泥を吐く、訓練で何度も砂噛んで
味も平気だし…
私って一応年頃の女だけどこれで良いのか?
「爪と殻は攻撃すんなよ!弾かれるぜ!」
ハルキが指示するが、このモンスター
前後左右に動きすぎる
「何か狙った所斬れない!」
弾かれまくる!
コイツ体の向きを変えるのが早いんだ
「クック系と違います!馴れて下さい!」
その指示無茶じゃない?!
器用に貫通弾を殻から頭に撃っている、
高さがあるからこっちを気にせず連続で
「エミナ!どうだ!?」
「ちょっとキツイ!」
「ミハエル!一旦退くぞ!」
隣のエリア
「疲れましたか?」
貫通弾を調合する
「右手ばっかりだからね」
軽く右腕を振る、左腕は体に縛っている
だから盾は持っていない
そうか、回避に使う腕も右手一本…あ!
「今は右側にしか回避できないとか?」
「うん、正面までは何とかなるけど
左はちょっと不安だよ?」
「さて、と言うことは?」
ミハエルが意味ありげに見てくる
「私も合わせて右に…」
「正解です、お互いにフォロー出来るように
やりましょう」
パーティーってこういうことか
「エミナ、腕出せ」
ハルキが薬草をクーラードリンクに浸けて
右腕に貼る、上から手甲で固定
「あ、これ楽かも!」
腕かひんやりする
「なぜクーラードリンクがあるんです?」
「間違えて持ってきた」
へらへら笑う
「こんな方法良く知ってるね」
ちょっと見直した
「教授の顔に貼った事があってなw」
「顔に?」
あの人懐こい丸メガネ
「クックの尻尾で叩かれて…
死にかけた時だった…か?…」
指折り数える、あの人そんなに危ない目に
あってるのか…
「懲りない人なんですねぇ」
「モンスターが大好きだからな、変人だぜw」
……………
「ビシッ!」
背中の殻にヒビが入る
「もう少しです!」
「おうよ!角いくぜ!」
「ナズナ!」
「解った!」
ナズナは痺れ罠を仕掛ける、
キラキラした粉が罠から出ている
「皆こっちへ!」
ザザミと反対側で誘導する、
罠を踏み、痺れた
「おっしゃあ!」
殻に溜め斬り、折れる角
「ナズナ!頭だよ!」
「は、はい!」
そうか、今回はハルキが殻へ、
頭は違う人が担当するのか
部位破壊をやる時は威力のある武器が
ソコに行くのか
罠が限界、壊れると
「水だ!!」
は?何の事?
その声の一瞬後に、水を吐きながら
横歩きするカニ
「ぶぇえっ!!」
水圧に吹き飛ぶ
今度は水かい!!
ダメージは少ないけど、
なんか隙が無いよこのカニ
起き上がり斬る、斬り続ける
「ぜはぁっ!」
思い切り息を吸う、私動けてる、
いつもより長く
体力が付いてきてるんだ
ドスランポスの時を思い出す、
思うように体が動かなかったあの時を
私は強くなってる!!
「ナズナ!」
「影見て!」
「回避です!」
「ドカンッ!!」
「ぶばらぁっ!」
…………
でっかい爪…ナズナが撫でる
討伐成功
「ナズナ、ほらよ!」
「わっ!とっ!え?!」
角を投げられ何とか受けとる、
このデカさの割には軽い、
爪で弾くと金属みたいなのに
「うまくいったね」
右腕を軽く振る
「休憩を入れながらなら体力的にもいけますね?」
エミナの腕を見る
「回避の練習には丁度良かったな、
ナズナにもモノブロス見せられたし」
「え?モノブロス?」
三人がこちらを見たあと揃って指差す
「この背中の殻がモノブロスの頭殻ですよ?」
「なんだ?気付いてなかったのか?」
「頭に見えなかったの?」
「うわ、私って鈍い」
ホントだ、これ頭だよ…って
「こんなに大きいの?」
なんかサイズがおかしくないか?
「老衰まで生存した個体でしょうから」
「長生きしたヤツなんだよ?」
「ザザミじゃモノブロスに勝てねぇから、
死んだヤツの頭を利用すんだよ」
「あ、もしかして私に見せるために
ザザミのクエスト…」
「そうですよ」
「当たりで良かったよね!」
「ディアブロスの時もあるからな」
なんだかんだ言っても優しいんだよね、
この人達は
ココットに来て良かった
ベルナから出なかったらずっとイジメられて、
ずっと恨んでたかも…
出会えた事が嬉しい
「しかし被弾が多すぎますから…」
「動きに付いて行けてないからね」
「また訓練再開すっか?」
「またぁ?」
優しい…よね?