生きることは悩むこと 2   作:天海つづみ

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仲間?

 

「俺だ!」

「俺が行く!」

「ワシはずっと待ってたんじゃ!」

 

 ナズナ達が帰るとギルドが騒がしい

 

「…どうやらモノブロスのクエストが…」

「確定したみたいね!」

「ミハエル、お前はどうすんだ?」

 

「え?ミハエルやるの?」

 

「上位だから私にも参加権利はありますが…」

 

「何かダメなの?」

 

「叔父さんにバレちゃうもんね!」

 ニヤッと笑うエミナ

 

「そうだよな、英雄の試練の成功者に

なっちまったら、流石に隠せねぇか」

 

 

「皆、待たせたな」

 奥からギルドマスターが現れた、全員が注目する

 

「希望者が多いため、くじ引きとする!」

 ドリスの言葉に歓声が上がる

 

 

 

 ……………

 

 ギルマスの部屋

 

「ミハエルは参加しなかったなぁ」

 机でパイプを吹かす

 

「摂政に隠せなくなるとか」

 いつも通りビシッと直立

 

「ルキウス殿か…しかしミハエルが

上を目指してくれんと…」

 

「ハルキが実力を出さない…ですか」

 

「何とかならんもんかの」

 

 

 

 

 

 

 …………

 

「えっ?!村から移動?!」

 テーブルで話す四人

 

「なぜかギルマスから言われまして…

ドンドルマへ戻っても良いと」

 

「ここで上目指しても良いんじゃない?」

 エミナが天井を指差す

 

「上ってなぁ、ミハエルお前はどうすんだ?

今のままで良いのか?」

 

「上を目指すなら叔父の話を完全に断らな

ければなりませんが…」

 

「偉い人だっけ?」

 セッショウとかいう

 

「はい…難しいんですよ」

 

「権力者だもんなぁ」

 上を向くハルキ

 

「そんなに偉いの?セッショウって」

 ナズナには馴染みがない単語

 

「ナズナ、摂政って何か知ってるか?」

 首を傾げながらハルキが聞く

 

「村長みたいな…人?」

 

 三人が困った顔になる

 

「シュレイド国は知ってますよね?」

 さすがに知っている、南に1日位歩くと

セキショ?とかいう所があって、

その先の土地だ

 頷くと

 

「その国内を動かしている人なんです」

 

 話振りからすると、でっかい村の偉い人…

 

「絶対解ってねぇよコレ!」

 私の顔を見て笑う

 …バカにされてる、それだけは解るぞハルキ

 

「ねぇ、王都って行った事ある?」

 エミナが身を乗り出す

 

 ナズナはもちろん無い

 

 ミハエルは当然ある

 

 ハルキは…

「あるに決まってんだろ?

学校は王都にあるんだぜ?」

 

「私の腕治るまで時間掛かるし、

王都回っても良くない?」

 エミナが意味ありげにミハエルを見る

 

「…叔父と交渉しろと?」

 ジト目で

 

「だって私はG級行くんだよ?

ミハエルが止まってたら気ぃ使うもんw」

 

 

「そうですね…避けては通れない事ですが…」

 いつかはやらねばならない叔父との交渉…

 先延ばしは…

 

「両親に口添えしてもらうしかねぇな」

 

 

 

 

「ワシも口添えしてやろう」

 

「ギルドマスター」

 いつの間にかミハエルの後ろに来ていた

 

「ドンドルマとミナガルデにも協力の手紙

を出してやろう」

 

「…随分と乗り気のようですね…」

 珍しく眉間にシワが出来るミハエル、

少し不信感を持つ

 

 なぜこんなに乗り気なんだ…

 

 

 

 

 

 …………

 

 村はずれの森、

枯れ木が多く薪拾いに来る寂しい場所

 

 ナズナは一人で考える

 エミナ達が移動しちゃったら

 私はどうする?

 

 仲間と言ってくれたけど私には目的が無い、

目標も無い、食べて行くのが目標だし…

 

 私はどうするべきだ?

 別れるのは…なんか嫌だ

 

 

 

 

 エミナが好きだもん

 

 ミハエルも厳しいけど好き

 

 

 

 ハルキ…うん、好きだ

 

 

 どうしよう

 

 

 

 

 

「………」

「ん?」

 何か聞こえた

 

 枯れ葉や枯れ木のガサガサ言う方へ歩くと

 

 あ…ミハエル…

 

 声掛け辛い雰囲気…しばらく見る

 

 ボウガンを構える、納める、

 各方向へ回避、構える

 

 基本動作を繰り返している

 落ち葉が髪に絡まり、顔に汗をかいて

 いつものキラキラした感じはない

 

 影でキチンとやってるんだ…

 

「誰です?」

 厳しい声

 

 ビクッと動けなくなる

「あ…あの私…」

 覗くつもりは…

 

「ナズナさんでしたか…」

 ニコッと笑う

 

 

 

 

 ………

 

「そうですねぇ、私はこのままナズナさんが

居ても良いと思いますが?」

 

「……ジャマじゃない?」

 

「そんなことありませんよ」

 

「そう言って貰えると…

 なんか楽かも」

 良かった

「でもさ、この先どうしたら良いのか……」

 

 

 

 

 倒木に二人で座る

 

「仲間…チームと言うものは固定されてません、

流動的なものです」

 

「流動的って…?」

 

「ハンターは一番分かりやすいです、同じ

目的を持つから組んで、達成すれば解散です」

 

「なんかアッサリしてるっていうか…」

 

「こうして組んでいても、いつかは

離れるものです」

 

「なんか…」

 悲しいよ?それは…

 

「ギルマスがあぁ言っている以上、

私達はどこにでも移動できます」

 

「私…どうしよう…」

 

 

 ナズナの暗い顔を見ると

「ナズナさん、貴方は最初、ギルマスの

指示で私達と組みました、

…今はなぜ組んでるんです?」

 

 考える、なぜだ?

 

 

 

 

 

 

 

 …好きだからだ

 恋とかじゃなく好きだからだ

 この三人が好きだからだ

 

「自分の意思でしょう?」

 

「うん、私は仲間になりたいからなって

るんだね…でも私じゃ…」

 

「自分を足手纏いとか思ってますか?」

 

 うなずく

 

「本当に足手纏いならハルキとエミナが

ハッキリ言うかと」

 

 笑顔で言うが…

 それキツイな…

 

 

「………」

 そうか…うん、あの二人は全部直球だから

ハッキリ言うかも

 

「私も含めてナズナさんを認めていると思います」

 教えを受けず、請わず、自力で這い上がった

 

「でも私…これからの目的ないよ?」

 

「難しく考え過ぎかもしれません、私も

ハッキリした目標を持っていませんし」

 

「ミハエルも?」

 

「明確な目標を持っているのはエミナだけですから」

 

「ハルキは…あいつも無いよね」

 

「ハルキが一番解りませんし」

 笑う、そう、あいつはなに考えてるか解らない

 

「でもナズナさんが一番自由に

目標決められますよ?」

 

「私が一番?」

 

「私と違い『しがらみ』も縛るものもありません」

 

「私…」

 無い?ない、あれ?無い?

 親を越えたい?

 G級になりたい?

 しがらみ?縛るもの?

 

「どんな目標や目的も自由でしょう?」

 ニコッと笑う

 

「皆は自由じゃないの?」

 

「私は特に」

 家系が強すぎるために、過度な期待を

される上、周囲が各思惑で動き始めてしまう

 

「思惑?」

 

「簡単に言えば…」

 叔父が仕事を任せようとしている、

叔父の周囲がそれを知れば、叔父に恩を売り

たい有象無象が私に接触してくる

「どんな形で来るか解ったモノではありません」

 強引な手段も…

 

「何か…危険な感じ?」

 話振りからすると

 

「はい、敵対する派閥もありますし、最悪は

貴女達が人質に取られ、強要される可能性

まであります」

 

「人質っ!?」

 

「政争に巻き込まれる可能性です、人の悪意の

中に入るんですから…私と一緒に王都に

向かうのは危険でもあるんです」

 

「エミナは…」

 

「理解できてないでしょうね、

だから気軽に行くと言えるんです」

 

「王都って凄い所だと思ってたけど…」

 

「裏は貴族の戦争の場です」

 

「だから味方が必要なのね?」

 

「私の両親は協力してくれます」

 

「あとギルマスか」

 

 ミハエルはクスッと笑う

「知ってますか?

あの人達が一番恐いんですよ?」

 

「ギルマスが?」

 ただの竜人のジイチャンでしょ?

 

「人を掌の上で動かす老獪な人ですから」

 立ち上がると

「さて、私は続きの練習しますが、どうします?」

 

 このパーティーに居るにしても出るにしても、

強くならなきゃダメかも…

 ハンターとしても人としても

 

「私もやる」

 立ち上がる

 

 先ずは抜刀と納刀の繰り返し、

そして回避、早く、正確に

 

 …そういえば

「ミハエル、何でここ知ってるの?」

 私は自炊してたから薪拾いに来たけど

 

「ここで手紙の娘に…」

 困った顔になる

 

 あー…その先は聞きたくない

 

 

 

 

 ……………

 

 次の日

 

「じゃあ行って来ますニャ」

 頭に鳥?の帽子を被ったアイルーが、

手紙をギルマスから預かって行く

 

「何あれ!カワイイ!」

 エミナが跳ねる

 

「始まったんですね、郵便」

 

「ゆうびん?」

 私知らない単語だよ?

 

「今までの伝書鳩に変わる仕組みですよ」

 

「ねぇ、頭のアレって鳥?」

 指差すエミナ

 

「聞いたことあるぜ?」

 学校時代に船乗りの話、

隣の大陸の派手な鳥らしい

 

「隣の大陸?」

 なにそれ?

 

「そうだな、地図で書くと…」

 ハルキは紙を取り出し逆三角を描く

 

「これが今いるココットな」

 真ん中より上の方に点を打つ

 

「で、王都だろ」

 ココットの下、中央に

 

「でミナガルデとドンドルマ」

 王都の左右、端のほうに

 

 

「ねぇ、私ん家は?」

 エミナがワクワクしながら聞く

 

「ジャンボ村は…」

 ドンドルマよりさらに東の海沿いの方へ、

シュレイド大陸に沿った細長い半島

 

「で、この更に東にあるらしいぜ?」

 適当に丸を書く

 

「あんなカワイイ鳥がいるんだね!」

 

「赤い衣装も可愛らしいですね…」

 ギルマスの手紙、これ次第で私の行く末が

決まってしまうかもしれません

 

 

 

 

 …………

 

「私どうしたらいいかな?」

 一応ハルキにも聞く

 

「自分で決めりゃ良いだろ?

 誰も止めねぇし」

 

「そうじゃなくてさ…」

 何か言って欲しいんだよ

 『パーティーにナズナが居て欲しい』って

言ってくれたら…

 

 『お前は仲間だ』って言ってくれたら

少しは楽に…

 「ハルキはハンターで何を…」

 

「だからとりあえず食っていく、

そしてモテたい」

 少しイラッとしながら

 

 聞くの二度目だった、

 やっぱり具体的な部分が無い、私と同じだ

「なら これからどうするの?」

 

「ま、上位には行きてぇな、

食って行くには丁度良いし」

 

「そうなの?」

 

 エミナがジュースを飲みながら

「下位より報酬は良いし、G級程あぶなくないしね」

 

「なぁ、ナズナ…その内見つかるんじゃね?

目的なんてよ?お前は努力出来るし」

 

 努力…してる気はしないんだけど…

 

 

 怖い…けど聞きたい

 

 なんでも良い、確実な何かが欲しい

 

 『私は仲間?』

 

 

 

 

 

 だけど…もし違うって言われたら…

 

 

 

 

 

 いやだ…怖い…

 

 

「私のお母さんなんかさ、

G級あっさり諦めて結婚したし」

 

「結婚?」

 

「上位の途中でさ、お父さんが村長になる

ために帰ったら、一緒に来ちゃったんだって」

 

「そういうものなんだね」

 皆その時の流れかも知れない

 場当たり的なモノかも…

 

 流れか…

 

 

「19で私生んでから道具屋の女将だしw」

 

「19!」

 私と同じ歳!

 私なんか男と付き合ったことさえないよ?!

 

「一緒に居れば?どうなるか解んないもん」

 

 うれしい…うん、これは嬉しい

 やっぱりエミナは大好き

 

 離れたくない…

 

 だから…

 

 『仲間』でいるために強くなる!!

 

 

 

 …………

 

 約1ヶ月後

 すぐにギルマス達で手紙のやり取りが始まり、

最終的には『ココットで待て』との返信が

ギルドにあり

 暇なので各々が鍛えていた

 

 ギルド

 

「リオレウスに三落ちですか」

 でも凄い成長ですね

 

「もうちょっとだったのにぃ」

 疲れはてたナズナ、閃光玉を調合分まで

使っても勝てない

 

「ソロで安定して狩れたらハルキ抜かせるよ?」

 ハルキに向かってニヤケる

 腕は治ったが半年で上位の夢は遠退いた

 

「俺もウカウカしてらんねぇな」

 

「なによ?真面目じゃん」

「あ?俺はいつも真面目だろ?」

 

 

 

 

 リオレウス、ソロ失敗

 だけど勝てれば仲間と言える何かが掴めそう

「武器変えたら…」

 勝てるかも?

 

「今から新しい武器を練習するとなると」

 困った顔になるミハエル

 

「扱えるまでに暫く掛かるよ?」

 

「そっか…皆はどんな武器使えるの?」

 

「私は弓、ボウガン、大剣、太刀、

片手剣ですね」

 多っ!!

 

「私は太刀と片手、

大剣の基礎も教わってるけど振り回せないw」

 エミナで3種か…

 

「ハルキは?」

 

「全部」

 

「…え?」

 ナズナは一瞬何を言われたか解らない

 

「だから全部だ」

 ナズナに向き直ると真っ直ぐ答える

 

「ふざけてんの?」

 エミナが突っ込む

 

「調査に行くとよ、どうしても戦闘もあるんだ、

勝つためじゃなくて逃げるためのな」

 

 目的は逃げる事か

 

「だから基本的な武器は書士隊にあって、

色々使ってる内にな」

 

「何だか恵まれてますよ?いくら最弱武器でも、

全部揃えるのは難しいですから」

 

「そうかもな、練習にはなったかもな、

それと閃光玉は良く使ったぜ」

 

「逃げるためね?」

 

「なのに教授はスケッチに走るからな、

何度も引き摺って逃げたぜ!」

 皆で笑う

 

「ミハエル」

 ギルマスの声

 

 皆で振り返る

 

「関所へ向かえ、ルキウス殿が来るそうじゃ」

 手紙をヒラヒラさせる

 

「叔父上が直接?!」

 

 




仲間も友達もその時は意識していない
あとから思い返すもの
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