「これがセキショ…?」
小さな門に平屋の建物が一つ、
そこから左右に柵が遠くまで続いてる
私の身長程度の粗末な柵だ、
簡単に乗り越えられそう
そこに鎧を半端に着た雰囲気の悪い人達が
ウロウロしている
門には数人の行商人が並んでいる
「まったく…国の要所で無いところは
緊張感がありませんね」
「チンピラみたいw」
14才から出る言葉か?
でも確かに
「田舎の兵士ってのはドコ行ってもこうだw」
こちらに気が付くと
「通行税は一人10zだぜ!!」
兵士の一人がこちらへ来る
何だか凄い高圧的でナズナは萎縮する、
ベルナ村に居たときに近付くなと言われていた
意味が解る…
いやだ…行きたくない…
しかし
三人は平然と歩いて行く
ちょっと!恐いじゃん!
何で皆平気なのよ!
目の前まで行くと兵士のほうが怖じ気づく
「お、お前ら、通」
「ハンターに通行税は無いはずですね?」
「なんなら力ずくで通るよ?」
「お前らで勝てる気するか?」
三人並んで威嚇する
ひいいっ!何この展開!
ケンカになるの?!
建物からわらわらと10人程が出て来て取り囲む
「何だテメェら!」
「ここがドコだか解ってんのか!」
槍を構え威嚇する兵士、その中から一人、
偉そうに最後に出てきた人がいる
ふんぞり返り
「ハンターか?部下が失礼したようだな?」
ザリザリと無精髭を撫でながら太って
ハゲた中年がこっちへ来る
「ハンターに通行税は無いはず…この様子では
適正な徴収をしてるか怪しいモノですね」
ミハエルは平然と答える
「随分と突っ掛かるな…何の用だ?」
「突っ掛かるのは貴方の部下のようですが?」
チラッと見る
「ここで待てと指示されてます」
「通る気はねぇと?」
「さぁ?指示した人次第ですが」
隅っこにエミナを連れて行き小声で話す
「何でこんな…」
「ん?ケンカ腰って事?」
「そう!あんなに居るのに」
エミナはクスクス笑う
「負けると思ってる?」
「10人位いるし恐いじゃん!」
「ナズナ一人でも三人位なら、
何とかなるかもよ?」
「?」
「リオレウスとヤツら、どっちが恐い?」
顔を真正面から見ると
「ナズナは弱く無いんだよ?
ただ気が小さいんだよw」
「通行税は5zのはずですね?」
「入り用でな、必要なんだ」
「王都まで何ヵ所関所があると思ってます?」
「知らねぇなぁ、
俺達みてぇな末端が知る訳ねぇ」
ニヤニヤする
「国庫はひっ迫していないと思いましたが?」
「ハンターが考える事じゃねぇ、
文句あるか?」
ふんぞり返ると
ブォン!!
ハルキは大剣を掲げる
「コイツ…」
「やる気か…」
兵士達に動揺が走る
「ミハエル、メンドクセェや、
…これ以上モメんなら」
構えると
「コイツら黙らせようぜ?」
「どうします?」
ミハエルは隊長らしき中年に笑い掛ける…と
突然日が陰る、一瞬周りが暗くなった
「おい!!」
「なんだぁ!!」
「飛行船だ!!」
見上げると大きな船が浮いている
「なにあれっ?!!」
エミナが叫ぶ
「見たことねぇぞ!!」
ハルキも
「新型船です!!」
少し開けた草原に着地する船、見慣れた
ピンクの三角推ではない、本当に船の形…上に
楕円形の気嚢があり、船尾に大きなプロペラ
一体何メートルあるのか
中から関所とは違うキレイな鎧の兵士が
10人程出て来ると、ビシッと整列して赤絨毯が
伸びてくる
あまりの事にエミナとナズナはポカンとする
なにが…おこってますか?
中から緑のローブを着たメガネの男が
姿勢良く歩いてくる
ミハエルの前まで来ると一礼して
「ミハエル様、ルキウス大臣の御成りです」
「マーカスさん、様は止めてください」
「何をおっしゃいます、
貴方が当家のお世継ぎでしょう」
丸いメガネ、しかし教授と違い
ビシッとした姿勢と態度
ミハエル様?さま?今さまって言った?
すると今度は真っ白なローブに金の装飾の
素敵なオジサマが出てきた
「ご無沙汰しております、叔父上」
ミハエルが胸に手を当てて深く一礼する
背が高くプラチナブロンドの髪を蒼いリボン
でまとめ、金色の髪飾りが付いている、
ミハエルと同じ紫の瞳で、若い頃は(今も)
相当な美形だった事が伺える
「ミハエル、久しいな、話を聞こうか」
……………
逃げ出したい…
エミナとナズナは震える
何なんだこの世界は?
マーカスとかいう人の号令一つで、野原に
長いテーブルと椅子が10脚ほど凄い早さで
並べられ
真っ白いテーブルクロスに高そうな花瓶と花、
高そうな真っ白い皿に銀食器が整然と並ぶ
メイドと執事が数人でテキパキと料理を
運び始める
そこに三人座らされたまでは良かったが、
目の前に出されたモノが理解出来ない
何?この口の空いたビンの赤い液体?
(ただのグラスワイン、エミナとナズナは
ジョッキと木のカップしか知らない、グラスを
初めて見た)
大きな皿に大きな肉、執事達が取り分け、
皿にちょこんと載せると二人の前に出す
ナイフとフォーク、
それは二人とも知っている、
しかし大問題なのが
『肉は骨を持って手掴みで食べる』
しかやった事がないのだ
二人とも手が出せないで下を向く
恥ずかしい、屈辱、バカにされてる、
いや、自分たちが何も知らなさすぎる…
「ナズナ」
「ふぇ…?」
ハルキが後ろに居た、
後ろから私の両手を持つ
「ひっ!」
「落ち着け、任せろ」
私の手を上手く誘導して一口サイズに切る
「エミナ、マネしろ」
一緒に見よう見まねで隣のエミナも切る
「わりぃなぁ、テーブルマナーなんざ馴染みが
無くてよ、俺が今教えるわ」
周りのメイドや執事達に言うハルキ
涙が出る、
恥ずかしいのか嬉しいのか解らないけど…
でも…ありがとうハルキ
離れた席から見る二人
「良い仲間に恵まれているようだ」
大臣は見ながら微笑みワインを飲む
「はい、幸運です」
こちらも
「上位なのを隠していた、ということは
私の仕事は拒否する…そうなんだな?」
「はい、ハンターを続けようと思います」
「どうしてもか?」
「両親は全て失った所から立ち上がりました、
誰かの庇護下に入っては顔向けできません」
「ふむ…素直だが実直で頑固…
ハインツとアルトの子だなぁ」
目を細める
「しかし叔父としてお前が可愛いのも事実」
手を組むと
「条件を出す」
「そう来ると思いました」
「隣の大陸は知ってるな?」
指差す
「はい、存在位は」
「何度か調査隊を送ったところ、そこの住人
達は国と言う概念が無い、昔の集落の集まりだ」
顔を見てくる
「まさか…入植の…」
シュレイド国の植民地に?
「まぁ、本心はな…しかしだ、表向きは
モンスターから人を守るハンターを送ってくれた
『よき隣人』になれればな」
「それになれと?」
眉間にシワが出来る
「それならハンターを続ける事は反対する
理由が無い、むしろ全力でやればよい」
「…しかしギルドが……まさか!
有るんですか?!」
「今向こうの漁港、タンジア港を交易港に
改築している」
「ふうっ」
ミハエルは上を向きため息をはく
「有力なハンターにも声を掛けていてな、
各地のギルドマスターにも連絡した」
「…手回しが…いささか良すぎる気が…」
「偶然だ、私としてもお前の活躍が楽しみだ」
ニコッと笑う
ハンターは続けられる…
書士隊の役職でもない…
そう、デメリットが無い…
条件?そう、条件にはならない
隣の大陸で好きにハンターが出来る?
これは罠では?
デメリットは…シュレイドから出るだけ?
「…向こうでは連絡手段などは…?」
どこかに穴は…
「今郵便を試験していてな、
それを使うつもりだ」
ほう、探りだしたな
「ギルドナイトなどは?」
監視や密告
「ハインツに連絡済みだ、
良くしてくれるだろう」
スキは無いよミハエル
「書士隊はどうなんでしょう」
叔父上の直属…おそらくここが本命
「今調査隊を送っているが、
安全が確保出来れば…」
「失礼、少々質問が」
!!!
周りの兵士や執事、特にマーカスが睨む!
ハルキが突然喋り出した!
三人共にビックリする、その様子を見ると
「あのなお前ら、
俺だって一応礼儀は知ってんだぜ?」
姿勢を正すと
「お言葉を遮り失礼致しました、先ほどの
調査隊にマルク教授は参加されていますか?」
(え?!やだ!ハルキが何かカッコイイ!!)
ナズナは見とれる
「ナナキの息子、ハルキですね」
大臣はゆっくり立ち上がると
一礼する
「何をなさいます!!」
マーカスが叫ぶ
「叔父上?!」
周りも凍り付く
「皆聞きなさい、彼の父親は20年前に
この国を救った英雄です」
周りを落ち着かせる、兵士の中には剣に
手を掛けた者までいる
「礼を言う機会が無く…こんなに遅くなって
しまった…許されよ」
もう一度礼をする
「困ります、一国を預かるお方にそのように
されますと、立つ瀬がありません」
ハルキも一礼
「…マルク教授は後から行かせる…それとハルキ、
君に限っては言葉を特に許す」
「何を仰いますか!!」
マーカスが激昂するが
「ナナキはたった一人残って災厄を止めた、
せめてもの償いだよ、それにな…ナナキの
働きが無ければハインツとアルトも
…何よりこのミハエルさえ存在しなかったかも
しれんのだ」
マーカスと兵士達をなだめる
「では…
何で後なんだ?あの才能ならモンスターの
調査が早いだろ?」
ちょっと大丈夫なの?!
皆凄い目でみてるよ?!
ビクビクするエミナとナズナ
「あの才能を継げる人材が居なくてな、
彼にもしもの事があったらな」
「なるほどな、絵の授業で教えられたけど、
誰も出来なかったわ」
3分もあれば正確に描いてた
「およそ常人には理解し難いが、あの才能は
国の宝で代えが効かないのでな、
それに子供も生まれて今は此方に居たいだろう」
「子供っ?!」
「聞いていないのか?女の子だそうだ」
この男がハルキか…
ギルドからは期待されている、
その勘の良さは本物かもしれん
ミハエルが考えるために『時間稼ぎ』に
でるとは…
本能か理詰めかは判断しかねるが
…確かに逸材だ
それに…やり口がナナキとまるで同じとはなぁ
口元を隠して笑う大臣
「叔父上」
「何かな?」
座るとワインが注がれる
「先程の話、僕に何の不利益もありません」
「そうだな」
そこまでは当然理解する
「条件の本質は僕に向こうへ行かせ
『先遣隊』として『自分の目』にすること」
「うむ」
常人レベルの理解度、
さぁその先は?
「そして叔父上の真意は、将軍の派閥より
先に利権を奪う事」
ミハエルはチラッと関所を見る、この場所を
指定したのはそれに気付かせるヒントだ
「それでこそ我が息子」
「僕は甥です」
ワインを飲み干す
「将軍は不正な蓄財をしていてな?
少々目障りになって来た」
マーカスに目配せすると数人の兵士が
関所へ向かう、いつの間にか関所の兵士は
建物に入ってしまっていた
「結局僕は…政争の駒なんですね」
「無理強いはしたくないしな、
こんな回りくどい事をやってみた、
王都まで来ていたらどうなっていたか…」
エミナとナズナを見て笑う
「仲間に手を出させなかった事は
…感謝しています」
ミハエルは頭を下げる
だから直接来てくれた
「お前の大事な仲間だからな」
立ち上がると
「隣の大陸で見聞を広めなさい、
それならハンターを続ける事を認めよう」
…………
大臣達は船に乗った、出航準備をしている
見送る四人
「すげぇ戦いだったな?」
「2頭同時より疲れました…」
「戦い?」
「どういう事?」
二人には何の事だか…
「ハンターは続けられるな?」
「隣の大陸という条件付きですがね」
「どんな所だろ」
「あのさ…私は…」
下を向くナズナ
「あ?行かねぇの?」
「行こうよ!ナズナ!」
「行っても良いの?」
「当然でしょう」
笑う
誘ってくれる…
これって嬉しい
…………
船内
「当然ですが、勝ちましたね」
笑いかけるマーカス
「まだまだ子供で不安定」
こちらも
「しかしハルキは良い目隠しになってくれた」
「あとは時間との勝負ですか」
「さて、止めを刺すとしよう」