各地のギルマスも
ミハエルの両親も元ハンター、
故にハルキの
『隠した才能』に目がいった。
だからミハエルに本気でハンターを
やらせたい、そうすればハルキが
本気になる、
これが彼等の思考となった。
ミハエル自身も自分がハンターを
続ける事に目が行った。
「ミハエルは自分が見えていないな」
国務大臣ルキウスの真意は
利権ではない、王家の分家であるのに
跡継ぎが不在という問題がある。
弟のハインツは家を飛び出してしまい、
その息子ミハエルもハンターになって
しまった。
しかもハインツは四英雄の称号まで
持っている、その息子ミハエルも当然
ハンターとして期待される。
本人に自覚は無いが、
今までミハエルは四大英雄の
『庇護下』に居たのだ。
今回の接見でミハエルに『自分の意思で』
隣の大陸に行かせる事に成功しそう。
見方を変えれば『四大英雄の庇護下』から
『ルキウスの庇護下』に『自分の意思で』
来させる
ついでにハルキも自身の指揮下に。
「ミハエル様から政争の話が出た時は、
内心笑っていたのでしょう?」
マーカスが笑う
「関所をヒントだと勘違いしたのかな?」
「勘違いさせましたよね?」
だからこの場所を指定した
ミハエルに将軍派を匂わせた、
結果政争だという結論に至った
しかし真実はミハエルの思考の誘導
「問題はギルマス達の思考速度だ、
数日中に気付く…」
懐から手紙を出す
「それでは…急ぎましょう」
笑うマーカス
「トドメと行こうか」
船が浮き上がると
ルキウスはミハエル達を見おろし
「明後日ココット村に船を送る!それと!」
手紙を落とす
ヒラヒラ落ちてくる
「子供の戯れ言ではあるが
読んでおきなさい!」
手紙を拾う、上を見ると手を振っている、
ミハエルも振り返す
………
帰り道
「何の手紙だ?」
「何だか変です」
白い封筒にミハエル様へ、
と綺麗な文字…そして封蝋
「子供の戯れ言とは…」
出てきたのは金細の入った
高そうな便箋に…王家の紋章!
「なっ?!」
「どうした?」
「何?」
ナズナも見る、キラキラした紙でキレイ
手紙を読むミハエル、
しかし次第に手は震え、冷や汗がダラダラ出て来る
「お前どうした?!」
「恐ろしい事が…」
「ちょっと見せて」
エミナが手紙を取る
内容 概略
突然の手紙で失礼します、
わらわの愛する未来の旦那様、
どうやってこの思いを伝えたものか
考えて居たところ、大臣が届けて下さると
仰られました。
今度会いに行きます
貴方の姫からミハエル様へ
「姫ぇ?!」エミナが叫ぶ
「旦那様ぁ?!」ナズナも
「ミハエル!こいつぁまさか!!」
「急ぎますよっ!!」
街道を早足で歩く
「やっぱりアノ人か?」
恐る恐るハルキが聞く
「自分を『わらわ』と言うのは
第三王女に間違いありません!」
「ねぇ!王女って何?!」
小走りになるナズナ
「あの第三王女なの!?」
普通に走りだすエミナ
「おい!ミハエル!速すぎだぜ!」
段々速度が上がる、
走り始める
「ココット着くまでに力尽きるってば!」
「ペース落とせ!」
「速いぃー!!」
第三王女?って何
…………
ギルド
「なんじゃとおっ?!」
手紙を見せるとギルマスの顔色も変わる
「そう言う…訳で直ぐに…発ちます」
汗を流し、息が乱れる
「やべぇぜ?」
「どうなるんだ?」
「目ぇ付けられてんのか!」
ざわつくギルド
「あのー…」
ナズナが手を挙げると一瞬静寂が訪れた
「第三…王女って…?」
走り疲れた…
「お前知らねぇのかよ!!」
「あのワルガキ!」
「何言ってくるか解んねぇヤツだ!!」
「飛んでもない依頼を…
気分で出すんです…機嫌を損ねたら…」
ミハエルが疲れた顔で
「ミナガルデにラージャンの討伐依頼
した事あったなぁ、しかも理由がヒデェ…」
オリベも思い出す
「理由?」
ラージャン?
「毛皮で……コート作りたいだけだった」
え??コート?…は?
「何か断れない感じのクエストを…?」
出してくるの?
「自分が王女…であること解って…
無いんじゃない?」
エミナも疲れた
「自分の権力…解っててだったら…尚悪いぜ?」
ハルキもゼェゼェ言っている
「一応は『王家』の勅命だからのぉ、
ギルドとしても受けない訳にはいかんからの…」
明らかに嫌がらせの様なクエストが
ココットに…それは避けたい
ギルマスのため息など初めて見る
「このままではこの村に彼女自身が来て
しまいます、城からの脱走は一度や二度じゃ
ありません」
「うむ、それは避けねばの、ドリス!
何とか動向を探ってくれい!」
「了解しました!」
「ナズナさん、ベルナ村へ連絡を!」
「は、はい!」
遠くに行くんだ、親に一言挨拶は必要だ
「直接行って来てもいいぜ?」
「私も付き合うよ?」
そうか、それでも間に合う
……………
「今頃ココット村は…」
大慌てでしょうか
「あのココット老から初めて一本取れそうだ、
これでルーメル・シュレイド家は
終わらずに繋がるかも知れん」
自分の手にミハエルが落ちる
これからの可能性は…
1 挫折して帰って来たなら家を継がせる、
向こうの経験と実績があれば、
外務大臣の下に着ける事も可能
2 英雄に成る程なら知名度も利用して
家を継がせる上、
やはり外務の仕事に就きやすい
3 反発するようなら第三王女を
焚き付けて結婚させる、当家の血縁を再び
王家に近付けさせる事が可能
他にも不安要素はあるが、最大の壁だった
竜人を遂に出し抜ける
「上手く行きますか?」
「マーカス、国務大臣は君に継いで貰いたい、
君の手腕も期待してるよ?」
「一番の悪手は…」
「挫折してもハンターを続ける事、
まぁ何にしても…」
自分の意思でこちらに来た事実があれば…
「四大英雄には渡さない…ですか、
しかし第三王女はいくらなんでも…」
制御出来るか?
「ミハエルを何度か王宮に呼んで偶然
会わせていたからな、ここで役立てよう…
しかし第一王女ではなく、
第三王女が見初めるとはなぁ…」
「偶然ですか?」
笑う
「偶然だ」
こちらも笑う
……………
先日 王都 王宮
「ルキウス、ミハエルとはいつ会えるのじゃ?」
ドレスに着られた9歳の姫
「ハンターですから転々と…そうそう、
今度会う約束があります」
「わらわも行くぞ!!」
「それはいけませんなぁ、
ミハエルが姫様に会う準備ができません」
「準備など要らぬだろう」
「姫様、ミハエルの前に出る時は
何を御召しになりますか?」
「それは一番良い靴にドレスに…」
「それです、ミハエルには姫様に
会うためのローブも靴も無いのです」
「ならば直ぐに準備させよ!」
「それが今は貧しい村におります、姫の前で
ミハエルが恥ずかしい思いをしてしまう気が…」
チラッと横目で姫を見る
「ぐぬぬぬ…」
怒り顔の姫
「マーカス、書簡を」
ココット村からの手紙を清ました顔で
読むルキウス…
「!、ルキウス!ミハエルに手紙を書くぞ!」
「それはようございます!
このルキウス必ず届けましょう!」
……………
「手紙まで書かせるとは…」
メガネを直す
「書けとは言っていないぞ?」
ニッコリ笑って、すっとぼける
「ようやく手紙の真意が解りました、
証拠ですね?」
「その通り、姫様が一緒に来ても意味は無い」
ミハエルが姫に会った所で何にもならない、
手紙という形なら竜人ココットが目にする
これが一番良い形
ミハエルは急ぐし、
竜人は『とばっちりは御免だ』という思考になる
時間と余裕は与えない!
「こんな策謀をせずともご自身が結婚して、
お世継ぎを作られては?」
マーカスは目頭を摘まむ
「私の人生に自由は無かった、せめて
恋愛位は自由にさせてくれ、それにな…」
メイド達に囲まれるルキウス
「『完成品』を手に入れた方が早いだろう?」
「まったく…善と悪、
ルキウス様はどちらですか?」
「私が悪だと言いたいのかな?」
ニコッと笑う
「恐ろしいとは思います」
私が長年仕えているのは…
本当に自分の意思か?
「私は嘘を言った事が無い、
ただ人の『勘違い』を指摘しないだけだよ」
……………
ナズナの家
狭くて板と土、藁で出来た粗末な建物
「あんた本当に行くの?!」
「そんなに遠くにか?!」
「うん…あの…んーと…」
ナズナは言い淀む
「ナズナ、挨拶はキチンとしろ」
ハルキの真面目な声色にビックリする
「ハルキ、そんな怒るように言わなくても…」
エミナも遠慮がちになる
関所の件からハルキの知らない一面が
見える、私達の知らない別の顔
「あのな、ハンターは死ぬ事だってあるんだ、
これが最後かも知れねぇんだぜ?」
そうか…そうだよ、
最近は緊張感に欠けていたかも
「エミナ、外出るぞ」
二人は外へ、気を使ってくれたのか?
「ふう、お前がハンターになっただけでも
驚いたのに、今度は海を渡るのか」
イスに座る父
「村の中で結婚して村で暮らすものとばっかり…」
おろおろする母
「私だってそう思ってたよ、
けどさ、皆が行くし」
「皆はいいんだ…お前自身はどうなんだ?
行ってみたいのか?」
私自身?
私は……
私は………?
エミナ達と離れたくない
そう、
『仲間』でいたい!!!
「あのね、お父さん、この村にはさ、
思い出がいっぱいあるよ?」
でも最近は悪い思い出ばっかりで…
毎日辛くて隣村に逃げたんだ
そこで色々気付かされた
お金の大切さ
家事の大変さ
一人で生きる事の辛さ
誰かが側にいる嬉しさ
ハンターの達成感
人に教えて貰える事のありがたさ
自分が取っ付きにくい無愛想な人間
だった事もベルナ村から出て知った
もっと社交的にしないと
ダメそうなことも知った
人と関わる事で自分を知れる事を知った
ビールで酔って歌う事も、
なぜかツインテールにする事も
年下が好きな事も
もちろん悪意もイジメも世の中に
転がってるみたいだけど
ココット村に行かなければ
解らない事ばっかりだった
エミナ達に会えなかった
仲間でいたい人達に出会えなかった
それこそ『視界の外』が見えなかった
「だからさ、もっと色々知りたい、
世の中を見てみたい」
……………
帰り道
「知らなかったよ、親の夢なんて」
そんな事も知らなかった、
私って親とさえコミュニケーションして
なかったみたい
「良い機会だったな」
「ナズナの両親も村から出たかったんだぁ」
隣の大陸に行く事は許して貰えた
「さっき村長と話してたんだけどよ?」
「?」
「絶対に村に戻って来てだって」
「なんで?」
普通戻るよ?親いるし…
あぁ、イジメの件か…
「ギルド作るんだとよ」
「詐欺の事件が効いたみたいね」
あー、って言うかベルナ村は
人の流れがないから…
チーズと野菜買う行商人だけだし…
だから詐欺に引っ掛かる
「私ギルドで何するんだろ?」
カウンターでギルドガール?
それはそれでイイかも…
ミハエルの帰りを待つとか…
イイ!!それいい!!
おかえりなさい、ミハエル
きゃあああ!
「教官じゃね?」
「そんなのできないよ!」
いきなり現実に引き戻された気分
「でもさ、ナズナの『居場所』は
確実に出来たねぇ」
優しい目で見てくるエミナ
居場所か…
考えてみれば…
無かった…
作ろうとさえしなかった
居場所は勝手に出来るもの
そう思っていたけど、ある時気が付く、
自分で作らないと無いんだ。
その焦りが承認欲求になるのだろう。
ネットの中にソレを求めても返ってくるのは
現実だろうか…