生きることは悩むこと 2   作:天海つづみ

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今回は、ただの繋ぎの話です


叫ぶ意味とカッコ良さ

 

「さむーっ!」

「エミナ!中に入れ!」

 ハシャイだエミナもこの寒さは

辛くなってきた

 

「ナズナさんは平気なんですか?」

 

「私はベルナ生まれだから

雪も見たことあるし」

 飛行船から見下ろす、

王都の領地を掠めながら東へ飛ぶ

 

「シュレイド国って畑が一杯なんだね」

 黄金色のマダラ模様に見える

 

「国土の三割ほど…

平地のほとんどが麦畑ですからね」

 

「ビールの元ね?」

 

「どちらかと言うとパンの元です…

ナズナさんはすっかりハンターに

染まりましたね?」

 

「?」

 

「麦=ビールという考え方ですよ」

 爽やかに笑う美形

 

 うわぁ恥ずかしい

 

「オッサンっぽくなってんじゃね?」

 ドアの隙間からハルキが首だけ出す

 他に言い方無いのか?

 

 風にもよるが、早ければ五日程で

タンジアに着くらしい

 

 ナズナ達も中に入る

 

「すげぇよな!歩くとミナガルデと

ドンドルマの間は2ヶ月掛かるのにな!」

 

「それも王都を通って最短で、ですからね、

この船はその距離を四日で行けるそうです」

 

「よくこんな最新のモノに乗れたわ!

さっすが大臣の甥っ子!」

 窓から下界を見おろす、

 エミナはハシャぎっぱなし

 

「皆に出会わなかったら…

一生乗らなかったなぁ」

 ワインの味もテーブルマナーも、

摂政に会うことも

 

 それに…

 

 親の夢を聞く機会も…

 

 

 初めての飛行船にエミナとハルキは

浮かれている

 

 あ、そういえば

「皆は親に連絡は?」

 

「私は伝書鳩飛ばしてもらった!」

 

「んと、心配とか…」

 するでしょ?普通

 両親と祖父母の話しも聞いたし…

 

「ハンター始めた時点で覚悟してるってば!」

 手をヒラヒラしながら

 

 そんなもんなのか?

 

「ミハエルは…」

 

「叔父がすでに」

 だよね

 

「ハルキは?」

 

「まぁ…怒るだろうな」

 ボリボリ頭を掻く

 え?もしかして知らせてない?

 

「ハンター始めるのも反対でしたからね」

 ニコッとハルキを見る

 

「そうなの?」

 知らせてないんだ

 

「…勝手に海を渡ったとなれば」

 

「拳骨じゃ済まなかったりねぇw」

 

「お母さん恐いんだ?」

 なんだ、ハルキ可愛いトコあるじゃん

 

「ハンターにさせないために学校に

行かせましたからね」

 

「成績優秀だったから教授の下の…

なんだっけ?」

 エミナが首を傾げる

 

「教員になれって言われたけどな、

蹴ってドンドルマに帰った」

 ドカッと座り直して腕を組む

 

「なんか勿体なくない?そこからハンター?」

 キョウイン?

 

「あぁ、目の届く所で食って行くには

丁度良かった」

 

「お母さんの近く?」

 ハルキって案外親思い?

 

「母ちゃんな、ドンドルマの

ギルドマネージャーなんだよ」

 

「ギルドマネージャーって…」

 確かドリスさんが…

 ギルド全体を見る人?

 

「ギルマネは、ギルマスの次で、実質

一番偉い人だよ」

 

「そうなのっ?!」

 

「四大英雄は実質的に名誉職になって

来ましたからね」

 

「俺は父ちゃん死んだからな、

俺までハンターは嫌がってる」

 

「でもハンターやりたいんだ?」

 

「なんかな…俺も…

引きずってんのかもな…最初の目標…」

  

 

 順調に飛行する

 

 今後はこの船が量産されるらしい、

 ちなみにコレが2号機で少し小さい

 

「ドンドルマ通過する時は船員が

教えてくれるってよ」

「地図地図!」

「まだまだ書きかけですね」

 船には地図があった、今まで調査隊が

地上で書いたモノに、飛行船から書いた

モノを合わせたのか、修正が途中で

ごちゃごちゃだが

 

 テーブルに広げる

「これドンドルマの山脈ね?」

 エミナが突っつく

 

「そうだ、で、次がユクモ連山地帯」

 東の進路を指でなぞる

 

「その先の大きな川の河口が

ジャンボ村ですね」

 

「エミナの村か、こんな遠くから来たんだね」

 

「あー、川の向こうには渡れないって

言われてたのは」

 エミナが川をなぞる

 

「ユクモ連山地帯でいきなり絶壁だからだな」

 だから南に大きく迂回する

 

「直線ならもっと近くなりますね」

 

 …あれ?北部の更に北、一年中雪の地域が

描いてない

 なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2日後 夜

「ドンドルマです!!」

 船員の声で甲板に飛び出す

 

「うわあっ!!」

 皆で声を上げる

 高い山々の中に明るい町がある、

どれ程の篝火を炊いているのか

 空から街見るとこんなにキレイなんだ!

 

「きれーい!!」

 ハシャぐエミナ

「これが俺の生まれた街か!」

 ハルキも

 

「ナズナさん、どうしました?」

 

「うん、キレイ…」

 嬉しい、そう嬉しいし楽しい、だけど…

表現出来ないって言うか…

 

 不安なのか?…

 

 遠くに来たから…

 

 ホームシック?

 

 エミナみたいに嬉しさって表現出来ない

 多分不安の方が強いんだ

 

「ねぇ!あっちの大きい光!」

「あれがユクモじゃね?!」

 ハシャぐ二人

 

「不安ですか?」

 

「胸が一杯って言うのかな、

この2ヶ月で変わり過ぎたから」

 苦笑いするナズナ

 

 

 

 …あ、不安かも知れないのに隠しちゃった

 

 『思った事は言えよ?』

 

 これがダメなのかも…

 もっと素直に…

 

 

 

 

 自分を誤魔化す事に慣れて

自分の気持ちを素直に出せていないナズナ

 

 

 

 

 

「隠さずに思った事は言って下さい」

 隠すのが下手ですね、

 まぁ私も不安ですがエミナのテンションに

水を差したくないですし

 これから…私は上を目指す…

 

 私もどこへ向かうのか…

 

 

 

 

 しばらくすると

 

「ねえ!あれあれ!!」

 更に遠く、小さな光

 

「ジャンボ村でしょうか?」

 違うと思いますが…皆が楽しんでますからね

 

「エミナ!叫んでみろ!」

「私飛んでるよーっ!!!」

 すっかり子供に戻って大笑いする二人

 

「ナズナさんはどうです?」

 

「へ?何叫ぶの?」

 そんな気分じゃ…

 

「何でもイイから言ってみろ!」

 

「え、あ、と…」

 人前で自分を主張する、

 それが恐くて苦手…

 

 だけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カリナのバカぁアアアぁ!!」

 

「だっひゃっひゃっ!!」

「ぶひゃひゃひゃ!!」

 

 

 

 叫ぶとスッキリする!

 自分の気分って自分で変えられるんだ!

 

 

「ミハエルって爆笑しないね」

 ナズナは本音をブツけてみる

 

「ガキの頃は笑ってたぜ?」

 

「そうなの?」

 考えてみれば喜怒哀楽の感情を

抑えてるように見える

 

「いつも泣きべそかきながら

一緒に訓練しててよw」

 

「うそぉ!このミハエルがぁ?!」

 

「……言わなくても良いじゃないですか…」

 あ、照れてる、弱点発見w

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

「うわぁっ!なんかすごーい!」

 エミナが跳ねる

「ひゃー、派手だね…」

 ナズナはただ見入る

 

 タンジアの港

 遠くに大きな灯台

 入江の港を多くの職人達が改装している、

 大きな生物の骨を並べ、間に布を張り

屋根にするのだろう

 

 二人が驚くのは港の色合い、

 赤と黄色、青と緑、原色が踊っている

「私って地味な世界にいたかも」

 緑と茶色の世界から…

 目がチカチカする

 

「この色合いはバルバレに近いですね」

「南部の人間が来てるんだな」

 シュレイドの南、

大砂漠周辺の村に多い色合いらしい

 

 奥に進む、

石畳もまだ全部は出来ていないが、

職人達が賑やかに作業している

 

「これは…ギルドですね…」

「すげぇ、建物じゃねぇ!この広場全体か!」

「何か良い匂いするー!」

「あれじゃない?」

 ナズナは指差す、大きな…鍋?

からカニの爪がはみ出している

 

 エミナと二人で行ってみるが

 

「これザザミなんじゃ…」

 エミナは思い出す、ザザミの爪の中身を

 

「っぽいよね…」

 見た目はともかく美味しそうなこの匂い

 

「ハルキー!見て見てー!」

 エミナが呼ぶが…ハルキはギルドガール

の一人と見つめあっている

 

「うっわ!早速ナンパ!」

「でも何か変じゃない?」

 他の娘はギルマスと話すミハエルに

見とれている、それが普通だ…

 

 なんであの娘だけ…?

 

 

「俺さ、今日ここに着いたばっかりなんだ、

案内してくれる?」

 ニコッと笑うハルキ、

 さぁ、この子供っぽい笑顔にコロッと…

 

 すると奥の銅鑼の前から白い衣装の娘が

ハンマー?を置いてハルキに近付く

 

「ちょっと!行こうナズナ!」

「うん!」

 

 カウンターを挟み顔が近付く

 

 

 きゃあああ!

 ナンパ成功?!

 

 

「あれ?あの娘…」

 エミナが目を細める

 

 

 (やったぜ!成功だ!

こっから食事に誘って…)

 ワクワクするハルキ

 

 ニコッと微笑むギルドガール

 

 マジか?!

ミハエルもいるのにハルキに?!

 

 …と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母様に報告しますよ?」

 

 

「え(濁点)……………っ!!」

 凍りつくハルキ

 

 

「あー、やっぱりエリちゃんだ!!」

 エリちゃん?

 

「お久しぶり!エミナちゃん!!」

 手を取り合う二人

「ナズナ!この娘はね、ドンドルマの

ギルドガールでエリナちゃん!」

 

「初めましてエリナです」

 ニコッと笑うと眼鏡を取り出し

知的な顔になる

 エミナと一字違いで同年代

 

「初めましてナズナです」

 一通り挨拶を済ませると

 

「ハルキさんは相変わらずですね…」

 眼鏡を上げながら漆黒の目が冷たく見る

 

 え?声のトーンが低いよ?

 

「まさかエリちゃんが解らなかったのぉ?」

 非難の目

 

「…同じだけど…まさかエリナとは…クソッ!」

 ハルキは顔を抑える

 

「同じって何ですか?」

 低い声のエリナ

 

「胸」

 

 「「「最っ低」」」

 ハモった……

 

「あなた人を顔で覚えないんですか?」

 エリナに睨まれる

 

 

 

 

 

「若いもんはいいのぅ!!」

 竜人の多分ギルドマスターが声を

掛けて来る、船乗りの格好だが、

頭の帽子には郵便屋さんと同じ鳥?

 しかし…酒臭い…

 

「取り敢えず採取に向かいましょう」

 孤島?とか言う狩り場へ行く手続きを…

 あまり手際が良くない

 

「すみません、研修は終えてますがまだ

不馴れなモノで…」

 キャシーと呼ばれた娘が頭を下げる

 

「各地から推薦された人員で

立ち上げたばかりで…」

 エリナも

 

「気にしませんよ、最初は誰でもそうです」

 ニコッと笑うミハエル

 当然ギルドガールの顔は

パアッと明るく、赤くなる

 

 

 腹立つ、なんか腹立つ…

 

「ナズナ、顔に出てるよw」

「っぐ!」

 

「お前ばっかりモテやがって…」

 

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 タンジア管轄 下位 孤島

 採取

 

 私達が第1号のハンターらしく、

他のハンターはまだギルドにいない

 

 つまりほぼ手付かずの状態の狩場、

調査隊が調べて狩場に指定されたばかり

 

「え?ハルキ?」

 

「何だ?」

 

「今日は真面目にやるんだ?」

 ハルキが虫網とピッケルを持っている

 真面目に準備してるのは初めて見る

 

 

「初めて来る所だしな」

 キャンプを出て歩く、

 前をミハエルとエミナが喋りながら行く

 

 

 

 

 

 

「!、あのさ、もしかしてだけど…」

 振り返るとハルキが居ない、

と、しゃがんでいる

 

 

 薬草を採取するハルキ…

 

 初めて見る姿…

 

 ハルキが明らかにただの薬草を取る?

 

 二人も私も『ただの薬草』とスルーした

 

 いつものフザケた感じも無い

 

 あの時クーラードリンクと薬草まで…

 

 

 

 

 

 !

 

 だから…もしかしたら…

 

 

 

 

 

「いつも…ポーチ一杯だったんじゃない?

だから採取出来なかったんじゃない?」

 

 何にでも…

どんな状況にも対応出来るように…

 

 

 

 ハルキは立ち上がると

「気のせいだ」

 ニコッと笑う、子供みたいに

 

 

 

 何だよ…カッコ良いじゃんコイツ

 

 




カラオケが無くならないのは多分これ、
ストレス発散が目的


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