生きることは悩むこと 2   作:天海つづみ

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一歩

「リタイアか…」

「面目ありません…」

 

 ギルドに帰って報告している、と、

 

「おい?!俺達より先にハンター居るぜ?!」

 ゾロゾロとギルドに30人ほど入って来る

 

「おぉ!!第一陣の到着か!」

 ギルマスが声を上げる

 

「なんだぁ?俺達が

 一番乗りだって聞いてたぜ?」

「何で先に居るんだ?」

「話が違うな…」

 明らかに装備の違うの三人がこっちへ来る

 

 上位より…上の…

 

 

 

 怖い…

 

 思わずエミナの後ろに退がろうとすると

 

 背中を叩くエミナ

 「背筋伸ばして、胸張って」

 並んで立つ

 

「だって怖い…」

 

「怖がんなくて良いってば、ナメられるよ?」

 

「私そういうの良く分かんないんだもん…」

 

「心配無いってば、ミハエルっていう

 特別な人がいるんだから」

 

「特別…」

 

 

 G級だろうか、大柄でキズだらけの男が

 ミハエルの前に立つと

「お前…その顔…」

 睨む様に見る

 

「何でしょう?」

 涼しい顔のミハエル

 

「その目の色と顔…お前確か

 ハインツの息子の…」

 

「はい、ミハエルです、以後よろしく」

 

「おぉ!アンタの親父には

 色々教えて貰ったぜ!!」

「ミナガルデで若い頃に指導されたぜ!」

「同じ歳なのに四英雄に成りやがった!」

 笑顔で握手する

 

「今度はぜひ、私達を指導して下さい」

 こちらも笑い一礼する

 

 あんな恐そうな人達と普通に

 コミュニケーションできてる…

 

「今日から同じギルドの仲間だよ?

 仲良くしとくべきだよ?」

 ナズナに囁くように言う

 

「愛想良くして…」

 苦手だよぉ…

 

「ムスッとしてたら何にも始まらないよ?」

 笑う年下

 

 ムスッとしてた…ココットで…

 

 だから何にも始まらなかった…

 

 だから何も知らない…

 

 いつもウジウジ意味の無いこと考えてた…

 

 だから…

 

 一歩前に出るナズナ

 

 (ナズナ!いきなり大丈夫?!)

 (ナズナ、勇気出したなw)

 (これは予想外です)

 

 恐い!怖い!コワイ!こわい!

「あ…あの…あの…」

 

「なんだぁ?嬢ちゃん?」

 デカイ!コワイ!キズだらけ

 近くで見るとモンスターよりコワイ!

 

「ミ!…ハエルのパーティーしてます!

 ナズナ!です!」

 出した右手が震える!

 胃がせり上がる!

 足も震える!

 目が合わせられないし言葉使いも

 メチャクチャ

 思わず大声で叫んでしまった

 

 歯を食い縛る

 

 一瞬ギルドに静寂が訪れる…

 

「ほぉう…」

 その様子を見ると

 ニヤリとするモンスター(失礼)

 ナズナの前まで来ると握手ではなく、

 ナズナの頭に手を乗せる

 傍目からだと産まれたてのケルビの

 頭に手を乗せる…

 

 アオアシラ?

 

 

 

 重い!

 オッサン臭いぃ!

 

 …けどなんだこれ?!

 

 すっごい熱い!

 

 

「ヨロシクなぁ!ヒョロい嬢ちゃん!」

 

 

 頭をポンポンされる

 

 

 

 

 ……………

 

 

「怖かった…」

 まだドキドキする

 

「でも挨拶できたねぇw」

 内心ビックリしたエミナ

 

「まぁ大成功だわなw」

 

「勇気ありますね」

 一歩踏み出しましたね

 

 ギルマス達と話している

 さっきのパーティー、

 どうやらミナガルデから来たG級の

 三人組らしい

 見た目は山賊だが…

 

「アンタすごいねぇ!」

 こっちのテーブルに女ばかりの

 パーティーが来た、ナズナの周りに集まる

 

「私ら怖くて船で話せなかったんだよ?!」

「やっぱりアンタもG級?」

 見た目が派手な女が四人

 

「いや、あの…下位です…」

 下を向くナズナ

 こういう空気が苦手…

 こういう派手な人が苦手…

 

 と、

 

「上位目前でよ!こっち来ちまってな!」

 ハルキが口を挟む

 

「あ、そうなんだぁ!」

「私らも下位でさぁ!」

「何か知ってることあったら教えてよ?」

 同時に喋る、騒がしい

 

「もちろんです、私達も来たばかりですから

 色々教えて下さい」

「…カッコ良い…」

「美形…」

「背ぇ高い…」

 立ち上がっただけのミハエルに見とれる

 

 小声でエミナが

「ほら、ナズナ、背筋伸ばして」

 

 そうか!私がこの空気苦手な事を察して…

 二人とも間を繋いでくれてるんだ!

 

 もう一回…さっきより怖くないはず…

 立ち上がると

「よろしくお願いします」

 ナズナは右手を出すと

 

「私はリーダーやってるケイシャ、

 ヨロシク!」

 握手する、派手な赤いショートヘアーに

 ジャラジャラと良く解らない

 アクセサリーが大量

 

 地味と派手が握手している

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

「っつー事は何か?その鳥だけじゃあ

 ねぇって事か?」

 

 ナズナ達のテーブルに大量の料理と酒、

 全員が話を聞くために集まり奢る

「そう!リオスの声で吠えたんだ!

 多分呼んでるんだよ!」

 デカいカニの爪を割るエミナ、

 珍しい料理に上機嫌

 中年の男のハンターには娘に…

 見えるのだろうか?

 

 

「昨夜聞いた話では他にも

 呼ぶらしいですよ?」

 ケイシャ達女性陣に囲まれ、酒を注がれ

 ても涼しい顔のミハエル

 普通の男なら嬉しい筈だが…

 

 

 そしてそれが気に入らないだろう

 若い男達はハルキの周りに

「つまり常に合流の危険が?」

 

「あぁ、そうなる、

 それと翼爪が異常に固いぜ?」

 会話はしているがジト目でミハエル達を

 見ている、もちろんハルキも

 

 

「なるほどな、先ずはコヤシ玉の用意だな」

「レイアの対策も必要か?」

「とにかく回復系と…」

 例のG級はナズナの周りへ

 

 怖い…なんで私の所に

 

 どうやら気に入られたらしい

 

「あ、あの、名前教えてもらっても…」

 

「あ?」

 頭をポンポンした人が顔を近づける

 

 ひぃぃぃっ!

 怖い臭いキズだらけ!!

 

「俺は…あー…俺はなぁ…」

 リーダーらしき人、鼻から耳まで真横に

 キズ跡がある

 磨り減ったキズだらけの赤い装備、

 赤い大剣、

 (アグナシリーズ、ナズナは知らない)

 日焼けした大男が言い淀む…

 

 …え?もしかして…照れてる?

 

「ダッハッハァ!そいつはチックだ!」

 仲間のスキンヘッドが笑う

 

「チック…」

 え?!この見た目でそんな可愛らしい…

 

 少し照れながら

「…チックだ…でコイツは」

 スキンヘッドを指差す

 

「オレはジュウジ」

 ミハエルと良く似た装備、

 多分G級のギザミ装備?と大剣、

 ちょっと小柄

 (それでもナズナよりデカイ)

 そして何だか軽い感じ

「そんでこっちが…」

 指差す

 

「俺はロクロウだ、ヨロシクな」

 岩みたいな装備にデッカイ槍

 二人に比べて口数は少ない、

 口髭に少し白髪が混じってる

 三人とも50才位か?

 

「まだギルドに情報の蓄積がねぇな」

「こりゃ探り探りやるべきだぜ?」

「俺達が一番上のようだし…」

 

「よし、

 情報を少しでも増やす事を目標とする」

 チックが指を立てる

 

「了解だ、

 その鳥瀕死まで追い詰めて見ようぜ」

 割りと残酷な事を言うジュウジ

 

「ギルドの運営に協力するとしよう」

 ロクロウの言葉でナズナは少し知る、

 唯一のG級、だけど一番上だが威張る処か

 ギルド全体のために動こうとしている

 自分達だけのためじゃない、

 他の責任?も背負っているのか?

 

 これがG級

 

 ココットで噂に聞いた、

 一人で兵士一軍に匹敵するという…人外

 

 ってか人外って何だろ?

 モンスターみたいってこと?

 

 

 

 …………

 

 

 次の日、朝

 ナズナ達がギルドに集まると

 

「今回はこんなもんだろう」

「せいぜい呼ぶのは2匹までだな」

「調査隊は追い詰めないからな、

 知らなかったんだろう」

 チックパーティーが帰って来た、

 早朝から狩りに出たらしい

 

「ホッホォ!これは凄い!」

「リオレイア及びロアルドロスの報酬も

 用意します」

 ギルドガールが大忙し

 

 聞けばクルペッコを瀕死の状態にしてから

 長時間追い回したらしい、

 そして呼ばれたリオレイアとロアルドロス?

 とやらまで討伐して来た

 

「条件付きのクエストにするべきだぞ?」

 チックの言葉にギルドマスターが頷く、

 クエストのレベルに修正が必要だ

 

「ナズナ!こっち来い!!」

 チックが呼んでいる

 

 怖い怖い怖い怖い

 

 おずおずとチックパーティーの前へ

 

「お前達の事前情報で楽だったぜ?」

 右手を出す

 あ、握手だ…昨日してないから?

 ナズナも右手を出す

 

「昨日は正直ナメた態度を取った、詫びる」

 握手する…ナメた態度?

 もしかして頭ポンポン?

 

「詫び代だ」

 ジュウジがキレイな羽を突き出す、

 クルペッコの飾り羽

 

「え、あの、貰えませんよ…」

 注目されてるし…貰う理由が…

 

「ナズナ、貰っとけ」

 ハルキ…

 

 ちょっと怖いけど受け取る

 

「勇気のお守りにすると良い」

 ロクロウの言葉の意味が解らないが…勇気?

 

「いきなり俺達に挨拶は怖かったろう?」

 チックはニヤケる

 

「足ガクガクだったなw」

 ジュウジも

 

「それを見る度思い出せ、

 お前には度胸がある」

 ロクロウの言葉が胸に響く

 

 

 

「良かったじゃねぇか!」

「認めて貰えましたね!」

「いきなりG級に認めて貰えるなんて

 凄いよ?!」

 

「違うよ、皆の情報教えたからだよ」

 

「いいや、お前の度胸が気に入られたんだぜ?

 名前で呼んで貰えるとはな」

 

 度胸…?

 

 勇気も…

 

 それが何なのか知らなかった

 

 でも今はちょっとだけ…

 

 

 

 

 

 

 




取引先の相手、
話したこと無い先輩や上司、
苦手なヤツ、
新しい習い事、

これら全てが『新しい世界』に繋がる

現状維持っていつかは飽きる


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