生きることは悩むこと 2   作:天海つづみ

22 / 30
大事な事を二つ

 

 カカッ!カカッ!

「来るぞ!!」

 

 前へ楽しそうにステップする鳥

「誰狙い!?」

「ナズナだ!」

「ひぃぃぃっ!」

 ペッコの足元を裏に回る様に転がると、

 明後日の方へステップする、余裕がある!

 

「よし!三回やった!」

 

「今です!!」

 動きの止まった所に斬りかかる

 

 

 

 …………

 

「本当に90度以上は曲がれないんだね」

 あのステップ、ハルキの言った通りだ

 

「前回食らったからな、覚えたぜw」

 ヘラヘラ笑う

 

 討伐成功

 

「ミハエル、凄かったねぇ!」

 

「皆が足止めしてたからこそですよ?」

 クエスト開始から頭を狙い、

 早々に嘴を破壊した

 

「嘴壊すと呼べねぇのか?」

 

「おそらく…」

 

「でもコヤシ玉は持ってないとダメだね」

 

「………作るの…?」

 あからさまにイヤな顔になるナズナ

 

 コヤシ玉、それはモンスターの糞を素材

 として使う、

 つまりモンスターの糞を手で採取する…

 

 ……イヤ過ぎる…なのに…

 

「あったぜ?」

「ちょっと少ないね」

「全部採りましょう」

 皆平気で手を突っ込む

 

 ベルナ村で飼っていたムーファ、そのフンを

 集めて片付けるのは子供の仕事…

 

 ナズナは一人で仕事を押し付けられ、

 集めたフンの上に蹴り倒されたりした

 

 イジメられた事を思い出してしまう

 突っ立ってうつ向く

 涙が滲む

 

 

 

 

 その様子を見ると

 

「ナズナ、最初は私もイヤだったし、女なら

 やりたくないけどハンターなら当然だよ?」

 

 ちがう…それだけじゃないんだ

 

「あー…ナズナが持つ分は俺が作って…」

 ハルキが言いかけると

 

「ダメです」

 ビシッとミハエルが止める

 

 (甘やかす事になります)

 

 ナズナの正面に立つミハエル

 

 クックの時もそうだった、ナズナさんは

 コヤシ玉を持たない

 

 ドスランポスの乱入の可能性があるのに

 

 それに…

 

 ベルナ村は家畜で生計を立てている、

 子供の仕事は誰でも解る

 

 その中でイジメられていればどうなるか

 

 ならば…

 

 

 

 

 

「イジメられっ娘のナズナ!!」

 突然ミハエルが叫ぶ!

 

 ナズナはビクッと体を震わせ硬直する

 普段から大声出さないのに

 

 

 

「…おや?返事がありませんね…

 そんな人は居ないようですね?

 …では…」

 少し膝を折り目線を同じにすると

 

「ハンターのナズナさん…」

 

 

 

 

 うつ向く、胸に手を当てる、

 防具の下、ネックレスに付けた飾り羽、

 ロクロウが言った…勇気のお守り

 

 

 

 

「………はい…」

 涙でグシャグシャの顔を上げる

 

 

「ここに居るのは誰もがハンターと認める

 ナズナさん、貴女だけです、過去の貴女は

 いませんよ?」

 

 

 

 

 

 

 そうだ、私は今ハンターなんだ

 ベルナのナズナじゃないんだ

 だから…

 

 

 

 

 

勇気……

 

 

 

 

 意を決して手を突っ込む

 気持ち悪い!臭い!

 

 

 

 

 コヤシ玉を作ると悪臭は無くなって、

 ポーチに入れるのも抵抗が無くなった

 

 『恨む、多分何十年でも』

 エミナの言葉が思い浮かぶ

 

 でも…今はハンターなんだ

 

 

「一つ克服しましたね?」

「この狩場は水だらけだ、どこでも洗えるな」

「さっき滝あったよね?」

 

 

 

 

「…………」

 皆気を遣っているのが解る、

 私はどうする?どうすれば…

 

 エミナは腕折った時、逆に明るくなってた

 

 なら私はどうする…

 

 

 顔を上げる

 

 

 

 

 

 

「あ、…案外…平気だね…」

 手を擦る

 

 三人とも笑顔になる、と、

 

「よし、今度は効果の確認だ」

 ハルキはコヤシ玉を持つとニヤリと笑う

「まさか!」

「ヤバッ!」

 エミナとミハエルが飛び退く

 

「へ…?」

 

 私の足元にコヤシ玉をぶつける

「いやぁぁあ!クサイぃ!!」

 何でこんな事すんの?!

 私傷付けておもしろいの?!

 

 涙目でうつ向く

 なんで?!

 

 悔しい

 

 悔しい

 

 悔しい!!

 

 

 なんで、何でいつも私ばっかり…

 私がダメだから…

 トロいから…

 

 

 

 ?

 静かだ…

 

 

 

 

 

 少し顔を上げて見ると、三人が見ている、

 笑っているわけではない

 悪意のある顔でも無い…

 

 ワクワクしてる?

 何か待ってる?

 

 私が何か…

 

 

 

 

「どうした?お前も持ってるだろ?」

 ニヤケるハルキ

 

 コヤシ玉のこと?

 持ってみる…と、

 明らかに笑顔になる三人

 

 

 …勇気!

 

「てい!」

 ハルキに投げる

「うぉっとぉ!!」

 器用に避ける

 

「何で逃げんのよ!」

 

「当ててみな!」

 すっごいイイ声で

 

「一回は一回じゃん!」

 連続して投げる

 

「ひゃひゃひゃ!そうだぜ!やりかえせ!」

 ハルキも投げる

 

「うわクッサ!だけどこれは…w」

「参加しない手はありません!」

 

 四人で爆笑しながらコヤシ玉を投げ合う、

 一面黄色の煙が立ち込める

 

「てめぇミハエル!おればっかり!」

「私は女性に優しいんです!」

「ナズナ!普通私に投げる?!」

「もう皆キライ!!」

 

 

 ……………

 

 

 

 

 滝で防具を脱いで全身洗う

 インナーだけだが恥ずかしい気さえ

 起こらない

 

「私としたことが…」

 目元を押さえるミハエル、

 コヤシ玉を投げ合うとは…

 

「なぁに大人振ってんだよ!」

 

「楽しかったぁ!」

 

「何か久しぶりに大笑いした」

 

 やっていることは低学年のバカ男子

 

「ナズナ、面白かったろ?」

「でもコヤシ玉無くなったよ?」

「また採取ですね」

「もうナズナは平気だし!」

 

 

「おや、ナズナさん、そのネックレス…」

 長い髪を搾るミハエル、彫像の様

 

「それココットのギルマスに返したヤツ!」

 指差す、エミナが着けていたらしい

 

「なんでお前が持ってんだ?」

 

「え?出発する時くれたよ?」

 古いガラクタみたいで着ける気に

 ならなくて、道具の箱に入れっぱなし

 だった、しかし飾り羽をくっ付けて首に

 掛けて来た

 

「ナズナ、それの意味は聞いてる?」

 真剣な顔で聞くエミナ

 

「へ?何にも聞いてないよ?

 持って行けって言われて…」

 

「帰ったら説明しますよ?」

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

「アンタら、何かクサイよ?」

 ギルドでケイシャ達が顔をしかめる

 

 お互いに顔を見合わせると

「ぶはははははは!!!」

 大爆笑

 ミハエルも笑う

 

「ちょっと、何?何なのよ?」

 

「コヤシ…玉合戦した」

 ナズナは笑いを堪えながら

 

「え?何の話?何の冗談?」

 

 更に大爆笑

 

 

 …………

 

 

 

 

「子供かアンタらは…」

 ケイシャに呆れられたが、

 今日の狩りの話を聞くと

 

 

「それは貴重な情報かも知れません」

 ケイシャのパーティーが狩りに出た辺りに

 漁村があった、

 そこの住人は生活レベルが低い代わり

 勇壮で、クルペッコ程度なら普通に狩って

 しまうそうだ

 (一応叔父上に報告しておきますか)

 

「元々強い人って確かに居るよね」

 エミナの母親とか

 

「四大英雄の時なんかロクな武器も無かった

 らしいぜ?」

 

「お父さんに聞いたよ、その頃はマカライト

 の溶かし方さえ知らなかったらしいよ?」

 

「つまり産まれながらの何かが違う…?」

 頚を傾げるミハエル

 

「まぁ弱くなってるかも知れんなぁ!」

 ギルマスが酒瓶片手に

「今は装備も道具も研究されて、

 便利になりすぎたかも知れん」

 

「その分弱くなっていると?」

 

「チックが帰って来たら聞くと良い、

 『強さとは?』ってなぁ」

 

 

 ………………

 

「強さ?」

「またメンドクセェ事を…」

「どう教えたモノか…」

 

 ナズナが聞くと普通に話してくれるチック達

 G級と普通に喋るため、周りのナズナ達に

 対する評価は上昇しているが自覚は無い

 

「元々強い人…って何が強いんですか?」

 

「ナズナ、難しく考え過ぎだ」

 チックが髭を撫でながら

 

「そうだな、例を挙げれば…」

 ジュウジが考えると

「ナズナ、お前足速いか?」

 

 ナズナは首を振る

 村でいつもビリだった

 

「じゃあお前は弱いか?」

 

 ???

 

「ジュウジ、それでは解らん」

 ロクロウが口を挟む

「強い弱い、そんなものは人間の世界の話だ、

 例えばリオレイアから見ればナズナも俺達

 も同じ人間でしかない、いくら早くても

 頑丈でもモンスターから見れば差など無い」

 

 あ、この人の話は解りやすい

 うなずく

 

「では何が強さの差を生むか…

 そこを考えるんだ」

 

 

「それは…恐らく経験でしょうか?」

 ミハエルが考えながら

 

「そうだ、どれだけ多くの攻撃を

 食らったかだ、その経験が強さになる」

 ロクロウって寡黙だと思ったら以外と喋る

 

 

 思い出す、ハルキが横から突っ込んできて

 ミハエルに怒られた

 

 

「その経験があれば避けるなりガードする

 なり『対応』ができるって訳だ」

 

 

 私が『対応』できるように経験を積ませ

 たかったんだ

 

 

「ロクロウは説明が上手ぇな、

 今言ったのが『普通のヤツ』な」

 ジュウジが言う

 

「普通?」

 普通じゃない人もいる?

 

「初めて見る攻撃さえ見切るバケモノなら

 一発も食らわねぇ、

 こっちは『天才』タイプだ」

 ジョッキを置くチック

 

「そんな人っていた?…んですか?」

 言い直すエミナ

 

「一人いた、ナナキだ」

 

 ロクロウの言葉にピクッと反応するハルキ

 

「アイツは一度見た攻撃は二度と当たら

 なかったそうだ、

 『ハンターの強さの差』ってのは結局

 『全部避けながら攻撃出来るか』って事だ」

 チックは頷きながら言うが…

 そんなの何年掛かるんだ?

 

「あの、昔の…装備の無かった人達って

 強かったんですか?」

 

 

 チックはナズナ達を見渡すと

「例えばだ…」

 いまほど武器、防具、道具も無い時代を

 想像しろ、切れ味は悪い、回復は弱い、

 一発食らったら死にかける、

 その上ネコタクまで無かった

 

 そんな時代のハンターは考えて研究し続けた

 どこを斬れば良いのか、

 どう避ければ良いのか、

 どうすれば効果が強くなるのか

 今より遥かにシビアにだ

 そしてモンスターの攻撃の威力、範囲もだ

 

「攻撃の研究…怖い…」

 ナズナも考える

 

「何だナズナ?お前も、ここにいるハンター

 全員も、一度はクックの尻尾に

 吹っ飛ばされてるだろ?」

 

 皆が頷く

 

「そうやっていく内に自然と覚えて考えるんだ」

 

「ガストンさんの教えはよ、

 『全モンスターの全攻撃を食らって覚えろ』

 だからな」

 ジュウジが笑う

 

「その言葉の意味を考えるんだ」

 ロクロウが珍しくニコッとする

 

「大怪我しそうだよ?」

 エミナが首をかしげる

 

 チックは笑うと

「攻撃全部食らう頃には対応力が

 高くなってるぞ?並みの人間が相手に

 ならない程にな、覚えがねぇか?」

 

 エミナは思い出す、

 兵士の五人位なら怖いと思わない

 

「普段モンスターの攻撃に対応してるヤツに

 とって、人間の攻撃なんて遊び程度だ」

 ジュウジの顔が赤い、ビールで酔ったらしい

 

「じゃあさ、ただの漁師なのにモンスターに

 勝っちゃうヤツって…」

 横からケイシャが思いきって聞く

 

「素人でも同じだ、

 何度も挑んで考えたヤツだ」

 

「ハンターと変わらねぇよ」

 

「本質は何でも同じだ、

 仕事も狩りも変わらない」

 

「やっぱりアイツ凄いんだ…」

 ケイシャの顔が赤くなってるような…

 

 

 

 

挑む…何度も…

 

 




特に前半が一番描きたかった話なのに、
サブタイトルが思い付かなかった

じゃれ合う事でキズ付くか、やり返すか、
ここの気持ち一つが分かれ道な気が
するんだ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。