生きることは悩むこと 2   作:天海つづみ

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自由とは?

 

「なんだか最近美人になったねぇ」

 洗濯物を干すケイシャ

 派手な化粧もアクセサリーも無く、

 普通の人になっている

 パーティーを離脱して3ヶ月になる

 

「やっと化粧して人前に出ても平気になったよ」

 苦笑いのナズナ、

 目元に赤い色が似合う様になった

 一緒に手伝う

 

 モガ と名付けられた村

 上位になってからよく来る様になった

 この高台は小さな農場があり、

 海からの心地よい風が吹く

 

「ねぇ、ハンターは完全に辞めちゃうの?」

 

「見ての通りだよ?もう無理だって」

 腹を撫でる、子供がいるらしいが

 まだ見た目は普通だ

 

 険悪になった元のメンバー達も今では

 喜んでくれているそうだ、

 他愛無い話をする

 

「ケイシャは実家に一回位は帰らないの?」

 

「あー…、あの砂漠の家か…」

 大砂漠の周辺にあるらしいが、ケイシャは

 両親が嫌いだそうで家を飛び出した

 そして食っていくためハンターになり、

 境遇が似ていたメンバーと出会った

 

「アンタは『帰る場所』があるんだなぁ」

 空になった洗濯カゴを持ち、ゆっくり歩く

 

 そう、私にはあの村が…

 

「アタシはそんなの無いからさ、

 アンタが羨ましいよ?」

 

 粗末なベンチに二人で座る、

 下の村と海が良く見える

 

「羨ましい?」

 何にも無い私が?

 旦那もいるし子供もできる人が?

 何で?

 

 少し間を置くと

「エミナから前に聞いたけど、アンタは

 イジメられてたんだって?」

 

「うぐっ、突然なに?」

 エミナ、何で言うのよ…

 

「でも帰る場所はソコなんだよね?」

 

「そう…思ってる」

 

 

 

 

「強いなぁアンタ」

 

 

「強い?」

 なんで?普通じゃない?

 

「嫌な事があった場所なのに…

 そう思えるんだからさ」

 ケイシャの両親は所謂『ろくでなし』

 だったそうだ、そこから飛び出して来た

「アタシはこの子の『帰る場所』に

 なりたいなぁ」

 腹を撫でる

 

「ケイシャは弱いんじゃ無いくて

 …何か自由って言うか…」

 知らない土地でいきなり結婚てなぁ…

 

 

「自由かぁ…自由ほど怖い物も無いけどね」

 

 怖い?

 

 ケイシャはニヤリと笑うと

「本当の自由ってのは『無法』の事だよ、

 簡単に言えば人を殺すのも自由」

 

「ちょっと…怖すぎだよ」

 

 笑うと

「それに殺されるのも自由、

 自分の行動の責任は全部自分だ」

 

「何かハンターに似てる」

 

「はぁ?似てないよ?」

 手を振る

「ハンターはギルドのルールを守る、

 その代わりギルドに保護されてんだよ?」

 

「あ、そうか、ネコタクとか支給品とか…

 それに…あと何か…」

 守られてる

 

「そう、自分の自由を少し制限される

 代わりに、組織に保護して貰える」

 村を見下ろすと

「村だってそうだよ」

 立ち上がり伸びをする

「『村の規律』の中で自由なだけだ」

 

「規律か…」

 

「ギルドのルール、村のルール、

 個人のルール」

 指折り数える

「自分を守ってくれるルールなら自由を

 制限されても仕方ない訳よ…

 この子の為にもね」

 

 価値観ってやつか…?

「ねぇ…ケイシャは今、幸せだよね?」

 

「さあねぇ!忙しくて考えてる暇ないよ!」

 笑いながら手を振るが…

 幸せだよね

 

「自由…か…」

 誰かと組むのも

 他のギルドに行くのも自由…

 ハンターとしての自由…

 人としての自由…

 

「で?アンタはどっちと付き合うの?」

 村長達と話す二人を指差す

 

「え?!!」

 

「誰と付き合っても自由だよ?

 制限されてないし」

 笑いながら坂道を降りていく

 

 

 自由って人によって考え方が全然違う

 …これが価値観か…

 

「ナズナぁ!レウス狩り行くぞ!」

 下からハルキが呼んでいる

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

「うおらぁっ!!」

 溜め斬り!翼爪が破壊される

 

「なんか早い!」

 一つ一つのスキが少ない!

 これが上位のレウス!下位とは次元が

 違う!!

 ナズナは足元を転がる

 

「単発で回避です!基本に戻って!」

 顔に一太刀入れて回避

 

「うっわ!これ面白い!」

 初めてライトボウガンを持ったエミナ、

 貫通弾を撃つ

 

「エミナ!連射せずに

 いつでも回避出来るように!」

 

「りょーかぁーい!」

 笑いながら撃つ、

 明らかにハシャいでいる

 

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

 

 無事に討伐成功したが

 初の上位リオレウス、消耗も大きい

 

「ですから貫通弾の調合は…」

「面白けどこれがなぁ…」

 ミハエルとエミナは調合している

 

「買うと高いしなぁ」

 ナズナの言葉には実感がこもる、

 疲れてレウスの頭に寄り掛かり座る

 

 久しぶりに苦戦した

 

「まぁ何使おうが自由だしな、

 多少の不便は仕方ねぇわ」

 

 大剣を研ぐハルキ

 レウスの頭を撫でるナズナ

 

「あのさ、私達このままG級いくのかな?」

 

「あー…あのな」

 ナズナを見ると

「俺も何となくやってんだぜ?

 ハッキリ目標なんて無いからな?」

 

「私…何がしたいんだろ」

 

「俺もソレを探してんだ、お前は

 考え過ぎじゃね?」

 

「?」

 

「皆が皆目標持って生きてねぇよ、毎日

 食って行くために働いてるだけだぜ?」

 

「なんかソレって…

 ココットにいた頃の私じゃ…」

 

「それも一つの在り方だろ?」

 

 

 

 

「出来た!貫通弾!」

「掴みましたね!さぁ次は

 これを30回ほどやりましょう!」

「うえぇ…」

 

 

 

 

 二人を眺めながら

 

「一生目標探す人のが多いんだぜ?

 探して迷ってジタバタするそうだ」

 

「見たことあるの?」

 

「この世の人間の殆どだぜ?」

 ニヤリと笑うと

 

「私もその一人か」

 ジタバタ迷うか

 思えばベルナから出た後は、ずっと

 ジタバタしてる

 

 

 

「誰かにレールを敷かれて

 自由の無い人もいますよ?」

 ミハエルがこっちへ来た

「偉くなる人は偉くなるために

 教育を強制されますし」

 

「摂政か?」

 

「子供の頃から自由が無かったそうですよ」

 

「それ嫌だな!」

 ハルキは苦笑い

 

「私達は目の前の仕事を

 こなしていくだけです」

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 「討伐成功ですね!」

 キャシーが依頼書にスタンプする

 

 と

 

「おー?居やがった」

 

 その声に四人振り返ると

 

 …中年のハンターが居る

 髪が赤いだけの普通のオジサン、

 目尻の皺が深くててニコニコしている

 

 「「「イシズキさん!」」」

 

 え?誰?

 

 

 ……………

 

 

 

 

「まったくオメェはよ!

 あんまり心配掛けんじゃねぇよ!」

 ハルキの頭をグリグリ

 

「すんません…」

 されるがままテーブルで怒られるハルキ

 

「ベッキーがどんな思いか想像しろ!

 今すぐ手紙送れ!」

 顎でカウンターを指す

 

「はい…」

 立ち上がりカウンターへ

 

 素直に言うことを聞くハルキに

 違和感を覚える

 

「あの…」

 怖い感じはしないけど何者?

 

「オメェが報告にあったナズナだな?」

 片方の眉が上がる

 

「イシズキさん、お弟子さんは

 置いて来られたんですか?」

 

「あ?それはよ…」

 ナズナを置いてきぼりに話をする

 

 

 

 

 「………」

 何なのよ?

 

「この人はね、お父さんの仲間だった

 イシズキさん」

 こっちも二人で話始める

 

「どんな人なの?」

 言葉が汚い人だなぁ…

 

「今は40歳位だったかな、

 四英雄の称号蹴って弟子育ててる」

 

「蹴って…?」

 

「断ったんだよ」

 

「ソレって凄い強いんじゃ?」

 普通断る?

 

「最強の一人だよ?」

 

「そんな感じに見えない…」

 チックの様に顔に傷もないし

 ロクロウみたいに立派な髭もない

 何より空気が何か…柔らかい?

 

「そうなんだよw」

 手をヒラヒラ

 

 

 

「ムダに威嚇しても意味ネェよ?」

 突然こっちの話に入って来る

 

「ムダかなぁ」

 エミナは首を傾げる、無用なイザコザ

 避けるのに効果的に思えるけど

 

「オメェらが本物の怖さを知らねぇだけだ、

 昔のロクスさんやガストンさんは

 笑ってても怖かった、

 俺は若い時にあの二人の殺気ブツけられ

 てよ、動けなくなったぜ?

 ソレが『本物』ってやつだ」

 

 

「あの…ナズナです」

 右手を出すと

 

「おう、イシズキだ、

 俺の自己紹介は終わったようだな」

 ニコニコ握手する

「ココットのギルマスから聞いてるぜ?」

 

 

「ではその為に?」

 横からミハエルが入ってくる

 こんな事は珍しい

 

「あー、このギルドの治安維持頼まれてな、

 表向きは俺がやってくれだとよ、

 人数増えたしチック達だけじゃあな」

 

「治安維持って何ですか?」

 ナズナは首を傾げる

 

 その様子をマジマジ見ると

 イシズキは間を置く

 

 じっとナズナの顔を見る

 

 

 

 ちょっと怖いんですけど?

 

 

「…なるほどなぁ、ギルマスが気に入る

 はずだ、オメェは裏表が無ぇ」

 エミナを見ると

「オメェのオヤジと同じだ、

 悪意ってモノが無ぇわ」

 ビールを飲む

「ハンターになって力が付くとな?

 偉くなったと勘違いして犯罪に走る

 ヤツがいるんだ」

 

「そんな事起こるんだ…」

 怖い…

 

「そういうヤツが出ないように全体を

 仕切れだとよ、面倒くせぇけどな、

 こっちは四大英雄の影響も薄いだろ?

 危ねぇんだよ」

 

「そーゆーのはギルドナイトの仕事

 じゃないんですか?」

 エミナが口を挟む

 

「ギルドナイトはとっくに来てるぜ?」

 

「気付きませんでしたよ」

 父様の事だからギルドガールに

 偽装するはず…まだ見抜けないですが…

 

「まぁ気付かれちゃ仕事になんねぇだろw」

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

「イシズキさんが来るとはなぁ…」

 チック達と話すイシズキを眺める

 

「ハルキ、あの人苦手なの?」

 ため口しないし

 

「あ?弟子連れてG級クエスト出来る

 人だぜ?弟子のフォローしながら」

 

「…そうなんだ…」

 桁違いに強いのか

 

「ハンターとしても人としてもデカイ

 人なんだ、逆らう気にならねぇよw」

 

「ドンドルマにいたハンターなら怖さも

 知ってる訳よw …

 ミハエル、さっきから何で黙ってんの?」

 

「…いえ…」

 ギルドナイト…

 何でしょう…

 何かを見落としている気が…

 

 「観光気分だったかもな、

 ぶん殴られないように気を付けようぜ?」

 

「あの人殴るの?」

 やだよ怖い

 

「ナズナ、ハンターって元々犯罪者

 ばっかりだったの知らないの?」

 首を傾げる

 

「そうなのっ?!」

 私犯罪者の仲間?!

 

 え?あれ?何かおかしくない?

 貴族までいるし…

 

 ミハエルが口を開く

「元々は犯罪者…ならず者ばかりだった

 集団を暴力で矯正して現在に至ります、

 現在は立派に職業の一つですが」

 

「みんな四大英雄と昔の先輩達を尊敬

 してるけど、怖くもあるのよ」

 

「暴力による統制では無くなり…」

 

「何だ?」

 

「いえ…」

 新体制に成りつつある…のか?

 

 

 

 

 

 

 




昔は近所の子供を怒る大人が
大勢いたそうだ、
言葉で諭された


今は公園のルールを見ても、
アレしちゃダメ、コレしちゃダメって
文章の注意



子供にとってどちらが役に立つだろう、
どちらが自由について考えるだろうか
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