「……!」
「………!」
確かに何か聞こえる
ギルドマスターの後を歩き墓の方へ向かうと
「なに抜け駆けしてんだよ!」
「いい気になってんじゃねぇぞ!」
「何様のつもりよ!」
女の声だがドスが効いた怒鳴り声
ハルキに手紙を頼んだ娘を三人の女が
取り囲んでいる
ギルドマスターは立ち止まり静観し始めた
なにもしない気か?
「またかぁ」
エミナが呆れる
「またって?」
「ハルキに手紙頼むのもしょっちゅうあるけど、
コレもしょっちゅうあったんだ」
一人が掴み掛かる、髪を掴んで引っ張る
「ナメてんのかテメェ!」
そのまま引き倒す
「ちょっと可愛いと思って!」
「テメェみてぇなブスがよ!」
顔を踏みつける
「ヒッ!」
怖い恐いコワイ!!
いやだいやだいやだ!
震えるナズナ、体が強張る
「た…助けないと…」
「何で?」
エミナは平然と答える
何言ってんのよ!
助けるでしょ普通!
「あの、だから…あの」
しかし
「こういうのは助けちゃダメ、
止めるだけだよ?」
その言葉を待っていたように
「そこまでじゃ!」
ギルドマスターが一喝する
「村長…」
「ヤバ…」
三人の女はバツが悪そうに下を向く、
私位の歳っぽい
「やれやれ、下らん、みっともないマネはよせ」
「だってこの娘が…」
さっきのドスが効いた声が
嘘のような可愛い声で
「やかましい!無用なトラブルを起こすな!」
睨む、それで十分だった、
三人はトボトボと帰って行く
「さ、私達も戻るよ?」
「え?あの…」
「いいから」
「気が利くのぉ」
ギルドマスターがエミナに笑い掛ける
「にひひひ」
何?何が起こってる?
……………
ギルドに戻らずハンター小屋の影に隠れ
様子を見る、
戻るって言ったのに、また二人で
…何で?
まだあの娘は倒れたままだ
「どっかケガしたのかな?」
小声で心配するが
「大丈夫」
何でこの娘は平気なの?
「あのさ、ナズナってイジメられっ子でしょ」
ギクッ!図星!
さっき言われてたらどうなってたか
「心配しないで、見れば解るから」
うつ向く、やっぱりそうなんだ、
薄々自分でも分かってた
「ナズナがあの娘だったらどう?
助けられたい?」
「?」
「人に見られたい?」
…見られたくない、
情けなくて悲しくて悔しくてそれで…
涙が出てくる
「でしょ?」
真剣な顔で見てくるエミナ
泥だらけになった娘が立ち上がる、
トボトボ歩いてくる
「場所移すよ」
………………
ハンター小屋のエミナの部屋
ベッドに二人で座る
「見ただけで解るの?」
「見たまんまだもん」
そんな気がしてたよ
「何で色々…」
馴れてるっていうか
「じゃあさ、私はどっちに見える?」
明るくて愛嬌あって誰とでも話せる
「イジメる側」
「正解」
笑う
「あの娘が助けて欲しくないから
助けなかったの?」
「んー、ちょっと違う、
解決にならないんだもん」
「解決?」
「あの娘に『どんな手を使っても状況
変えてやる!!』って覚悟がないとね」
「覚悟…」
「あの娘の場合、仲間ハズレにされたく
ないから誰にも頼らないし、反撃しない
と思うよ?」
村の中で孤立したくないよなぁ、
私もそうだったし
「あんなことされて仲間でいたいと思って
る内はダメ、だから相手は調子に乗る、自分
は安全だと思ってるから」
「そうなんだ…」
「多分ナズナは状況変えたよね?」
「…村から逃げ出したんだよ…」
毎日毎日明日が来るのが苦痛だったから
「逃げるのが卑怯とか思ってる?」
「情けないじゃない…」
涙が出てくる
「一人で知らない村に来て、独立してて
何で情けないの?」
「だって…」
「女一人で村を出て自活してんだよ?」
「…なんか…」
「立派に一人で生きてるじゃん!」
ニッと笑う
…この村に来て初めて褒められた
久しぶりに笑った…
何か色々あって…
「うわああああーぁぁぁ…」
自分でもビックリするほど勝手に泣き出す
年下の前で泣く情けなさ
もうごちゃごちゃで
何が何だか…
後から後から涙が出て止まらない
………………
久しぶりにこんなに泣いた
「スッキリした?」
私が泣き止むのを待っててくれた、
エミナは何で解るんだろう?
「あの…何で…」
「私はね、イジメる側だったけど
10歳位でやめたよ」
「なにがあったの?」
「今日と同じ、あんな場面見て
イジメる側に居たい?」
「どっちもイヤ」
「最低でしょ?」
「でもあの娘は…何とかならないの?」
「有利な状況だから後は本人次第なんだけどねぇ」
「それが分からないんだけど…」
何が有利?
「だって目撃したでしょ?
ギルドマスターにまで見られたでしょ?」
だからそれがどうなる?
ギルマスは何も…
「誰が悪いか誰が被害者かハッキリしてる」
「後はどうすればいいの?」
「村中に言えばイイだけ、仲間ではいられ
ないけどね、何を言っても信用される、
いざとなればギルマスも口を出すしかない」
「そしたらどうなるの?」
「しばらく村八分で終わり」
「何か納得できない、そんなもので済むなんて」
「そう思うよねぇ、だから小さい内に
イジメは終わらせたほうがイイんだよ」
「なんで?」
「よくある思い出になるらしいから」
「あの娘位だとそうはならないってこと?」
17~18位?
「そう、恨む、ずーっと恨み続ける、
多分何十年でも」
「私もそうかも…」
ふとした時に思い出して気分が悪くなる
「あの三人は復讐されても文句言えなく
なったしね」
ケラケラ笑う14歳
「復讐…か…」
「ナズナもその復讐の権利は持ってるん
じゃない?誰か力のある人に見せてない?」
私も…いつか…
「あの娘、どうするだろう…」
「まぁ殺す以外なら何でも許されたり?」
物騒だな
「ねぇエミナ、なんで…その…」
「詳しいか?」
顔を覗き込む
頷く
「私は村長の娘でさ、
親のやること見てたんだ、村長は明日に
村を生かす事が最重要な仕事な訳よ」
それは分かるような
「だからイジメる側だって大事な村民、
簡単に追放なんかの処分は出来ない」
だからって止めるだけって…
納得できない
「だから更に処分を求めるなら証拠と
被害者の意見次第」
「結局そこなんだね」
証拠…無いかも
「イジメがバレた時にお母さんに
メチャクチャ叩かれてさぁ、謝って謝って
許して貰った、恨みが残ってたらいつ復讐
されるか怖いもんね」
「そんなに恨みって残るんだ」
私の中のコレがずっと…
「お父さんがさ、戦災孤児でイジメ所じゃ
ないトラウマ凄いのよ、寝てる時に飛び起き
たりすんの、で、何でか聞くと子供時代の
悪夢が出てくるんだって」
伸びをすると
「いくら子供でも殺し合いがあったような
場所だからね、よくある思い出にはならな
かったみたい、それって今でも恨みが残っ
てるんだよ」
エミナのお父さんって酷い地域の出身
なのか…何年も恨み抱えてるのか…
私もそうなるの?
「さっ!湿っぽい話は終わり!
ギルド行くよ!」
立ち上がる
「え?もう遅いし…」
「何言ってんの!私らが居ない所で男共に
何言われてるか分かんないじゃん!」
手を掴み
「男は基本バカなんだから!」
エミナって私より大人だ…
……………
「やっぱり胸だろ!」
ハルキは力説するが
「若ェなぁお前、女は尻で決まる」
中年のハンターが反論する
「フン!脚に決まってんだろ!」
別方向から声があがる
「ミハエル!お前も何か言えよ!」
ミハエルは立ち上がると清んだ声で高らかに
「場所ではなくバランスです」
「ほう、例えば?」
老齢のハンターが聞く
「まず、単純に胸が大きいよりも
重要なのはトップとアンダーの差です」
おおっ!っとギルドがドヨめく
「そしてアンダーよりもウエストが細いこと、
最低でも7センチ以上が望ましい」
なるほど!と声が上がる
「やはり身長、体重、各部の長さ、
そしてバランスこそが至高です」
「スゲェなお前!」
ギルド中が囃し立てる
「だれかお前の合格ライン居るか?」
「ドリスさんと…ちょっと細いですが
ナズナさんでしょうか」
オオオオッ!スゲェぜ!
熱い激論を交わす男達
あっ!!と声が上がる、
全員がギルドの入り口に注目すると、
エミナとナズナか無表情で立っている
「………………」
静まり返るギルド
「…ね?男ってバカばっかでしょ?」
無言で頷くチベットスナギツネ
人は忘れろと言う、
そして忘れたフリで生きる、
フリだけ
恨みは決して消えない