生きることは悩むこと 2   作:天海つづみ

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逆鱗

 

「本日ですが」

 

 ギルドのテーブル、

いつものようにミハエルの話を聞く

 

「私は装備のために上位に行けるか交渉

しますので、今日は抜けます」

 ナズナの方を見ない

 

「んじゃ俺も久しぶりに一人でやってみっかな」

 こっちも目を合わせない

 

 ?

 そういえばこの人達の目は怖く

無くなってる…けど…?

 

「じゃナズナ、二人で行こう」

 エミナはいつもどうり

 

 ココット管轄 旧沼地

 霧の森と寒い洞窟、湿地帯の狩場

 

今日は採取

 

「二人でって初めてだね」

 ハンターカリンガになったナズナ

 

「あいつら逃げたんだよw」

 

「逃げた?」

 

「昨夜の事、照れてるんだよ?」

 ニヤニヤ

 

「ちょっとショックだった…

体の事あんな風に…」

 まさかミハエルまで

 

「まだまだ男だらけだしねぇ、

男のコミュニケーションだよ」

 

 まさか女性が居ないとギルド

があんなこと

になるとは

「何かエミナって男の人に馴れてる感じ」

 

「そりゃ慣れるよ?オッサンばっかり

だったもん」

 生まれたジャンボ村は辺境唯一の交易

拠点、そのため船乗りのオッサン、

行商人のオッサン、ハンターのオッサンが

大勢訪れて、船着き場のギルドでチヤホヤ

されていた

「んでハンターになってドンドルマだよ?

オッサンの村からオッサンの街に行って

オッサンばっかりと話してるんだよ?」

 

 うん、大人になるわそりゃ

 オッサンがループしてる

 

 

 

 ……………

 

 

「どうでしたか?」

 

 ココットギルド、マスターの部屋、

質素な内装はハンター小屋と変わらない

 ギルドマスターとドリスが奥に居る

 

「昨夜ドリスが行ってみたらなぁ、

案の定だったようじゃ」

 

「ナズナの村の教官はハンターではない」

 男口調のドリス

 女らしいメイドシリーズが不釣り合い

 

「やはりですか…

ドリスさん、どうするんでしょう?」

 

「私は貴方の父君の部下であって、

貴方の意見など聞く道理は無い」

 

「ドリスや、そう怒るな」

 まぁまぁとなだめる

 

「このままでは半端なハンターが狩場で

喰われ、結果人間をナメたモンスターが

現れます」

 少しも動じる事もなく

ミハエルはニコッと笑う

 

「その先は言わんでもドリスも十分承知

しとるよ」

 

「命令さえあればいつでも動く」

 背中のギルドナイトセイバーに手を掛ける

 

「それを聞いて安心しました」

 ミハエルは出て行く

 

 

「やれやれ」

 

「まったく、父君といい良く口の回る…」

 ドリスの眉間にシワが入ったまま

 

「ドリスや、お前も怒りっぽくてイカンぞ?」

 

「職務を全うしているだけです」

 ビシッと姿勢を正す

 

「むう、それよりそろそろ本題に入ろうか?」

 

「了解しました、ハルキを追跡します」

 

 

 ……………

 

 

 

「でぇい!!」

 

「ナズナ!!毒に注意して!」

 

 イーオスを数匹倒す、ランポスに比べたら

頑丈だけど割りと楽

 ガンナーの時は苦戦したのに

 

「ガンナーより楽だわ…」

 何より弾丸代が

 

「ガンナーは剣士もできるけど、

剣士でガンナーできる人は少ないみたいよ?」

 剥ぎ取りながら

 

「そうなの?」

 

「だからナズナは無茶な事してたんだ」

 

「私は何にも分かって無いんだなぁ」

 

「んーん、知らなかっただけだよ?

今知ったじゃん!」

 

 剥ぎ取りを終えて移動する

 今度はブルファンゴのいるエリアへ、

三頭いる

 

「じゃ一人でやってみて」

 

「えぇ…一人ぃ?」

 不安だよぉ

 

「そんな顔しないの、

私は子供の頃にやってるよ?」

 

 今も子供じゃない?…言葉を飲み込む

 

 

 1頭目を避けて追いかけ後ろから斬る、

早く終わらせないと次が来る!

 

「ナズナ!後ろ!」

 

 まずい!横に回避すると2頭目が横を

掠めた、あぶなかったぁ

 

 しかし

 

「ナズナ!」

 振り返ると3頭目が!

「ガシィっ!」

 思わずガードして防ぐが

 

「ダメっ!ガードしちゃ!」

 

 え?

 

 1頭目が横から突っ込んできた!

立て直せない!

「ひいぃっ!」

 次々に来るブルファンゴ、

 ガードを続けるがダメだ、

 もう腕が限界

「ぐううっ…」

 

「よっ!と」

「ザシュッ!!」

 エミナが1頭を鮮やかに斬り伏せる

 

「立って!息吸って!」

 

 言われて初めて気がつく、力が入りっぱなし

で呼吸すら儘ならなかった

 何とか立ち上がり

「でぇい!」

 2頭目を斬り伏せる

 

「後は大丈夫ね?」

 無言で頷く、最後の3頭目を斬る

 ゼイゼイ言う呼吸を整える

 

「まぁ、こんなもんだね」

 笑うエミナ

 

「わ、私…弱い…」

 まだ息が

 

「それが分かればいいんじゃない?」

 剥ぎ取り終わると

「どうだった?クック1頭と比べて?」

 

 

 

 ピンと来た!今初めて分かった気がする、

話を聞くのと話を理解するって事の差が

なんとなく

 

「囲まれると何も…それにガードが…」

 

「そう、乱戦では一回ガードしちゃうと

そのまま固められて動けない」

 

「どうするの?」

 

「回避で逃げきるんだよ、思いきって前に

回避する手もあるよ?」

 

「そんな事危なくて…」

 

「あれ?一回成功したんじゃない?

ミハエルから聞いたけど?」

 

 あれか!

「エミナは最初どうやって三頭倒したの?」

 

「1頭に集中しないで、一回斬ったら周り

見て回避してたよ?」

 ケラケラ笑う

 

「時間掛かりそう」

 

「大事な事は無事に生き残る事って言われて

鍛えられたんだ、早い事なんて死んだら

自慢話にもならないじゃん」

 

 なんか…目からウロコ…

 価値観とか色々違う

「やっぱり親が強いハンターだと

何か有利なんだね」

 

「何が?」

 エミナの表情が固まる

 

「え…と、何かコツとか近道的な…」

 

「ナメないでくれる?」

 キッと睨む

 雰囲気が変わる

 

 

 え?何かマズイ事言った?

 

 私何かしちゃった?

 

 体が強張る

 

 イヤだ

 

 怖い怖い怖い

 

 

「そんな風に思われるのも仕方ないけど逆だよ?」

 正面から真っ直ぐ見上げてくる

 

「ぎ、逆?」

 おどおどするナズナ

 

「ハンターは命を落とす仕事であることは

強いハンターであるほど知ってる、

 だから子供に教えるとなったら全力で

鍛える、生きてほしいからね」

 目を逸らさない

 

「私も正式にハンターになる前に

訓練で鍛えられた」

 

 ようやく目を離して研ぐ

 

「ミハエルの前で言ってたら軽蔑されたよ?

気を付けて」

 

「軽蔑…」

 怖かった

 

「あいつの両親は全ハンターの頂点、四英雄

まで駆け上がった人だからね、ミハエルは

毎日ボコボコだったんだって」

 

 あの綺麗なお顔にそんな過去が

 「そんなに激しい訓練するの?」

 

「ちょっとやってみる?」

 

 

 

 ……………

 

 

 何なんだこの男は?

 クックとは言え油断が過ぎる

 

 ハルキはキャンプから出る事もなく

ゴロゴロしている

 

 普通は標的の探索に向かうものだ、

 親が一流故に怠けたタイプか?

これではベッキーもがっかりしただろう

 

 

 

 虫の声

 

 

 鳥の羽ばたき

 

 

 水の音

 

 

 

「さっきから誰だ?」

 ハルキは見回す

 

 バレただとっ?!!

 

 いや…場所を特定している様子もない、

ただの一人言…戯れだろう

 

 ハルキは立ち上がり見回す

「見てんだろ?」

 

 まさか本当にバレた?

 どうする…

 

 

 カサカサという葉っぱの音

 

 

 鳥の囀ずる音

 

 

 風の音

 

 

 虫の声

 

 

 魚の跳ねる水音

 

 

 

 そして

 

 

 

 無音で現れたギルドナイト

 

「失礼した」

 丁寧に一礼する

 

「ギルドナイトか…何の用だ?」

 

 向かい合うが…

 

「貴方を観察せよとの指令でな」

 普通のハンターならギルドナイトを見れば

少しは動揺なりするはず…

 

何だこの落ち着き様は?

 

 まさか母親の本業を知っているのか?

 

 

「何だ?書士隊絡みじゃねぇの?」

 

「まぁ別件だ」

 書士隊?

 

「俺なんて観察した所で何か解るのかよ?」

 いつものふざけた雰囲気は微塵もないハルキ

 

「命令である以上私の主観は関係ない」

 

「帰ってくれねェ?見られて気分悪いしよ」

 

 ギルドナイトは考える

 バレた時点で観察は失敗、任務をしくじった、

 ならば別の手を考えたほうが良いか?

「ふむ…私は引き揚げるとしよう」

 踵を返す

 

 

 

「また後でな、ドリスさん」

 

 なっ!!!

 声色を変えていたのに!!!

 

「ほらぁ、動揺しちゃダメだぜ?」

 

 くっ!!!

 

 

「なぜ分かった?」

 帽子を取ると

 

「胸!」

 

「冗談は好かない質でな」

 ドリスは睨む

 

「俺は見ただけてサイズが分かる」

 

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