エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話 作:フィアネン
正直な話、今回は読み飛ばしてもいいと思います。
もうすぐ中間試験。はっきり言ってどの学校に行っても試験ってのはゲロだ。んでもやらにゃならんから、今はレイと勉強してる。
「んだァ?隣がドタバタうるせぇな…ちっとミサトに文句言ってくる。」
「いってらっしゃい。」
「あいやこの声、まさか…レイも一緒に行こう。聞こえたろ?アスカの声。」
「聞こえたわ。いいわよ、行きましょ。」
俺らは前にも言ったとおり、ミサトの家の隣に住んでいる。俺がちっと裏技を使ったらすーぐ指令がOK出したからね。問題なし!
「おいミサト!もう少し静かにできねぇのか!」
「ちょっとエイちゃん、私のせいじゃないわよ!」
「何や何や、若夫婦の参上ってか?」
「いや、もう一組できたばっかだろ?なぁシンジ。」
「は!?どうしてそうなるんだよ!」
「やっぱアスカがここに来てるんか。て
「勿論、全部あたしのよ!バ影嶋夫婦!」
「ひっでぇ、俺の悪口にバリエーション作るなよ。」
「悪くないわね。」
「レイ??????」
「ふん、相変わらずのバカップルですこと!」
こんなしょうもない会話をしていると、ケンスケが何かに気づいたらしく、大声を上げる。
「あ!ミサトさん、昇進されたんですか!?おめでとうございます!」
「あ、ありがとう…。」
なんか引き気味に返事してるけど、どーにも嬉しそうにない。
「え?なに昇進て。」
「何すかぁ?」
「君達気がつかないのかね!?葛城さんの襟章の線が二本になっていることを!一尉から三佐に昇進されたんですよっ!ねっ!?」
「ええ、まあ…。」
軍事オタクおっかねぇ~…。いつもジャケットで完全に隠しといてよかった…。
「そうと決まれば祝賀会だ!勿論みんな来るよな!?」
「悪ぃ、レイと俺はパスだ。これから外せない用事がある。」
「そうなの。ごめんなさい。」
「何や、相変わらずつれないやっちゃなァ。」
「悪ィな。余程遅くならなきゃ帰りに何か買って帰るからさ。」
「それじゃ。」
「なんかレイ、随分変わったわねぇ。」
[どう?レイ。久々に初号機に乗った感想は。]
[碇君のにおいがする…。]
恐らく感覚的にシンジを感じているのだろう。俺がエヴァ由来の感情をシンクロ時に感じることができるのと多分同じだ。俺はアークの中で腕を組み、目を閉じて静かにしている。
[クロッシング開始。]
エヴァからの抵抗もだいぶ慣れてきた。初号機の視界がプラグに投影され、無事にクロッシングは終了。その後のコントロールジャックも問題は無かった。だが…
[どう、エイジ君。何か違和感はあった?]
「感覚的に、シンジが乗ってる初号機、レイの乗ってる初号機は何かが違います。言語化は難しいです。」
[そう、ありがとう。]
ケージ内で何かを喋っているが、マイクは切られており、会話の内容はわからない。まあ、何でもかんでも知ろうとするのは命知らずがすることだ。漫画でもアニメでも、どんな創作物でもそうだが、中盤くらいに話の真実を知った人物というのは高確率で転パートで消される。主人公達に真実を伝えぬまま、ひっそりと。
[お疲れさま。二人とも、上がっていいわよ。]
「お疲れさまでした。」
着替え、薄暗い廊下に出ると、レイが更衣室の前で待っていた。
「お待たせ。」
「……」
「レイ?どうした?」
人の気配はレイの他に感じない。頭に銃を突きつけられてるとか、そういうことではないようだ。
「…レイ?」
「エイジ君。」
「何だ?」
「私のこと、すき?」
何だ、このレイの目。俺の知らない目だ。
「…ああ、勿論好きだ。」
「来て。」
レイについていく。ここは、ターミナルドグマ…。レイ、俺に何を見せようってんだ?
二人の足音だけが静かに響く。
嫌な予感がした。ジャケットの前を開け、銃を取り出す。左手には飛びだしタイプのナイフを逆手に持ち、神経を尖らせる。銃の安全装置は外すが、刃はまだ出さない。追跡されてることも念頭に動こう。
レイが自分のカードキーを通すと、閑散とした空間に出る。ベッドと、仕切りと、大型の機械がある。ここは、まるで―
「昔のレイの部屋みたいだ…。」
「そう、私が生まれた場所。」
「生まれた?こんな、何もないような場所で…?」
「行きましょう。」
レイはさっさと行ってしまう。慌ててついていく。次の部屋は、中心に大きな管が配置され、天井へ機器が伸ばされている。
「ここは、ダミープラグを製造している場所。」
「ダミープラグ?どういうことだ?」
「私がコアになっているから。」
「レイが、コア?」
「行きましょう、赤木博士のところへ。」
赤木博士?何故今になって博士の名が出てくるんだ?…わからないことが多すぎる。
「あら、レイ。どうしたの?エイジ君と一緒でなくて?」
「先に帰ってもらいました。」
「…レイ。あなた、最近急激に変わったわね。エイジ君と毎日楽しそうに生活して、表情が人間らしくなったじゃない。」
(人間らしくなったってどういうことだ?確かにあったばっかりのレイは表情が無いようにも感じたけど…。)
「…いけない、事ですか?」
「まさか、いけないだなんて。ただ…少し驚いてるのよ。今まで碇指令しか眼中になかったようなのに…。エイジ君のアプローチがそんなに良かったの?」
「……」
「たいしたものね。ただの人形かと思っていたら、人間らしく恋人なんて作るなんて。」
「私、人形じゃないわ。昔、碇指令ばかり見ていたのは本当。でも、それは赤木博士もおな―」
突然言葉が止まった!?レイの苦しむ声…!
(レイ!)
扉を開け、銃とナイフを構える。驚いた表情の赤木博士と、苦しむレイの顔。
「嘘!エイジ君!?」
「エイ、ジ…君…」
「っっ!!!」
レイがチューブか何かで首を絞められている。言葉にすらならなかった。走りながらわざと2発外れるように発砲。手が緩んだ!赤木博士の右腕を切りつけ、流れのまま右肩でタックルし、博士を突き飛ばす。後ろで道具が散乱する音、赤木博士の苦しむ声、レイの咳き込み。
赤木博士に対し、改めて両腕を構え直し、頭部に銃を突きつける。
「……そういうこと。」
「2発は情けだ。殺人未遂よりも、もっと色々聞かなきゃならんことがあるんでね、赤木博士。」
「レイ、あなたもやるようになったわね。嘘を言うなんて。」
「ケホ、ケホ…言ったでしょう?私はもう、人形じゃないわ。」
「ダミー、レイの出自、『代わりはいる』…洗いざらい喋ってもらいますよ。レイ、腕は治療してやって。失血で死なれたら困る。」
「わかったわ。」
「降参よ…。私も銃には勝てないわ。」
俺は銃を突きつけたまま背もたれを前にして椅子に座り、赤木博士に対面する。地べたに座り込み俺に銃をつきつけられたまま、赤木博士は喋り始める。横ではレイが腕の止血処置をしている。
「レイは、碇ユイ…シンジ君のお母さんの遺伝子から造られたクローンよ。その生体パーツを使ってダミープラグ…人を乗せずともエヴァとシンクロできるプラグを開発しているわ。」
「代わりはいるっつーのはレイがクローン体の一人だからですか。」
「そう。レイには魂が宿っている。だからエヴァを操縦できるのよ。でも、大量のクローンを造っても、魂が宿るのは1つだけ。それが『現在の』綾波レイよ。」
「レイを製造しているのなら、そのプラントが必ずありますよね。案内してください。」
「いいの?あなたがそれを見て正気でいられるかしら。」
「今の魂のレイはここにしか居ません。他は全て偽物です。平気ですよ。」
「…そう。来てちょうだい。」
赤木博士の案内で、俺らはプラントに移動する。勿論俺は銃をつきつけたままだ。
扉が開くと、広い空間が顔を見せる。真正面には大きな水槽があり、その中にはレイの「器」とでも言うべきものが大量に浮いている。
「これが…」
「そう、レイの魂の器。」
レイはなにも言わない。自分がそうだと知っていたようだし、特段驚くことでもないか。
「レイ。レイはどうしたい?」
「エイジ君?」
「レイは今の肉体で、寿命で死ぬまで生きたいか?それとも、代わりがある容器のまま生きていくか…自分自身で選んでくれ。」
「私は…エイジ君!!」
唐突に赤木博士が肘鉄をしてくる。不意打ちだったがレイのお陰で回避できた。
「死ね。」
赤木リツコはレイに対し発砲しようとするが、俺の体当たりでまた不発にさせる。
「伏せろレイ!」
発砲し合いながら転がり、俺が赤木に跨がるような体勢になった。左手の銃を銃床で弾き飛ばす。尚も左手で抵抗してくる赤木の右肩に2発撃つ。
「ああああっ!!」
「怪我してた方の肩で済んでよかったですね。…こいつが調整用のスイッチですか。レイ、改めて聞かせてくれ。どう生きたい!?」
「私は、このからだで生きたい…!代わりなんて、いらない!」
「やめなさいエイジ君!!」
「ありがとう。」
スイッチを押すと、水槽に入っていたレイの体は崩れていく。彼女の意思だ。誰も文句はいえまい。―警報アラーム!
「逃げるぞレイ!」
「ついてきて!」
俺らは手を繋ぎ、レイの案内で地上に出る。こんな裏道があったとは。俺は、この施設に関して知らないことだらけなのだろう。
「けーっきょく、あんのバカップル、何にも寄越してこなかったわね。」
「実験が遅くなって、まだ寝てるんじゃない?綾波、低血圧っぽいし。」
「それだったらバ影嶋が出てきてるわよ。あ~っ、そんな事言ってたら例の方々が登場してき…たわ…よ…。」
「っ!?…な、何だ。アスカとシンジか…。」
「レイ!?それにエイジ君!?一体どうしたのさその格好!!」
「あんたまさか、人を殺してきたなんて言わないわよね!?」
「どうしたんだよ、アスカらしくない
「バッカ、自分の格好見てみなさいよ!あとその物騒なものをしまいなさい!おっかないわ!」
「え?何を言って―」
右手にはまだ銃が握られていた。安全装置をつけて銃をしまい、アスカに言う。
「悪い…俺ら今日は学校休む。訓練も休むと、ミサトに言っといてくれ…。」
「ねえ、ほんとどうしちゃったのよ!そんな物騒なものを出したり、いつものよゆーぶっこいてそうな態度じゃないの、おかしいわよ!?」
何か言おうとしたが、うまく頭が回らず、気のきいた言葉が出てこない。
「ねえ、綾波…何があったの?」
「ごめん、話したくない。」
「そっか、ごめん。」
「行こう、レイ…。」
「ええ…。」
「何なのよ、あいつら、どうしちゃったのよ…。」
何とかアパートの部屋に帰れた。扉を閉め、鍵をかけると疲労で倒れそうになる、レイに支えてもらって、何とかソファで横になることができた。
「悪ぃレイ、俺は寝る…。」
「おやすみなさい。」
何かに追われている。周囲の人間がどうしても信用できない。怖い。怖い…
襲ってくる人型のモノ。恐怖で、手当たり次第に頭部へ撃つ。
倒れたモノから順番にカオが見える。
シンジ。
ミサト。
日向さん。
伊吹さん。
アスカ。
最後に見たカオは…レイ。
取り返しのつかないことをしてしまった。俺は、そんな…!
「レイ!!!!!!!」
夕日…18時くらいか?夢の内容が思い出せない。でも、めちゃくちゃ怖い夢だった。あれ、掛け布団が…レイ、ありがとう。
レイが近づいてくる。
「エイジ君、これ。」
ゼリー型食料…?
「何か食べないと、本当に倒れてしまうわ。」
「ありがとう、レイ。」
「随分うなされていたわ。悪い夢だったの?」
「よく、思い出せない。恐怖だけが出てくるんだ。」
「怖かったのね。」
「俺はあの時はじめて、『大切な人が殺されそうな瞬間』ってのと『自分が殺されそうになる瞬間』ってのを体験した。銃だって、撃ち方を知ってるのと人を撃つのじゃ訳が違う。
…とても怖いんだ。あの時、死にそうになったのと、平気で赤木リツコを殺しそうになった俺が。いつか、皆が離れていきそうな、そんな根拠の無い不安が―」
話し終わる前に、レイが優しく抱きついてくる。
「私は、もうどこにも行かない。エイジ君が、私たちの親しい人を殺しそうになったときは、私が必ず止めるわ。だから、安心して。」
「レイ…ありがとう…。」
安心からか涙があふれてくる。独りだったら押し潰されていたかもしれない。
チャイムが鳴る。俺が体を起こそうとすると、レイがそれを制止する。
「私が出るわ。…はい。」
『エイジ君大丈夫!?!?!?』
「ええ。今起きました。」
『よかった~、色々買ってきてあげたから上がらせて。』
「わかりました。」
ミサトか、安心した。レイが俺を止めたのもわかる。今、俺は外に対して過敏だ。これで錯乱したら全員に迷惑がかかるし。
「エイちゃん、お邪魔するわよ。」
「あ、どうも、ミサト…。」
「エイジ君、どうしたのそれ!?どこか怪我したの!?」
「いいえ、全部返り血よ。」
「レイ…?」
「私を、庇ってくれたの。」
「何があったか…教えてくれる?」
事の顛末を全て言った。レイのこと、ダミープラグ、赤木リツコとの殺し合い。そのときに感じた恐怖も、洗いざらい告白した。
「そう…。リツコが事故で入院するほどの怪我をしたって、そういうことなのね…。」
「失望しました?」
「ええ、リツコにね。エイジ君、あなたは大切な人を守るっていう、立派なことをしたわ。それに誇りをもって、今は休みなさい。」
「ありがとう、みさと…。」
「安心したのね。寝ちゃった。」
「ありがとうございます、葛城さん。」
「レイ、エイジ君をよろしく。」
「はい。」
命のやりとりってものを初めて学んだ。それはとても恐怖するもので、逆に快感も知ってしまった。これを理性的に押さえ込めてはじめて、本当に銃を持つに値する人間となるのだろう。俺はそう思う。
ゲーム作品からもう一人だけ出演させてから本編に戻ります。
補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?
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